91話 軍隊改造
サクと話したあと俺はなるべく静かに部屋へと戻った……会議はまだ終わっていないみたいで……というか会話聞いたけどもう……自慢大会と愚痴……後はケルロスが俺の戦ってる姿をめちゃくちゃ美化した状況で説明してた……。
正直恥ずかしかったので特段何も言わずにいなくなってしまった。
「ったくあんなすごい活躍してないっての」
布団の中に潜り少し赤くなった頬を枕で隠す。
ケルロスもクイックも俺に何を求めてるんだ? 本当に認めてもらうことなんてできるんだろうか。
「……そうじゃないよな。あの2人が認めてくれているっていう事実を俺が受け止められるかってことだよな」
こんな単純で馬鹿みたいなこと考えてるなんて……本当にどうしようもない奴だな。
そんな奴でもみんなは助けてくれてる……この事実だけはしっかりと覚えておかないと。
「それじゃあいつまでもくよくよしてられないよな!」
勢いよく布団から飛び出し体を伸ばす。
「ん〜……心機一転! 国だって安定した訳じゃない」
それにリーベさんの話では人間の国は俺の存在に気づいているとの事だ……従属国を向かわせるあたり小手調べって所だろう。
「本格的に動き出す前にやるべきことを進めておかないとな」
「「そうだな(ね)」」
「うわ! びっくりした」
気配消して入ってくるのやめてくれないかな……。
「会議の方は終わったの?」
「あぁ……そんなことよりノーチェ体調はどうなんだ?」
「もう大丈夫ほらこんなに元気だよ!」
俺は腕をぶん回して自分の元気さを2人に見せる。
「……ならいいんだけどさ。それで? どう動き出すつもりなの?」
ペンと紙を持って少しワクワクした様子のクイック。
「そうだな……軍の増強と外交に関して見直しを行おうか」
俺たちはそのまま1晩を使い今後の国をどうして行くかについて話し合った。
「それでこれはこうした方が」
「いや……霊人達には許可を取っている」
「じゃあ新部隊を編成……そしてクイック直属の部隊も作る。これで諜報なども捗るだろう」
「これで行こうか」
「よし! クイックみんなを集めてくれ」
「朝早くに申し訳ないな」
「大丈夫よ〜……ちょっとフィーちゃんは眠そうだけど」
「全然……問題……ないぞ〜……」
いや……エリーナの膝の上で寝てますがな。
「さすがにテレシアは呼ばなくてよかったよな?」
「あぁ問題ない」
こんな早くにあんな小さい子起こすのは可哀想だよ。
「いつもは呼ばれない我々ですが……なんの用でしょうか」
言い方に少し刺があるような……。
「ごめんね……基本的には戦いに関する会議だからドワーフ達は呼んでなかったんだ」
少し不満そうではあるが納得してくれたようだ。
「全員集まったしそろそろ」
クイックが耳打ちをする。
「そうだね」
「それじゃあ話し合いを始めようか」
さっきまでの緩い空気は引き締められ軽い緊張感が走る。
「今回の議題は軍と外交関係だ」
「またいじるのか〜?」
フィーだけは本当に緊張感ないね! まぁそのくらいがフィーらしいか。
「いじると言っても部隊を増やすだけだ……後は人数も増やす。そして」
俺はガンド達の方を見る。
「前々から頼まれてた件だな」
「無理させてすまないね」
「安心しろ……少し疲れたが問題は無い」
ドワーフにはふたつのことを頼んでいた。まずは傀儡大隊の拡大……3000人だった傀儡大隊は10000人まで増やすことに成功した。そしてもうひとつ。
「自動式守備隊を作ったぜ……これは敵が攻めてきたと認識すれば自動的に砲撃や防御スキル……魔法が放たれるって代物だまぁノーチェ殿が防衛令を出せば戦闘準備状態を維持することが出来る。これでフィーとやらが率いるプリオル連隊は自国を気にせずに戦うことが出来るって訳だ」
「さすがだな……これで国を防衛する手段は得た。後は」
「あぁ地下施設に関しても作ってるところだ今住んでいる住人にプラスして5万人程度なら入れる。食料貯蓄もしっかりしてるから安心しろ。まぁ使わねぇのが1番だがな」
「ありがとう」
ドワーフには感謝しかない……たまに怖いけど。
「そして軍に関する変化はもうひとつ。百鬼大隊に入っていバールはクイック直属の部下になってもらう」
