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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
革命編
45/261

45話 溺れるような血の匂い

コツ……コツ……コツ……コツ


誰もいない広い廊下に俺の足音が響く。


……コツ……コツ……コツ…………。


そして俺は玉座がある扉の前で静かに止まった。

扉はひとりでに開き出した。


ギィィィィ……ガチャン。


……。

奥の玉座には酷く冷めきった目で俺を見下ろすザックがいた。


「……ノーチェ殿、なぜこちらに?」


先程の顔から穏やかで優しい顔に戻ったザック……まぁ俺には関係ないが。


「フィーがどうしてもお父様を助けたいと言うものですから」


俺は少しずつ……しかし確実にザックの元に向かっていく。


「…….」

「…….」


玉座の椅子に座るザック、ただただ呆れたような目で俺はそれを見つめる。

2人は何も話さないまま時間だけが過ぎていく。

先に口を開いたのはザックだった。


「ここに来た……ということは全てわかっているのでしょう」


ザックは諦めたのか溜息を着いた。


「どこでバレてしまったのでしょうか」

「……そうだな、俺も最初は気づかなかったさ」

「要因としては色々あるが……まず違和感を覚えたのは敵が使ったと思わしき武器だ」


それを聞いたザックは眉をひそめた。


「この武器……転移する直前に見た兵士と同じものだった」

「それはたまたま武装が同じだっただけでは?」


どこか嘲笑うかのようにザックが吐き捨てた。


「悪いな……俺は1度獣王国に行ったことがあるんだ。あんな装備は見たことがない」

「それに村にあった死体はほとんどが老人や子供達だった、兵士の死体は転移前に見た1人だけだ」

「……」

「おかしいだろ? 獣人国が攻めてきたって言うのに兵士達はあんたの家の中で待機……なんてよ」


ザックは話を聞きニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「ノーチェ・ミルキーウェイ、お前は私が思っていたよりも優秀な駒だったらしい」

「駒扱いとは心外だな」


俺は静かに刀を抜く。


「安心しろ……お前もその国も私が有効活用してやる」


玉座から立ち上がりザックが戦闘態勢に入る。

俺の国を有効活用してやるだって?


ザックは知らないうちに……俺の逆鱗に触れた。


「死ね! ノーチェ・ミルキーウェイ!」


斬撃が神速を超えた速度で飛んでくる。しかしそれは俺が軽く振った刀に両断されはるか後方にふたつの大きな穴を作った。


「なるほど……ただの人間ではないか。だがなお前の正体はわかっている!」


するとザックは懐から何かを取り出した。


「これは魔法を封じる道具だ! お前は魔法の扱いに長けた人間だろう! 昔聞いたことがある人間の中にはスキルや耐性が少ない代わりに魔法力が龍に匹敵するほどの化け物が生まれることがあると!」


魔封じの道具を高くあげてザックが「発動せよ!」と叫ぶ。


「はははははは! これでお前はただの人間だ! 形勢逆転だな! どうする! 私の靴を舐めて命乞いをするか? それとも全てを捧げ私の奴隷となるか?」


なんてくだらない……早く終わらせるとするか……。


「それともお前の国の民を差し出して自分だけでも助けて欲しいと懇願するか!?」


その一言を聞いた瞬間俺の中にあった理性は焼き切れた。


「あ? 俺が自分の国の民をてめぇに差し出すだ? 戯言も休み休み言えよ……。」


ザックはそれを聞いた途端体が震え出した。



な、なんだこいつ……さっきの雰囲気からは想像もできない程の殺気……。

嫌な汗が止まらない……呼吸が早くなる。手の震えが酷くなっていく。


いや落ち着け! 魔法はもう封じたんだ! そうかわかったぞ! 恐らく威圧のスキルだ……。は、はははは! 私を屈服させて戦わずして勝つつもりだったな。だが甘い! たかだか人間風情が獣人に叶うはずがないのだ!



