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聖女の成り下がり  作者: 森宮寺ゆう
序章 『転生』
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第14話 束の間の休息

 ナイトキラー支部との戦いから二日。ベティは街をぶらぶらと歩いていた。

「ナイトキラー支部の崩壊…」

 ベティは店に置いてあるテレビを見てポツリとつぶやく。

「そうそう、地元メディアが騒いでるやつだ」

 店員らしき男性がテレビを覗きながら言う。

「噂じゃ、この支部は一人の老人にやられたらしいぜ。腕にタイガーネイルをつけてたらしいぜ」

 どうやら、世間ではメイブンが一人でナイトキラー支部を壊滅させたことになっている。

(メイブンさんは単独で行動してたと言ってたわね。そこを見られたのかしら)

「ま、あそこはあまり功績を挙げてたわけではないしな。いつか潰されると思ってたぜ」

「そうなんですか」

 ベティは棚に並んでいる拳銃をレジに出しながら言う。

 店を出たベティは帰路につこうとするところで、呼び止められる。

「お、ベティ。お前もおつかいか?」

 オルスが大きな荷物を持ちながら手を振る。

「いえ、私は銃が使えなくなったので、それを買いに来ました」

「銃なんてボスが大量に持ってるんだからもらっちまえよ」

「それはメイブンさんの物ですから」

「ボスなら譲ってくれる思うがな。そんなのより、自分のことに使ったらどうだ?」

「これも自分のことではないのですか?」

「いや、まぁそうだけど…」

 オルスは少し悩んでから一つの店を指さす。

「ベティはこの世界の食い物をあまり食ったことないだろ。クレープとか知ってるか?」

「クレープ?知りませんね」

「そうか、ベティうまそうなのはどれだ?」

 オルスはメニュー表をベティに見せる。ベティはクリームやストロベリーがふんだんに使われているクレープを指さす。

「おっけ。じゃあこれを一つくれ」

 オルスが注文すると、ベティが困った様子で止めようとする。

「だ、大丈夫ですよ」

「いや、遠慮しなくていいぞ。それにもう買ったしな」

 オルスはベティとしゃべりながら受け取ったクレープをベティに渡す。ベティは断ろうとしたが、厚意を無下にする方が失礼だと思って素直に受け取ることにした。

 クレープを口に運んだベティは目を輝かせながら追加でかぶりつく。

「すごい!このフワフワのに包まれたイチゴやクリームがすごぉく甘いです!わぁぁ。甘い、甘い、甘い!」

 あまりのおいしさのあまり、ぴょんぴょんと飛びながら、かなり語彙力の低い感想を述べる。

「お、おう。そんなにか。まぁ、買ってやったかいはあるな」

 オルスは嬉しそうに歩くベティを見て微笑を浮かべる。

「ベティ。今日はボスが宴って言ってたぞ。前回の戦争を祝うってよ」

「そうなんですか。分かりました」

 ◇◇◇

 日が少し暮れた頃、ベティたちは一つの机を囲んで座っていた。

「わーい。グラスを挙げて~。そんじゃ、ナイトキラーボッコボコだね祝いをしま~す。かんぱ~い」

 皆はお互いのグラスを軽くぶつけ、ワインを飲む。

「改めてお疲れ。巷じゃメイブンたちの話が良く上がってるぜ」

「ほんとよね。メイブンは本気で伝説レジェンドの素質があるわよ」

「さすがにボスでも伝説レジェンドにはなれないだろ」

「…英雄にはなれたがな」

「その伝説レジェンドや英雄とはなんなんですか?」

 ピンときていないベティが疑問を投げつける。

「えーっとな。英雄は戦争とかで名をあげた人間に与えられる称号だ」

 バースが一度区切り、少し興奮気味に続ける。

「そんで、伝説レジェンドはそれの上位互換だな。ベティは分からないかもしれないが、これはこの世に生まれ落ちた者なら誰もが欲しがるものだ。比喩抜きにな」

「そうなんですか?」

 その考えが分からないベティは怪訝そうな表情でみんなに聞く。

「ええ」

「あぁ、欲しいぞ」

「私も…子供の頃は憧れてたかな~」

「欲しい。絶対に欲しい。だから、俺らは殺す。それが一番手っ取り早く自分の価値を証明できるからな」

 メイブンは不気味な笑みを作り、ワインを飲み干す。

「そうなんですか。その伝説レジェンドになるのはやっぱり難しいんですか?」

「難しいなんて話じゃないよ~。生きる伝説は二人、歴史的に見ても十数人程度だからね」

 リンシャは早々に四杯目のワインを注ぎながら、上機嫌に笑う。

「たった二人…」

「多い方よ。時代によっては伝説レジェンドが一世紀以上生まれなかったこともあったからね」

「わぁぁ、すごいですね」

「…ベティはその資質があるんじゃないのか?」

 オルスが唐突にそんなことを言うので、ベティがポカンと口を開けて驚く。

「唯一無二の魔法を持ってるんだものね。世界、取れるかもよ?」

「む、無理ですよ。私なんて人だって殺せませんし、適当なところで死んでしまいますよ!」

「そこは俺らでカバーすりゃいいだろ」

「そーだね~。私たちはファミリーなんだからさ。頼ればいいんだよ」

 リンシャは腕を大きく広げてからベティの手をギュッと握る。

「…そうだ。ベティももう仲間なんだし、ファミリーネームをあげたらどうです?」

 オルスはメイブンのほうを見て言う。メイブンはほんの一瞬だけ考えるそぶりを見せると、口を開く。

「ベティ。お前さんはジャッタリーの名前が欲しいか?」

「え?えーと、できるなら欲しいですけど…あ、メイブンさんが嫌なら断っても…」

「いや、いいぞ。減るもんでも無い。これからは好きなように名乗れ」

「ありがとうございます」

 ベティは何となく嬉しい気持ちなり、上機嫌でワインを口に運ぶ。

「わーい。パチパチ!おめでとー」

 リンシャ自身の拳を前に突き出す。オルスとメイブンは何かを察したようで同じようなポーズをする。

「?」

「これは俺らの挨拶みたいなもんだ。と言っても、ボスがアサルトエンジェルからパクッてきたものだけどな。ほら、グーを出して」

 ベティたちも拳を前に出す。そして、お互いの拳が微かに触れる。

「…永遠の勝利と、不滅の魂を誓い。我ら、エースが世界を統べることを祈ろう」

 メイブンが言い終えると皆が拳と拳をぶつける。

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