66話 落ちる都市
俺の名前は板先 廻普通の高校生だった。
ある日虐められているトカゲを助けた時に謎の光に包まれていつの間にかこの異世界に転移していた。
初めは喜んだが俺は人ではなく龍として転生をしていたのだ。
最初に卵の中に入れられていたのは驚いたと今でも覚えている。
何とか卵から脱出したが目の前には巨大な龍が何匹もいた、いやぁあの時は本当に肝が冷えたよ。俺はここで死ぬんだなと思ったからね。
しかしその龍たちは俺に餌を与え育ててくれた。まぁ餌と言っても生肉だから頑張って覚えた火炎魔法で焼いて食べたけどね。
割とフランクな人物だ……てか龍に転生とかいいなぁかっこよくて。
そして時は過ぎて5年、龍の成長速度はとても早くて5年も経てば大人の龍と大きさは変わらなくなる。それに加えて俺は他の龍より進化が早く5歳にして5段階ほど進化を終えていた。
俺は当時龍の王であったデンに呼び出され王城に向かった。
デンは俺に王座を譲ると言ってきた。こんな若い龍が王座を譲られるなど前代未聞だった。周りの龍はもちろん反対したがデンの意思は固く次の龍の王は俺が選ばれた。
その時だった俺のステータスに新しい何かが表示されたのは-----これは一体なんだろうか……しかしこれからこの国をしっかりと導いていくために全力で………。
資格の事だろうか? 王ってことは六王の資格か。
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俺は………た。…………………管理……………者………裁………導………い。
……………。
……………。
ダメだ……本が破かれててわからない。
せめてこの歴史は伝えなければならない。きっと次の導く者が現れる。その時に世界がどうなっているか俺にはわからないがこれだけ……は。
「反逆の六人に……気をつけろ……か」
反逆の六人? それが魔王と言うことか? しかしこの導く者というワード……こいつは俺の前に居た導く者?それじゃああの龍の死体は。
「他の本も読んでみるか」
……この題名は。勇者冒険譚……この世界には勇者と呼ばれる存在がいるのか?
まぁ魔王が居るから勇者も居るとは思ったけど。
とりあえずこの本を。
「ノーチェ!」
「うわぁっ!?」
「なんだクイックか……どうしたの?」
部屋の入口には息を途切れさせながら慌てた様子のクイックが居た。
「それがこの国? よくわかんないけどだんだん高度が下がってるんだ!」
「えぇ!?」
俺達は外に出てエレナと合流して詳しい話を聞いた。
「そうね……今はゆっくりだけど確実に高度が下がってるわ。このままだと朝にはフィデース帝国にドカーンッね」
呑気に言ってるけど笑えないよ!
「止める方法は!?」
「さぁ〜検討もつかないわ」
……。
「なんでもいい! 浮いてるのには理由があるはずだ! 探して!」
俺達3人は街や城の中を探索しまくった。しかしこの城が浮いている理由は全く分からず時間だけが過ぎていった。
「やばいやばいやばい。このままだと本当にやばい」
「これが直撃したら笑えないな」
「どうしましょう」
俺はものすごく慌てたいたんだろう……ポケットの中身が落ちても気付かないほど。
「……ピピ! マスターキーを認証。門を開放します」
そんな声が聞こえると俺達は3人の足場が無くなり下に向かって落ちていった。
「ひゅ!?」
「うぉ!?」
「ひゃ!?」
長い滑り台のようなものを下り俺達はとても大きな空間に体を投げ出された。
「はぁ〜……雑な置き方だなぁ」
「ちゃんと受け身取らないと」
「そうよぉ〜」
なんで二人共そんなに高スペックなんだよ!
周りは白い何かで囲まれておりその中心には大きな機械が動いていた。
「これは……」
なんでこんなところに機械があるんだ。しかもこれはエンジンみたいな気が。
「なんだこれ?」
「壊す?」
「やめてね!」
そうか……こんなもの2人は見たことないか。てことはこの街は機械で浮いてたのか。
全く……ここに来てから謎ばっかりだ。一体どうなってんだか。
「はぁ……いや関係ないか俺は俺のやることをやるだけだ」
もしこれが機械なら高度が下がっている理由があるはずだ。
……。
「ピー……自動生成用の機械が壊されました。魔力充電をしてください」
ん〜……。
「そこ2人……なんか壊した?」
「え? 俺はなんにも」
あの様子クイックは本当に何もしてないようだな。
「……」
エレナは大粒の汗をかき目を露骨に逸らしている。
「お前か……」
「いやなんか気味悪かったから、えい! って」
そのえい! で国が滅びろうなんだけど。
「何か方法はないのか……」
「これは?」
クイックが指した先には絶対に押しちゃダメそうなドクロマーク付の赤いボタンがあった。
「いやこれ絶対押しちゃダメなやつだよ」
「えぇ〜けどこういうのって自爆ボタンよね……ならもう押しちゃって壊すのが手っ取り早いんじゃないの〜?」
俺達もここでお陀仏の可能性あるのわかってるのかなぁ。
とりあえず魔力を充電すれば高度は上がるだろうけどそれが切れたら落ちてくるだろうしなぁ。
「やったことないけどやるかぁ」
「何か策があるのか?」
「ん……ん〜一応ね」
俺はそう言って2人をこの浮島? から逃がした。クイックは抵抗したが必ず戻ると伝えなんとか納得してもらった。
「さて……上手くいくかなぁ」
俺の研究部屋は一応無機物にも使える。けどこのサイズ感は初めてだ。魔力消費も半端ないだろうが……。
「やってみるしかないよな。研究部屋!!」
とりあえず俺の空間に入れることは成功した。けどここからどうするか、サイズを小さくするのには結構魔力使うし。あの本読んでみたかったんだけどなぁ。
仕方ない。壊すか。
「ぐぅぅ……さすがにこれは疲れるなぁ」
ゆっくりではあるけど確実に壊せてる。このままならなんとか。
その後俺はギリギリではあったもののなんとか全てを壊しきりフィデース帝国の危機を救ったのであった。
「やば……この感じ、魔力が」
あ〜……これは久しぶりだなぁ。ケルロスの毒分解した時以来か。エレナ気付くかなぁ。もし気付かれなかったら……ははは。
そのまま俺の意識は消えていった。
「エレナ! あそこ!」
「なんで分かるのかしら!」
「いいからはやく!」
全く! ノーチェは無茶ばっかりするんだから!
俺とエレナは離れるように命令されたが不安だったのですぐ近くで様子を見ていたのだ。それの考えは当たり魔力切れにより意識を失ってしまったノーチェをなんとか助けることに成功した。
「キャッチした!?」
「ああ!」
エレナはほっとした様子だ。
まぁ俺もほっとしたけどさ……全くこんな幸せそうな顔して寝ちゃってさ。どんだけ心配したと思ってるの。
「良かったよ本当に」
それにしても……本を読んでいた時のノーチェの顔。
なんだかとっても悲しそうだったな。何を読んだのかはわからないけど……いや、そんなの関係ないさ俺はノーチェに悲しい顔をさせないって決めたんだから。
その後3人は日が少し登った頃に街へと帰りそれぞれの家に帰っていった。
ノーチェは2人に無理やり連れていかれたことを根に持っており1週間口をきかなかった。