53話 魔獣大戦・復讐鬼
「オォォォォォ」
テレシアの声は憎しみや恨みを乗せた叫び声にも聞こえるし悲しみや痛みを乗せた泣き声にも聞こえる……もう苦しむことは無い、すぐに助けてやる。
一瞬の出来事だった……俺が小さく研究部屋と唱えると肉の塊の中からツノの生えた美しい少女が現れた。
「なっ……なんだ? 何が起こったんだ!? テ、テレシアが外に!? 馬鹿な! この合成魔獣は複雑な接続を繰り返し並大抵の者では1つの接続を外しただけで暴走し中のテレシアは死に至るというのに!」
訳の分からない現実を突き付けられたゼーレは頭を掻きむしる。
「……」
その姿を見て俺はあぁ……ゴミ以下の人間ってのは本当に救いようがないんだと心から思った。
「は、ははは! あはははははは! だがテレシアを救い出した程度で勝ち誇るなよ! この魔獣の真の力は大量のスキルや魔法によるもの! 周囲の魔力が吸えなくなったからと言ってお前ごとき実験体が敵う相手では!」
「いちいち長い……そういうくだらない御託はいいから早く来いよ」
「ぐっうぐっ! あの女を捕まえるんだ!」
その声と同時に俺はテレシアを上空に投げる。
「あっぶないわね! もう少し丁寧に渡しなさいよ!」
いつの間にかエレナがこちらに来ていたのだ。
ツノ付きの化け物が見えたらバレないように近付いてこいって言っといて正解だったな……怪鬼の半数を殺した奴をテレシア抱えながら勝てるかわかんなかったし。
「お前……いつの間に! テレシア! あの鳥を落とせ!」
斬撃スキルか……けど遅い。
「なっ!」
「こんな攻撃遅すぎて欠伸が出るぞ」
「お前はどこまでこの私をコケに!」
「コケにしてんのはお前だろ……あんな攻撃しやがって舐めてんのか? ほら……先に攻撃させてやるよ、最大威力でこい」
怒ってんなぁ……いやそれ以上に俺の方が怒ってるけどさ。
「テレシア! 獄炎魔法だ! 獄炎魔法を放て!」
獄炎魔法……最上位の炎系魔法か。
今回はちょっと相性が悪かったな。
化け物の放った獄炎魔法は水蒸気となり消えていった。
あれは氷結魔法! なぜそんな高位の魔法を! いやまて……前回の戦闘で魔獣たちが急に動かなくなったのはこの力だったのか。
「それで終わりか?」
「いいやまだだ! テレシア! 全てを呑み込み破壊しろ!」
化け物が姿を変える先程まではかろうじて人型だったが今度こそ本物の化け物と大差ないほどに変形する。
「お前は生きたまま実験体にしたかったが仕方ない。多少幅は狭くなるが死体の状態で実験をするとしよう!」
こいつまだ俺の事生け捕りにするつもりだったのか……ここまで来ると侮辱とかそういうの通り越して面白くなってきたわ。
もはやなんなのか分からない化け物が魔法やスキルを大量にばら撒く。
……はぁ、合成魔獣とか言うから期待したんだけどなぁ。結局さっき見た獄炎魔法以外は全部低レベルだし。
とはいえ……これ以上この子を苦しませる訳にもいかないか。
せめて痛みなく殺してあげよう。
「は?」
ゼーレは自分の目がバグったのかと思い何度も瞬きをする。
な、何が起きた? 俺の合成魔獣が動きを止めた? さっきまでいたあの女が居ない。一体どこに。
「な! 何をしているテレシア! 早くあの女を殺すんだ!」
グチャリ……。
「ひっひぃ!」
私のすぐ隣に化け物の肉塊が飛んでくる。
は、弾けたのか!? 一体なんだ! どうしてこんなことになっているんだ! 私の合成魔獣は誰にも負けない最強の生物でこんな辺境の国の主如き一瞬で!
「何が起きたかわかってないのか? 研究者って言う割にさっきから頭が悪すぎて笑えないぞ」
「あぁ! あっ! なっ、いつの間に!」
こ、この女! いつから私の後ろに回り込んで! 声をかけられるまで気配する感じなかった……なんなんだこいつは!
