39話 それぞれの思惑
「ちょっと〜! 貴方達馬より早いってどういうことよー!」
ダダダダダダダダダ!
俺は今フィーと目標の村まで全力で走ってます。
なんでこんなことになったのかと言うと。
「なぁ〜ノーチェ〜」
「ん? どうしたんだい?フィー」
「つまんなーい」
いや君随分リラックスしてるけど傍から見たら村に攻めてきた敵だからね。
まぁ被害なかったしいいけどさ。
「そう言われてもなぁ」
「ねぇねぇ! 村まで競走しようよ!」
「えぇ嫌だよ、疲れるし」
「えぇ〜やりたいやりたいやりたい!」
子供か!
「あっ……フィーわかっちゃった! ノーチェは私に負けるのが嫌なんだ!」
「……は?」
「そういうことなら仕方ないなぁ〜まぁ何せ! 私は獣人で最強だし!」
……ほぉ〜この小娘言うじゃないか。
「よしわかった、その勝負乗ってやろうじゃないか」
「やったぁ! じゃあ行くよ〜! スタート!」
でこんなことになってます。
エリーナの声はもう聞こえないほど離してしまった。
いやそんなことより……フィーが本当に早い。
始まれば直ぐに決着が着くと思ってたが想像以上だ。
「どうしたのノーチェ! まだまだこんなんじゃないでしょ!」
そう言ってフィーはさらに速度をあげる。
「当たり前だ!」
俺もフィーに合わせて速度を上げた。
「あっ! 見えてきたよ! あれが私たちの村だ!」
「よし! あそこまでだな!」
俺とフィーは全力で走り出す。
周りでは土が舞う。傍から見れば巨大なモンスターが突っ込んでいるように見えるだろう。
「「俺の! (私の! )勝ちだぁ!」」
2人はほとんど同時に村の門に辿り着いた。
「いや! ノーチェは少し遅かったよ!」
「いいや! 俺の方がちょっとだけ前に出てた!」
2人のどっちが早かったか口論はエリーナが来てようやく終わった。
「あんた達ね、あんなくだらないことで喧嘩しないの!」
「はい……すみませんでした」
「エリーナ……怖い」
俺とフィーはエリーナに散々怒られた後フィーの村、ゴーロンの中に入った。
「ここがフィーの村か」
村は全体的に少し寂しい感じがする、だけど奥の建物は結構豪華に作られてるな。あれがフィーのお父さんがいるところ? なのかな。
そんなことを考えている時だった。
「フィー様!」
「ファー様だぁ〜」
村の子供や老人がフィーに近付いてきた。
「あ〜みんな元気!?」
「はい! 本日もフィー様のお父上であるザック様が食料を提供してくださって」
話を聞く限りフィーのお父さんは優しく、立派な当主のようだ。
それにフィーのあの嬉しそうな顔は心から喜んでいる証拠。
「これは良い関係を築けそうだな」
俺がつぶやくとエリーナは静かに頷いた。
「ここが父様の家だ! 少し待っててくれ! 呼んでくるから〜!」
フィーは俺達の話を聞かずに扉を開けて中に入っていった。
恐らく1分も経っていないだろう。
中から数人の獣人が出てきて俺たちを招待してくれた。
その時に馬車で獣人達が気絶していることを伝えたがそれを聞いた獣人達は一瞬敵意を見せたが直ぐに落ち着いて馬車に走っていった。
「ここにゴーロン村の当主であるザック様が居られます」
牛の獣人が静かに扉を開いた。
中は広く奥には玉座があり、そこにゴーロン村の長……ザックが座っていた。
「ようこそお越しくださいました、ノーチェ・ミルキーウェイ様。私はこの村で長をしているザック・サレリアルです」
「いえいえ、こちらこそ急な訪問誠に申し訳ない」
俺は歩きながら返答する。
周りに兵士は居ない、器の大きさか……それとも相当力に自信があるのか。
「さて、今回の件ですが私の部下が迷惑を掛けたようで」
そういうとザックは隣にある袋から何かを取り出した。
「あくまで、友好的な関係をと伝えたのですが……獣人はプライドが高く交渉には向かないのです」
ザックは話しながら何かを俺の近くに投げた。
グシャリと嫌な音がして赤い液体が流れてくる。
「それはあなたがたに迷惑を掛けた奴らの首です。本来であれば娘も罰するべきですが……それでご容赦頂けないでしょうか?」
隣に居たエリーナはそれを見て顔を逸らす。
「……そういうことでしたら大丈夫です。それにフィー様とは友好な関係を……と思っていますので」
