第12話 ドカンと響け
ナイトキラー支部基地内で二人の女性とベティたちが見合っていた。
「なにもんだぁ!?あんたら」
背の高い女性がライフルをベティの眉間に突き付けながら、威圧的に言う。
「え、えっと…」
ベティが言い訳を考えている間に、背の高い女性の隣にいた眼鏡をした女性が倉庫の中へと入っていく。
「ねぇねぇ。こんな箱があったよ」
「ッ!なんでそんなすぐに発見されるのよ」
もう言い逃れはできないと判断したミアナは拳銃を抜く。しかし、ミアナが銃を構える前に、眼鏡をかけた女性が勢いよく飛び跳ねる。
「あ~っそれ!」
眼鏡をかけた女性はミアナの頭に全体重をかけたアックスキックが直撃する。
「ミアナさん!」
ベティは背の高い女性の腹を殴って怯ませると、ミアナの援護をする。
「わわわ!危ない!」
眼鏡をかけた女性はベティの蹴りをジャンプで避ける。
「ベティ、あっちは知らないけど、このメガネは強いわよ」
「そりゃ、そうよ。この私、カーナン・ナガローズはこの基地の幹部を務めているんだもの。ちなみにそこのマリリも幹部だよ」
カーナンは喋りながらも矢継ぎ早に蹴りを繰り出す。ベティとミアナは両手の塞がっているカーナン一人に押されている。
「アイスランス!」
カーナンは飛んでくる氷の刃を華麗に避けると、ベティに向かって箱を投げつける。あわてて、それをキャッチするが、箱と一緒に向かってきたカーナンがベティの顔面を蹴る。
「ベティ、しゃがんで!」
ミアナの声にベティが一瞬硬直していると、ミアナに足払いをされる。そして、よろけたベティの顔の横を銃弾がかすめる。
「チッ。無駄に運のいい奴め」
少し遠くにいるマリリがライフルに銃弾を装填しながら、恨めしそうな視線を送る。
「アイツが面倒ね」
「やーめ!」
カーナンはマリリに拳銃を向けるベティの腕を蹴り上げて、拳銃を奪い取る。
マリリを狙おうとすると、カーナンが妨害に入り、カーナンを狙うと、マリリの的にされてしまう。
(厄介ね。どちらかを倒せたらいいのに。一気にけりを付けよう)
ミアナはベティの手を握って、窓に向かって走り出す。
「おい!カーナン。あいつらが逃げるぞ!」
「ちょっと待って!」
ミアナたちの後をカーナンが猛スピードで追う。マリリはライフルの照準をベティに合わせる。
「ベティ、それ貰うわよ」
「え!?分かりました」
ミアナはベティから爆弾の入った箱を受け取ると、カーナンに向かって投げつける。反射的に箱をキャッチしたカーナンを見て、ミアナはニヤリと笑みを作る。
「さぁ、ドカンと響け」
窓ガラスを蹴破り外へと飛び出す。ミアナの言葉の意味を察したベティは持ってたスイッチを押す。
カーナンの持っている箱がカチカチッと音をたてたかと思えば今度は導火線に火が付いたような音が鳴る。
「ッ!やばいわ!」
カーナンは急いで外に箱を投げ捨てようとするが、爆弾は建物の外に出る前に起爆した。爆発で建物は赤い炎に包まれる。
「うわっ!」
ベティはミアナを包み込むようにして熱風や石の粉塵から守る。
「ベティ!地面に激突してしまうわよ!」
「平気です、任せてください!」
ベティは足から着地するように空中で体をひねり、着地する。三階から落ちたベティの足はもちろん骨折してしまったが、ヒールを使って無理やり動くようにした。
「…はぁはぁ。とりあえず助かったわね」
抱きかかえていたミアナを下ろすと、ベティは半壊した建物を見て驚きの声を漏らす。
「…すごい威力。よく生き残れたな、私」
「おつかれ。でも、一応ここ戦場よ。足の応急処置を終えたらここから去るわよ。足出しなさい」
ミアナはベティの足を触れるようとするが、もうすでに回復している足を見て絶句する。
「大丈夫です。もう治したんで、行きましょう」
「あんた、それ…どう考えても大怪我よ?よく治せたわね」
ミアナはもうそういうものだと割り切っていたが、あまりのすごさに恐怖しかける。
「はい。ヒールは死んでたりとかしない限り、大抵は治せます」
「化け物じゃない…ん?ベティ、何か来るわ」
ミアナは塀の向こうから聞こえる足音を聞き、角で相手が向かってくるのを待ち伏せする。足音が近づいてくる。そして、足音はもうそこまで来ている。
「フレイムバーン!」
角から男が飛び出す。ミアナの放つフレイムバーンを避けながら、拳銃をミアナのこめかみに突きつける。
「…え?ミアナ?」
男はミアナの顔を見た途端、慌てて拳銃を下げる。
「ってオルスじゃない。敵かと思ったわ」
相手がオルスだと気付いたミアナは魔法を解除する。
「二人ともよくやってくれたな。基地はもう木端微塵だし、残党を潰せば終わりだ」
オルスは拳銃に弾を装填しながら早歩きで進む。
「ボスから話があったけどここには四人の幹部がいるらしい。ボスが一人潰したから残りは三人の残ってるから気を付けろ」
「残り一人よ。二人はあの爆発を至近距離で食らったおかげで死んだと思うわ」
「そうか。すごいな、お前ら」
オルスは素直に感心の声を漏らす。




