表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
六魔王編
75/261

74話 再び輝く光

殺気の中に生まれた一欠片の理性……しかしそれは俺をを悩ませるには充分な内容だった。


クイックが暴走する……そうすればどうなる? 誰がクイックを止める……。

そこにクロンが追い打ちをかける。


「あの男に掛けた呪いは解呪不可だ……あれは俺の掛けた呪いじゃない。この鎌の能力だ……だから俺も解き方は知らない。ただ……魔力を吸い取りじわじわ殺していくのと鎌の所持者が死ぬと吸い取った魔力を暴走させることができる。そうなれば……ははは! まぁ行き着く先は同じ死だな!」


この男……!


「俺を殺して残骸となった国で仲間と戦うか、ここで俺を見逃しその仲間を看取るか! 選ぶことだな!」


刀が震える……。

ここまで! ここまで来て! ここまで全てを費やして! なんで! ……くっそクイックを助けられないなんて……そんなこと俺が認めるわけ……が。


「わかったか! なら俺を」

「黙れ!」


どうすればいい。こいつを逃がすのは愚策だ。また何かをやらかすかもしれない。それにここまで頑張ってくれた仲間に申し訳がたたない。しかしこいつを殺せばクイックが。

この鎌を破壊するのは……。


俺は短い時間に様々な手段を考えるが……行き着く結論はひとつだった。

クイックを殺して……その後にこいつを。クロンを研究部屋(マイワールド)で分解して反撃できない状況にして転移を……。


「ほら! 早く決めろ! どうするんだ! ノーチェ・ミルキーウェイ!」


うるさい! うるさい! うるさい! 俺がクイックを殺す!? そんなこと! そんなこと!

進化もして……新しいスキルを覚えて……なのに何も出来ない……仲間ひとり!救えないじゃないか!


自分の不甲斐なさ、弱さ、大切なものを守れない悲しみ。それ以外の原因も沢山あったと思う……もう俺のメンタルは限界を迎えようとしていた。


そして俺は一筋だが……涙を流してしまった。

敵の前で泣くなんて……情けないこんな所……クイックに見られたら。


「泣いてんじゃねぇよ……全く戦闘中だろ!」


こんな……風に。


「えっ……」


俺は消え入りそうな声で驚き後ろを振り向く。


「クイック……あっ……」


そこには「よう!」と手を挙げて元気に佇むクイックと……


「……ノーチェ。待たせた」


白い髪を……雪みたいに綺麗で……美しい髪を輝かせながらクイックの横に立つ。


「あっ……あぁ…….は、あぁ」


言葉にならない何かが口から出てくる。自分でも何が言いたいのか分からない。どうしていいのか分からない。だけど俺は言うよ……俺が考えた、名付けた名前だから。


「ケル……ロス」

「悪かった……もう大丈夫だ」


ケルロスの声は温かくて……本当にいつも……いつも。俺を安心させてくれる。



「何故だ! 何故お前がここに! 呪いは完璧に掛かって居ただろ!」

「……俺のスキルさ完全反転(フルフリップ)は全てをひっくり返す……お前の呪いは反転したのさ」


完全反転(フルフリップ)……ケルロスがそんなすごい技を。


「ふざけるな! そんなデタラメな技が!」


クロンがそこまで言うと空気が変わる……圧のある重たい空気。


「ふざけるな? ……それは俺のセリフだ。大切な友達を傷付けて……俺の主に涙を流させて……てめぇ、生きて帰れると思うなよ」


……だんだん落ち着いてきた……ふぅ……よし。


「あっ……ノーチェ! 今動いたら。」


俺はケルロスの言葉を無視して歩く。

ケルロスとクイックのいる方向へ……少し小走りで。

ケルロスは何かを察したのか優しく微笑んでくれた。


「ケルロス……」

「ノーチェ……」


俺はケルロスを抱きしめて……スっと後ろに回り込んだ。


「あれ……ノーチェ?」

「ケルロス……本当にてめぇこの野郎!」


バゴン!


