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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
革命編
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59話 ルリアの森革命・誑惑

「これが……エルフの村」


アルがそんな表情になるのも頷ける……これならまだ貴族に搾取されてた頃のフィデース村の方がマシだ。


「……これが現実よ」


エリーナはこんな環境で。


「嘘……だ」


服は布切れみたいだしみんなの目には生気がない。それに加えて。


「あれはエルフの死体です。エルフは昔から死んでしまうと母の木……母大樹の近くにある土に埋められます。しかしそれは裕福なエルフ達だけ……このように田舎のエルフ達はああやって死体を積み上げて積み上げて……」

「この辺の土には……埋めないのか?」

「エルフは死ぬと土に有毒な魔力を残します。それを吸い取れるのは母大樹だけでそれ以外の草木は全て枯れてしまうのです」


なんて言うか……エルフってすげぇな。


「けど……あれじゃあ感染病とか」

「その時は……」


ガロリアの手は血が滲むほど強く握られていた。

実際にそういうことがあったのか。


「いや……いいよ言わなくて」

「それで……これを見た君はどう思ったかな?」

「……」


まだか……。


「それじゃあ違う村も見てみようか」


結局その後俺たちはエルフの村全てを回っていった。



「アル……エルフの」

「もう……もういい」


アルは辛い現実を突き付けられて頭を抱えていた。


「ノーチェ……結局何が目的なの?」

「……大丈夫もう少し待ってね」


その時のノーチェの顔は……とっても怖かった。


「ねぇ、アルはさこんな酷い状況のエルフたちを放っておくジェイって奴のことどう思う?」

「ジ……ジェイ様は政治には関わっておらず、このような村の実態を知っているとは」

「けどさこんな状況を知ってるか知らないかは置いといて放置してるのは良くないよね」


まさかノーチェ……。


「い、いや」

「これは間違ってることだよ。国の民があんなに苦しんでいい訳がないんだ」

「あ、あぁ」


最初から……これが目的で。


「……だけど大丈夫!」


ノーチェがアルの背中を強く叩く。


「俺達が協力してあげよう。エルフの……君たちの国を守るんだよ」

「そ、そんなこと」

「安心して……君には素質がある。わかってるでしょ、俺と接触した時から新しい称号が着いてるの」


森の王


「お、俺は」

「全部解決してあげるよ。だから全部俺に任せて」


ノーチェの甘い囁きがアルの頭に浸透する。


「ほら……俺を頼って、ね?」

「俺は……この国を導くアル・フォレストだ」


辺りが薄暗くて分からなかったけど……ノーチェが確かに笑った気がした。


「ははは……これからよろしくね六王アル・フォレスト」



その後のノーチェの動きは早かった、貧困に喘いでいたエルフ達を全員フィデース帝国に連れていき温泉に入れて、美味しい食事を食べさせ、綺麗な服をあげた。


「ノーチェ……まさか最初から全部」

「ここまで上手くいくなんて思ってなかったよ。けどあの子と接触した時に」


導く者の能力発動。

エルフの少年が森の王を会得しました。


「……気付いたことがあってね。そこから色々やってみただけさ」


……恐らく村で生きるのも困難だったエルフ達は今回の施しを受けてノーチェに従うと思う。しかもその数4万人。

私も驚かされたこんなに貧しいエルフ達がいるなんて。


「さぁ……あと2日で準備しないとね」


ノーチェ……いいえノーチェ・ミルキーウェイ。間違いない、この人は正真正銘の化け物だわ。



「ノーチェ……まさかここまで全部計算したのか?」

「まっさかぁ! たまたまだよ」


クイックはエリーナが作成した報告書に目を通している。


「いや……けど」


外からはエルフ達の元気良い声が聞こえる。



