67話 妖精からのお誘い
なぁ……ケルロス。俺は強くなれたかな?
俺はみんなを守れてるかな?
ケルロスに心配掛けないように頑張れてるかな?
もう……一緒に居ても大変じゃないかな?
居なくならないで……俺を……俺を。
ケルロス……なんで俺を置いて居なくなっちゃったんだよ。
「はっ! はぁ……はぁ……はぁ……」
最近よく夢を見る……ケルロスがいた頃の夢、そして居なくなる時の夢。この夢が一体何を伝えたいのかなんてわからないけど。
「ケルロス……」
夢を見終わったあとの喪失感だけは……何度味わっても地獄のようだった。
「ノーチェさん!」
元気に俺の名前を呼ぶのはテレジアだ。今日は妹を連れて来るとか言ってたからな少し舞い上がってるんだろう。
「おーい連れてきたぞ」
そんな声が聞こえるとノックをせずにイヴィルが入ってきた。
「こらイヴィル。しっかりとノックしなさいな」
「あっわりぃ。」
イヴィルもルリアの森での戦闘により進化して怪鬼から天鬼に変化した。黒かった髪は赤く染まり目の色が少し黄色っぽくなった。
ちなみにここにはいないがバールも進化して夜鳥鬼となった。
「お姉ちゃん!」
「テレシア!」
あれがテレジアの妹のテレシアか魔獣から助け出した時は血まみれでよく見えなかったけど青い髪に少しだけ黄色が混じってるのか。あとはお姉さんに似て美人だ。
「こちらが私たちを助けてくださったノーチェ・ミルキーウェイさんよ」
テレジアが俺の事を紹介するとテレシアはじっと俺の目を見つめた。
「えっ……とノーチェ・ミルキーウェイです。よろしくね」
「うん! 助けてくれてありがとう! ノーチェ!」
「あっこら! ちゃんとさんをつけなさい」
「いいよ、気にしないさ」
可愛いなぁ何歳なんだろうか。
「元気になってよかったねぇ〜そうだ!エレナの服屋さんでお洋服買ってきなよ。ほらこれお金」
「あっ! ダメですよノーチェさん」
えぇ〜妹できたみたいで甘やかしたいのにぃ。
「まぁテレジア、大将がいいって言うんだから貰っとこうぜ」
「うーん……まぁそういうことなら」
テレジアは若干納得してない様子だが少し強引にお金を渡して妹と買い物に行ってもらった。
「さて大将……妹との顔合わせもいいが本題はこっちだ」
イヴィルが腰につけている袋の中から1枚の紙を取り出した。
「いつかは来ると思ったが……」
ルリアの森の1件で俺達の国は表舞台に立つこととなった。それに伴い各国は俺達の国を鋭い目で観察している。
そういうことだから……もしかしたら会談とかあるかなぁって予想はしてたが。
「最初の..まさか最初の連絡がコロリアン妖精圏から来るとは思わなかった」
コロリアン妖精圏……エレナの話から関わることは無いと思っていたが。
「まぁ……こうやって正式な書状を持ってこられちゃ会わない訳にはいかねぇよなぁ」
イヴィルの言う通りで今回は妖精圏の方からこちらを招待してくれている。これを蹴るのがどういうことを意味するのか……さすがの俺でもわかる。
「妖精圏かぁ……どんな感じなのかアルにでも聞いてみるか」
ルリアの森
「急に悪いなどうしても聞きたいことがあって」
俺は転移でルリアの森に飛びアルから妖精圏について詳しい話を聞くことになった。
「妖精圏はルル・メリルという王が支配しています。少し前までは国に無干渉だったのですがつい最近大規模な改革を行い妖精達を2万人殺したとされています。その後はルルが国の統治を行い昔とはだいぶ変わったと聞きますがどんな風になっているのかは不明です。あと妖精圏の特徴はどこの国とも関わりを持たないという点です。しかし正式な書状が来たということはルルの政治で何かが決まったということでしょうね」
