第13話 猛火の炎
ベティたちはオルスを中心に、雑兵を処理していく。
「兵士どもは弱いけど数が多いわね」
ミアナが額についた返り血を拭いながら、一息つこうとした瞬間に兵士が銃を発砲しながら飛び出してくる。
「チッ!失せろ!」
あまりの敵の多さに嫌気がさしてきているのか、少しきつめに言いながら兵士を燃やす。
「メイブンさんは見つかりませんね。ヒール」
ベティはオルスの腕につけられた銃創を治しながら周りを見渡す。メイブンらしき人影は見当たらない。
「しかも、かなり面倒そうなのが見つかったぞ」
オルスの目線の先にはガタイの良い男が立っていた。両腕はでかく、大きさだけならメイブンの義手と同レベルくらいである。
「お前、ここの幹部のガドガだろ。雰囲気がそこらの兵と違う。ちなみにお前以外の幹部はもう死んだぞ」
「そうらしいな。あいつらからの反応が無い」
そういうと、ガドガは両腕を挙げる。両腕の形がガシャンガシャンと音をたてながら変形し、ジェットエンジンが露出する。
「あと、俺は他の奴らみたいにいくと思うなよ。なにせ、支部長を任されるほどの実力はあるからな」
ガドガが地を蹴り、オルスに向かってゆく。
「ッ!アイスウォール!」
ガドガとオルスの間に氷の壁を作って妨害しようとするが、ガドガは軽々と飛び越えてしまった。
ジェットの推進力が加わったパンチがオルスの顔面を襲う。
「オルスさん!下がってください。アイスランス!」
「フレイムバーン!」
二人は魔法を放つが、無駄にでかいガドガの腕によって防御されてしまった。そして、とてつもない勢いで、拳が飛んでくる。
「チッ、射撃型のインプラントかよ。近距離前提の俺と分が悪いな」
ガドガは地面に落ちているアサルトライフルを両手に持ち、乱射する。銃の扱いは慣れてないようで、照準がぶれる。
「おらぁぁぁぁぁ!」
「アイスウォール」
ベティは氷の壁を遮蔽物になるように生成する。
「…科学の範疇をこえてねぇのか?それは」
インプラントではどう考えても生成できないような量の氷を生み出したベティを見て、怪訝そうな表情を見せる。
「二人は援護射撃に徹してくれ」
オルスは氷の壁を越えると、ガドガに向かって走りながらオーバーバーナーを起動する。
「銃の扱いが下手みたいだな。殴り合いでケリつけようぜ」
オルスは弾切れを起こしているうちにガドガに突っ込み、殴り飛ばす。
ガドガは銃を捨てて、両腕のエンジンを吹かす。
「殺す!」
ただの殴り合いになると、パワーの足りないオルスが押されていく。しかし、そこをベティとミアナがカバーする。思うように身動きが取れないガドガはイライラしながら拳を振り回す。
「クッソ!後ろの阿呆どもがうざったいな!お前なんてすぐ捻りつぶせるんだぞ!」
ガドガはオルスを殴り飛ばし、追撃のパンチを繰り出そうとするが、飛んでくる氷の刃に阻止されてしまう。
「ヒール!オルスさん、無理しないでください!」
オルスの顔からアザが消えていく。
「はは、ほんと便利な力だ」
オルスは自身の顔を触りながら笑う。そして、腕をまくり隠れていたダイヤルを回す。
「火力MAXだ」
炎の勢いは凄まじく、飛び散る火花が顔や足に容赦なく降りかかる。
「これ俺も熱いんだよ。とっとと終わらせるぞ」
オルスはガドガとの距離を縮めようとする。ガドガは想像以上にも強い炎に驚き、後ずさりする。
「さっきまで威勢が良かったのにな。急にビビりだすなよ」
「ッ!誰がビビってるってんだぁ!」
カチンときたガドガは考えなしにオルスに向かっていく。
「来いよ!」
オルスは猛スピードで飛んでくるパンチを顔面で受け止める気で構える。しかし、ガドガの拳はオルスの顔に到達することは無かった。
「なっ!?」
ガドガの腕は氷の刃に破壊され、腹部にはミアナの射撃が飛んでくる。
「やってやりなさい!」
ミアナが大声で鼓舞する。それに応えるようにオルスのパンチは風をきり、ガドガの顔面に炸裂する。ガドガは数メートル吹き飛び、地面に体をぶつけながら倒れこむ。
「はぁぁぁ。やっと終わった」
オーバーバーナーを解除したオルスは疲れた様子でその場にへたれこむ。
「ヒール、お疲れ様です」
「あぁ、ありがとな」
ベティはオルスの体中にできているアザや火傷を治す。
「これで、終わりね。にしても、メイブンはどこに行ったのかしら?」
ミアナが辺りを見回しながら言う。
「後ろにおるぞ」
「ひゃ!」
ミアナの後ろから唐突に現れたメイブンに驚く。
「い、いつからいたんですか?」
「あの幹部との会敵からだ」
「…助けてくださいよ」
「あの程度やってのけると思っておったからな。しかし…」
メイブンはガレキを足で持ち上げ、後ろに向かって蹴り飛ばす。
「ゴホッ!」
メイブンはノールックで背後から忍び寄るガドガの頭にガレキを直撃させる。そして、頭から血を流すガドガの頭を一突きする。
「全員、詰めが甘い」
メイブンはそれだけ言うと、体をグググッと伸ばす。
「はぁ、ナイトキラーは兵器開発を得意とすると聞いてたんだがな。全くいい兵器も無い。おまけに、個々の実力も低い」
メイブンは頭を掻きながら心底ダルそうにつぶやく。




