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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
聖王国編
97/261

96話 置いてきた過去

ガゼット大森林での失敗は想定外だった……勇者が弱かったのか情に流されたのか。真偽の程は確かじゃないが次ミスがあるようならあの勇者も捨てるべきか。

「バージェス様……サーレスが戦死したというのはほんとうですか?」

「そんなわけなかろう……あの自己中心的をそのまま表した豚が領民の為に兵を使うとでも? 拷問して情報を吐かせて……ははは! 同じ豚の餌にしてやったわ」

「……は、ははは。それは良いですな」

「まぁよい。あの土地は王国が所有していた土地であろう……あのような地に魔王領など作られては国の威厳が薄くなる。勇者がダメならば国の兵士を動かしてでも殲滅するぞ」

勇者と言えど所詮は使い捨ての道具……何かあれば俺が手を下せばいいだけだ。

「それと……念の為シャンデラ国、ココアン国、スペアド国にも声を掛けておけ勇者が使えないと判断したら即座に侵攻を開始する」

「かしこまりました。各国の国王に文書を送ります」

「あっそうだ……例の武器をかき集めておけ」

「コード商会からの反発があると思われますが」

「上には金を握らせている……それに全世界へ売り捌くなど勿体ないではないか……あの力は俺の国だけにあれば良い」

それにフィデース信栄帝国とやらを打ち倒せばその力も全て俺のものに。

「それでは連絡してきます」

魔王などと呼ばれ付け上がった者を叩くなど造作もない。



「はぁ」

しばらく歩けば例の国だ……正直気は進まない。なんで私は勇者なんだろう……元は……元々私は一体。

何も思い出せない……会いたいって心から思う人はいるのにその人すら思い出せない……。

国に来た時の記憶も曖昧だ……誰かと来たような気もするし一人で来た様な気もする……。

「…….」

「バレたみたいだよ」

「えぇ……結構距離あるけどなぁ」

「さすが勇者ってことだろ」

褐色の肌……髪は金髪に赤が少し、隣には真っ白な髪をした男の人、2人とも魔王の特徴には当てはまらない。だけど

「2人とも気配消すのが下手なんだよ」

「いや俺はノーチェと同じレベルだし」

「俺がダメみたいな言い方だなケルロス」

あの女の人……黒い髪と白い髪が混じってる背丈も報告と同じくらい。

「良かった」

今回は国を滅ぼさずに済む……。



「来るぞ!」

いきなりかよ!

「ちょっと待て! 話を!」

「……」

話聞かないタイプか!? 目を見た感じだと戦意はないように思えたんだが。

「どうする!?」

「最初は俺だけで戦う!」

俺がそういうと2人はコクリと頷いて後ろに下がった。

……さっきの一撃で気になることがあった。勇者が持っている剣……あれは使用者の魔力を吸って放出するタイプだ……てことは魔法を放つことができると考えていい。そしてもうひとつ……。

「勇者! 聞こえてるか!?」

「……」

さっきのは無視されたんじゃない……自我がないんだ。どうしてだ……使用者の自我を無くす剣? どんなファンタジーだよ……どっちかと言うと勇者が持つ剣ってより作戦失敗したクズがやぶれかぶれで引き抜いた剣みたいな性能じゃん。

でもあの剣を抜く前は意識があった……。

よく見てみれば汚れも目立つし髪もボサボサだ……防具なんて所々ヒビが入って壊れかけてる。

「勇者も使い捨てってことかよ」

その言葉に反応したのか勇者がとんでもない速度で向かってくる。

「アイス・グランド!」

いくら早くても足を凍らせれば……って!

嘘だろ……凍った足を無理やり引き抜いて……。

ガシャン!

刀と剣が交わり鈍い金属音が響く。

……力は5分かとにかく距離を。

「デス……ファイア」

この至近距離で!

ドゴン!



ノーチェと勇者が同時に爆発する……辺りは土煙と爆発の煙が舞い上がり2人の様子は見ることが出来ない。

「ノーチェ!!」

「俺は行くぞ!」

ノーチェの安否を確認しようとケルロスが前に出ようとした時煙から何かが飛び出してきた。

「はぁ……はぁ……はぁ……危ねぇ……まさか自分事爆発させるなんて」

ノーチェは体の至る所に傷を負ってはいるが致命傷は避けていた。



「大丈夫か?」

「あぁ……ギリギリの所を水流魔法で凌いだ」

とはいえ腕1本持ってかれたけどな。

「今回復する」

「ありがとう」

腕1本くらいなら回復できる。今は早く腕を。

ケルロスが回復に入ろうとしてくれた時だった。

「ノーチェ! 後ろだ!」

クイックの叫び声と同時に残った右腕で刀を握り勇者の剣を弾く。

「さすがに自分の攻撃じゃ死なないか」

とはいえ勇者も無事では無い……左腕に力が入ってないし様子を見た感じだと内蔵にも来てるな。

もっと煙が晴れれば勇者の状態をしっかりと確認できる……。

しかしそんなことはお構い無しといった具合で勇者は攻撃を続行した。

「回復は後でいい! 今の勇者なら腕1本でもまだ耐えられる! 本当にやばい時は頼むから待っててくれ!」

「わかった!」

ケルロスは本当に忠犬だな!

