71話 反撃準備
俺はあの後コロリアン妖精圏で待機していたイヴィルとバールを転移して国に戻った。テレジアが死んだことを2人とも嘆いていたがこれから国の建て直しと敵への対処の話し合いをすると伝えると直ぐに涙を拭いて会議室へと歩いていった。2人とも俺よりも全然立派だ。
そして……クロンがこの国に攻撃を仕掛けた理由は恐らく俺が導く者だからだろう。そしてこのことはみんなに使えなければならない大切なことだ。
「……恐らくだが今回の攻撃……俺のせいだ」
それを聞いたみんながザワザワと騒ぎ出す。
「そんな……誰もノーチェのせいなんて」
エレナの優しさはとても嬉しいが……今回ばかりは本当に。
「いや……本当に俺のせいなんだ。みんなには伝えてなかったが俺には資格……導く者というステータスがある。これは、魔王になる資格なんだ。クロンがこの国を攻撃したのは俺がクロンの座を奪うと考えて……。だからみんなは何も悪くないから……」
軽蔑……されるだろうか、こんな大切なことを伝えずに黙って、挙句の果てにこの結果。正直みんなに1発ぶん殴られても俺は。
バチンッ!
会議室に炸裂音が響く。
やっぱり……叩かれたか当たり前だこんな……。
「そんなことで全部自分のせい? ふざけないで! ノーチェが国にいない間に守ることが出来なかった私たちは悪くないって!?」
エリーナが泣きながら怒鳴る。
「むしろ責めなさいよ! なんで守れないんだ! どうしてこんなことになってるんだって! 全部自分が悪い事にしていっつも抱え込んで! これじゃあクイックが報われないじゃない!」
エリーナの怒りはとどまらず俺の胸ぐらを掴んだ。
エレナとイヴィルが止めに入ろうとするが俺はその2人を手で静止した。
「クイックが居たらこんな時! 俺達のせいだって謝るに決まってる! ノーチェが居たら全部救えたの!? 導く者だってみんなが知ってたらこんなことにならなかったの!? 誰もノーチェのせいなんて思ってない! だから……全部自分が悪いなんて……そんな悲しいこと言わないでよ」
そうか……みんないや違う。俺は。
「そうだな、悪かった。俺だけのせいなんて言い方してこれじゃあ逃げてるのと同じだよな」
全て俺のせいと言ってしまえば俺は楽だ……けどその言葉を受けたエレナやエリーナはどう考える……国を守れなかった不甲斐ない自分たちはなんにも悪くないなんてそんなこと。
「ふぅ……エレナ達よく俺がいない間にここまで持ちこたえた。しかし産業地区と観光地区の被害は甚大だ。まずは比較的安全な商業地区から自動人形を借りて街の整備を行う。産業地区はエレナをリーダーに観光地区はエーゼルをリーダーに動く。バールとエリーナはまだ息のある者の救助を最優先ネグとその部下を連れて行け。俺とフィーは軍の再構築を行う。全員持ち場に急げ!」
「「「「「了解!」」」」」
さて……。
「フィー俺たちは今から」
「ノーチェ……」
フィーの声は暗くしっぽは垂れている。恐らくクイックの件で相当来ているのだろう。
「ごめんなさい……私なんかを庇ったからクイックが」
俺はその言葉を聞いてそっとフィーを抱きしめる。
「フィーなんか? そんな言葉俺もクイックも聞きたくないよ。大丈夫……クイックは必ず助ける。そのためにフィーをここに残したんだから」
「私……を?」
「あぁ……まずクイックが居ない今全体の指揮はフィーに取ってもらう」
それを聞いたフィーは驚いた顔をする。
「なんで!? ここはエレナが」
「フィーは戦闘スキルや戦場を見極める力に長けている。エレナは偵察向きだから指揮官ポジションは向かない」
「けど……」
「それに……君のスキル進む者。それの能力は自分でもわかってるよね」
フィーが俺の目を真っ直ぐと見る。
「進む者のスキル。自分の指揮下にいる者の能力を大幅に向上し数が多ければ多いほど自分の力に換算される」
何故こんな便利スキルを持つフィーを指揮官にしなかったのか……それはフィーの戦闘狂気味なところが影響している。戦闘中もしものことがあった際力が何十倍にも増したフィーを抑えられるか不安だったからだ。
「けど……私のスキルは……暴走したら」
そしてもうひとつのデメリット……進む者は様々な者の意志を力として換算するため時折思考が入り交じり暴走する時があるのだ。
「フィー……君はとっても強い子だ。それは俺とクイックが約束する。そして……このタイミングで君を指揮官にしたのはただクイックが居なくなったのが理由じゃない」
「クイックが敵に倒された時フィーはどうしたの?」
エレナの話が正しいならもうこの子は指揮官の器を持っている。
「クイックを倒す敵ならここにそいつを倒せる奴はいない。最大限足止めをしてみんなを逃がした」
やはり……クロンがいなくなった理由は少し不明だがフィーの冷静な判断により居住区の被害はここまで抑えられた。
「うん……やっぱりフィーしかいないよ。君に指揮官を任せたいんだ」
俺の熱意が伝わったのかフィーは首を縦に振ってくれた。
