84話 自由奔放
……やってしまった。昨日は勢いで全てぶちまけてしまった。あそこまで言うつもり無かったのに……あぁ今日顔合わせるのが凄い嫌だ。あんなこと思ってたとか重すぎ……いやけど自分なんかとか言うケルロスにも責任はあるし……って1人で言い訳してどうすんだよ。
「まぁ……ケルロスが元気ない理由もわかったし。とりあえず前進したってことで……いいのかな?」
てかそう納得しないと俺の心が軽く死ぬ。ていうかさ……俺ってこんなにめんどくさいやつだったか? まぁあんなに仲良い人は高校生の時居なかったし比べられないけどさ後は妙に涙脆いというか……うぅん蛇って涙脆いのか? それとも性別の変化が関係してるとか?
「謎は深まるばかり……ってやつだな」
「ノーチェ〜ご飯できたよ」
ケルロスの声? いつもはクイックが呼ぶんだけど……これも変化かな。
俺は少しだけ重たい体を布団から無理やり出してトボドホと小さく扉に向かう。
そういえば……昨日作った椅子と机片付けないと。
まぁそんなこと今するのはちょっとめんどくさいのでスルーして階段を降りる。
「あっおはよう」
椅子に座ってるのはクイック……ってことは。
「ケルロスが作ってるの?」
「そう……一応料理全般はできるみたいなんだけど、今までは色々あって作らなかったんだってさ」
ケルロスの料理か少し気になる。クイックの料理は全体的に薄味で家庭的……てか健康思想、普通に嬉しいんだけどちょっとお肉食べたくなる時も……。
「ノーチェおはよう」
おぉ……エプロンケルロス、なかなかに良き。
「ノーチェ?」
「あっ……少しボーっとしてた」
「まだ眠いなら無理しなくていいよ?」
「いや……そういう訳じゃないから平気〜」
心配性だなぁ2人とも。
カチャリカチャリとお皿が置かれていく……なんというかそれすらも心地よい。てかイケメン2人と同棲して朝ごはん勝手に出てくるのは一定の人達からしたらとんでもない羨ま案件なのでは? ……まぁ俺は元男ですし。
「ノーチェの口に合えばいいけど」
おーオムレツだ……しかも隣にはベーコンが3枚。結構ガッツリだね。
「これからは2人でローテーションしながら作ってくからね」
クイックが俺に箸を渡しながら答える。
それだと俺が申し訳ないなぁ……。
「俺もそれやるよ。」
「ノーチェは大丈夫」
「え? 俺も」
「大丈夫!」
クイックが……真剣な顔して俺に頼んでくる。そうか2人で仲良くする時間も欲しいんだな。
ノーチェの料理は正直壊滅的だ……俺が呪いで寝込んでいた時ノーチェの手料理を食べたエリーナはこの世とあの世の間をさまよったと聞いている。ノーチェの料理で死ぬのは悪くないが……今はまだ嫌だ。
「じゃあいただきます」
「「いただきます」」
基本的にいつも3人でご飯は食べているのだが昨日は寝ちゃったり一昨日も忙しかったりと最近はゆっくり食べられてなかったからな……朝ごはんの話だけど。
「てか2人とも昨日はどこに居たんだ?」
「俺はコード商会の人と商業地区で話し合い」
「ケルロスは?」
「観光地区で霊人達を案内してた」
なるほど……。
「てかなんでケルロスが案内? 自動人形に頼めばいくらでも」
「俺もわかんない……でもサクって子が自動人形は嫌らしくて俺を指名してきたんだ」
ケルロスを指名……そういえばケルロスが女の子助けたって報告書に書かれてたっけ……まぁその前からちょっとだけど話してるし……初めて会う自動人形達よりケルロスの方が親しみやすいとか?
「まぁしばらく頼むよ……それに不可視化もケルロスなら見破れるしさ」
また勝手な動きをされると困る……まぁネグから連絡ないし動きはないんだろうけど。
「ノーチェの方こそ何してたの?」
「えっ……あ〜」
どうしよう……敵の巻物持った鳥を撃ち落としちゃいましたなんて言えないよ……。
なんて言おう……温泉入ってました? 何時間入ってるんだよ肌がふやけまくるわ! 商業地区行ってたってクイックがいるしなぁ……観光地区はケルロスがいたって言うし。
「ノーチェ?」
「あっ……えっとあの〜鳥と……遊んでた」
「鳥?」
嘘はついてない! たぶん。
「エレナってこと?」
「いや……野生の鳥?」
「なんで疑問形なんだよ」
2人とも納得いってない感じだなぁこれはどうしよう。
「……まぁいいよ別に」
「そうだな……ノーチェは言わないって決めた事に関しては本当に言わないし」
……いや、バレてる。そしてその思いやりが少し辛い。ごめんなさいただ俺がやらかしてるだけなんです。
結局話はそれで終わりとなって各々自分の仕事へと向かって行った。
「まぁ俺はやることないんですけどね」
つい最近まで忙しかったんだけどこう……暇な日ができるとはなぁ。組織としてまとまりが取れてくると俺が出ていかなくてもあらかた片付くし。
「別に忙しくなりたい訳じゃないけどこうも暇だとなんだかなぁ」
「そうじゃのぉ〜……あんまりにも暇じゃとつまらんよのぉ」
……。
「……」
「……」
俺の隣にはニコニコと微笑む美人な狐さんがおりました。
「色々と質問したいんですけど……」
「ここに来たのは暇だったからじゃ、どうやって来たかは聞くでないぞ……野暮ってやつじゃの」
自由すぎるよリーベさん。
「温泉ですか?」
俺は少し体制を治す。
「ん〜それも後で行くのじゃか。気になる情報が手に入ってのぉ」
気になる情報?
