41話 職人の夢
「……いやぁ遅くなってすみませんでした、なにぶんドワーフの方々は頑固な方が多いので」
「いやアラン殿ドワーフの方達を説得して村に連れてきてくれたのはいいんですよ、ものすごく感謝しています」
「けどね……少し多すぎやしませんか?」
俺は目の前にいる2000人のドワーフを見ながら言った。
「あははははは」
笑えねぇって!
「1度ドワーフの方達は旅館の方に向かって頂きました」
エリーナがお茶を出しながら報告した。
「いやぁありがとうございます。それにしても随分と大きくなりましたね」
「それは村ですか? それとも俺の家ですか?」
「もちろん両方ですよ」
アランはお茶を飲みながら答えた。
「それで……アラン殿、ドワーフの方々はここに住むことを承諾してくださっていると認識していいんでしょうか」
それを聞いたアランは持っていたお茶を置いて話し始めた。
「私はドワーフに村のことを紹介しただけです。ここに住むかどうかは分かりません」
なっ!
「とはいえ……国から数十kmも離れた小さな村にわざわざ足を運んだということはそれだけ興味があるとも受け取れます」
「……なるほど、ドワーフをたらし込むのは俺達の役目ってことですか」
俺の言葉を聞いてアランはにっこりと笑った。
その後はアランと今後の外交について話し合いしばらくした後帰っていただいた。
次来た時村がどれだけ発展してるか楽しみです……。
だってさ。
「次来た時はアランの驚いた顔絶対みてやるからな」
「ノーチェ……悪い顔してるよ」
隣にいたクイックがやれやれといった様子で俺を見つめる。
「さてと……次はドワーフをもてなさないとな」
そうして俺はドワーフ達が泊まっている温泉旅館に向かった。
「本日はフィデール村に来てくださって誠にありがとうございます」
俺は5人のドワーフに挨拶をする。
左からガンド、ドラン、クルル、ハルト、アゼル。
アランの話によれば5人ともドワーフの国では有名な鍛治職人らしい。
「大丈夫だ、このように珍しい食べ物や酒。歓迎されているのは見れば分かる」
ガンドがそういうとほかのドワーフ達も頷いた。
「それで我々は未知の武器を作る為にこの村にきたわけじゃが」
「正直この村で作るよりもカーヴェ地下帝国の方が設備的にも整っておる」
やはりその問題が出てきたか。
この村には鍛冶屋がない……ドワーフ達が来ることがわかった数日前からクイックや村の人たちに協力してもらって村の一角を改造、大規模な工場やドワーフの家を作成した。
しかしその数はドワーフと比べ圧倒的に少なく設備も完璧とは言えない。
「まぁ我々としてもノーチェ殿に不利益が起きないよう最大限立ち回るがこの村に住んで武器の開発をするのは少し考えさせて頂きたいと思っておる」
「まぁ……設備はいずれ整うとして近くにダンジョンがなければ貴重な鉱石も取れないしなぁ」
クルルが放ったその一言は俺にとってとても大きな一言だった。
「ダンジョン?」
「あぁそうじゃダンジョンには様々な鉱石やドロップ品が眠っておる。カーヴェ地下帝国には中級ダンジョンが6つ、上級ダンジョンが2つあってそこから必要な鉱石を自分で取りに行って加工、作成を行っておる」
「……上級ダンジョンなら村の近くにありますよ」
それを聞いたドワーフ達は口をポカンと開けた。
「どこじゃ! どこにあるんじゃ!」
「コラ! 落ち着けドラン!」
「そう言ってお主も興奮してるでは無いかアゼルよ」
俺は今5人のドワーフをゼーレスクダンジョンに連れて行っていた。
「ここですね」
俺は洞窟を指した。
「おぉ! この雰囲気! 良いのぉ良いのぉ!」
いやもう真夜中だけど……正直俺怖いんだけど。
「ノーチェ殿! 中の案内も頼んでいいか!?」
「あ、あぁ分かりました、行きましょう」
「それはそうとノーチェ殿は何故フードを被っておられるのだ?」
ダンジョンの最深部に移動中ガンドが聞いてきた。
「ガンド! そういうのは聞いちゃダメなんだよ!」
「はぁ……それも女性に対してデリカシーのない」
「なんじゃ! 気になってしまったものは仕方ないじゃろうが!」
ガンドは注意してきたハルトとアゼルに強い口調で返した。
「……そうですね、後で言うのもなんですから」
そう言って俺はフードを取った。
5人のドワーフは一瞬静かになったがすぐに話し出した。
「そうか……人ではなかったか」
「まぁ……わしらとしてはノーチェ殿が人だろうとそうでなかろうと大した問題では無いからの」
「むしろ顔を見せてくれて感謝する」
「そうじゃな、綺麗な顔をしている。村では男共が放っておかんじゃろ」
「ガンド!」
どうやらガンドは少しデリカシーに欠けるようだ。
「さて着きましたよ」
するとクルルが驚きの声を上げる。
「ノーチェ……殿これは」
ほかのドワーフ達も扉を見て驚いている様子だ。
「? どうかしましたか?」
「ノーチェ殿……これは上級ダンジョンではない」
俺はその言葉に驚きを隠せなかった。
上級ダンジョンじゃない!? ……あの強さで上級じゃないのか、てことは中級。あの蜘蛛と同じか……いや強さに差がありすぎだろ!
