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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
序章 『転生』
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第18話 瓦解への道

「…自分、ボンドリーと殺り合ったやろ。どうしてここにおるや?」

「あいつは殺したぞ。連絡がこんだろ?」

 キュルワが黙って、脳内でボンドリーに電話をする。

「ほんまや。反応ない」

「えぇ!?おじいちゃんすごいね。流石支部を一人で潰したってだけはあるね」

 エーリは手をパンパンと叩きながら笑う。しかし、目は笑っておらずだいぶ必死の様子だ。

「とっとと殺るぞ。ベティ、あいつらを回復させてやってくれ」

「は、はい。ヒール」

 ベティは攻撃に専念したせいですっかり治療を忘れていたようで慌ててミアナたちを回復する。メイブンはその間にエーリ目掛けて突っ走る。

「どんな脚力だよ!」

 メイブンの向かってくるスピードに圧倒されてしまい、反応することができなかった。そして、エーリの顔面に重い一撃が入る。

「ごっふっ!」

 鼻血を拭いながら立ち上がる。思った以上にダメージが深く、どれだけ拭っても血が止まらない。

(あぁ、やばいなぁ。キュルワちゃんは腕がボロボロだし、僕もだいぶダメージを受けたしな…)

 エーリは周りの様子を見る。雑兵たちは目の前でボコボコにされている幹部たちの姿を見て戦意喪失していた。しかし、そんな中、一人の雑兵がエーリに向かってハンドサインを送っていた。

 それを見た瞬間、もう負けだと確信していたエーリの顔から笑みがこぼれる。

「キュルワちゃん。とにかく時間を稼ぐよ」

「そのつもりやったけど…無理ちゃうか?」

 メイブンの攻撃を受けていたキュルワが肩で息をしながら険しい顔をする。

「一分でいいんだよ。一分」

「そんでもキツイわ」

「何をしようと、お前さんたちの負けは確定だよ」

 小声で話していた二人の間にメイブンが割ってい入る。

「チッ、おんどりゃぁ!」

 勢いよくフックを決めるが、腕が半壊状態のためそこまでの威力は無い。

「どう見ても不利なんだがな。勇敢ではあるぞ」

 メイブンはキュルワを褒めながらも容赦のない攻撃を浴びせる。

「はぁ、はぁ、一分くらい経ったんやない!?」

「どうだろ。だいたい一分経ったかも」

 二人の会話に聞いていたメイブンは、首を傾げながら歩み寄る。

「一分で何が始まるというんだ?」

「さぁ?」

「はぁ、しらばっくれても意味ないぞ。何かされる前にお前さんたちを殺してしまえばいいだけの話だ」

 エーリの胸ぐらを掴み、もう片方の腕を振りあげる。しかし、その腕を振り下ろすことは無かった。

「なんだぁ?この音は…ヘリか?」

 メイブンは攻撃を中断して頭上を見上げる。そこには腹の部分に大きな砲口が付いているヘリが旋回していた。その隙にエーリはメイブンの腕を振り払い、その場を急いで離れる。

「はぁ、はぁ。ボンドリーくんは最後の最後によくやってくれたよ」

「…それはどういう意味だ?」

「フフッ。あれは僕らの最終兵器、ロイヤルフライだよ。ボンドリーくんが起動していたおかげで、僕たちも死なずにすんだよ」

 エーリは険しい顔から一変し、勝ち誇ったような表情でメイブンを勢いよく指さす。

「ロイヤルフライ、発射!」

 ロイヤルフライの砲口から大量のエネルギーが放出される。極太のレーザービームが地面を削れながら、とてつもない速度でメイブンに向かって来る。

「ッ!避けれないか」

 逃げれないことを察したメイブンは左腕を体の前に出し、防御の態勢をとる。

 レーザービームはゴォォと爆音をたてながらメイブンを飲み込む。

「メイブンさん!」

「危ないぞ!逃げろ。ボスはかなり頑丈なんだよ。安心しろ!」

 オルスはメイブンの心配をするベティの腕を引っ張って地面の亀裂に滑り込む。

「うっ、アイスウォール!」

 ベティは亀裂に蓋をするように氷の壁を生成する。

「ヒィ!?」

 亀裂の外からもの凄い轟音が鳴り響く。そして、数秒後にその音はパタリと止まった。

「止んだ、外に出るぞ」

 アイスウォールを解除してベティとオルスは急いで飛び出す。

「う、嘘…どうなってるのよ」

 さっきまでかろうじてあった道路も、建物もなくなっており、焼き焦げた匂いが鼻を刺激する。

「メイブンさん!メイブンさん!」

 どれだけ呼びかけてもメイブンからの返事がないが、背後から違う声がする。

「あ!ベティ。と、オルス。良かった生きてたのか」

 必死にメイブンを呼ぶベティに、バースとリンシャが駆け寄る。

「けど、メイブンとミアナがいねぇ。どこだよ」

 バースは辺りをキョロキョロと見回しながら、不安そうな顔を見せる。そして、バースを見ていたベティの視線がリンシャ…というよりもその背後に移る。

「しゃがんで!リンシャさん!」

「へ?」

 ベティが必死の形相で叫ぶ。しかし、リンシャは何も分からずに振り返る。

 その瞬間、リンシャの顔が爆ぜた。

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