「主殿……の命令であれば……」
「バールがいいなら止めはせんが……どういう理由でバールを連れていくのだ」
「クイックの部隊は戦闘をする為に作るわけじゃない。どちらかと言えば参謀ポジションだ……後は他国の偵察なども任せる」
「いよいよ外に目を向けるんだな大将」
「前から向けてたさ……でも表からの情報だけじゃ少ないんだ……裏の情報も手に入れないと」
「任せろノーチェ。しっかりこなしてやる」
「……そうだな。人選はクイックに任せる。ただし無理な勧誘はするなよ」
「……わかってるよ」
クイックの目が逸れた……ちょっと無理やりやろうとしてたな。
「最後に外交関係だが……人の国で俺が魔王ということがバレている可能性が高い。それにも関わらず……コロリアン妖精圏と同盟を結んでいると公になるのはまずい」
「ルリアの森との同盟は公になってるんだよな?」
「2つの国はどんな反応してるの〜?」
「ルリアの森はノーチェ様がなんであろうと着いていくくって言ってたわ」
「コロリアン妖精圏は同盟続行を表したがそれ以外はなんにもだ」
2人とも何考えてるかわかんないもんなぁ。
「まぁ味方が多いのに越したことはないだろ?」
確かにそうですけどねケルロスさん……。
「前に六王は他の国との外交関係には口を出さないって聞いたわよ……今回の場合単純にゼールリアン聖王国が私たちに敵意を持っているってだけなんじゃないの〜?」
エレナの言っていることは最もだが……裏切りの可能性も頭の中に入れて置いた方がいいな。
「人間の国には何個か傀儡国があるらしい……まずはその国について調べるところから始めよう」
「さっそく俺たちの出番だな」
妙にウッキウキだけどクイックは戦うの好きなのかな。
「そうだな……頼むぞ」
「私達は何すればいいのかしらぁ」
「そうだな……あっ忘れてた」
俺は会議室の扉を開けてある人物を中に招く。
「あんまりにも遅くて……忘れられてるかと思いましたぁ〜」
「ごめんごめん……忘れてたよ」
「忘れてたんですか!?」
元気に返答してくれたのは霊人のサクだ。
「サクさんですね……それで此度はどのようなご要件で」
「いやサクは俺が呼んだんだ」
「その理由は……まぁなんとなくわかるけどよ」
「イヴィルの想像通り……プリオル連隊に霊人部隊を加える」
会議室が少しザワつく。しかし反論も質問も無い様子なので俺は話を続ける。
「サクを隊長に霊人50名を組み込む。さらに他の霊人達の話によればまだこの国に来ていない霊人が多くいるらしい……それらの霊人達を大隊に組み込む予定だ」
「なるほど……それで名前はどうするんだぁ〜」
「それならもう決めてある」
「朧夜大隊だ」
「朧夜?」
みんなの頭の上にはてなマークが見える。
「朧ってのは姿が霞んではっきりしないって意味がある夜をつけたのは暗いところが好きって聞いたから……まぁなんの捻りもない名前だよ」
「私は好きですけどね」
サクが気に入ってくれたなら十分だな。
「最高指揮官は何かあるかな?」
この国で1番偉いのは俺だけど軍の中で1番偉いのはフィーだ……本来であれば発表する前に言うべきだったんだけど……寝てたから。
「ん〜大丈夫だぞ〜これからよろしくなサク」
「は、はい!」
今は数こそ少ないが他の霊人達が集まればもっと変わって来るだろう。
「満足そうだな……ノーチェ」
「……なんでわかんだよ」
「俺の目はそこまで節穴じゃない」
あれ? ちょっと不満そう?
「話はここまでだ……戦いの疲れも残っているだろう今日はゆっくりと休んでくれ」
クイックが若干急ぎで話し合いを終わらせた感がある。
その後ちょっとした雑談はあったがみんな帰路に着いた。
「……なんだよ〜機嫌悪いじゃんか〜」
俺は静かになった会議室の机に寝転んで2人に話しかける。
「別に」
「まぁノーチェは前からこうだから」
……2人だけ俺たちはわかってます〜みたいな感じて腹立つ。
「言いたいことあるなら言えよ〜」
俺は駄々をこねる子供みたいな態度を取る。
「「はぁ……」」
2人は大きなため息を着いて部屋から出ていってしまった。
「変な2人……」