「どうした? お前研究者なんだろ? 今のこの状況をその頭でどうにか切り抜けてみろよ」
「はっ! はっ! ……はぁ!」
ダメだなこりゃ怖すぎて言葉を失ってるわ。
まぁいいか……どうせ死ぬんだし。
「お、お前! いやノーチェと言ったな! ……そうだノーチェ! 私の部下になれ! 君の力があれば……! 世界は我々の物だ! それがいい! そうするべきなんだ!」
……。
お前すごいよ……ここまで来てそれを本気で言ってるんなら尊敬するよ。いやマジで。
あれなのかな……この世界の奴らはどいつもこいつも脳みそお花畑なのかな?泣いて謝れば多少は俺の気も晴れるかもしれないってのにさ。
「……まぁ色々言いたいことはあるけど……いやあったけどもういいや」
呆れてものも言えないとはまさにことだな。
「そ、そうか! やはりお前もこの私の力に」
「ノーチェさん……お待たせしました」
「あっテレジア」
もーやっと来たよこの狂人と話すのまじで疲れるから後10秒遅かったら殺しちゃってたよ。
「すまないな大将、そんなゴミの相手させちまって」
「……大将って俺の事?」
「ん? そうだぜ」
大将ってなんか居酒屋とかの店主感あるからやめて欲しいなぁ。
「その呼び方変える気は……」
「ない!」
元気なお返事ありがとう!
「な、なんだお前ら! 怪鬼か! はっははは! くだらない実験動物共が何の用だ! お前たちも俺の部下になりたいのか! いいだろう奴隷とし……て?」
「黙れよゴミが……」
ひぇぇぇイヴィル怖い。
「それではノーチェさんここからは私達が」
「約束だからな好きにしろ」
「これで俺達の恨みをはらせる!」
「……」
「はっはぇ!? な、何をする気だ! 俺はゼーレ・ハバラだぞ! この俺に一体何を!」
……。
「これから何をするか? はは……その空っぽな脳みそ使って少しは考えてみろよバーカ」
俺はそのまま振り向かずに帰っていった。
「さて……俺達はくだらない実験動物、だったな。じゃあその実験動物に殺されるお前は一体なんなんだろうなぁ!」
「や、やめ! ぎゃあぁぁぁぁぁ! いだい! いだい! たずげで! ごろざないべぇぇぇ!」
「お前は泣き叫ぶ俺達の家族を! 仲間を! 全員殺したろうが! こんな程度で騒ぐんじゃねぇよ!」
「安心してください……簡単には殺しません。死にそうになったらしっかり回復させてあげますから」
「やだやだやだ! だべがぁ! だべがぁおべをだずげぼぉぉぉ!」
「汚ぇ断末魔だな」
「おやクイック帰ってきてたのか」
いやぁ……身体中血まみれだけどどんな戦い方したの君?
「ノーチェ! 私も終わったぞ!」
……クイックがマシに見える。
「お前ら2人とも帰ったら風呂な」
「わかった」
「えー! あっそれじゃあノーチェが洗ってよ!」
えぇ……それはさすがに。
「いいわねそれ。せっかく頑張って戦ったんだからご褒美くらい欲しいものね」
「エレナ!?」
「そーだ! そーだ! 私だって頑張ったんだからご褒美寄越せ〜」
エリーナまで……。
まぁみんな頑張ってくれたしなぁ。
目隠しして入るか。
「わかった……今日だけな」
「やったぁ!」
フィーが元気よく喜ぶ。
「ノーチェ……俺もなにか」
クイックさんまで……。
「そうだな……今度お前に合う武器でもむぐぐぐぐ!」
「あらぁノーチェ! 新しい服が欲しいの!? そういえば商業地区に新しいお店が開いてたわよ! そうだぁ! 2人で行ってくればいいじゃない!」
「むぐぅ!? んん! んんんん!!」
なにそれ初耳なんたけど! てか服はいいから!
「ほらクイック! ノーチェが新しい服欲しいって! 武器の新調も合わせて行ってきなさいよ!」
「いやけどノーチェは」
「バカ! これでご褒美使って2人でデートすんのよ!」
エリーナがクイックに何か言ってる! 絶対悪いこと言ってる!
「……ノーチェ、それじゃあご褒美として一緒に買い物しようか」
「んむぅ!? んん! むぐぐぐ!」
買い物はいいけど服だけはやめ!
「あらぁノーチェ優しいわね! クイック! OKだそうよ!」
よしこの鳥後でぶっ飛ばす!
「ぷはぁ! 俺はそんなこと許可して!」
「ダメかな……ノーチェ」
「問題ないです!」
もぉぉぉ! その顔は反則だろぉ!
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv8
所持アイテム星紅刀
《耐性》
痛覚耐性Lv3、物理攻撃耐性Lv7、精神異常無効Lv4、魔法攻撃耐性Lv6、状態異常無効Lv10
《スキル》
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv6、絶無Lv6
《魔法》
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv6、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6、深淵魔法Lv10
《???》
謀る者Lv7、強欲
《資格》
導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
クイック・ミルキーウェイ
赤岩土竜Lv5
《耐性》
物理攻撃耐性Lv6、精神異常耐性Lv6
《スキル》
探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv7、神速Lv1、強化Lv8、回避Lv6、体術Lv7、斬撃Lv6、集中Lv7、追跡Lv5、空間把握Lv8
《魔法》
火炎魔法Lv5、風斬魔法Lv6、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv7
《???》
食す者Lv1