「お主……ルリアの森とコロリアン妖精圏でヘラレスという男のことを探っておったろ」
「……」
どこで漏れた……探すって言ってもアルとルルに直接聞くように命令したはずだ。
「そう警戒するな……ワシはそのヘラレスという男について教えてやろうと思っただけじゃて」
リーベはそういうと俺の布団に腰を下ろした。
「おっ……なかなか良いものじゃな。後でひとつ貰っていこうかえ」
あんまりバフバフされると直した布団がぐちゃぐちゃに……。
「さて……それじゃあヘラレスの事じゃが、あれはゼールリアン聖王国の傀儡国であるシャンデラ国所属、特殊情報部隊の隊長じゃ」
「シャンデラ国?」
「そうかお主知らんのか……人の国と龍の国はそれぞれ傀儡国が何個かあってのぉ」
傀儡国……なんて言うか闇が深いなぁ。
「まぁいちいち国の支配やらをしたいと思うのはそれこそ人と龍くらいじゃ……エルフの王も妖精の王も政治にはあまり関わっておらんかったろ?」
確かに……本格的に関わっている様子はなかったな。ルルは最近結構関わってるけど。
「ドワーフに関しては技術のある者が上にたち教えているだけだし……獣人は強い者が上に立って、それこそ戦争の時くらいしか出てこん。王と言うよりかは英雄に近いかもなぁ。」
いいのか六王……てかこの世界の王たち適当じゃない? 魔王にせよ王にせよ。
「まぁ少し脱線したが……ヘラレスが動いた、そしてそれがお主の国を狙っているのであれば人の国はお主を敵として認識したということじゃろうなぁ」
「えっ……」
「おそらくは……お主が魔王となったことがバレたのじゃろう、何処からバレたのかは分からぬがな」
バレた……バラすとしたら六魔王の誰か、後は近くにいた側近達か。
「……まぁ面白半分でバラした奴はおるかもな」
……あ〜ゼロとかやりそう。
「いずれにせよバレることじゃ、気にするでない。それにお主は人間などより遥かに強い故……安心することじゃな」
リーベはそう言い切ると布団から起き上がり俺の前に立った。
「……ワシが見込んだ女じゃ、人間如きに喰われるでないぞ」
寒気……ガチの目だ。キレた獣の目は何度か見ているが、魔王ともなれば怖いと感じるな。
「それはあんたが俺を喰うからかい?」
それを聞いたリーベの耳がピクリと動く。
「……ふふふ、お主やはり面白いのぉ。安心せいまだ喰らうつもりはない故な……しかし魔王は気まぐれ気に入った相手ならよりいっそ食べてしまいたいと思うのがワシでのぉ」
リーベの手が俺の頬に……。
「そうかい……それじゃあ食われないように気をつけるよ」
「そうすることじゃ……」
手が離れていく。
「よし! それでは温泉じゃ! 何やらここ以外にもあるらしいではないか!」
知ってたか……まぁいいテグに他の自動人形を動かしておもてなしするように頼んどくか。
「道案内は俺の頼れる部下が行うから……それに着いて行ってくれ」
「……別に構わぬが、お主も後で来いよな」
そんな怖い笑顔見せられたら行きたくなくても行くようじゃん。
「わかった……温泉から出たくらいを見計らって行くよ」
「まぁ……それでいいじゃろうて、それではワシは行くでな……そこの人形ワシを案内せい」
「かしこまりました」
テグに気付いてたか……静かに侵入させたはずなんだが、さすがは魔王って所だな。
リーベとテグはそのまま扉の外へと消えていった。
「は〜疲れた……あの掴みどころのなさときたらほんとにもぉ。しかし俺が一緒に行かないって言った時しっぽが逆立ってた……あれは怒ってたよなぁ」
獣人であるのが幸いだ……これでしっぽと耳がなければまじでわかんねぇ。
「気に入られること自体は悪いことじゃないんだろうけど、格上の相手はちょっと大変……」
その後もリーベのことを考えていたが特段どうにもできないとの結論に至り仕方なくリーベのいる温泉旅館へと向かって行った。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
深淵蟒蛇Lv3
所持アイテム星紅刀
《耐性》
痛覚耐性Lv5、物理攻撃耐性Lv9、精神異常無効Lv7、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8
《スキル》
支配者、知り尽くす者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv8、水斬魔法Lv8、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、回復魔法Lv10、破壊魔法Lv8、幻影魔法Lv9、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《???》
強欲、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
ケルロス・ミルキーウェイ
赫々白狼Lv3
《耐性》
痛覚無効Lv5、状態異常耐性Lv9、物理攻撃無効Lv2、魔法攻撃無効Lv8
《スキル》
信頼する者、不達領域、完全反転
《魔法》
風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv8、創造魔法Lv6、光魔法Lv10、神聖魔法Lv7
《???》
嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥紅土竜Lv3
《耐性》
物理攻撃無効Lv1、精神異常耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv1
《スキル》
吸収Lv2、放出Lv2
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv1、風斬魔法Lv8、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv7
《???》
喰らい尽くす者Lv5