俺はあの後フィーを指揮官として部隊の再編成を行った。大きな変化としては黒森人大隊の隊長をエリーナに百鬼大隊の隊長をエーゼルに変更したくらいだ。
そして現在に至るのだが。
「そのようなことが……分かりましたルリアの森全兵力を使ってクロンの国を滅ぼして」
「あっいやそういうことじゃないんだ」
俺はアルに留守の間国を少し守ってくれないか頼みに来たんだけど……なんか一緒に戦いに来る気満々なんですけど。
仕方ないここは。
「これはアル……君にしか頼めないんだ。俺の留守中の国を守ってくれないだろうか?」
俺はアルの手を握ってわざとらしいセリフを吐く。
しかし効果はてきめん。アルは上機嫌に申し出を受諾してくれた。
ちなみに自国からスパイが出たことを申し訳ないと思ったのかコロリアン妖精圏からも物資の提供などがされた。
フィデース信栄帝国攻撃から3日後。
「国はある程度の建て直しに成功。現在は産業地区の復興を最優先に行っています。さらにドワーフ達の協力により自動人形を2000まで作成。壊れていたホョル、ドロブの修復も完了しました」
エレナがそう言うと今度はエーゼルが立ち上がった。
「観光地区の方もゆっくりと復興しています。観光に来ていた方達の被害はほとんどなく温泉旅館などに設置していた地下施設が役に立ったかと」
そうか……念には念をとは言うが良かったな。
「街の住人の遺体の移動は全て完了。負傷者の手当も順調に行われているわ。そして死者数は3000人攻撃される前の人口が2万人だから今は1万7000人ほどが生き残っているわね」
エリーナの説明も終わり全員が席に着いた。
「今回の件を受けて……兵士志願者が殺到した。今まで無益な争いはするべきではないと最低限の兵力で済ませてきたが今回から部隊を全て作り直した」
俺はフィーに指示して書類を広げさせた。
「まず最高指揮官にフィー・サレリアルを任命。その下に黒森人大隊1500人、黒翼大隊300人、百鬼大隊200人、傀儡大隊3000人を付ける。なおフィーが持っていた牙獣大隊はフィー直属の部隊として1000人の獣人を派遣した。大隊長はそれぞれ黒森人大隊にエリーナ。黒翼大隊にエレナ。百鬼大隊にエーゼル。傀儡大隊にテグを配置する。そして全ての部隊を合わせてプリオル連隊と呼称する!」
今まで作ろうとも思わなかった大軍団総勢6000人。
この兵力を持ってクロンの国を……廃墟にしてやる。待ってろよな。
ローチェス深淵国
「クロン様、奴ら来ますかね?」
「ははは! なんのために被害を最小限にしてやったと思っている! これで来なければ俺は残りを殺しに行くぞ」
俺以外の導く者の存在を知った時は焦ったが……話を聞けばただの少女。まぁそいつの国を適当に壊して来たが……兵力も少なく微妙だった。あ〜けどあの黒いのは結構頑張ってたな。俺の呪いで1発だったけど。
「はぁ〜暇つぶしにもならなかったなぁ」
「それはそうでしょうあのようなくだらない国、クロン様からすればただの遊び場です」
まぁそうだな……一応導く者に選ばれるってことは素質はあるんだろうな。あっいいことを思いついたぞ、その女の四肢を切り取って俺の嫁とするか……最近は同族を食うのも飽きてきたしな。
クロン・ラントエール
ローチェス深淵国の王であり、六魔王導く者の資格を持つ……元妖精である。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv8
所持アイテム星紅刀
《耐性》
痛覚耐性Lv3、物理攻撃耐性Lv7、精神異常無効Lv7、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv7、
《スキル》
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv7、絶無Lv7
《魔法》
火炎魔法Lv8、水斬魔法Lv6、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、回復魔法Lv8、破壊魔法Lv8、幻影魔法Lv9、闇魔法Lv8、深淵魔法Lv10
《???》
謀る者Lv9、強欲
《資格》
導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
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赤岩土竜Lv9
《耐性》
物理攻撃耐性Lv8、精神異常耐性Lv9
《スキル》
斬撃Lv8、体術Lv8、回避Lv8、神速Lv5、限界突破Lv1、集中Lv7、探索Lv8、隠密Lv8、追跡Lv5、空間把握Lv8、地面操作Lv8
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv1、風斬魔法Lv8、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv7
《???》
食す者Lv5