最終対策会議(魔王シュトレ)
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玉座に座り私は彼らと対峙する。
「魔王さま。ついに彼の力が……目覚めたね」
「仕方ないとは言え、彼だってきっとつらいはずなのに。出来ることなら何とかしたいわ。
ガレットだって、そう思うでしょ?」
「……」
目の前にはマカロ、エクレ、そして長いこと隠居していたガレット。かつて大昔に共に戦った側近、三人の忠臣達だった。
私の傍に控える執事のカータードは言う。
「では、破壊神の復活とその魂の半分の生まれ変わりであるトルテについて、皆様の意見をお聞かせ下さい」
集めた目的はこの、魔界の一大危機に関する会議だ。まず言葉を開いたのは頭脳明晰で博識な魔術師で、城の図書館司書、マカロだった。
「破壊神の復活と言えど、今度の復活は魂の半分のみでの復活。力は半減してもいるから以前と比べれば少ない被害で倒す事は可能だよ」
それに苦い口調で言うのは、ガレット。
「だが……力は半減したと言え破壊神は破壊神、その力は凄まじい。たとえ以前より比較的被害が少ないとしても莫大な犠牲が出るのは変わらないだろう」
「分かっているよ。けれど、復活した以上は戦うしかない。……もう以前のように転生させる事も不可能だしね」
マカロの言うように、前の戦いでは魔術でその魂の半分を削り人に転生させたが……実は一度使えば魂そのものに耐性が出来、二度は使えない代物だった。
「……ああ、そうだな」
ガレットも仕方ないように呟く。代わりにエクレが提案をする。
「でも、力が半減したのなら、もしかすると私の封印魔術が使えるかもしれないわ」
かつて魔界一の召喚士だった彼女は、元々魔獣だった存在を封じ、自らの下僕として操り戦っていた。操る事は不可能でももしかすると封印出来る可能性はあるだろう。
「エクレ、良い提案だ。成功するかは分からないが、もし封印さえ出来れば解かれない限り半永久的に破壊神の脅威を無くすことが出来る。
試す価値は大いにある。が、どの道封印するにしても弱らせなければ……戦う必要がある」
……戦うとなれば私、そして彼らも出る必要がある。そして大きな戦いになることも……避けられはしない。
「全魔王軍には破壊神襲来に備えての準備はしてある。──奴が現れ、破壊に乗り出したその時こそ戦いの時だ。
被害は最大限に抑え、破壊神を封印する」
「破壊神については承知しました。……だけど、トルテくんはどうなさいます?
彼はこのままにしておくつもりですか?」
エクレからの心配する言葉と、もう一つの課題。だが、まだ問題はない。
「トルテは……自主的に部屋に籠もっている。自分の正体にショックは受けているだろうが、危険はない。
彼の事は破壊神の討伐、ないしは封印を済ませた後、じっくり考えればいい」
とりあえずはそれで良い。大事なのは破壊神の脅威への対応、それが一番だ。結論付けようとした時、玉座の間の扉が大きく開く音がした。
「魔王さま! 至急の事態が……!!」
入って来たのは魔王城の門番長、ビスケ。息を切らせて、相当急いでここに来たことが分かる。
「どうした? お前をそこまでさせる程の事か。構わないから報告しろ」
「はっ! 魔王城の外に……破壊神が、姿を現しました」
「「「!!」」」
この報告にマカロ、エクレ、ガレットそして……私も驚愕した。