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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
夜桜編
258/261

257話 夜桜戦争・決戦

結局遠回り……寄り道ばっかり、やっと帰宅路通りに進んだと思ったらこのザマ……本当に世界って残酷だよね。


「お待たせ」


本当にお待たせ、さくら。


「ノーチェ」


俺の存在に気がついたケルロスはあんまり嬉しそうな顔をしていなかった。


「ふぅ……」


色々あった。蛇としてこの世界に生を受けて、死にかけの犬と土竜を助け、エルフを説得して村を作り国を作り……時に魔王を殺して世界を敵に回した。でもそんな物語ももう終わり。これで終わりになる。


「……3000年の物語、そろそろ打ち切ってもいい頃だろ」


そう呟いてから俺はさくらに突っ込んでいった。



ノーチェのためにもさくらの魔力と力をもっと削いで!!


「ありがとうケルロス……」

「ノーチェ!?」

「そんなに驚かなくてもいいじゃない」


さっきまであそこにいたのにもうここまで……というか今から戦いに行くやつの顔かよ……でもそれ以上に覚悟を決めたからここにいるんだよな。



「さっきから色々やってるが全く効いてる感じはしないな」


魔王2人にケルロスまでいても……いや知ってたよなそんなこと。


「よし……やろうか」


俺はケルロスの手を軽く握ってから刀を抜いた。


「砕氷!」


氷の塊を周りに浮かせる。これで攻撃を受けながらさくらに近づいていく!


ザリッ!


「ってまぁ攻撃してくるよな」


バババババババババ!!


さくらの攻撃は桜の花びらのような形と色をしたものだった。それが氷に当たり砕けることでそれは美しい景色になっている。……とまぁこんな状況じゃなければ綺麗だとか何とかゆっくり思えるんだけどね!


「フローズン・ブレード!!」


いつまでも防御する訳にはいかない。こっちからも反撃を!


「ごっ」


口から血の味が……くそ、限……界か。


ここまで魔力の全力使用を何度も繰り返してきた。今ここで立ってるのだって。


バッ!


「え?」


足を止めていると後ろから大きななにかに抱きかかえられた。


「ケル――」

「無理しなくていい、俺が連れてってやる。この戦いはそういう戦いだろ?」


俺はケルロスの言葉に従い魔法を解いた。


「それでいいんだ」

「ごめん……最後まで」


お姫様抱っこなんて恥ずかしいとか色々思っちゃってるけどいいかなこれも……安心する。


「最後だからこそ、もっと頼って欲しい。俺達はノーチェをさくらの元に連れていくためにここまでしたんだ。ここからは1人でどうぞ……なんてことするわけないでしょ?」

「……ははは、それもそうか」


今のうちに魔力を少しでも回復させないと。


「全く効いてないってさっきは言ったけど正確には違う。攻撃は入り始めてるし魔法の威力もだいぶ下がってる。でもさくらは倒れない。倒れさせて貰えないような印象さえ受ける」


倒れさせて貰えない。


「……多分だけど、今のさくらを解放させてあげられるのはノーチェだけなんだろうね」


ケルロスは今まで聞いたことの無いような悲しい声で言った。


「多分……ね」


ケルロスの悲しさはさくらへの同情からか、俺への結末からか……それとも両方か。


「さっきこの機械で話は聞いた。ノーチェとさくらを同時に殺せばいいんだよね」

「うん」


俺はケルロスの言葉に対して即答した。


「……そう、じゃあノーチェがさくらを倒した後……ノーチェのことは」


そこまで言うとケルロスの手に力が入った。


「俺が……殺すよ」


その時見せたケルロスの瞳はとても強いものだった。



「セナ!」

「わかってるよ!」


一撃一撃の威力は低くなってるこのまま押せれば勝ちも見える! それに沢山いるさくらの方もみんなの力で何とか押し返せてる。これならまだ!


「なっ!」


いきなり視界から消え――


「後ろだセナ!」


レリアの声! でもこの距離じゃ致命傷は!


貪慾王ガイツ!!」


ガシャンッ!!


「はぁ……はぁ……ギリギリセーフ」


ノーチェ!? あそこにいるのはケルロス……ってことは貪慾王ガイツで距離を分解したのか!


「無茶苦茶するよね!」


刀を抑えてくれてる! このまま!!


「覇突流! 刺月雨!」


後ろに避けられた!