「我々はここまでよく耐えてきた! しかし! 生活はいくら待っても良くならない……それなら! 今のエルフの国を変えるしかない!」

「「「「「「「「おぉー!!!!」」」」」」」

「安心しろ! 我々には協力者であるノーチェ・ミルキーウェイ殿と! 新たなる王! アル・フォレスト様がいらっしゃる!」


エルフの大歓声と共に奥からアルが出てくる。


「俺達は今まで間違っていた。六王ジェイは俺たちの存在を蔑ろにして自分の欲のために動く愚王であった!」

「だがそれも明日終わる! 俺がエルフの王となりこの国を導いていく!」



あ〜あ……上手く乗せられちゃって、もう心理掌握使ってないんだけどなぁ。


「それで? 今回俺たちはどうするんだ?」


先程まで報告書を読んでいたクイックが部隊編成の載った紙に持ち替えている。


「うーん……あくまで革命だからなぁ、大きく動くつもりは無いよ」


何をするか、どうするかはアルが決めるべきだし


「少数精鋭で行こうか、まずは黒翼大隊から進化した黒翼族のエレナと他2人、黒森人部隊はルリアの森をよく知ってるから50人、牙獣大隊はフィーだけだね。百鬼大隊からはいつもの4人、そして傀儡部隊は部隊長の五人を連れていく」

「逃げたエルフはどうするんだ?」

「うーんまぁ無理に殺すことも無いでしょ俺達はあくまで援軍だし」

「わかった……それじゃあルリアの森ではサポートに徹するよう伝えておく」


いやぁ……クイックには本当に助かってるよ。


「あっそうだ」


何かを思い出したのかクイックが立ち止まる。


「今回は俺もルリアの森に行くのか?」


あ〜……そうだなぁまぁ革命はできる限り短時間で終わらせたいし六王の実力も気になる。


「うん俺の近くに居ること!」


それを聞いたクイックは嬉しそうに頷いて部屋から出ていった。


自然の王の強さはわかんないけど今のアルが勝てるとは思えない。

けどここで俺達が倒してしまえばそれは戦争になってしまう。

そこで考えたのがアルとタイマン中に横槍入れちゃおう作戦。


まぁ透明化で近付き後ろから魔法なりスキルなりを適当に打ってジェイの意識を逸らすそしてアルがトドメを刺すこれが最高の流れなんだけど。

もし無理でも俺とクイックが全力で殺しにかかるだけだ。



ルリアの森革命の前夜。


「ノーチェ様!」


アルが後ろから声をかける。


「ノーチェ様はやめてよ、王になった時カッコがつかないよ」

「しかし我々に戦う機会とこのような武器を渡して頂けるとは」


今のエルフ達の武装では勝てないと思いアサルトライフルやら機関銃やらを適当に渡したんだけど大成功だったみたいだな。


「……ん?」

「どうしました?」


コード商会に武器は渡してるからルリアの森でも見たことくらいあると思ってたんだけどなぁ。いや違和感は最初からあった……新型武器のことを知っていたのは長老だけでそれ以外のエルフは知っている様子じゃなかったし装備もしていなかった情報だけ得ていたのか?


「ノーチェ様?」

「あっ……いやなんでもないよ」


俺は怪しまれないように無理やり話題を変えた。


「ねぇアル……俺はあの時君をスキルで言いくるめたんだよ? 何か思うところとかないの?」


それを聞いたアルは何を言っているのかわかっていない様子だ。


「心理掌握は相手の心に入り込み大体の感情を読み取ったり、相手を言葉で惑わすスキルだ。そんなスキルで」


嘘だけど


「……ノーチェ様、俺もあの後色々考えました。けどそれよりもあの村の光景が目から離れないのです。やせ細った子供……赤ん坊の亡骸を抱えて笑う母、生きる希望を持っていないあの目」

「俺はあんなことを強いる国が存在するなら……そんな国は滅んでしまっていいと思います!」


強い目……覚悟を決めた強い目だ。そうか……俺はあくまで道を増やしてあげただけで決めたのはこの子だったのか。


「アル・フォレスト……俺たちフィデース帝国は君たちへ全力のサポートを約束しよう」

「……ありがとうございます! 必ずルリアの森を建て直しノーチェ様に感謝を返します!」


2人は固い握手を交わした。

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