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巻き舌
ホノルル支社が設立され、英語の出来る社員が何人か派遣される事になりました。
栄転ですし、勿論誇らしいのですが、五年は帰ってこられないし、躊躇する気持ちもあり、
候補に選ばれた人たちは戦々恐々としていました。
いちばん気が立っていたのは新婚の先輩でした。
共に働く旦那さんは英語が出来ないし、お腹には赤ちゃんがいるし、気持ちは分かります。
上司がその先輩に仕事の指示を続けざまに出した所、何故か急に感情が爆発したらしく
「続けざまに言わないで下さい。もう手一杯ですよ。ヘルプ付けてくれるなら、ホノルルでもどこでも行きますよ」
と啖呵を切りました。
ヘルプの「ル」も、ホノルルの「ルル」も、巻き舌になっていました。
あらァ、カッカしているからって、舌まで巻いて。
がらっぱちなのねえ。
普段お上品なのに。