……馬車にいた獣人達、そいつらの首を切って俺たちがここに来るまでの時間で運び出したのか。
「それは大変感謝致します。そうですね、お客人を立たせて話をするのも失礼ですしこちらにどうぞ」
そう言ってザックは扉を指さす。
俺たちはザックの後ろに着いて扉の中に入った。
「ここは重要な会議などをする場でして、本来は関係者でないものは入れないのですが」
ザックは話しながら慣れた手つきで紅茶を用意した。
「これは私が栽培しているものでして、是非飲んで頂けると幸いです」
……村の長にここまでやらせて飲まないのは失礼……か。
俺はそう思い紅茶を口にした。
「ん、美味しい」
「それはよかった!」
ザックは笑みを浮かべながら席に着いた。
「さて……ノーチェ殿、わざわざ来てくださったということは何か話したいことがある……と言うことでしょうか」
……さすが獣人か……。鋭いな。
「その通りです」
俺は飲んでいた紅茶を置いて話を進める。
「俺達の村は今貴族の手から解放されて拡大計画に入っています。そんな中で無益な争いをして民を減らしたくはないのです」
その言葉を聞いたザックは静かに頷いた。
「ザック様程のお方であれば……」
俺がそう言いかけるとザックが口を開いた。
「分かりました、それでは私の村とノーチェ様の村で同盟を結びましょう」
即決かよ……。
「いいのですか? ザック様からすれば俺達は仲間を傷付けた……敵になるのでは?」
「その件でしたら先程も申し上げた通りこちら側に非がありますので、それに友好関係を結ぶといった使命を果たせるのであれば死んでいった者も報われるでしょう」
……寛容。いや無駄な争いは利益にならないからか。
「分かりました。それではこれからよろしくお願いします」
俺は手を差し出す。
「あっそれはいいのですがノーチェ様の村はなんという名前なのでしょうか」
……確かにそんなこと考えてもなかったな。
村長はこんな小規模の村に名前はないから好きにしてくれと言われてたけど……。
「そうですね……フィデースと言います」
フィデース……ラテン語で信頼を意味する言葉。
「フィデースですね、分かりました」
ザックは俺の手を強く握った。
「ザック様あの者達は」
……。
「あのノーチェ・ミルキーウェイとか言う女……なかなか利用価値のありそうな奴だ」
ザックはニヤリと嫌な笑いを浮かべる。
「分かりました……。フィー様はいかがいたしますか」
「……フィーにはまだまだやって欲しいことがあるんだ、監視の目を外すな」
……いや待てよ、圧倒的強者の元に置いておくのも悪くない変化かもしれない。
「……そうだな、フィーはあの村にしばらく置いておこう」
「かしこまりました」
これであいつのスキルが使えるようになれば……私は。
「ふはははは……はははは……あっははははははは!」
ザックの笑い声は空高く響き消えていった。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv6
所持アイテム星紅刀
耐性
痛覚耐性Lv1、物理攻撃耐性Lv7、精神異常耐性Lv7、魔法攻撃耐性Lv4、状態異常無効Lv10
スキル
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋 、横溢Lv4、絶無Lv3
魔法
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv6、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6
???
謀る者Lv4、強欲
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神に出会った者/神を救った者/導く者
クイック・ミルキーウェイ
赤岩土竜Lv3
耐性
物理攻撃耐性Lv6
スキル
探索Lv8、隠密Lv7、地面操作Lv4、高速移動Lv9、強化Lv3、回避Lv4、体術Lv2、斬撃Lv1、集中Lv4、追跡Lv3、空間把握Lv4
魔法
火炎魔法Lv2、風斬魔法Lv4、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv4
???
食事Lv8