感動の再会……そんな優しい空気は俺のジャーマンスープレックスによってぶち壊された。



「おいこら……何勝手に居なくなってんだよ……」

「えっ……あっごめんなさい」

「居なくなる時くらいよ……おい……一言掛けろや」

「大体さ……今頃? 出てきて? ふざけんなはこっちのセリフなんだよ」


俺の怒りにシュンとなるケルロス……先程までの勢いは何処へいったのか。今のケルロスはご主人様に怒られて悲しい思いをしている犬そのものだった。

しかし……怒っている俺も……もう。


「本当に……まじで……なんで今頃……もっと早く。」


握っている拳は力が入っていて……目元も見えないように隠しているが、俺は、俺は。


「ごめん。もう居なくならない。約束する……これからは絶対にノーチェから離れない」


ケルロスの真っ直ぐとした言葉が俺に突き刺さる。こぼれそうになっている涙を必死で堪えて俺は言う。


「当たり前だ……次居なくなったらこんなんじゃ済まさないからな」


精一杯の強がり、けどきっと2人になら気付かれてるんだろうなぁ。



「さて……2人共、感動の再会はそのくらいにしといてくれ……あれが逃げる」

「冗談きついぜクイック」

「ほんとだよ……俺が逃がすわけないだろ」


さっきからしっかり位置は把握してる。これだけのことをしたんだ。……たっぷりと借りは返さないとなぁ。


「行くよ!」


俺がそう言うとケルロスとクイックが左右に散らばる。

それを見たクロンは俺に向かって攻撃をする。しかし俺はその攻撃を避けずに突っ込んでいく。


「くたばれ! 呪怨百殺華!」

「吸収!」


信じてたよクイック!

吸収を使ったクイックに目を合わせる。クイックは察してくれたのか次の攻撃に移った……もちろん俺も同時に


「溶岩舞」

「深淵喰い」


溶岩の攻撃を避けようとして足元がお留守だ。


「なっ!?」


深淵食いはあくまで固定……本命は。


「ケルロス!」


白く美しい髪をなびかせて大きくなったケルロスが高く飛ぶ。


「瞬刃!」

「そんな攻撃!」


もちろんお前が弾こうとすることは計算済みだ!


「放出! さっきのお返しだ!」


クロンの放った攻撃が威力をまして返却される。

呪いの効果の恐ろしさを知っているクロンはクイックの攻撃を防ぐ。そうすればどうなるか……。


「ぐばぁっは!」


ケルロスの斬撃を舐めるからそういう事になる。


「最強トリオ復活だ!」


心地よい……全てが伝わるこの感覚。二度と叶うことはないと思ったこの感覚。


「お前……達……ごんなごどをじで! ただでずむど!」


目障りなのがまだ生きてたか。


「タダで済まないのはお前だ……俺達を俺達の国を敵に回しておいて生きていられると思うなよ!」


俺の刀がクロンの首を切断するため線を描く。


ガシャン!


「!?」


なんだ……今の感覚それに煙? 何が起こった。


「いやぁ……まさかここまでとは思わなかったよ」


聞き覚えのある声……この声は。


「お前……は」

「やぁ……獣王国以来だね」


あの時の人外!


「何しにきやがった!」

「あっぶな!」


避けられたか。


「ケルロス! クイック!」

「「わかった!」」

「まっ! ちょ! ストップ! 今回は別件だから!」

「それな言葉信じられるか! お前が掴んだ首痛かったんだからな!」


それにこいつの得体の知れない感じ……嫌な感じがまだ残っている。


「あの蛇ちゃんがここまで強くなるとは俺も思わなくてさ今回の戦いで見極めようと思ったんだけど……まぁ勝ったからおめでとうね」


人外は手を叩き俺を祝福する。……けど全く嬉しくない!


