85話 かくれんぼ
「いやぁ……なかなか良いものじゃのぉ。あっはははは!」
今俺はリーベの部屋でご飯を食べています。何故こんなことになったのか……時間は数時間前に遡ります。
リーベさんは温泉旅館に向かったけど……後で行かないと怒られるよなぁ。魔王としては新参者だし先輩は敬っとかないとなぁそれにリーベさんは悪い人って感じでは無いし……いや、何考えてるかわかんないだけか。けど早めに言ったらまた一緒に温泉〜とか言い出しそうだし……。
「1時間後くらいに向かうかぁ」
1時間後
「そろそろ行くか」
俺は嫌々ながらも魔王様のご機嫌を損ねぬように温泉旅館へと向かった……のだが。
「……これは?」
俺は隣で立っているテグに聞いた。
「いやその……魔王様がお酒を飲みたいとのことでしたので」
それで? この? 惨劇?
「ネグが床にくい込んでるんだけど」
「リーベ様が酔った勢いで……」
「エリーナが酔い潰れてるんだけど」
「リーベ様からのお酒となれば断れず」
「なんかドワーフと霊人達まで倒れてるんだけど……」
「リーベ様が宴会の席を合わせて全て奢られるとの事で」
……あいつ出禁にしたい。
「おぉ〜来てたのかノーチェ〜」
全ての元凶が現れた。
「遅くなり申し訳ないです……それでこの有様は」
「あ〜つい楽しくなってしもうてのぉ〜特にそこエルフ! ドワーフよりも酒飲みよ!」
エリーナ飲める歳なんか?
まぁそんなことより今はここからリーベを遠ざけないと。
「リーベさん……ここは少し散らかってますし場所を変えませんか?」
「……そうじゃの〜それではワシは部屋に……あっそうじゃ! 酒は飲んだがご飯はまだじゃったな」
良かったすんなり行きそうだ。
「テグご飯の用意あとリーベ様を部屋まで」
「? 何を言うておる……お主も来るよな?」
ん〜……。
「ワシはお主を待っておったんじゃぞ」
口元を隠して笑っても怖いだけです。
「……わかりましたご案内します」
そして現在。
「これ! この刺身とか言うのは初めて食べたぞ!」
生食は流通してないってエリーナやガンドも言ってたからな……。
「いやぁお主なかなか面白い物考えるのぉ」
「あはははは……」
異世界あるあるだよなぁ〜あっちの世界の当たり前がこっちでは驚かれたりするの。
「酒に関しても見た事のないものばかり……国に持ち帰るかのぉ」
リーベさん国持ってたのか……。
「意外そうな顔じゃの……ワシが国の運営とは想像できんかえ?」
「あっいえ……そういう訳では」
「……まぁワシの国は特殊故……来ることもなかろう」
特殊? ……来ることもないってのはどういう。
「そんなことよりもじゃ! お主も食べぇ!」
魔王と食事とかどんな罰ゲームだよ……。
「ははは、いただきます」
その後リーベとご飯を食べて話をしているとリーベは「もう眠いんで寝るのじゃ!」って言いながら布団に入ってしまった。
「自由だよなぁ」
俺もここにいても仕方ないし……家に戻るか。
時刻は23時。
ケルロスもクイックも寝てるよなぁ……まぁお腹はいっぱいだから問題ないけど……ん?
