50話 荒れる空
「えっと……ノーチェさん? 顔が腫れていますが」
「あっ気にしないでください」
俺達は今温泉旅館の大広間にいる。まぁ人数的には俺、クイック、エレナ、フィー、ガロリアそして怪鬼の方たちが4名。
「改めてご挨拶させていただきます。私はテレジア・ノーバーンと申します」
「イヴィル・ティンゼルク」
「俺はエーゼル・クラック」
「…….バール」
なるほど……気の強そうな女の子がイヴィルで俺を掴みあげたのがエーゼル。そんで初めて見る陰キャっぽいのがバールね。
「俺はノーチェ・ミルキーウェイ。この国で盟主をさせてもらっている」
テレジアが頭を下げる。
他の3人も申し訳程度ではあるが頭を下げた。
「それで俺の隣にいるのが」
「クイック・ミルキーウェイ」
あっ言っちゃうのね。
「私はエレナ・ハーレルト、黒翼族よ」
「将来クイックを打ち倒す者! フィー・サレリアル!」
「ダークエルフのガロリアと申します」
……みんな自分でやっちゃったよ。少し紹介とかしたかったのに。
そしてフィーそれは自己紹介になってないよ。
「さて自己紹介も済んだところで早速本題に入らせてもらおうか」
俺達はその後敵の位置、戦力、能力に至るまで様々な情報を怪鬼達から受け取った。
敵の名前はゼーレ・ハバラ……一応聞いたことがあるか周りのみんなに確認を取ったが誰も心当たりは無い様子だ。
「そして……その男は私の妹を……」
話によるとテレジア・ノーバーンの家系は昔から魔力が多いらしくその力に目をつけたゼーレが実験台として妹を監禁しているらしい。
「なるほど……まぁ聞いた話が本当なら戦力的には大したこと無さそうだな」
とはいえ怪鬼達が話しているのは2ヶ月前の話……今も同じ戦力である可能性は低い。
「で……勝てんのかよ、そいつの作る合成魔獣は並大抵のやつじゃ敵わねぇぞ」
イヴィルの一言に空気が凍る。
あ〜怒ってる怒ってる。
「落ち着けお前ら、今は話し合いしてるんだ。特にクイック無駄な殺気を放つな」
「……わかった」
主人に忠実なのは嬉しいけどその話し相手にも多少気を使ってくれないだろうか。
「……こちらもイヴィルが失礼しました。ですがイヴィルの言うことは本当でゼーレが作り出す合成魔獣の強さは異常です。実際に私達怪鬼はその戦いで半数以上が」
そこまで言うとテレジアは下を向いてしまった。
なるほどな……だから数が少なかったのか、怪我をしていたのは生き残りってところだろう。
「まぁ油断大敵、準備はしっかりしよう」
話し合いは一旦ここでお開きとなった……ゼーレを倒しに行くのは3日後それまで各々準備を済ませることになった。
……。
暗い森に1人の男が佇む。
「常に森の周りは監視していたのだが……」
その男は落ちていた羽根を拾って懐にしまった。
「邪魔が入ったな……まぁいいすぐにわかるさ」
もうそこに……男の姿はなかった。
「じゃあ行くぞ〜」
「どこに!?」
フィーが元気よく手を挙げる。
「さっき説明したじゃん……これからゼーレとか言うやつの家をぶっ壊しに行くの」
「おぉ! わかったぞ!」
この子本当に大丈夫かしら……。
「ごめんなさい……私達の為に」
「気にするなテレジアもう君たちは仲間さ」
選出したメンバーはエレナ率いるハーピー部隊20、フィーそして戦える怪鬼は全員だ。
「ここからなら1度転移で怪鬼の村に戻るより歩いて行った方が早い。このまま出発するぞ」
「わかりました」
「しっかし良かったのかよ私たちにこんないい装備渡してよ」
イヴィルが腰に着けた刀を見ながら聞いてきた。
「大丈夫さむしろみんなに合う武器が作れてよかったよ」
準備期間中俺は怪鬼達を商業地区に連れて行って専用の武器を作ってもらった。
魔法力に自信があるテレジアには杖、瞬発力があるイヴィルには刀、力自慢なエーゼルには大剣、正確な目を持っているバールには槍まぁ他の怪鬼にも合う武器は持たせてある。
まぁ素手で戦うより全然いいだろう。
「そうかよ……まぁそれなら貰っとくぜ」
さてはツンデレかイヴィル。
「はいはい、お喋りはその辺にして行くわよ」
「わかったよエレナ。じゃあ改めて出発だ」
道中では特段襲われることもなくひたすらに大地を歩き進めて行った。
「伏兵の可能性を考えていたのだが……」
上空からエレナ達に監視をして貰っているが特段変化はないようだ。
もうすぐ敵地だ……それなのにこの何も無い感じ、もしかしてもう移動している? それとも家に籠っているのか?
