56話 ルリアの森
エルフ族の国、ルリアの森。6万を超えるエルフたちが森と共に生きている。この森は特殊で肉食系の植物が多く存在し外敵の侵入から身を守っているのだ。
「アル! 今日はどこ行ってたの!?」
村の少年たちが話しかけてきた。
「今日は南の森でイノシシを狩ったよ」
アルが担いでいたイノシシを見せると少年たちは「おぉ〜」と驚きの声を出した。
「あっそうだ! 長老様がアルの事呼んでたよ!」
「長老が?」
「うん! アルに頼みたいことがあるんだってさ!」
なんだろうか……食料問題に関しては先日解決したはずなのだが。
不思議に思いつつもアルは長老会へと向かっていった。
「ふわぁ〜」
「眠そうだなノーチェ」
そういうとクイックは冷たい水を渡してくれた
「……いやぁ〜昨日は子供たちと遊んでてさぁ」
「ノーチェ! ノーチェ! この遊び知ってる?」
様子を見た感じだと地面に紙を叩きつけてる。
「ん? めんこかな?」
「めんこ?」
「あぁごめんなんでもない知ってるよ」
「ノーチェもやろうよ!」
「いいよ」
とまぁしばらく遊んで居たのだが。
「ぜんっぜん勝てない……」
「ノーチェ弱〜い」
「待ってろよ! めちゃくちゃ強いカード作ってくるから〜」
「で、カード作りしてたら熱が入ってしまい……」
「思ってたより3倍くらいくだらなかったわ」
うっ……その目はやめて。
「ま、まぁ今は普通に仕事してるしぃ〜文句言われる筋合いはないと思うなぁ〜」
我ながら子供っぽい言い訳だな。
「誰も文句なんて言ってないよ……ちなみにそのカード? は作れたの?」
よくぞ聞いてくれた!
俺はそう思い棚の中からカードを1枚取り出した。
「そう! これこそ!」
「それ本気で使う気なら止めないけど子供達泣くと思うよ」
このカードサイズが通常の4倍はあるのだ。
「えっ……」
「くだらないことやってないで早くサインして」
ドサッと書類が置かれる。
「クイックさん……なんか多くない?」
「軍隊整備と観光地区の拡張、居住区もそろそろ家が足りなくなってきてるし産業地区に関してはこのままだと半年以内に食べ物無くなるって計算が出たから」
いやこれどう見てもそれだけの量じゃないんですけど。
「まぁ頑張って」
クイックはそう言って部屋から出ていってしまった。
「クイック〜! クイックの裏切り者〜!」
しかしその声は虚しく響くだけだった。
「はぁ……やりゃいいんでしょやりゃ」
適当に書類を1枚手に取る。
「……ん〜? 産業地区及び商業地区での盗難事件?」
俺の国に盗みするやついるのか?
いやけどもう結構な大きさだし悪いことするやつくらい居るか……裁判所とか刑務所とかも作った方がいいのかなぁ。
「盗まれたものは……産業地区で定期報告書……定期報告書? そんなの盗んでどうすんだろうか。あとは商業地区が兵器開発資料」
ふむふむ……いやあかん! 兵器開発資料は盗まれたらダメだよ!
「ちょっ待って! これいつの!?」
作成日……昨日やん!
「誰が盗んだか知らないけど物によってはやばい!」
魔弾砲が載ってる資料とかじゃないだろうなぁ……。
いや考えるよりも先に動かないと手遅れになる。
「テグ! クイックとフィーを呼んで!」
「かしこまりました」
「クイック〜? どうしたんだぁ?」
「緊急事態だから急いで来いって珍しいな」
まだ呼んでから3分も経ってないんですど。どんな速度で来たんだよ。
「う、うんまずはこの書類なんだけど」
俺は先程見ていた書類を2人に向ける。
「なになに? おーなんか盗まれたのか〜」
「それで? この書類がどうしたんだ? 大したことには思えないが……」
そこまで言うとクイックは書類を手に取り詳細を確認した。
「いや……なるほど、これは確かに緊急事態だな」
さすがクイックよくわかってる。
「産業地区の定期報告書は1部しか持ってかれていない。フィーの嗅覚を頼りに犯人を探し出す。クイックは改装工事でもなんでもいいから観光地区から人が出ないように手を回しといて」
「わかった」
「私は何すればいいんだ?」
フィーひとりじゃ少し不安だなぁ。
「テグ……ゴラブを呼び出してくれ。そして」
「了解致しました、その後フィー様と共に犯人探し及びフィー様の暴走を静止すれば良いのですね」
さ……さすがよくわかってる。
「うんありがとう。俺は産業地区で確認したいことがあるから行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
「ハルト! ハルト居るか!?」
「ノーチェ殿! 此度は我々のミスで大切な書類を……」
「謝罪は後でいい何を盗まれたのか詳しく教えてくれ」
その言葉を聞いたハルトは奥の資料室に来るように頼んだ。
ここにある資料は基本的に武器の研究に関する資料だ。
威力や開発途中の武器についての資料が大量にある。
まぁ……作り方が載ってる開発部門じゃなくて良かったと少しだけ思うがどの道危険なのに変わりは無い。
「着きました。盗まれたと思われるのはここの資料です」
確かにパンパンに入っている資料の中でハルトが指さすところだけ空になっている。
「何があったんだ?」
「ここには40cm大砲とノーチェ殿に頼まれたライフルの研究資料がございました」
うーん……ちょっとまずいなぁ。ライフルはともかく40cm大砲はなぁ。
