第10話 ナイトキラー潜入
「本当に攻めるんですね」
銃などの点検をしているメイブンに話しかける。
「あたりめぇだ。爆弾だってもう作ったんだぞ。お前さんもとっとと支度しろ」
ベティに銃を投げ渡し、全体に聞こえるように話す。
「昨日言ったように今日はナイトキラーを潰す。と、言っても今から向かうのは支部だがな。作戦は俺とオルスが気を引く。その隙にこの爆弾を仕掛けてこい」
メイブンが爆弾を机の上に置くと、ひょっこと現れたリンシャが説明しだす。
「この爆弾は小さいけど石造りの建物なら木端微塵になるくらいの威力だから設置してから十分な距離とってドカンしてね。最上階に置いて外で起爆すれば十分だと思うよ。あと、私これを一晩で作ったんだよ!誰か褒めてよ!」
「あーすごいすごい。というわけだから、ミアナとベティは爆弾を仕掛けてくれ。オルスとリンシャは留守番だ。ほかは行くぞ」
話し終え、荷物をまとめるメイブンをミアナが止める。
「警備体制とか支部の見取り図とかは無いの?」
「無い。アドリブでやってけ。下らん質問をするな」
「え?それ本気?」
メイブンはミアナの首根っこを掴み、外へ運ぶ。
「いってらっしゃ~」
外へと向かうメイブンたちの背中をリンシャとバースは見送った。
「ほれ、乗れ乗れ」
メイブンは皆が乗車したのを見て、車のエンジンをかける。そして、猛スピードで空中を突っ走る。
◇◇◇
「着いた。んじゃボスと俺は正面から行くから」
二人は目的地に着いてすぐ行動に移った。どちらも戦いたくてウズウズしている。
「了解です。ミアナさん、私たちも行きましょう」
「えぇ」
ベティは爆弾の入った箱を抱えると、裏口へと向かう。
裏口には門番が二人おり、それ以外に人影はなさそうだった。
「ミアナさん。どうしますか?柵も超えれそうではありますけど」
「これ有刺鉄線よ。超えようと思えばいけるけど、その後に支障が出るわ。無難に殺せばいいんじゃない?」
「そうですか。しかし、ここで攻めたらメイブンさんたちが気を引いてる意味が無くなりますよね」
「そうね。…ってあいつらなんか動き出してない?」
門番は無線機に向かって何かを言った後、正面門の方へ向かう。
「どうやら、あの二人が暴れ出したみたいね」
門番がいなくなった隙にササッと建物の中へと進む。
「中にも兵士がいるけど、少ないわ。これなら、隠れて行けそうね」
さらに、兵士はどんどんと外へと向かっていく。
「増援が向かっていくわね。しかも、かなりハイペースよ」
二人が物陰から様子を伺っている間にほとんどの兵士が外に出ていった。
「この程度ならいけるわね。ちょっと待っててアレを試したいわ」
ミアナはニヤリと笑うと、廊下に出た。
「フレイムバーン!」
ミアナは手をバッと広げて叫ぶ。手のひらからバレーボール大の炎の球が飛び出す。
「うぉ。実戦で使うのは初めてだけどいいわね。魔法」
ミアナはベティに魔法の使い方を教わっていたのだ。
「すごいです。もうフレイムバーンを使えるなんて」
「えぇ、がんばったもの。しかし、えげつないわね」
ミアナは顔面が真っ黒になった兵士を見ながら、感心する。
「まぁ、魔法はそういうものですから」
ベティは焼け焦げた死体をまたいで二階へと進む。
「ていうか、ここの警備ザル過ぎない?もう二階に到着したわよ」
ナイトキラー支部にはカメラやドローンなどは無く、警備は全て人間が行っているようだ。
二階には兵士が沢山いて、さっきのようにはいきそうにない。
「どうする?」
「…ここを駆け抜けましょう」
「え?無茶なこと言ってんじゃないわよ。撃ち抜かれて終わりよ」
ベティは反対するミアナの手を握り、飛び出す。
「ブリザード!」
手を真上に掲げると、あたり一帯が吹雪でおおわれる。
「うお!なんだ、これ!?」
兵士たちが混乱している内にベティたちは廊下さっと抜け、三階への階段を上っていく。
「三階が最上階だったわよね。どこに爆弾を設置するの?」
「誰かの目に留まらないようにしたいですね。といっても、そんな場所分からないですし」
そして、一つの部屋が目に留まり、ベティはそれを指さす。
「こことか良さそうですよ。倉庫って書いてありますよ」
二人は埃まみれの倉庫の中に入ると、棚の空いている場所に爆弾を置く。
「これでいいわね。後は、ここから脱出することだけど。ま、兵士たちはほとんど外にいるから安心ね」
ミアナはそう言いながら、扉を開く。
「チッ。侵入者が微妙に強いせいで、雑兵どもの尻ぬぐいする羽目になっちまったよ」
「残念だね。って、あれ?」
廊下に出た瞬間、二人の女性と目が合った。