だが少し厳しいのも事実だ……水流魔法は威力を相殺させるために極限漲溢(ルプトゥラ)まで使ったからな。

魔法は後3発か4発が限界だ……魔法無効(アンチエリア)を使ってもいいが単純な力勝負で勝てるのか否か……。

そろそろ煙も晴れる……まずは勇者の状態を。

俺は勇者の姿を見た時に驚きを隠せなかった。

元々ボロボロだった服はさっきの爆発によりさらに酷い有様になっていた……そして破れた服の下から見える肌に描かれた黒い紋様……。

エリーナが言っていた奴隷紋。しかも体に直接……。

奴隷紋は基本的に紙に描かれるものだ、奴隷となる者の体の一部を紙に置きその下にある空白に奴隷紋を書く……そうすることで奴隷と主人の関係が作られる。

しかし体に直接奴隷紋を描くことも可能で……この場合書いている時は屈強な男でも泣き叫ぶ程の激痛が走り続ける。さらに書類の奴隷紋と違い効果も強く……主人の命令に逆らえば最悪命すら落とす代物だ。そんなものを勇者に……いやまだ成人にすらならない女の子に。

「ケルロス! クイック! 気が変わった……勇者は保護する」

俺は少しだけ視線をずらし2人の反応を確認する……。

2人とも大丈夫そうだな。

「それじゃあ時間はかけてられないな」

どうやって勇者を気絶させるかを考えている時自我を失っているはずの勇者から驚きの言葉が発せられた。

「……ケルちゃん……モグラさん」

……。

今……なんて言った?

その声は後ろの2人にも聞こえたらしく走ってこちらに向かってくる。

「ノーチェ! 今なんて言った!」

「……」

ピンク色の髪……海のように濃くて綺麗な青い瞳……。

「シャル……?」

俺の言葉を聞いた勇者? は持っていた剣を捨てて立ち尽くす。

「モグラさん……またお花で冠作ってあげる……ケルちゃんはまた冒険に出かけるよ……蛇さんはじぃじとお話ばっかりだけど私とも遊んでよ」

記憶が戻ったと言うよりも過去の思い出をただ見ているだけのようだ。

「「「……」」」

俺を含め3人とも……何も言えない……驚きと怒りと悲しみと辛さで言葉が出てこない。

シャルは浮かべた笑みを噛み殺してもう一度剣を拾った。

「あの剣は自我を奪う……恐らくだが相当長い時間使っていたはずだ……そしてあの奴隷紋でシャルを操っている」

「「……」」

2人とも頷いてはくれたが……何も言わない。自分の中にある怒りを必死に押さえ込んでいるようだ。

シャルは剣を引きずりながらこちらに走ってくる。

魔法無効(アンチエリア)!」

2人がいるなら力勝負でもまだ勝機がある!

不達領域(リーチキャンセル)

「これで攻撃は当たらない! ノーチェ! クイック!」

ケルロスのスキルか! ……これはありがたい。

「地龍!」

今回クイックにはドワーフ達に籠手に武器を付けた形状のものを付けてもらった。リーチは短いが破壊力に関しては抜群だ。

地面がズレた!

シャル……少し痛いけど我慢してくれ!

「星落とし!」

宙に浮いたシャルのお腹に峰の部分で攻撃を加える。

シャルはそのまま地面へと落下した。

「これで大丈夫だろ」

寝そべるシャルの傍でしゃがみ様態を確認する。

剣は手から離れている……これで暴れることはないだろう。しかしその考えは甘いものであった。

寝ていると思っていたシャルは飛び上がり俺の首元に歯を突き立てた。

「ぐぅぅぅぅぅ! うぅ!」

獣のように唸り声を上げるシャル……ケルロスとクイックは慌てて引き剥がそうとするが俺はそれを手で止めた。

「……偉いな、シャル……君はよく頑張ったよだからもう休んでいいんだ」

俺はシャルの頭を優しく撫でた。

酷いな……髪が傷んでる……女の子の髪は命だってのに、王国じゃ酷い扱いを受けて……。

「うぅ……うぅぅぅぅ……」

シャルの力はだんだん無くなっていき噛み付いていた首からも離れていく……シャルの歯型から血が溢れているが俺はそんなこと気にせずシャルを撫で続けた。

シャルはそのままゆっくりと横になって寝息を立てながら静かに眠ってしまった。



「……ノーチェ傷を」

「今はいい。そんなことより早くシャルを運べ」

命令口調のノーチェ……それにすごく怖い……これがエレナの言っていたキレてるノーチェ。

その後シャルは狼になったケルロスの背に乗って国まで運ばれた。


現在のステータス

ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】

深淵蟒蛇Lv5

所持アイテム星紅刀

《耐性》

痛覚耐性Lv5、物理攻撃耐性Lv9、精神異常無効Lv7、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8

《スキル》

支配者、知り尽くす者、諦める者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド)極限漲溢(ルプトゥラ)魔法無効(アンチエリア)

《魔法》

火炎魔法Lv8、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、回復魔法Lv10、破壊魔法Lv8、幻影魔法Lv9、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10

《???》

強欲、傲慢

《資格》

管理者-導く者

《称号》

神に出会った者/神を救った者


ケルロス・ミルキーウェイ

赫々白狼Lv5

《耐性》

痛覚無効Lv5、状態異常耐性Lv9、物理攻撃無効Lv3、魔法攻撃無効Lv8

《スキル》

信頼する者、不達領域(リーチキャンセル)完全反転(フルフリップ)

《魔法》

風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv8、創造魔法Lv6、光魔法Lv10、神聖魔法Lv8

《???》

嫉妬


クイック・ミルキーウェイ

冥紅土竜Lv4

《耐性》

物理攻撃無効Lv5、精神異常耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv3

《スキル》

吸収Lv5、放出Lv4

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv2、風斬魔法Lv8、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv8

《???》

喰らい尽くす者Lv9

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