ただの愉快犯で盗む分にはまだいいんだけどどっかの国から派遣とかされてたら困る。
「わかった。とりあえず普段の業務に戻っておいてくれ」
「すまない……」
まぁ盗まれたものは仕方ない、とにかく今は資料の外部流出だけは避けないと。
「フィー様……匂いは追えていますか?」
「安心しろ〜しっかり追ってるから〜」
「それではなぜお茶を飲んで休憩しているのですか?」
フィーは今観光地区の甘味処で最新のお菓子を楽しんでいた。
「腹が減っては……なんだっけ? まぁとにかく食べといた方がいいと思ったからだな!」
「……それ食べたら探しますよ」
「わかってる! わかってる!」
その後フィーが犯人探しに戻ったのは1時間後だった。
「ノーチェ」
「クイックか……上手くいったか?」
「大丈夫だ今のところ誰もでてない」
俺とクイックあとテグは観光地区から門へと移動できる通路で待機していた。
「列車が止まった今逃げるならここを通るしかない。まぁ仮に他のところから逃げたとしても黒森人部隊が観光地区のあらゆるところで待機してるから平気だよ」
まぁ身内だろうと外の人だろうと手荒な真似はできないしなぁ。
「テグ、フィーの方はどうなってる?」
「……どうやら居場所を特定したみたいです」
「おー! ここかぁ!」
「誰もいませんね……」
「……中に人はいません、恐らく逃げ出したと思われます」
……こちらの動きを察知して逃げたのか? いや封鎖はあくまで出ようとした者にしか伝えていない……フィーに気付いたのか。
「クイック……」
「わかってる、フィーは獣人だ気配を消すのは慣れてるそれに気付くってことは」
この国の奴じゃないな。
「氷牢!」
「縛土!」
俺とクイックが何も無い所へ攻撃をしてテグは少し驚いてしまったようだ。
「……なぜわかった?」
隠密……いや透明化か?
「探索だよ……その姿エルフか」
ということはルリアの森から来たのか?
「すんなり帰しては貰えないと思っていたが……俺を見つけるとはな……」
割と余裕だったけど。
「そんな怖い目で睨むなよ相手は小さな女の子だぞ」
「それ自分で言ってしまわれるのですね」
「こう言ったら下がってくれるかもしれないだろ!?」
テグの冷静なツッコミが俺の心に刺さる。
「茶番はいいから拘束するぞ」
冷静だね! クイックさん!
「地面操作! 土流縛砂」
地面がうねりエルフの周りを囲む……しかしそのエルフは余裕な様子だ。
「こんなもん!」
うっそだろ!? クイックの操る土をぶっ壊しやがった!
「ちっ! ノーチェこいつ生け捕りにできるほど弱くないぞ!」
クイックの目がマジだ……けど面白そうだなぁ。
「俺がやるよ……」
「え? いやノーチェは」
「大丈夫ちゃんと生け捕りにするから」
「黙って聞いてれば捕まえるだとか弱くないだとか……随分と舐めてくれるなぁ!」
あら〜怒っちゃった。
「いいよ……相手してあげるから来な」
その一言にキレたのかエルフは魔法を放ちながら突っ込んでくる。
「大旋風!」
「絶無!」
エルフの放った魔法は弾かれるでも止められるでもなく跡形もなく消えていった。
「クッソ!」
「そこで何も考えずに足が出たら負けだよ」
俺はエルフの横に滑り込み片足を引っ掛けて転ばせた。
まぁ……あんまりカッコつかないけど捕まえるならこれが1番か。
「なっ!? へ、蛇!?」
「分かったら大人しく」
「ひゃいいいいいぁぁぁぁぁ!」
エルフは変な悲鳴をあげたと思ったら気絶してしまった。
「あ、あれ?」
「いや、まぁいきなりその大きさの蛇に巻き付かれたらビビるわな」
クイックが冷静に分析する。
「あれは敵さんも可哀想だと思いました」
テグまで!?
「……ま、まぁ! 捕縛完了!」
こういう時は笑顔で誤魔化すのが1番なのさ!
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv8
所持アイテム星紅刀
《耐性》
痛覚耐性Lv3、物理攻撃耐性Lv7、精神異常無効Lv7、魔法攻撃耐性Lv6、状態異常無効Lv10
《スキル》
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv6、絶無Lv7
《魔法》
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv6、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6、深淵魔法Lv10
《???》
謀る者Lv7、強欲
《資格》
導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
クイック・ミルキーウェイ
赤岩土竜Lv6
《耐性》
物理攻撃耐性Lv6、精神異常耐性Lv8
《スキル》
探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv8、神速Lv2、強化Lv8、回避Lv6、体術Lv7、斬撃Lv6、集中Lv7、追跡Lv5、空間把握Lv8
《魔法》
火炎魔法Lv5、風斬魔法Lv6、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv7
《???》
食す者Lv2