「全員一応戦闘態勢に入っておいてくれ何が起こるか分からない」
その時だった地面から大きな化け物が現れた。
「なんだコイツ!」
冷静だな……驚きながらをちゃっかり武器を用意してるさすがフィー。
「これじゃあ上空から確認しても分からないはずね」
「仕方ないさとにかく倒していくぞ」
………………。
「ふぅ」
「呆気なかったな〜」
地面から出てきた化け物はエレナとフィーにより肉塊にされていた。
瞬殺……とはいかなかったがさすがだな、フィーはともかくエレナに関しては本当に強くなった。
「あれをこんなんにしちまうのかよ……あの二人やべぇな」
「いやぁ……あの時本気で戦わなくて良かったと俺も思ってるところだ」
怪鬼達も驚きを隠せない様子だ。
だが……見つけられない場所に配置するにしては弱すぎる。
これじゃあまるでただの時間稼ぎ……。
俺はその時懐に閉まっている無線を取り出した。
発信されてるだと! なんで気付かなかった! 戦闘中とはいえこれに気付かないほど馬鹿じゃないぞ!
いや違うこの化け物ザックが持ってたような魔封じ系の何かを持ってたのか!?
「エレナ! フィー! 今から俺は転移で国に戻る! 2人は怪鬼達を守りながら帰ってきてくれ!」
俺は2人の返答を聞く前に転移で国に戻った。
フィデース帝国の周りには大量の魔獣が出現していた。
どうやら城壁は破られて居ないようだがエルフ達が相当無理してるはずだ。クイックはどこにいる。
商業地区の方面から轟音が響く。
あの音はクイックの溶岩魔法だな。
魔獣は産業地区と商業地区の方から大量に現れている。
俺は産業地区に急いで向かった。
多分だがクイックの方は大丈夫だこの程度屁でもないはず。
「大氷結!」
「ノーチェ!」
「悪い遅れた! エリーナはエルフ達を引かせろ! あとは俺がやる」
どこでバレた……何故わかった……まぁ色々疑問はあるが。
エリーナのあの顔、あんなに悲しそうな顔初めて見た。
「畜生共……覚悟は出来てんだろうな」
知性のない化け物共は俺に向かって突っ込んでくる。
「ダークプール!」
魔獣たちの足元がドロドロとした深い闇に変わり全てを飲み込んでいく。
「掃除終了」
魔獣達がいた大地にはもう何も残っていなかった。
「エリーナ!」
俺はあの後居住区に新築した病院に向かいエルフたちの状況を聞いた。
「死者は0人、商業地区に関してはクイックが全て片付けてくれたわ……けど」
エリーナが視線を向けた先には胸に大きな傷が着いたガロリアが眠っていた。
「私が……前に突っ込んで行かなければ」
涙を流しながらごめんなさいと言い続けるエリーナを背に俺は何も言わないで病室を後にした。
「ノーチェ」
病院から出てくるとクイックが声を掛けた。
「悪い……商業地区は何とか片付けたんだが産業地区の方は」
「なぁクイック……これはどういうことだろうか」
その声を聞いたクイックはビクリと体を震わせる。
「俺の国に魔獣を差し向ける意味……それがわかっているんだろうか」
「俺の仲間を……傷付けた意味……泣かせた意味を、理解しているんだろうか」
クイックはこれまでに感じたことのない圧に唾を飲む。
「戦争だ……何としてもゼーレを見つけ出すんだ。そしてあいつに絶望を味あわせてやる」
その時の俺の目は獲物を狩る蛇の目そのものだったと後にクイックが話していた。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv8
所持アイテム星紅刀
《耐性》
痛覚耐性Lv3、物理攻撃耐性Lv7、精神異常無効Lv3、魔法攻撃耐性Lv6、状態異常無効Lv10
《スキル》
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv6、絶無Lv5
《魔法》
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6、深淵魔法Lv10
《???》
謀る者Lv7、強欲
《資格》
導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
クイック・ミルキーウェイ
赤岩土竜Lv4
《耐性》
物理攻撃耐性Lv6、精神異常耐性Lv6
《スキル》
探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv4、高速移動Lv9、強化Lv5、回避Lv4、体術Lv6、斬撃Lv6、集中Lv5、追跡Lv5、空間把握Lv6
《魔法》
火炎魔法Lv4、風斬魔法Lv6、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv6
《???》
食す者Lv1