29話 悲しき別れ
閲覧数が着々と伸び始めて嬉しい限りです!
...主人公のメンタルがこの辺りから壊れ始めます。苦手な方もいるかも知れません。それでも大丈夫って方はこれからもダメって方はとりあえず読んでみてから判断をお願いします!
要するに読んでみてください!m(*_ _)m
俺は昔から……ずっと嫌なことから逃げてきた。
けどこの世界に来てからは嫌ことも辛いことも沢山して仲間とかけがえのない時間を過ごしてきた。
だけど……。
「運が良かっただけなんだ」
今までずっと……ただただ運が良かっただけなんだ。
オークの時だって、蜘蛛の時だって、さっきも!
ただ俺は運がいいだけで、実力なんて全くない。
獣王国で会った奴も本気になれば俺の事を余裕で殺せたはずなんだ。
もっと強くなりたい、もっともっと強くなりたい。
誰も失わないように、あんな惨めな思いしないように!
俺はもう……迷わない。この世界で何故生きているのか、何が目的なのか、そんなことはどうでもいい。
「俺はただ……仲間のために生きる。仲間のために強くなる。もう誰も奪わせない」
…………。
ダンジョンの外は少し明るくなっていた。
1晩戦ってたのか。
その時背中でぐったりとしていたケルロスが目を覚ました。
「ノーチェ……」
「ケルロス!」
ケルロスは静かに背中から降りて俺の前に立った。
「……ノーチェ、護れなくてすまなかった」
そう言うとケルロスは深く頭を下げた。
「何言ってるんだよ、ケルロスがいなかったらもう俺は死んでるっての」
「いや……俺はまた」
「気にすんな……これからもずっと一緒だろ? 俺が護って護ってもらって、そんな関係に感謝してるんだ」
ケルロスは俺の唯一の理解者で俺が唯一すがれる存在だ、ケルロスだけは……本当に失いたくないんだ。
その後俺たちは何とか村まで戻ることが出来た。
回復魔法で傷こそないが疲労は限界に達しており俺は村の門が見えた時点で安心してしまい意識が飛んでしまった。
夢……? 真っ白な空間に俺とケルロスがいる。
ふわふわするような意識だけがあるような変な感じ……。
「なぁノーチェ!」
「ん? どうしたケルロス」
意識が無くても勝手に口が動く……過去の記憶?
「僕はねノーチェとずっとずっと一緒に居るんだ、だからそのためにいっぱいいっぱい強くなってノーチェを護れるかっこいい奴になりたいんだ!」
「ははは、ケルロスが俺より強く〜? なれるのかなぁ。」
「絶対なるもん! ノーチェが困ってたら絶対助けてあげるから……だから! 僕をもっと……」
ガバッ!
「ここは……」
周りを見渡す限りここは俺たちが借りてる家のようだ。
窓から見える景色は少し赤く染っていた。
「実家……じゃないけど家の中は落ち着くなぁ」
俺は布団からスルリと抜け出し近くにいたクイックの様子を見る。
うん……呼吸は安定してる。傷も塞がってるな。回復がだいぶ遅くなっちゃったけど生きててくれてよかった。
俺はふぅと安堵の声を上げる。
そして安心したと同時に部屋全体を見渡す。
「……ケルロス?」
いつもなら俺の近くで眠っているケルロスが見当たらない。
ケルロスの奴も相当疲れてたはずだ。
それなのに家に居ない。
「外で何かしてるのかな」
俺はそう思って外に出ることにした。
しばらく歩いてみたが……
……なんだか周りの視線がおかしい。
いつもはノーチェ、ノーチェと近寄ってくるのに今はなんだか……。
不思議に思っていると女の子の声が耳に響いた。
「ノーチェ!」
声をかけてくれたのはエリーナだった。
「エリーナ? どうしたの?」
エリーナは慌てた様子だった。
俺はなにか非常事態かと思いエリーナに真剣な顔で
「なにか……あったのか?」
ともう一度聞いた。
エリーナはその後下を向いて泣き出してしまった。
「エリーナ!? どうした! 何があったんだ!」
村の異変、そしてエリーナの様子で何かがあったのは明白だった。
「……俺が説明しましょう」
そう言って出てきたのはエルフで1番強かった男ガロリアだった。
「ガロリア……一体何があったんだ」
ガロリアは少しだけ合間を置いて話し出した。
「あれはノーチェ殿が戻られたすぐ後でした」
「ノーチェ殿!」
私はケルロス殿から疲れて気絶してしまったノーチェ殿を渡されました。
「ノーチェを頼む」
ケルロス殿はそう言って反対方向へ歩いて行かれました。
我々はノーチェ殿、そしてクイック殿を看病するために急いで家に運びました。
その後ケルロス殿を探しに向かったのです。
ですがケルロス殿は一向に見つからず、村の中で捜索隊を編成しようとしていた時。
エリーナが泣きながら俺の元に来たのです。
何事かと思いエリーナに詳しい話を聞いたのですが……。
「……」
「ケルロスがどうしたんだ……」
そこまで話すとガロリアは黙ってしまった。
「ガロリア! ケルロスに何があった!」
俺はガロリアの胸ぐらをしっぽで掴む。
するとエリーナが口を開いた。
「ノーチェには! ……ノーチェにはもう着いていけないからここでさよならだ……二度と会うこともないだろうって……」
シュルル……。
ガロリアを掴んでいたしっぽが力なく崩れる。
「……」
冷たくて……気分の悪い沈黙が永遠のように流れた。
その後俺は何も言わず、重たい体をズルズルと引きずりながら家に戻った。
ケルロスが……居ない。
