40話 こぼれ落ちないように
俺とエリーナはザックとの話し合いが終わり自分たちの村に向かっていた。
「ねぇ〜フィーちゃん置いてって良かったの〜?」
エリーナが馬車の中から聞いてきた。
「いやフィーはあの国の子だから」
「えぇ〜私仲良くしたかったなぁ」
どうやらエリーナはフィーと友達になりたかったようだ。
「大丈夫だよ、同盟中なんだからすぐに会えるさ」
「そうそう! すぐに会えるさ!」
……。
「うっわ! なんで居んの!?」
先程まで誰もいなかった俺の隣にフィーがいつの間にか座っていた。
「え〜父様がフィーも外の世界を知りなさいってノーチェのところに預けたんだよ〜」
「えぇ……」
そういうことはまず! 俺に! 言えよ!
「ノーチェ! 来ちゃったものは仕方ないわ! フィーちゃん! これからよろしくねー」
……まぁ、エリーナも嬉しそうだしいいか。
「わかった……とりあえず村に戻ったらフィーの家探しから始めようか」
そうするとフィーは不思議そうな顔をした。
「え? フィーはノーチェと一緒に暮らすぞ」
……。
馬車が沈黙に包まれた。
「やだやだやだぁ! ノーチェと同じところに住むの〜!」
……俺達は今村に帰りクイックやガロリア、ゼンとエレナ達に何があったのかを説明し終わって会議室から出てきたところだったのだが。
「こら! フィーダメでしょ、わがまま言ったら!」
ドアの前でバタバタと暴れ回るフィーそしてそれを引っ張るエリーナ……。
いやどういう状況。
「あっごめんなさいノーチェ、フィーがどうしてもって言うから連れてきたんだけど」
「やだやだ! ノーチェと同じところで暮らすの! 毎日戦って強さ比べするんだ〜!」
いや、やめて。君と戦うの割と疲れるから。
「はぁ……」
俺が頭を抱えているとクイックが口を開いた。
「わかった……じゃあフィー、俺と一騎打ちで勝てたら一緒に暮らすことを許可しよう」
「クイック!?」
俺は止めに入ろうとした所をエレナに止められた。
「むぅ! むぐぐぐぐ! むぅ!」
「おおぉー! よしわかった! じゃあえっと……黒いの! 戦うとしよう!」
そういうと2人は外に行ってしまった。
「むぅ! んんん! ぷはぁ! 何すんだよエレナ!」
俺は押さえつけられていた腕をどかしてエレナに聞いた。
「……はぁ、ノーチェはなんにもわかってないのね」
エレナは呆れた様子でそう言い放ちクイックとフィーの戦いを見に行ってしまった。
その後俺はガロリアとゼンを見たが2人ともちょっと呆れた様子で俺を見てきた。
「勝負の方法はこの枠から出る! もしくは相手が倒れれば負け! 2人ともなにか意見はある!?」
「ない!」
「大丈夫だー!」
「はぁ……別に俺はフィーが一緒に暮らすくらいどうでもいいのに」
俺は自分で用意した椅子を雑において座り込んだ。
「なんでエリーナが仕切ってんの?」
「え〜わかんないけど面白いからいいじゃない」
エレナは訳の分からないことを言って頬に羽を添えた。
「それではノーチェと一緒に暮らす権利を巡って……勝負開始!」
その瞬間フィーは全速力でクイックに向かっていく。
「初めから外に弾き出す作戦か」
ガロリアが関心した口調で話している。
弾き出す? ははは、クイックがあの程度の速度を見切れないはずがないだろ。
俺の憶測は当たり圧倒的な速度で攻撃をしたフィーはクイックに腕を捕まれそのまま外に弾き出された。
「なっ!」
「勝負あったな」
「そこまで! 勝者、クイック・ミルキーウェイ!」
周りから歓声があがる。
「ぐぬぬ……ノーチェの部下だからそんなに強くないと思ってたのに」
その一言が場の空気を凍らせた。
「大体ノーチェは私といい勝負してたんだから! なんで部下のクイックの方が強いんだよ〜!」
「フ、フィーちゃんその辺に……」
エリーナが怯えながら注意をする。
「なんでなんで! だって本当じゃん! 大体父様はノーチェは強いから私も強くなれるって言ってたけどこれじゃあなんにも」
「そうかぁ……それじゃあ俺が特訓を付けてあげよう」
……あれ? クイック怒ってる。
「へぁ! え? あっちょっと……なんかクイック……さん? 怖くない〜かなぁ……あははは」
フィーは大粒の汗を大量にかきながら後ずさりをする。
しかしクイックがそれを見逃すはずもなくフィーは引きずられながら森の方に消えていった。
「……? あれなんでクイック怒ってんの?」
この場で唯一状況が飲み込めてない俺はエレナに質問する。
「……ノーチェあんたはもう少しクイックの気持ちをわかってあげなさい」
エレナは俺の肩をポンッと叩いて村の方に居なくなった。
「うーん……クイックの気持ち」
