27話 見捨てない心
洞窟の中は広く少し湿っぽいような気がした。
「タラレントの時は正規ルートじゃなかったからな、油断せずに行こう」
俺は2人に注意を促す。
しばらく進むと大きめの扉が見えてきた。
「開けろってことか?」
「まぁ、そうだろうな」
「そういうことでしょうねぇ」
……。
「はぁ……開けるか」
全く気が進まない、大体こんな洞窟に扉?
罠に決まってるだろこんなの。
「回避」
俺はそう唱えて扉を開けた。
シュシュシュシュ
「ほらね! 罠だよ! 知ってたよ!」
「いやぁ……さすがノーチェよく気付きましたね」
「こんな見え見えの罠気付かない方がおかしいだろ」
だよねケルロス!
ケルロスが突き刺さった矢の匂いを嗅いでいる。
「毒矢か……」
よく辺りを見渡すと人間の骨と思わしき物が散乱している。
「このダンジョン……主が強いかどうかは置いといて、殺意は強そうだな」
俺はそう言うと壁に突き刺さった矢を折った。
そうしてしばらく歩いていると……わっかりやすい宝箱が出てきた。
「ノーチェ……」
勘の鋭いケルロスはもう気付いてるようだ。
「いや……だろうね」
クイックもなんだが呆れた様子だ。
「俺がやる」
ケルロスが宝箱に近付いていった。
その瞬間上から様々な刃物が落ちてくる。
「要塞」
その刃物たちはバラバラと音を立てて弾かれていった。
「そのスキル便利ですねぇ〜」
クイックはスルリと俺の背中から降りていった。
「ダンジョン探索ならお任せを……地中を掘ってサクッと探してきます」
そう言うとクイックは地面に潜っていった。
止めようとしたんだけど……もう聞こえないか。
しばらくの沈黙後ケルロスが話し始めた。
「この前……と言っても一昨日だけど、クイックに進化した時のことについて聞かれた」
「進化した時?」
「そうだ、恐らくだがあいつはこの中で1番弱いということにプレッシャーを感じているのかもしれない」
「そんなこと……」
その先を言おうとするとケルロスが遮った。
「ノーチェは俺と会った時まだまだ弱かった、けどすぐに強くなって圧倒的な距離ができてしまった」
……。
「その時俺は凄く怖かった」
「怖い?」
「ノーチェからしたら俺は何の役にも立たないただのお荷物だ、自然で生きていくならこんなやつは餌か囮くらいにしかならない」
そんなこと……考えてたのか。
「だけどノーチェは俺を助けに来てくれた、あんな危険を冒してまで」
「だから俺はノーチェの役に立ちたい……ノーチェの為なら命だって掛けられる」
そ、それはちょっと言い過ぎじゃないかなぁ……。
「そして、クイックは俺ほどじゃないが恩を感じてるはずだ。なのに全く役に立てない」
「それが苦しいと……」
俺がそう言うとケルロスは静かに首を縦に振った。
「わかった……こりゃダンジョンから出たらクイックのメンタルケアだな」
「ははは」
「ははははは」
少し空気が和んだその瞬間だった。
ドゴンッとダンジョン全体が大きく揺れた。
「なんだ!?」
探索スキルを使ったが反応は無い。
「別の場所? ……クイックかもしれない!」
俺たちは下に行く道を急いでかけて行った。
「要塞スキルは後どのくらい持つ?」
「まだ大丈夫だ!」
全速力で下に向かうことからケルロスは要塞スキルと神速を使い続けて移動している。
俺はケルロスの背中に乗って移動してもらっている。
理由は単純でケルロスより遅いのと敵がいた時魔法力が多い俺の方が戦えるからだ。
「クイックの匂いはするか!?」
「だんだん近付いてる」
これだけ広いと探索スキルでは探し切れない為ケルロスの嗅覚を頼ってクイックを探す。
「……最下層か?」
タラレントとは違いこっちの最下層は大きな扉がある。
……ボス部屋ってところか。
「この先にクイックがいるのか?」
「……」
「? ケルロス」
「今まで気付かなかったが、血の匂いが混じってる」
ケルロスはそう言うとこちらを振り返った。
「ノーチェ……もし本当にここがタラレントより上のダンジョンなら引くべきだ」
「何言って!」
「あの蜘蛛はたまたま倒せたんだ!」
ケルロスの叫び声は反響して消えていった。