「逃がすか! 結氷!」


ノーチェの攻撃がさくらの足を止めた!


「レリア!」

「わかってる」


さっき移動してたのは見てたからな。ヘイトも向いてなかった。


「稲妻電破!」


パリッ!!


頭上からの雷攻撃! 速度も威力も申し分ない!!


「転移!」

「ナイス! ケルロス!!」


避けるタイミングも完璧! 直撃させられる!


「……」


レリアの放った稲妻魔法に対してさくらは地面から大量に現れた土の槍で対応した。


「ッ!」


この距離じゃあれを破壊するのは!


「この程度……俺の魔法なら貫通する!」


バリッ!!


レリアの言う通りで稲妻魔法はさくらの攻撃を全て壊していき最終的にさくらに直撃した。


バシャン!!



「まだだ!」


左目で魔力反応が見える! まだ生きてる!!


「アイス・スピア!!」


パキッ!


ッ! 少し遅かったか!

俺の攻撃を軽く避けたさくらはボソッと何かを呟いた。


「……堕落王ファールハイト


さくらが消え――


怨嗟王ツォーン!!」


メキッ!


後ろ!?


堕落王ファールハイトで自分の時間を加速させたのか!? ギリギリでセナが怨嗟王ツォーンで攻撃を逸らしてくれなかったらやばかったな。


「牙狼白!」


ケルロスの攻撃を余裕で避けやがって!


「フローズン・ドラゴン!!」


大きな氷の龍……でもまぁこのくらいの攻撃さくらは余裕だよな。だから!


高慢王ホッファート!!」


バコンッ!!


龍のデカさを変える! 圧倒的な質量で潰れろ!


「……」


避けようとするさくらに対してレリアが糸のついた矢を放ち行動を制限させた。


「……怨嗟王ツォーン


ずらされた! てかあんなでかいのもずらせるのかよ……本来怨嗟王ツォーンって対象が多ければ多いほど、大きければ大きいほど消費魔力が増えるんじゃなかったっけ!?


「ノーチェ! とにかく今は攻撃を!」


ケルロスの言葉を聞いて俺は魔力を込める。しかし込めた魔力を放出するよりも早くさくらが突撃してきた。


「ッ!!」


ガシャン!!


早い!


「覇突流! 龍激!」

「狼獄炎!」


両サイドからの攻撃も魔法で防がれた。防御魔法も展開が早い。


ガチャ! カチャカチャ! バシュッ! バリバリバリ!!


4対1、数的には有利なはずが全く有効打がでない。攻撃は当たってもカス当たり、それどころかこっちが喰らう始末。息も合わせてタイミングも完璧なのに消耗するのはこちらだけ……あっちの方が1枚上手ってことなんだろうな。


「天雷!」


レリアの稲妻魔法は避けられ


「バーニング・クラッシュ!」


セナの魔法も受け止められ


「ホーリー・スナイプ!」


ケルロスの不意打ちも看破されてる。


「一体……どうすれば」


俺たちが困り果てているとさくらの後ろから誰かが現れた。


「やぁ……割とすぐに会えたね」

「ハナさん!?」


それにその後ろにいるのは


「ゼロ」


俺が反応するよりも早くセナが反応した。


「……」

「色々聞いてたし見たけど……多分あなた達がさくらを倒せない理由は2つ、1つは貴女が存在している」


ハナさんが俺の事を指さしながら言う。


「もうひとつは」


そこまで言うとさくらが後ろを振り返りハナさんの首目掛けて刀を振るった。


パシッ!


「呪いが影響してるから」


ザシュッ!!


真っ白な剣がさくらのことを貫通する。しかし血は一滴も出ていない。その代わりに何か黒いものが体から取り出された。


「あれは」

「……ありがとうさくら、そしてもういいよ」


ハナさんはそう言って黒いものと共に消えていった。


ゼロと会えたのか良かった。それはそれとして他にも気になることはあるけど……今はとにかく隙のあるさくらを攻撃する!


「一気に行くよ!」


俺の掛け声と共にみんなが突撃する。


「嵐電!」


風と稲妻の合わせ技……すごいなレリアは


「ノーチェ! 僕とレリアが時間を稼いであげるから2人であいつを倒して! 最後の切り札くらいあるでしょ!」


セナはそれだけ言ってさくらに突撃していった。


「切り札?」

「そんなもの」

「「あるよ!!」」


そりゃあ考えたさ!



