47話 自動人形
ゴーロン村騒動から数日後。
俺達はフィデース帝国の戦力不足について話し合っていた。
「獣人達との戦い……正直あの5倍の数が攻めてきてたら厳しかったかもなぁ」
「そうねぇ……5倍は私達ハーピー部隊でも対処しきれるか怪しいところね」
エレナが机に置いてあった戦闘報告書を手に取る。
「……それにしても大きくなったね」
「それはどこの事かしら」
わざとらしく胸を揺らすエレナ。
やめてください! 童貞には刺激が強すぎます!
「身長と……まぁやっぱり羽だよね」
俺は咄嗟に誤魔化す。
エレナは前回の戦いで経験値と特殊な進化先が開放されたらしく黒翼族というものになったらしい。
特徴としては白い羽が黒くなりツノが生えている。
これは本人にしか分からないが白い羽よりも圧倒的に早いらしい。
「……はぁ進化にここまで差があるなんて」
エリーナが自分の胸を残念そうに見つめる。
まぁエリーナの大きな変化は肌の色が黒くなったということ。
ちなみにエルフたちはエリーナの他にガロリア含め7人がダークエルフに進化したらしい。
まぁ……胸に変化はなかったようだが。
「いてててててて!」
「今ノーチェ失礼なこと考えたでしょ」
エリーナが俺の頬を引っ張る。
「考えてひゃい! 考えてひゃい! はなひへぇ〜」
「全く! 女の子はそういうの分かるんだからね」
俺も生物学的には女の子なんだけどなぁ。
「ふざけるのはそのくらいにして本題に入るよ」
クイックが少し呆れた口調で話し出す。
「今この国にある戦力はガロリアが率いるエルフ部隊300、エレナ率いるハーピー部隊が30。の合計330人だ」
うーん……やっぱり1万人の国にある戦力としては少ないよなぁ。
まぁ俺とクイックが出ればある程度のことは対応できるけどそれじゃあ本当の緊急時に国を守れない。
「軍備強化を理由に徴兵制でも導入するか」
まぁ冗談だけど。
「そうねぇ……まぁノーチェの為なら戦えるって人割と多いからそれもいいかもねぇ」
えっ……。
「確かにそれなら解決するな」
クイックさん!?
「我々はノーチェ殿に全てを捧げる覚悟です!」
いや全ては捧げなくていいから!
「まてまてまてまて! 冗談! 冗談だから!」
なんで普段頭いいのに俺が関わると直ぐ馬鹿になるのこの人たち!
「とにかく何がいい案はない?」
会議室が静まり返る。
その沈黙を破ったのは以外にもエリーナだった。
「そういえば思い出したんだけど、ドワーフの国の警備って自動人形がやってたわよね」
自動人形?
「あぁ、それなら俺も見たことがある魔力を込めて動かす人形のことだな」
ロボットのようなものか。
しかしエルフってのは博識だなぁ。
「ドワーフに頼んで作って貰ったら?」
「なるほど……確かにそれはいい案かもしれない」
「わかったそれじゃあ俺はドワーフの方々に頼んでくるよ。みんなはそれぞれの持ち場に戻ってくれ」
会議はそのまま終了して俺は商業地区に向かって行った。
「おーい! ガンド〜……居るかぁ?」
ここは商業地区で最も大きい工場のデレラン生産工場。
デレラン生産工場では銃器や防具、生活用品からおもちゃに至るまで様々な物を作っている。
「おっこれはこれはノーチェ殿」
奥からガンドが出てきた。ガンドの顔や体は所々黒く少し汚れている。
多分だが何かを作っている最中だったのだろう。
「あぁ仕事中に申し訳ない。少し相談したいことがあってな」
「……分かりました、そういう事ならこちらへどうぞ」
俺はガンドの後ろについて行き奥の応接室へと入っていった。
「それで相談とはなんでしょうか」
ガンドがお茶を差し出す。
「うん……まずこの国は人口に対して戦える人数が少ないという問題を抱えている。ハーピーとエルフを合わせて330人、これではもしもの時に対処出来ない」
ガンドの目付きが変わった……これが職人の目か。
「そこでドワーフの国の警備にも使われている自動人形の作成をお願いしたい」
「わかった」
即決かよ……。
「えっ……いやその自動人形はドワーフの国で使われている大切な兵器とかじゃ……」
「ん? あれは量産型じゃ……まぁここでは人数に限りがあるので1週間で5000体くらいが限界じゃがな」
ド、ドワーフの国ぱねぇ。
「まぁ数だけなら5000体じゃが」
ガンドの口角が少し上がる。
「ここには最上級ダンジョンが存在する! いいじゃろう! ドワーフの国の兵器などゆうに超える最高の自動人形を作り出してやろう!」
「お、おぉ……さすがガンド」
凄い勢いだ。
「それにノーチェ殿の頼みじゃしな……滅多に来ないし」
うっ……ガンドの目が痛い。わかったよこれからはちょくちょく顔出すようにするよ。
「わかった……ありがとうそれじゃあ1週間後、商業地区で」
「いや作った自動人形はそのままノーチェ殿の自宅に連れていく。びっくりさせてやるから楽しみにしておくんじゃな」
……本当に頼もしいドワーフだよ。
その後銃器に関する話を軽くしてから俺は商業地区を後にした。
「いやぁしかしガンドの熱量半端なかったなぁ」
自動人形で驚かすって何する気だろうか……めちゃくちゃでかいロボットにするとか? それとも破壊光線でも出すつもりなんだろうか?