「ふっ! ははははは! そうかお前はそんなくだらない手で私に負けを認めさせようとしていたのか。程度の低い人間が考えそうな手だ! やはりお前達なん…….て?」

「どうしてだろうか? ……俺の周りの敵は何故こうも俺を不愉快にさせるやつばかりなんだろう」


先程まで玉座の下にいた俺はザックの後ろに回り込んで腹部を刀で貫いた。


「は? ……魔法は封じて」


……こいつはまだ俺の事を人間だと思ってるのか、こうも馬鹿だと会話するのも疲れるな。


「……何故だ! なぜお前は動ける! 私の速さよりもさらに早く!」


おっ! 泣き叫ばない……さすがにあのバカ貴族とは違うか。俺はそんな事を思いながら腹に刺さった刀を乱暴に引き抜く。


「はぁ……はぁ、まぁいいさ……今回の勝負はどう転んでもお前の負けなのだがら」


いや……よく見ろよどう考えてもお前の負けだろ。


「お前は賢かったが2つミスを犯した。私の村の民を自国に避難させたこと、そしてここに私以外が居ないことに気付かなかったこと」

「今頃私の兵士がお前の国を蹂躙している頃だ! はははは! お前がくだらない話を長々としないで私の事を即座に殺していればこんなことにはならなかったというのに!」

「ははははははははは!」


ザックの気持ち悪い笑い声が玉座の中で反響する。

俺はその姿があまりにも滑稽で笑いを堪えられなかった。


「ふ……ははは……ははははははは。」


それを聞いたザックはとても不快そうな声をあげた。


「なんだ……自国の民を皆殺しにされる姿を想像して狂ったか?」


本当に……なんて面白くてくだらないんだ。こんなバカに騙されてたなんて自分の愚かさに反吐が出る。


「まぁいいだろう狂った相手をするのは退屈だお前の首を持ってこの戦いを」

「いや……本当にお前如きに騙されていた自分を恥ずかしいと思うよ」


ザックはその言葉を聞いて口角を上げて自慢げに話し出す。


「そうだ! これが人間と獣人の差だ! 愚かなお前にようやく理解が!」

「そんな罠俺が気付かないはずないだろ」


空気が凍る……先程まで大笑いをしていたザックは驚いた顔で俺を見る。


「俺は本当に自分のことが馬鹿だと思うよ……お前と会った最初の時点で気付くべきだった」

「最初? ではお前は私が送った兵士に気付いていたというのか……」


そこまで言わないとダメか……本当になんて愚かなやつ。



「ひぃぃぃぃ! やべでぇ!」

「だずげでくだざい」


獣人たちの断末魔が響く。

しかしここは居住区から離れた産業地区……誰も人は来ない。


「ノーチェの国に汚ぇ足で入りやがって……覚悟出来てんだろうな」


そこには見たこともない形相で怒っているクイックが居た。


「なんだ! この化け物は! こんなやついるなんて聞いてないぞ!」

「逃げろ! 逃げろー!」


ガチャガチャガチャガチャ!