それは俺にとって生きる理由を剥奪されるのと同じようなものだった。
「クイック殿」
「ん? なんだい?」
「ノーチェ殿は」
俺がそう聞くとクイック殿は下を向いてしまった。
……ノーチェ殿が家に籠られてから1週間、疲労もすっかり取れたクイック殿が我々と共に狩りや作物作りを手伝ってくれる。
しかしエリーナや村長はノーチェ殿が全く出て来ないことが不安で仕方ないらしい。
……もちろん俺も。人間は悪いだけの存在では無いこと、手を取り合って暮らす素晴らしさ、助け合うことがどれだけ尊いことかを学んだ。この村にはノーチェ殿が必要なのだ。
ケルロスがいなくなって1週間……いつまでもこんなことしてていいはずがない、強くなると誓ったばかりなのに。
護るのは何もケルロスだけじゃない、クイックも村のみんなも俺が護らないといけないんだ。
なのに……ケルロスが居ないただそれだけなのに心が痛む生きていく気力が無くなる。
毎日が無駄に……無意味にすぎていく。
楽しかった過去は悲しみの過去に変わってしまった。
もう……あの幸せは手に入らないのだ。
そう考えると……もう何も、何も。
「ノーチェ? 入るぞ〜」
「クイックか」
最近はクイックにどう接すればいいのかも分からなくなってきた。
前はどう話してただろうか、またケルロスとクイックの他愛ない会話を聞きたい。
……そんなことばかりを思ってしまう。
クイックが俺の前に立って少し間を開けて話し出す。
「なぁノーチェ、そろそろ切り替えるべきなんじゃないか?」
そんなことわかってる。
「ケルロスはもう居ないんだ……俺だって悲しいさけどそれはもう仕方ないことで」
そんなこと……
「だからさ居ないやつは居ない、それはそれで置いといてさ今は目の前にある」
「そんなことわかってんだよ!」
俺はそう言って机をしっぽで掴んで投げた。
机は本棚にぶつかり本とともにバラバラになって崩れていった。
「クイックには分からないんだ! 俺にはケルロスが必要なんだよ!」
こんなの八つ当たりだ……最低なことをしてる。
けどもう……止まらない……。
「大体クイックはたまたまダンジョンで拾っただけじゃないか! その後も俺達に付いてきて!」
ダメだ……これ以上言ったら。
「どうせクイックからしたら俺たちなんてただの都合のいい」
「ノーチェ!」
クイックが俺の顔を掴んで叫んだ。
「本当に! 本当にそう思ってるなら言っていい。けどただでまかせで……ただ辛くて八つ当たりしてるだけなら言っちゃダメだ。それを言ったらノーチェは……ノーチェは自分を責めるから」
「俺は……俺は」
ケルロスが居なくなってから泣いたことなんてなかったのに……今初めて涙が溢れ出した。
「ケルロスと比べたら俺は頼りないと思う。けどノーチェが悲しんでるのに何もしないなんて出来ない」
クイックは俺の涙をソっと拭いてくれた。
「悲しい時は泣いていいんだ。ノーチェは1人じゃない、俺が……エリーナがガロリアが村長がセルがみんながノーチェの味方だ」
……その後俺はクイックに抱き締められながら泣き続けた。
不甲斐ない自分、守れなかったこと、ケルロスがいなくて悲しいこと、こんな自分が本当に嫌いなこと。
全部をクイックに打ち明けた。
クイックはただ何も言わずに俺の話を聞いてくれた、いつも小さくて可愛い手はとても大きくて偉大に感じた。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv3
耐性
痛覚耐性Lv1、物理攻撃耐性Lv4、精神異常耐性Lv5、魔法攻撃耐性Lv3、状態異常無効Lv10
スキル
全知全能Lv1、錬金術(毒特化)Lv8、心理掌握Lv1、人化Lv1、鑑定Lv9、拘束Lv9、転移Lv6、透明化Lv1、取引Lv1、探索Lv9、追跡Lv1、操作Lv1、回避Lv8、斬撃Lv1、神速Lv1、探索阻害Lv4、魔力保管Lv1、不死Lv2、知り尽くす者
魔法
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv5、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6
???
計算Lv9、強欲
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神に出会った者/神を救った者/導く者
ケルロス・ミルキーウェイ
白狼Lv5
耐性
痛覚耐性Lv5、状態異常耐性Lv4、物理攻撃耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv5
スキル
総合把握Lv3、隠蔽Lv8、分身Lv10、探索Lv4、鑑定Lv6、限界突破Lv1、咆哮Lv8、威圧Lv2、要塞Lv6、斬撃Lv9、貫通Lv2、神速Lv6、結界Lv3、孤独Lv1、共鳴Lv2
魔法
風新魔法Lv10、風斬魔法Lv3、光魔法Lv10、神聖魔法Lv1
???
憧れる者Lv6
クイック・ミルキーウェイ
レッドモールLv9
耐性
物理攻撃耐性Lv5
スキル
探索Lv8、隠密Lv3、採掘Lv8、高速移動Lv9、体術Lv2、集中Lv2
魔法
土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、風斬魔法Lv1
???
食事Lv2