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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
序章 『転生』
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第15話 唐突すぎる開戦

「…んぅ」

 室内は真っ暗で机の上には空の酒瓶と丁寧に食い散らかされた肴が置かれていた。

「少し風に当たりたいかも」

 ベティは夜風に当たるため、外へと出る。

「…夜なのに明るいわね。あっちの世界では夜は町中でも暗かったから新鮮だな」

 ベティは深夜なのに昼ではと思うほどに明るい景色を見て少しの感動を覚える。

「…なんだろ?あれ」

 ボーッとしながら突っ立っていたベティの視界に人影が入る。不審に思ったベティは義眼の暗視眼を起動して目を凝らす。

 人影はベティたちの暮らす建物の外壁に爆弾らしきものを仕掛けている。

「あなた!何をしているの!」

 ベティは拳銃を人影に向かって突きつける。

「なっ!もうバレたのかよ!」

 そう言うと、爆弾にあるボタンを押して、さっさと離れていく。爆弾の赤いランプ高速で点滅する。

「やばいわ!フロスト!」

 ベティは爆弾を無理矢理引きはがし、凍らせてから上空に投げ飛ばす。爆弾は投げ飛ばした直後に爆ぜた。

「あ、危なかった」

 ベティが一息ついていると、物陰から無数の銃弾が飛んでくる。

「ひぃ!アイスウォール!」

 ベティが地面に触れる。そこから氷の壁が出現し、銃弾を防ぐ。

「ど、どうなってるのよ!?」

いつの間にか現れた何人もの敵に驚きながらベティはどう動こうか考えていると、何者かがベティの手を引っ張られる。

「ベティ!表の兵を相手してたらきりがねぇ。裏口から逃げぇぞ」

 さっきの爆音で目を覚ましたバースがベティを裏口に誘導する。

「ベティ、おったのか。急に消えおって」

 メイブンは安堵のため息をついたが、すぐさまに顔をしかめる。

「チッ。ナイトキラー共が来やがったか」

「支部を潰されて焦ってるんだろう」

 メイブンは自身の腕をギュッと握りしめながら、敵のもとへ向かおうとする。

「敵の数も不確定だ。あまり正面から行かねぇ方はいいんじゃねぇのか?」

「そうだよ。裏から奇襲かけたほうが確実じゃない?」

 メイブンは足を止め、裏口の扉を開く。

「…ざけんなよ」

 扉を開けた先には表ほどの数ではないが、兵士が銃を構えて待っていた。

「数で敵うような相手だと思うなよ!」

 数の多さに驚いていたベティたちを置いて、メイブンが敵の集団に突っ込んでいく。

「総員、撃てぇ!」

 メイブンの体にどんどん銃創が作られていく。しかし、急所に当たりそうな弾はしっかりと避ける。あっという間に距離を詰めたメイブンは号令をかけた兵士を突き刺す。

「きやがれ!」

 敵の集団の中心まで潜り込んだメイブンを囲む兵士たちは一斉に銃口を向け、発砲する。メイブンは銃弾が飛んでくるのと同時に兵士を足場にして高く跳ぶ。

「お前さんら、頭弱いな。この距離で銃をぶっ放すなよ」

 メイブンの真下を通り過ぎていく無数の銃弾は兵士たちを貫く。統率が崩れていく兵士たちをメイブンは次々と殺していく。

「大丈夫ですか!?ヒールします!」

 呆気にとられていたベティたちは数十もの死体の転がる道を通ってメイブンに駆け寄る。

「わぁお…文字通りの死屍累々。良く勝てたね」

 リンシャは死体を踏みながら、思わず言葉をこぼす。

「…なんか勝てそうな感じしてきたな」

「いや、逃げだ。らしくないが、チマチマ削っていくぞ」

「了解、とりあえず隠れられそうな場所を探しましょ」

 メイブンたちは敵の増援が来る前にはその場から離れようとする。

「…ッ!アイスランス!」

 ベティが敵を警戒しながら歩いていると、どこからか猛スピードで銃弾が飛んでくる。ベティはそれをアイスランスで相殺する。

「スナイパーがいます!」

「分かったわ!」

 ベティの叫びを聞いたミアナは敵の持っていたライフルで銃弾の飛んできた方向に向かって発砲する。

「…倒せたわ。でも、バレたなら時間の問題でしょうね」

 ミアナはスコープを覗きながら淡々と報告をする。

「なら、迎え撃つまでだよ!」

 バースは自身の拳同士をぶつけて、ニヤリと笑う。バース以外も逃げの考えは無く既に臨戦態勢に入っていた。

 ベティたちはどこから攻撃が来ても分かるよう、お互いの背中をくっつけて待つ。数分の間沈黙が流れる。その沈黙を破ったのはバースだった。

「俺の正面から敵が来てる!それも大人数だ!」

 皆が一斉にバースの視線の先を見る。

「うわぁ、総動員じゃん」

 あまりの多さにリンシャが驚く。その隣のベティも驚きの声を漏らす。しかし、それはリンシャとは別の意味だった。

「そうか、そういえばナイトキラーだと言ってたわね」

 ベティ、ミアナ、バースは一人の男の顔を見て固まる。

(多分、この世界で一番会いたくない人かもしれないわ)

 敵の集団の中に胸に星形のバッチを付けた者が三人おり、その中のには前に見覚えのある人物が立っていた。

「エーリのヤツじゃねぇか…気分わりぃな」

 エーリとの面識がある者は皆顔をしかめる。

「フフ、そこの三人は久しぶりだね」

 エーリは出会った時のような爽やかな笑顔を向ける。

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