65話 死んだ都市
ルリアの森の革命も成功してさらに同盟を結ぶことも出来た。これで食料問題も解決。これからフィデース信栄帝国はさらに発展していくだろう。
「いやだぁぁぁぁぁぁぁ!」
クイックがノーチェのことを引っ張っているのだがノーチェは自分の椅子に張り付いて一向に離れる気配がない。
「いいから! 駄々こねないの!」
「絶対! 絶対の絶対の絶対に! 行かないぃぃぃぃぃぃ!」
「今回は一体何でこんなことになってるんだ?」
「イヴィルか、いや実はな」
数日前。
「謎の飛行物体?」
「えぇ私の部下が見つけたのよ。近付いても特段危害を加える様子はないんだけどこの辺りをクルクル回ってるみたいでね」
偵察? ……いやだったらもっとバレないようにするか。
「そうか……1回実際に見てみようか」
「わかったわ……まぁクイックならいいでしょ乗って」
「ふむ……これが例の」
思っていたより大きいな1000人くらいなら余裕で生活できそうな広さだ。
「もう少し近付けるか?」
「えぇ」
俺が飛行物体に触れようとした時だった。
バチン!
「なっ!?」
「クイック!?」
まずい! この高さ! 地面操作をしても間に合わない!
「大丈夫! このくらいなら助けられる!」
俺はギリギリのところでエレナの背に着地した。
「はぁ〜久しぶりに命の危険を感じたよ」
「それであれはなんだったの?」
あの感じ……。
「多分魔法だな、防御魔法がはられてる」
「うーん……結界ってところかしら」
恐らくこの魔法を解けるのは……。
「というわけでノーチェを連れていこうとしてるんだけど」
「いやぁだぁ! 絶対行かないぃ! お空怖いよぉ!」
「ははは……なるほどね」
絶対行かないからな! だいたい聞いた話によると高度1万メートルはあるでしょそれ! 飛行機か!? 飛行機と同じか!? てかなんでエレナもそんな高く飛べるんだよ!
「ノーチェちゃん行かないのぉ〜?」
「だってそれは危害を加える様子ないんだろ!? なら放置でいいじゃん!」
「けどぉ〜それがずっと続くとは限らないわよ」
それはそうだけど〜……けど怖いものは怖いんだよぉ。
「うぅ〜!」
「ほらノーチェこっちに」
「シャア!」
「や、野生に戻ってる」
なんとしてでも阻止しないと! そんな空高くなんて行ける訳ないじゃん! 俺蛇だよ! 蛇は地面を這うものだから! 飛べない蛇はただの蛇だ? なら俺はただの蛇でいいよ!
「これは本気の抵抗だな」
「そうねぇ……クイックどうする〜?」
「どうするって……」
何しても絶対行かないからな!