「これは……これは最上級ダンジョンと呼ばれるものじゃ」
「え?」
「最上級ダンジョン……それは世界で発見されているダンジョンの中でもたった4つしかないと言われている幻のダンジョン」
「ま、まさかこんなところで見ることが叶うとは……」
ハルトは扉を前に涙を零していた。
「……ノーチェ殿」
「なんでしょうか」
「このダンジョン……まだ探索も採掘もしていないと言っていたな」
……そうだね、俺達はここのボス倒したらすぐ居なくなったし。
「その通りです」
「わかった……」
ドワーフ達は1列に並び深く頭を下げた。
「えっ!? ちょっと何してるんですか!?」
俺は慌てて止めようとする。
「ノーチェ殿先程の無礼謝罪する。我々を是非ノーチェ殿の村、フィデース村に置いていただけないだろうか」
「このダンジョンはドワーフの夢! それも未だ誰の手も付けられていない最高の状態! この地でノーチェ殿の元で! 研究することを許可して欲しい!」
……職人の夢。
頑固で捻くれ者が多いドワーフが己の夢のため故郷を捨てて、頭を下げてまでも頼み込んでいる。
俺はそんな姿を見て……目頭が少し熱くなった。
「分かりました……それに俺達の力ではこのダンジョンを最大限活かすことができませんから」
俺は笑いながらドワーフの肩を叩いた。
「これからよろしくお願いしますね」
ガンドはそれを聞いて力強いグッドマークを見せてくれた。
俺はあの後大扉の先を少しドワーフ達に見せて転移で村に帰ったのだが。
「……ノーチェ! あんな時間にダンジョンに入るなんて何考えてんの!」
「いや! 待ってくれクイック殿! ノーチェ殿は我々の我儘を聞いてくれただけで……」
「それとこれは別問題です!」
クイックは俺がなんの連絡もなしにダンジョンに向かったことについて凄く怒っているようだ。
「クイック……ごめん心配かけて」
「本当だよ! せめて一言声掛けてくれてもいいじゃない!」
全くその通りでございます。
「はぁ……全く本当に心配したんだから……」
クイックは俺のことを静かに抱きしめた。
「えっ!? クイック!?」
「うるさい! 今は黙ってて」
後ろから「おぉ!」とドワーフ達の声が聞こえた。
……今度ぶっ飛ばそう。
俺はその後クイックの頭を撫でて何度も謝り二度と黙って居なくならないと約束したことでようやくハグから開放された。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv6
所持アイテム星紅刀
耐性
痛覚耐性Lv1、物理攻撃耐性Lv7、精神異常耐性Lv7、魔法攻撃耐性Lv4、状態異常無効Lv10
スキル
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv4、絶無Lv3
魔法
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6
???
謀る者Lv4、強欲
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神に出会った者/神を救った者/導く者
クイック・ミルキーウェイ
赤岩土竜Lv3
耐性
物理攻撃耐性Lv6、精神異常耐性Lv2
スキル
探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv4、高速移動Lv9、強化Lv4、回避Lv4、体術Lv2、斬撃Lv1、集中Lv5、追跡Lv4、空間把握Lv4
魔法
火炎魔法Lv2、風斬魔法Lv4、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv4
???
食事Lv9