ふむ……まぁ要約するとルルが妖精殺して国を改革、どこの国とも関わらない方針が変更された……ってことか。
「なるほどありがとう。ちなみにルリアの森に連絡は来たの?」
「いえ、こちらには来ていません。他の国でもそんな情報はありませんのでノーチェ様の国だけだと思われます」
「そのノーチェ様って辞めない?」
「嫌です」
……はぁまぁいいやそれにしても他の国には連絡してない? なのになんで俺の国に……こう言ったらなんだが人の国やドワーフの国の方が大きいし何より面子とかあるだろ。六王の統治している国が変化して外交を始めようとしているならまず辺境の国である俺に声をかけるんじゃなく同じ六王に声をかけるべきだ。
「……わかったありがとう。俺はこの辺で帰るよ」
アルは一瞬悲しそうな顔をしたがすぐに顔を上げて微笑んだ。
強くなったな。さすが六王の1人。
「ふぅ……まぁ招待されたもんは仕方ないよなぁ。……もしかして俺の事招待して暗殺狙ってるとか?」
「ははははそれは無いか」
もし暗殺を狙ってるならわざわざ招待なんてしないはずだ、招待中に暗殺なんてすればさすがに他の国から何か言われるだろうし。
ガチャ
「うおっ! 大将いつの間に帰ってきてたんだよ」
「あぁついさっきさ」
「まぁいいや、それで? 結局どうすんだ?」
イヴィルが招待状を指しながら聞いてくる。
「そうだね……行ってみようか」
それを聞いたイヴィルは嬉しそうに尋ねた。
「てことは護衛がいるよな! 私が着いてくぜ!」
刀を触りながら興奮状態のイヴィル。
まぁ……護衛はいるけど、あ〜そうかエレナは連れて行けないよなぁ。エリーナは最近ルリアの森との外交で忙しいしテグは……なんかエルフの子供が増えたから学校作ったんだけどそこの教師やってるし。
クイックを連れていく訳にも……。
「そうだね、それじゃあ今回はイヴィルとバールに任せようかな」
「やったぁ! ……ん?バールも?」
イヴィルが不思議そうな顔をしている。
「いや……まだエーゼルとかなら分かるけどなんでバール?」
「バールは警戒心強いからな……何かあれば直ぐに気付いてくれる」
あとは隠密にも長けてるバールを連れていけばもしもの時に対応出来る。
「まぁバールにも声を掛けといてくれ俺はコロリアン妖精圏に行くと伝える書状書くから」
「承知しました」
「おぉ……バール天井から出てくるのはやめような」
びっくりしたぁ……忍者かよ全く。てかいつの間に天井にスペース作ったの?
「主殿の身を……守るのが……このバールの……使命です」
「いや……大将は女だからな、お前のやってる事覗きと大差ないぞ」
イヴィルの言葉を聞いたバールが衝撃を受ける。
「はっ……! 私は……主殿のことを覗いて。この度は……誠に……申し訳ございませんでした……この命……で謝罪を」
そういうとバールは短刀を腹に付けるまぁ要するに切腹だ。
「いやいやいや! 大丈夫! 次やらなければいいから!」
「主殿……」
「まぁバールはむっつりだったわけだ」
イヴィルが面白そうに茶化す。
バールは短刀を強く押し込む
イヴィル!!! 余計なこと言わないの!
「大丈夫だって! 気にしてないから! ほら落ち着いて!」
「お見苦しい……所を」
いや……本当に……疲れた。
「うんうん、まぁとりあえず2人ともまたなにか用があれば呼ぶからよろしくね」
「了解〜」
「かしこまりました」
イヴィルはそのまま扉を開けてバールは窓から出ていった。
「はぁ〜……あの二人連れてくのはちょっと疲れるかもな」
俺は少し苦笑いをしながら呟いた。