そんな事を考えていると羽の音が聞こえてきた。
「ノーチェ〜ドワーフ達とは上手くいったのかしら?」
「上手くいったよ、あとさ空からいきなり降りてくるのやめてくれない? 本能的に危険を感じるから」
蛇の習性なのか羽の音が聞こえると少しビビる。
「あ〜……ノーチェは蛇だもんね」
「次からは降りて声かけてね」
エレナが地面に着地して近寄ってくる。
「考えとくわ〜」
……首が痛い、前と大きかったけど進化してからはまるで巨人だ。
「……」
「ごめんね〜ノーチェちゃん小さいから怖かったわねぇ〜」
エレナが俺の頭を撫でる。
「やめぃ! 何すんだよ全く」
「ほーらこれなら同じ高さでしょ?」
「う…….まぁそうだが」
しゃがんでくれるなら最初からしろよな……全く。
ふざけていたエレナの目が真剣なものに変わる。
「ノーチェに頼まれてた件だけど……」
「そうか……まぁ毒の剣が使われている時点でなんとなくわかってたが」
俺はゴーロン村の出来事から生き残りが居ないかハーピー部隊を使って村の周辺などを探索させていたんだが。
「まぁ落ち込んでも仕方ないさ……フィーを救えただけでも良しとしよう」
「あと……追加報告なのだけど」
エレナは少し顔を上げる。
「ゴーロン村から少し離れた所に怪鬼の住処を見つけたわ」
「怪鬼……ってなんだそれ?」
真面目な顔をしていたエレナが呆れた様子で答える。
「怪鬼は生と死の狭間にいる存在とされ昔から恐れられていた鬼よ……けどその話には様々なデマが付け加えられてね……」
「例えば、厄災を引き起こすだとか……病原体をばら撒くとか。そのくだらない噂のせいで入国を禁じられ迫害を受け……今では誰も管理していない土地でひっそりと暮らす可哀想な生き物に成り下がってしまったわ」
言い切ったエレナは俯いてしまった。
……そうかエレナ達もそんな風に。
「……それじゃあ会いに行こうか」
「え?」
エレナは拍子抜けた声を出す。
「だってそれを俺に報告するってことは助けたいんだろ?」
それにエレナには悲しい顔してるより元気に笑っていて欲しいんだ。
「ノーチェ……ありがとう」
暗かったエレナの顔は明るいものに変わっている。
「よし! それじゃあ準備を済ませて怪鬼の村に出発だ〜!」
………………。
「ふふ……はははは……これだ……これで俺は」
暗い研究室の中で薄気味悪い男の声が響く。
狂気に染められた男の瞳に映るのは謎の液体に漬られている化け物だった。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv8
所持アイテム星紅刀
《耐性》
痛覚耐性Lv1、物理攻撃耐性Lv7、精神異常耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv5、状態異常無効Lv10
《スキル》
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv6、絶無Lv5
《魔法》
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6、深淵魔法Lv10
《???》
謀る者Lv7、強欲
《資格》
導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者
クイック・ミルキーウェイ
赤岩土竜Lv4
《耐性》
物理攻撃耐性Lv6、精神異常耐性Lv3
《スキル》
探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv4、高速移動Lv9、強化Lv4、回避Lv4、体術Lv4、斬撃Lv5、集中Lv5、追跡Lv4、空間把握Lv6
《魔法》
火炎魔法Lv2、風斬魔法Lv5、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv6
《???》
食事Lv9