俺の視線の先には霊人の老人とサクが居た。
こんな時間に何してるんだ……観光地区からも離れてる。ネグは……リーベさんに虐められてか。
色々と疑問はあるが何を話しているのか気になる……。
幻影魔法と透明化を併用して……限りなく存在を消して……。
「本当に……この国は恐ろしい国なのでしょうか?」
サクの声だ……。
「我らは今観光地区という場所に閉じ込められこの国の本当の姿が見えておらん」
「ですが……ここの人達はみんな優しくて」
「演技に決まっておろうて……」
うーむ……なんかとんでもないところに来てしまった。やっぱりあの2人は黒で確実そしてサクって子は白っぽいな。
「3日後にヘラレス様が来られる……その際魔力を使ってお主が手伝うのじゃ」
「ですが!」
「この国を滅ぼせば正式に霊人達を住民として国に招いてくれると約束してくださった。あんなところで暮らす必要もない……それに幼い霊人を助けられるのは今回しかないんじゃぞ」
「……わかり……ました」
その後3人の霊人は不可視化を使い旅館へと帰って行った。
「はぁ……」
どうしたもんか……3日後か、とりあえず明日の朝みんなを集めて話し合いだよな……。
俺は顎に手を当てながら自宅へと帰って行った。
みんなを招集してから15分。
「フィー様以外は全員集まりました」
「ありがとうテグ」
まぁフィーはちょっと前まで動いてたから今日は寝たままでもいっか。
「エリーナ後でフィーに色々教えてあげてね」
「はーい」
「それで……今日の内容はなんだ?」
今回は誰にも何も言ってないからみんなソワソワしてるな……。
「みんなに集まって貰ったのは霊人達に関してだ……だからそのみんな俺なんかやったかなぁみたいな顔やめて不安になるから」
「い、いやぁ……ははは」
みんな思い当たる節があったのか……今度自動人形のネットワーク利用して何してるか確認しよ。
「話は戻すが霊人達はヘラレスという男にこの国のことを報告しているようだ。霊人達と言っても正確には老人2人だが」
「なるほど……じゃあその霊人とっ捕まえればいいんだな!」
「それはまだ早い……むしろ利用出来ないかな?」
それを聞いたイヴィルが不思議そうな顔をする。
「……来るタイミングがわかってるなら上手く利用できるでしょうな!」
「その通りだエーゼル」
けど日程がわかってもどう来るかがわからない。
「もう少し情報を集めたいな」
「けどそれじゃあバレると面倒だぞ」
クイックの言う通り……霊人は不可視化のスキルを持っている。ネグの見張りも意味無さげだしな。
静まり返る会議室……みんなが頭を抱えて悩んでいる時だった。
ガチャリ
「誰だ!」
「ひゃ!?」
扉を開けたのはテレジアの妹テレシアだった。
「テレシア? どうしてこんなところに」
「イヴィルお姉ちゃんが居なくなってたからここかなって」
そうか……イヴィルとテレシアは一緒に住んでるんだったな。
「安心しろ直ぐに戻るからテレシアは外で待っててくれ……な?」
「……お姉ちゃんなんのお話してるの?」
「あっ……えっとそうだな、隠れている子を見つけ出す方法を考えてるんだ」
イヴィルの奴随分上手く伝えたな。
「隠れんぼ? ってこと」
まぁ……見つけるの俺たちだけどな。
「ま、まぁ……そんなところだな」
「隠れんぼならいい方法があるよ! 私の幻魔法を使うとみんな見つけられないの! 逆にね幻魔法でみんなのことを驚かすと直ぐに見つかるよ!」
それはかくれんぼ的にやっていい事なのかな?
……ん?
幻魔法……。
「幻魔法か……」
クイックもなにか思い付いたか? ケルロスもなるほどみたいな顔してるし。
「……テレシアは幻魔法のどのレベルが使えるの?」
「私? 私は幻想魔法が使えるよ」
血筋だなぁ……。けどこれで希望が見えてきたな。
「よし! 作戦立案はクイックとエレナに任せる。ケルロスとエリーナは霊人の監視……百鬼大隊は周辺の警戒を行え。フィーは回復後百鬼大隊と共に警戒だ。傀儡大隊は情報封鎖と……そうだな周辺の地理を確認してくれ」
「……はいかしこまりました」
テグが不思議そうな顔をしたけど納得してくれた様子だ。
「それで? 幻魔法を使ってどうするつもりなの〜?」
あっ……エレナはわかってなかったか。
「まぁ作戦としてはな……」
その後俺とエレナとクイックで作戦会議をして解散となった。
「あと2日……それまでに全ての準備が整うかどうか」
いや……そんなに悲観することは無いさ、今はまだみんないる。助けられる……。
「誰も死なせないさ」