ノーチェと一緒に戦う時に使う技!



ケルロスと合わせる技!


「だってそれってすごく熱いじゃん!」


何度も想像して背筋ゾクゾクさせて……待ってたよ本当にこんな機会を!



「サン――」


ッ!? 早い! まだこんな力を!


バサッ!!


「そこ退けレリア!!」


セナが龍の姿に! 自分で気に入ってないって前言ってたはずだけど。


セナは俺の表情で何かを察したのか口を開いた。


「この姿は嫌いだよ! でもそんなこと言ってらんないだろ!!」


ドンッ!!


そのまま上空に! セナの口部分で勢いよく押されて抵抗できてない……あれじゃあいくらさくらでも避けられない!


バサッ!


「止まった?」


セナが空中で止まっ……いや違う、あれは落ちてきてるのか!


「ひしゃげろ! 奈落流空(ラグナロク)!」



重力と下から来る風の抵抗で動けないはずだ! このまま地面にぶつけて動きを封じる!


「……」


パリッ!!


「稲妻魔法!?」


避けないと! どうする1度離れて体勢を建て直してから……



「僕とレリアが時間を稼いであげるから」



「って! あんな大層なこと言っといて引ける訳ないでしょ!」


このまま突っ込む! 僕の命が尽き果ててもさくらの動きを止めてやる!!


バリバリバリバリ!!


っう! 痛い! 体中の肉が焦げてる匂いだ。それに肉が筋に沿って切られているような感覚の痛み……こんなの今すぐ逃げたいよ。


バリバリバリバリ!!


「威力上げなくても効いてるっての!!」


地面までどのくらいだ! あと何秒! あと何十秒!! 持たせる! 届け僕の体! 僕の命!


「よくやったセナ! 稲妻魔法は任せろ!」


その声と共に僕の横には空から降りてきたレリアがいた。


「世界を憎む者同士、色々思うことはあったが……さくら、お前はもうその憎しみから解放されていい!!」


ギチッ!


レリアが弓を目一杯に引いて叫ぶ。


「電雷鳴月!」


パリッ……バシャン!!


耳が破れるかと思うほどの轟音、しかしその魔法はさくらの放った稲妻魔法を一瞬で打ち消した。


「恩に着る!」


あとは任せたからな! 僕の認めた最強の魔王!


「ノーチェぇぇぇぇぇぇ!!」


ドコンッ!!!



セナが突撃してきた辺りから大きな土煙が舞う。しかしそこから現れる1人の影、さくらだ。セナはその奥で龍の姿のまま倒れている。


「……」


さくらはセナにゆっくりと近付き手を伸ばす。その手をセナに向けて振り下ろしたその瞬間、俺とケルロスはさくらの頭上から現れた。


「任せろ! セナ!!」


この一撃で全てが決まる。これを外せばみんなのことを巻き込んじゃうから! 絶対に外せない!!


バッ!


さくらが振り返りこちらを見る。しかし少しだけ、本の数秒だけこちらの方が早く攻撃できる。


このチャンスを絶対に潰さない! 今までずっと逃がしてきたチャンス!! ここでは絶対に離さない!!


「天狼!」

「蛇絶!」


刀から放たれる高濃度の魔力は狼の牙のように鋭くさくらの片腕を切り飛ばした。ケルロスの手から放たれた攻撃は蛇のようにするりと動きさくらの腹部を大きく削り取った。


「このまま!」


ケルロスが地面に足をつき振り返り追撃をしようとしたその瞬間に俺はさくらの肩を触り口を開いた。


「ありがとう……ケルロス」


それを聞いたケルロスは一瞬訳の分からないという表情になったがすぐに俺がやろうとしていることに気が付き手を伸ばした。


「ノ――」


ごめんねケルロス……この戦いは俺たち2人の戦いなんだ。


「転移!!」


バッ!



……俺とケルロスの攻撃でさくらの魔力に隙ができたその一瞬を狙ったけど上手くいって良かったよ。


「……さぁさくら、今までずっと最後とかなんとか言ってきたけど」


腕と腹部のないさくらを見ながら俺は言う。


「ここが……本当の最終戦だ」


俺がこの時していた瞳はきっと……死ぬ覚悟と殺す覚悟の出来た目だったと思う。

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