「ど、ドアが!」

「お前らはどこにも逃がさねぇよ……俺はノーチェ程優しくないんだ……せいぜい苦しみながら死んでくれ」

「ぎゃあ!」

「だずげ!」



「なんだあれは!」

「全員空から来るぞ! 急いで弓を用意しろ!」

「そんな攻撃じゃ私たちハーピーにはかすり傷も付けられないわよ」

「離せ! なんだお前達は! この! 降ろせぇ!」

「あら、いいの? それじゃあバイバイ」


エレナ空高くまで上げた獣人を地面に向けて落としていった。


「人間の国じゃなかったのかよ! なんでこんな所に化け物共がいるんだ!」

「全員放て!」

「ぎゃあああああ!」


城壁の上から大量の弓が一斉に放たれる。その一撃は獣人の軍隊を壊滅させるには充分だった。


「ガロリア……別に良かったのよ私たちだけで片付けても」

「俺はフィデース帝国の警備隊だ。敵を殲滅させるのが我々の仕事」



「とまぁ今頃俺の優秀な仲間がお前の部下たちを殲滅してる頃だろうな」

「ふ! ふざけるな!」


ザックは怒りを抑えきれず俺に向かって全力の攻撃を放つ。

そんな大振りな攻撃が俺に……


「当たるわけないだろ!」


右からの強い蹴りがザックの腹部に直撃、メキメキと嫌な音を立てながら吹き飛んでいった。


「……さて……そろそろ終わりにしようと思うのだがその前に1つ質問がある」


それを聞いたザックは震えながら首をあげる。


「お前……フィーに手紙を送ったり戦場に残ると言った時本気で怒ったりとフィーのことは大切にしている様子だった。あれは演技だったのか?」


ザックは口角を少しあげて答えた。


「フィー……かフィーは私の唯一の宝だ。こんな私ではあるが……フィーだけは、あの子だけは幸せになって欲しいと心の底から思っている」


……。

「あの子は小さい頃に母親を亡くしている。それから私は男手ひとつであの子を育ててきた、本当に……本当に心から大切な私の娘。どうかあの子だけは助けてやって欲しい」


俺はザックの言葉を聞き終わり口を開いた。


「はは……本当に俺はお前のことが怖いよ」

「なんだ……」

「いやもういいや……黙ってくれ」

「お前私の娘をどうするつも」

「黙れって言ってるだろ!」


俺は今まで聞いたことのないほどの大声を出す。


「はぁ……はぁ……お前は娘のことなんてなんとも思ってないじゃないか」


ザックの目付きが代わる。


「俺のスキルには心理掌握ってのがあってな……相手の考えてること、思ってることが手に取るようにわかるんだ」


こいつ……娘のことを微塵も考えていなかった。


「くっ……ふふ……あはははははは!」


何が面白いのかザックが笑い出す。


「そうさ! 娘もただの駒に過ぎない! 私の為に糧となり私の為に生きて、私の為に死ぬ! とても幸せなことでは無いか!」


……。


「あの駒に関しては正直失望していた! 目の前で母親が殺されたというのに自分の力を解放するのではなく塞ぎ込んで……まぁそのおかげで騒がしかったあれは俺の言うことを聞く従順な駒に成り下がった訳だが」


どこまでも……。


「しかしそれも今日まで! お前のおかげであの駒は進む者を完全に解放した! 私の奪う者であれから進む者を奪えば私は今度こそ獣の中の頂点に君臨することが出来る!」

「まぁ……本来であればフィデース国に攻め込みお前をフィーの前で惨たらしく殺して力を確認するつもりだったが……こうなっては仕方ないなぁ!」


ザックの不愉快な声が玉座に響いてさらに不快感をあげる。


「……」


どこまでも…….。


俺は立ち上がりザックを見下ろす。


「貴様のスキルも奪う者で全て回収して俺の糧にしてやろう!」

「奪う者! あいつのスキルを奪い取れ!」


ザックの左手が紫に光る。しかしそれ以上の変化はなく何も起きないまま光は消えていった。


「な、何故だ! 何故スキルが奪えない!? このスキルで奪えないのは準伝説の上……伝説級のスキルだけのはずだ」


先程まで勝ち誇っていたザックの顔が恐怖と絶望の顔に変わっていく。


「まさか……お前七つの伝説級スキルを持って……」


どこまでもどこまでもどこまでもどこまでも! 俺をどこまで怒らせれば気が済むんだこいつは……。


「……もういいよお前」


発した俺の声はとても低く恐ろしいものだった。


シュッ!


ザックの首に一筋の光が過ぎ去っていく。

その瞬間……ザックの生命活動は停止した。



「父……様?」


後ろから声が聞こえる……。


「えっ……ノー……チェ? なん……で」

「……」


俺は刀の血を地面に向かって払いカチャリと鞘に収めた。


「どうして……なんで……えっ父様……? なんで父様が……どうして……ノーチェが……」

「あっ……あっ……」


フィーは頭の容量がオーバーしてしまったのかその場で気絶してしまった。


現在のステータス

ノーチェ・ミルキーウェイ

始祖蟒蛇Lv7

所持アイテム星紅刀

《耐性》

痛覚耐性Lv1、物理攻撃耐性Lv7、精神異常耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv5、状態異常無効Lv10

《スキル》

知り尽くす者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド) 、横溢Lv5、絶無Lv5

《魔法》

回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、氷結魔法Lv10、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6、深淵魔法Lv10

《???》

謀る者Lv7、強欲

《資格》

導く者

《称号》

神に出会った者/神を救った者


クイック・ミルキーウェイ

赤岩土竜Lv3

《耐性》

物理攻撃耐性Lv6、精神異常耐性Lv3

《スキル》

探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv4、高速移動Lv9、強化Lv4、回避Lv4、体術Lv4、斬撃Lv5、集中Lv5、追跡Lv4、空間把握Lv6

《魔法》

火炎魔法Lv2、風斬魔法Lv5、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv6

《???》

食事Lv9

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