「ノーチェ……俺も一緒に行くからさそんな怖がらないで机から出ておいで」
「シャア! シャァァァァ!」
「うーん……わかった今回は諦めよう。無理言って悪かったよ」
あれ……なんか思ったより早く引き下がったな。
「ほら2人ももうやめてあげよう。あっノーチェその書類は目を通しといてね。じゃあまた後で」
……ま、まぁ行かなくていいならそれでいいけど。
深夜2時
ゴソゴソ……。
「いたっ」
「しっ! 静かに」
「そっち持って」
「わかったわ」
「それじゃあ行くわよ」
その日の夜大きな鳥が空に向かって飛んでいく姿が確認された。
「今……俺は2人のことを本気で嫌いになりそうです」
「「……」」
この2人……あの時大人しく引き下がったと思ったら寝てる間に勝手に連れてきやがった。
空中で目が覚めた時は本当に怖くて半分力技で結界をぶっ壊して中に侵入した。
「えっと……その着替えの服なら……あるから」
「うるさい! ……いや貰うけどさ!」
うぅ……こんな歳になってこんなことを。
「いや……まぁ今回に関しては本当に俺たちが悪いからな。誰も責められない」
「俺は2人のこと責められるけどね!」
もぉ〜本当に……まぁ、2人としては色々考えてくれた結界なんだろうけどさぁ。
「……」(ノーチェにイタズラしたくて飛んだら思ったよりガチの反応で困ってる。)
「……」(ノーチェの可愛い所見たいと思ってエレナに乗ったがやりすぎたと思って反省してる。)
「はぁ……まぁいいよ来ちゃったものは仕方ない。とりあえず探索して帰ろう」
もしかしたら地上に飛ぶ以外で帰る手段があるかもだし。
「「わかった(わ)」」
……廃墟? 人が住んでたと思われる跡があるなぁ。
「何なのかしらねぇ……」
「攻撃してくる様子もないな」
「まぁ……あの大きな建物に行けば分かるかもね。」
サーレスの城よりも大きいな……お宝とかあればいいんだけど。
あれが王城だとすればここは城下町ってところか……そこそこに繁盛してたみたいだけど、いやてかなんで空の上にあんの? そういえばなんで浮いてるんだろうか……。
「おーいノーチェ〜先行っちゃうわよ〜」
「ん? あっうん今いくよ」
俺達は恐らく王城だと思われる大きな建物の扉まで移動することにした。
「遠くから見ても大きかったけど近くで見ると本当に大きいなぁ」
入口の扉だけで10mはあるだろうか?結構大きいクイックとエレナが隣で並んでも扉の大きさが余計に際立つ。
「これ開くのか?」
確かに……いくら力自慢な2人でもこんなに大きな扉……しかも。
ゴンゴン
「すごい硬い」
鋼鉄か何かで出来ているのだろうか……そして扉に触れられるまで近付いて初めて気づいたが大きな龍の絵が描かれている。
「とにかく押してみましょう」
そういうとクイックとエレナが扉に触り力を入れた。
「うーん……これは無理かなぁ」
他の入口を探して……そこから。
そんなことを考えていると。
ゴゴゴゴゴッと大きな音を立てながら扉が開いていった。
「あら? クイック何かした?」
「いや俺はただ押してただけだが」
自動ドア? なんでそんな技術がこっちの世界に。
扉の奥は金に輝く階段や見ただけでわかる高級そうなカーペット、目が痛くなるほどチカチカした骨董品などが大量に置かれていた。
「うーん……王城なのは間違い無さそうだけどなんでこんな所に」
エレナも空の上にこんな城が存在することに違和感を感じているらしい。
「まぁ……攻撃してくるやつも居ないみたいだしここは3人で分かれて探索しようか」
そしてクイックが左の通路をエレナは右、俺は上にあがってそれぞれ王城を探索することになった。
「それにしても天井が高いなぁ」
俺が蛇の状態になっても全然余裕で走れるくらいの広さはある。
しかし階段を上がってからとりあえず左に向かって歩いてるけど扉もなんもねぇ。
「2階はハズレかなぁまじで廊下以外ないし」
これ以上探索を続けても無駄だと思い引き返そうとした時だった。
ん? 今なんか光った?
……。
「まぁどうせ全部確認するしな、気になるものは見てくか」
廊下の最奥……ここまで本当に何も無かったがここだけ謎の空間がある。
「さっきの光は……これか」
俺は落ちていた謎の丸いものを拾い上げた。
なんだこれ……透き通って綺麗な玉だけど。まぁとりあえずポケットに。
部屋の中は書庫のようで大量の本が並んでいた。
……なんでランプが着いてるんだ? いやけどそれよりも気になるのは。
「日本語……だよなこれ」
俺の取った本の題名は異世界日記……様々な本がある中これだけが日本語で書かれていた。
「日記……俺以外の転生者がいたのか。書かれた日は今から3010年前。あれ? 魔王が世界を焼き尽くすより前だな」
近くにあった椅子を適当に引っ張りロウソクを近付け異世界日記を読み始めた。