「ゼロ! お前いい所に来た! 今すぐこいつらを!」

「あぁ……クロン、君はもう要らないよ」


にっこりとした様子で人外が答える。

クロンは人外の言った言葉が理解できないのか間抜けな面を晒している。


「いやさっき話し合いで決まったんだ。これで負けるようならもういいかなって」

「な、何を」

「導く者は正式にノーチェ・ミルキーウェイの物となった。そのため……君はもう用済みだ」


そう言って人外は手を高く挙げる。


「待て! まだ俺はやれる! 今この女を!」

「うんうん……そういうのはあの世でやりな」


人外の手はそのままクロンの体を半分に切り裂いた。


「……元々仲間じゃなかったのか?」

「仲間? あぁ……まぁそんなもんかな」

「それにしては……簡単に殺すんだな」


それを聞いた人外は不思議そうな顔をする。


「まぁ……決まりは決まりだからね」


人外はニヤニヤとした嫌な笑顔をしたまま俺に近寄ってくる。

な、なんだ……どうしてこっちに? いやけど引くのは負けた気がする。

俺は1歩も引かずその場で立ち続ける、そして人外との距離が手を伸ばせば触れるくらいになった時。


「ノーチェ・ミルキーウェイ……君は導く者の正式な後継者となった。これより1週間後にゼクス・ハーレスを開く……まぁ言ってもわかんないよね端的に言えば六魔王による話し合いだ」


……ゼクス・ハーレス、魔王集会みたいな? 行きたくねぇなぁ。


「それって拒否権」

「来なくてもいいけど魔王5人と戦う覚悟はあるかい?」


……。


「行きます」


この人外覚えとけよ! いつか切り刻んでやる!


「あと! 俺は人外って名前じゃない。エルル・ゼロ……裁く者、エルル・ゼロだ。覚えておいてくれ」


エルルはそう言って謎の空間に入って消えていった。

裁く者……。


「……はぁ」


もう……疲れた。


「ノーチェ……大丈夫か?」


ケルロスが心配そうに声をかけてくれる。

2人ともエルルが少しでも変な行動をしたら攻撃できるように神経尖らせてたからなぁ……大変だったろうに。


「大丈夫だよ」


外から歓声が聞こえる。多分制圧が完了したんだろう。


「……みんなの所に行こうか」



あの後俺は魔力不足で転移が出来なかったので馬や乗り物を使いながら国に戻った。国にはアル達がいて俺達が帰ってきたことを聞くと泣いて喜んでくれた。

一旦みんなを解散させて詳しい話は後日するとだけ伝えた。ケルロスのこと……そしてクイックのこと。これから何が起きて俺がどうなっていくのか。話したいことは沢山あるけど……今は。



「……ケルロス! クイック!」


家に入った瞬間2人に声をかける。

2人とも少し驚いた様子で後ろを振り向いた。


「おかえり!」


これくらいは許されるだろう。だって2人は俺にいっぱい心配掛けたんだから。ここにいるってことを実感したから……。抱きしめるくらい許してくれよな。

あぁ……2人の体温が心地良い……温かくて幸せだ。


現在のステータス

ノーチェ・ミルキーウェイ

深淵蟒蛇Lv1

所持アイテム星紅刀

《耐性》

痛覚耐性Lv5、物理攻撃耐性Lv9、精神異常無効Lv7、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8

《スキル》

支配者、知り尽くす者、諦める者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド)極限漲溢(ルプトゥラ)魔法無効(アンチエリア)

《魔法》

火炎魔法Lv8、水斬魔法Lv8、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、回復魔法Lv10、破壊魔法Lv8、幻影魔法Lv9、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10

《???》

強欲、傲慢

《資格》

導く者

《称号》

神に出会った者/神を救った者


ケルロス・ミルキーウェイ

赫々白狼Lv1

《耐性》

痛覚無効Lv5、状態異常耐性Lv9、物理攻撃無効Lv2、魔法攻撃無効Lv8

《スキル》

信頼する者、不達領域(リーチキャンセル)完全反転(フルフリップ)

《魔法》

風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv8、創造魔法Lv6、光魔法Lv10、神聖魔法Lv7

《???》

嫉妬


クイック・ミルキーウェイ

冥紅土竜Lv1

《耐性》

物理攻撃無効Lv1、精神異常耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv1

《スキル》

吸収Lv1、放出Lv1

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv1、風斬魔法Lv8、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv7

《???》

喰らい尽くす者Lv1

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