「今回の敵も倒せるって保証はないだろ?」
……。
そんなことわかってさ、この後敵を倒せるかなんて俺でも分からない。それでも。
「俺は諦めない……。ケルロスが俺を諦めなかったように俺も仲間を見捨てない」
俺はケルロスの目を真っ直ぐに見つめた。
ケルロスはケルロスなりに心配してくれているんだ、そして助けられたクイックがどんな思いをするのかも。
だけどそれを全部理解して、それを全部受け入れて。
「俺は行くよ」
ただそれだけ言って扉を開いた。
「今日は客人が多いな」
扉の先には玉座にも似た空間が広がっていた。
大きなで奥の椅子に座り込む男が1人。
「ここにモグラが来ただろ……どこにやった」
俺は静かに近付く。
「モグラ? あ〜あいつのことか」
その男は嫌な笑いを見せて腕を上げた。
「これだろ……愚かにも俺の視界に入ってきたので潰しておいた」
「そうか」
……分解。
「なるほど! ただの蛇じゃ無さそうだ。」
男は先程座っていた椅子から圧倒的な速さで俺の後ろに回り込んできた。
「廻炎斬」
炎系魔法……炎斬魔法か。
「水龍!」
炎の攻撃と水の攻撃はぶつかり合い水蒸気となり消え去った。
「威力はそこそこ、まぁ暇潰しにはなるだろう」
すると男は謎の空間からあるものを取り出した。
刀!?
「差戯れ突!」
斬撃スキルか……。
「岩盤崩し」
「いいぞ! いいぞ! 久しぶりだな俺と戦い1分持ったやつは!」
「そりゃどうも!」
……クイックの様子が気になる、探索に引っかかるから死んでは無いはずだ。だとしても早く回復を……。
「ノーチェ!」
後方から聞こえる叫び声に驚き意識を敵に向ける。
「戦闘中に余所見とは余裕だな」
まずい! 岩の間を抜けてきた。
「要塞!」
「ケルロス!?」
ケルロスは俺と敵の間に入って要塞を発動した。
しかしレベルの違いだろうか……要塞スキルは貫通されケルロスに当たってしまった。
「大丈夫だ! まだ浅い」
「なんで出てきた!」
俺はケルロスを怒鳴った。
「諦めないって決めたのはノーチェだけじゃない。俺も諦めない」
その時のケルロスはとても頼もしかった。
「……わかった」
自然と笑みがこぼれる。
体の奥から温かい何かが溢れる。
「2人であいつを倒そうか」
「おう!」
最強タッグ結成だ。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv1
耐性
痛覚耐性Lv1、物理攻撃耐性Lv4、精神異常耐性Lv5、魔法攻撃耐性Lv3、状態異常無効Lv10
スキル
総合把握Lv6、錬金術(毒特化)Lv8、心理把握Lv3、鑑定Lv9、拘束Lv9、中型輸送Lv6、隠密Lv5、取引Lv1、探索Lv9、追跡Lv1、操作Lv1、回避Lv8、中速移動Lv8、探索阻害Lv4、悪食Lv4、不死Lv2、分解Lv5、融合Lv5
魔法
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv5、土石魔法Lv8、土流魔法Lv6、闇魔法Lv6
???
計算Lv7、渇望する者Lv8
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神に出会った者/神を救った者/導く者
ケルロス・ミルキーウェイ
白狼Lv2
耐性
痛覚耐性Lv5、状態異常耐性Lv4、物理攻撃耐性Lv9、魔法攻撃耐性Lv5
スキル
総合把握Lv3、隠蔽Lv8、分身Lv10、探索Lv4、鑑定Lv6、限界突破Lv1、咆哮Lv8、威圧Lv2、要塞Lv6、斬撃Lv9、貫通Lv2、神速Lv6、結界Lv3、孤独Lv1、共鳴Lv2
魔法
風新魔法Lv10、風斬魔法Lv3、光魔法Lv10、神聖魔法Lv1
???
憧れる者Lv6
クイック・ミルキーウェイ
レッドモールLv9
耐性
物理攻撃耐性Lv5
スキル
探索Lv8、隠密Lv3、採掘Lv8、高速移動Lv9、体術Lv2、集中Lv2
魔法
土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、風斬魔法Lv1
???
食事Lv2