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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
序章 『転生』
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第19話 血濡れた聖女

「え…そんな、リンシャさん?」

 頭から上の無いリンシャの体がポトンッとその場に倒れる。誰がどう見ても即死だった。

「おい!ベティ、回復は?」

「無理…です。ヒールは傷を治す魔法です…魂を肉体に呼び戻す魔法はリザレクトです」

「じゃ、じゃあ!それを…」

「使えてたらこんな話、してませんよ…」

 ベティは体を小刻みに揺らしながら涙を流す。

「へぇ~。いいこと聞けたわ。死者蘇生がウチらの唯一の負け筋やったんやけど…それも無くなったわ」

 キュルワの壊れていたはずの腕がいつの間にか傷一つない新品に代わっている。

「君たちの最高戦力のおじいちゃんは灰になっちゃって、なんでも治せる能力は死体には適応しない…か。最高にいい盤面じゃないの!」

 エーリが腕を挙げる。その直後エーリの背後で待機していた雑兵が一斉に発泡する。

「ア、アイスウォール!」

 リンシャの死に受け止めきれなかったベティは反応に遅れ、それなりの数の弾丸が氷の壁の内側に入り込んできた。

「うっ!ヒール」

 ベティの体に数発の弾が命中し、痛みに耐えながら膝をつく。

「安静にしとけ!俺らが時間を稼ぐ」

 バースが近くに立っているキュルワに向かって踏み込む。そして、拳と拳がガチンッと音をたててぶつかり合う。

(ダメだ!義手の性能に差がありすぎる!)

 バースの腕がキュルワの拳に耐えられずに金属音と共に砕け散る。片腕を失い、バランスを崩したバースに追撃を食らわせる。

「あ、あがぁ…」

 口からボタボタと血を流すバースに向かってショットガンを構える。

「アイスランス!」

 ベティが二人の間に入り、アイスランスを放つ。氷の刃の四本がキュルワの体に刺さるが、深くまでは刺さらなかった。

「はっ、勇敢やな。んじゃ、敬意を持って自分から殺したるよ」

 引き金に手をかけたキュルワの腕に分銅鎖を巻き付け、引っ張る。ベティに引っ張られたキュルワは前のめりになり、そのまま銃弾を地面にぶつける。

「結局死ぬんやから足掻くなや!」

 キュルワはショットガンを捨てると、自身の拳と拳をぶつける。手の甲のランプが光り出す。

「やばいわ!二人とも、デカいの来るわよ!」

 ベティたちは後方に下がり、キュルワの拳を避ける。しかし、キュルワの拳は止まることなく地面にぶつかる。

「避けられることは百も承知や!」

 地面が崩れていく。底までは浅いが、足場を失ったベティは倒れ込む。その隣で同じように倒れていたバースの目の前にエーリが現れる。

「はい、バーン!」

 エーリは避けることのできないバースにショットガンを放つ。そして、弾は全弾バースの顔にヒットする。

「え、え?」

 バースの顔は、顔というよりも肉塊と言った方がしっくりくるような程にグチャグチャにされていた。バースの隣で倒れていたベティの顔に血がベットリとつく。

「それじゃあ、ベティちゃん。行くよ?」

 弾を装填しながら銃口をベティに向ける。その直後、エーリの背中から炎があがる。

「ぐぅあぁ!」

 オルスがオーバーバーナーでエーリの背中を燃やしたのだ。

「ベティ!逃げるんだ!お前じゃあ太刀打ちできないぞ」

 エーリが怯んでいる内に逃げるように言うが、ベティは上手く立ち上がれない。

(どうしよう。オルスさんを置いて逃げる訳にも…でも、殺すことのできない私が居ても足手まといになるだけ。いや、でも…)

 ベティが立ち上がった頃にはエーリも立ち上がっており、その後ろでキュルワも殺気の籠った目でこちらを睨みつける。

「チェックメイトだよ!」

 エーリはショットガンをベティに向けて、引き金を引く。

「ベティ!あぶねぇ!」

 オルスはベティの体を突き飛ばす。ベティの立っていた位置にオルスが入れ替わりになる。そして、銃弾はオルスの体を貫通させる。

「あ…あ、あぁぁぁぁぁ!」

 全身にオルスの血を被ったベティは大量の涙を流し、絶叫する。

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