俺はあの後家に戻り自室のベッドでエレナの一言をずっと考えていた。
クイックの気持ち? いやいや俺はクイックと凄い仲良いんだぞ、それこそ村の誰よりもその俺がクイックの気持ちがわからないなんてこと……。
「うーん」
そんなことを考えていると扉が静かに開いた。
「あれ? ノーチェ、休憩中だったか?」
クイックは咄嗟に手に持っている書類を隠した。
「いや……ちょっと悩み事」
「ノーチェが悩み事? 珍しいな」
「なんだよ、全く俺だって悩み事の1つや2つあるわ」
クイックが笑いながら言うもんだから俺は少し不貞腐れながら返答した。
「はぁ〜面白いな全く、それで?なんの悩み事だ?」
「クイックの気持ち」
それを聞いたクイックは持っていた書類を床にばらまいた。
「お、俺の気持ち!?」
「そうだよ、エレナが俺に言うんだよもう少しクイックの気持ちをわかってあげなさいって」
俺はエレナの真似をする。
「あ、あぁそういう事か」
クイックは何か納得した様子だ。
「全く変なこと言うよなぁ、俺はクイックのこと全部わかってるのに」
俺はそうだなという返答を期待していたのだが静かな沈黙が流れてしまった。
「……あれ? クイック……?」
……も、もしかして俺に何が不満があっ……たり。
「えっ……とそのクイック……さん? 何か俺に対して……思う所があるとかなら……教えてくれると……嬉しいんですけ……ど」
どうしよう……黙ったままだ……もしかしてエレナに何か愚痴ってたのか!? それでエレナは遠回しに注意を……。
「あっ……えっと……その」
俺が下を向いたその時だった。
「ノーチェ!」
クイックが俺の肩を掴んで顔を上げる。
「な、な、な、なんでひょうか!」
びっくりした俺は声が裏返ってしまった。
なんでひょうか! ってなんだよ! テンパりすぎだろ俺!
「その……ノーチェは、ノーチェは……お、俺とケルロスどっちが大切だ……」
えっ!? ケルロスとクイック!? いやまぁそりゃ同じくらい大切だけど。
「それは……2人と」
「どっちがしか選べないとしたら! どっちを選ぶ」
クイックの手に力が入る。
……どちらかしか選べない……そんなの決まってる。
俺は肩にあるクイックの手を退けて答えた。
「どっちも選ぶ! 俺はどっちかを選ぶなんてこと絶対にしない!」
誰も……失わない! どっちかしか助けられない? そんなの俺が許さない。
それを聞いたクイックは一瞬驚いた顔を下が優しく笑ってくれた。
「そうか……いやそれでこそノーチェだよな」
「いや、悪かった! さっきの質問は忘れてくれ」
クイックは落ちた書類を拾い上げてトントンッと整えドアを開く。
「そうだ、ノーチェ」
クイックは扉の前で振り返り声をかけた。
「俺は何があってもノーチェを守るから」
そういうとクイックは静かに扉を閉めて部屋を出ていった。
「……変なクイック」
「で? どうだったのよ」
部屋から出てきた所を待ち伏せしていたのかエレナが声をかけてきた。
「……ダメだった」
「はぁ〜全くあんたねさっきは最高のシュチュエーションだったじゃない!」
「だってさぁ……あんな真っ直ぐな目で言われたらどしようもないじゃん」
クイックはその場に座り込む。
「……まぁあの子は普通の女の子じゃないから生半可な攻撃は効かないでしょうね」
エレナがクイックの肩を叩く。
「まぁ……気長にやっていきましょう」
「はぁぁぁぁ……そうする」
クイックの顔は少し赤くなっていた。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv6
所持アイテム星紅刀
耐性
痛覚耐性Lv1、物理攻撃耐性Lv7、精神異常耐性Lv7、魔法攻撃耐性Lv4、状態異常無効Lv10
スキル
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv4、絶無Lv3
魔法
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6
???
謀る者Lv4、強欲
------
神に出会った者/神を救った者/導く者
クイック・ミルキーウェイ
赤岩土竜Lv3
耐性
物理攻撃耐性Lv6、精神異常耐性Lv1
スキル
探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv4、高速移動Lv9、強化Lv3、回避Lv4、体術Lv2、斬撃Lv1、集中Lv4、追跡Lv3、空間把握Lv4
魔法
火炎魔法Lv2、風斬魔法Lv4、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv4
???
食事Lv9




