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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
夜桜編
250/261

249話 夜桜戦争・暴走

「戦いにも終わりが見えてきた」

「そうだね……だからまぁ早く負けを認めたら?」


私は地面に伏せるクレアシオンに言った。しかしクレアシオンの目は折れていない様子だ。


「殺すのは好きじゃない。でもノーチェの為なら仕方ない……か」


シャルはそう言って剣を持った。


「……いいよシャル、私がやる」


シャルに罪悪感を抱かせるわけにはいかない。それに私はこの軍隊の隊長、そして次期フィデース信栄帝国の国王だから。

静かに近付き短剣を振り下ろす。クレアシオンの脳天に当たると確信したその少し前に青い魔力がクレアシオンを包み込んだ。


「なっ!」

「……あぁ、この姿は嫌いなんだけどな」


ボンッ!!


爆風! くっそ!


「要塞!」


クレアシオンが起こした爆発は辺りの土を巻き上げて地面を大きく抉りとった。


「大丈夫シャル?」

「うん、ありがとう」


こっちは無傷。でも今の爆発が切り札? この姿は嫌いとか言ってたけど一体。


「……フィーちゃ……あれ」


煙の先を指さすシャル、私もその先を見る。すると煙の奥に大きな影が見えた。


「……まじ?」


あの姿は龍、しかもあの大きさ……10? いや20mはある。


「飛ぶだけでも厄介だってのにこの大きさ……本当に面倒だね!」


私の叫び声と同時にシャルが突撃する。私は軽くジャンプしたシャルの足の裏を手で押して空に飛ばした。そして私もそれを追いかけるようにジャンプした。


「こんだけ図体がでかいと体に乗るのも難しくはないね!」

「うん!」


翼の上に乗ったはいいけど……どうするか、まぁ切り落とすとしよう。


「牙咲!」

「乱れ八嵐!」


バサッ!!


ッ!? 翼を動かして私たちを振り下ろそうとしてるのか。


「風乗り!」


周囲の風を魔法で操ってるのか……さすがシャルちゃん。


「フィーちゃん!!」


パシッ!


私は手を伸ばしてくれたシャルの手を握る。


「ありがとう! あとこのままもう1回攻撃する!」


シャルの返事を待たずにクレアシオン目掛けて魔法を放った。


「力弓火!」


効果はいまいちだったみたい!


「あれ翼も硬いわ!」

「やっぱり直接攻撃しかないみたい?」


2人で倒し方を考えているとクレアシオンが向けを変えて尻尾を振り下ろしてきた。


「ッ! この図体じゃ動かれただけで都市がひとつ無くなるっての!」

「ライト・シールド!」


パキッ


どうにか受け止められたけどこれじゃあ直ぐに壊される!


「1度引こう! それに空中戦は分が――


バリンッ!!


少し遅かった、まずい! 直撃する!!


「転移」


シュッ!!


「お?」

「ここは」


瞑った目を開くと目の前にケルロスとクイックが現れた。


「地獄?」

「そこは天国だろ?」


ケルロスのツッコミに現実であること理解する。


「助けてくれたのね、ありがとう」

「ギリギリだったけどな」


クレアシオンからはあんまり離れていない。まぁ見えては無いみたいだけど……それに2人が居てくれるのはとても心強い。


「2人とももう1人の魔王はどうしたの?」


シャルが剣をしまって聞いている。


「いやそれが魔力をさくら復活に使っていたらしくてもう1人で動くことも出来ないみたいだ」


クイックが丁寧に説明してくれた。てことは現状敵はクレアシオンとゼロだけってことに……


「「え? さくら復活に使った?」」


クイックの1文に違和感を覚えた私達は見事なハモリ方をして聞き返した。


「そうだ、今ノーチェとセナがさくらの対処をしている。ゼロは戦ってないみたいだからハナが蘇らないと知って絶望してるんだろ。裏切り者の方は魔力探知に引っ掛からないほど遠くで戦ってるみたいだ」

「状況は……良いわけじゃ無さそうだね」


それに関しては私もシャルと同感……とにかく私達はクレアシオンをどうにかするべきだね。


「ちょっと……その戦い混ぜてよ」


声のする方を全員が振り向いた、そしてその振り向いた全員が驚いた顔をして1人の少女を見ていた。


「エリーナ……その怪我」

「あははは、ちょっと無理しちゃった」


少し遠くからでもわかる酷い怪我、肩からお腹までの深い切り傷、斬られた右足……顔も手も無数に斬られた跡がある。


「そんな怪我で戦える訳!」

「戦うよ……だって私、ノーチェに戦うなって……戦うなら体動かなくなるようにって首に短剣まで突き付けたんだから」


エリーナの告白に全員が衝撃を受ける。しかしエリーナは笑いながら続けた。


「そんなさ……ワガママを自分の友達に、自分のリーダーに言ったんだ、私があそこで倒れられる訳ないでしょ」


クイックが止めようとした時エリーナは腕を上げてそれを静止した。そして上げた手を見て口を開いた。


「それにね、これは……私なりの八つ当たりなの。ノーチェは死んでも私たちを守るって言ったから、私は死ぬ気でノーチェを守る。それが無駄ってわかっててもこの命を全部使ってノーチェを助けるの」


覚悟の決まったエリーナのを前に私達は何も言えなかった。しかしその中で唯一クイックだけが口を開いた。


「ノーチェと死にたいんだね」

「……そうよ」


エリーナは少しだけ考えてから真っ直ぐな目で答えた。


「ほら! やっぱりノーチェって寂しがり屋じゃない! 私みたいに可愛くて優しい部下が寄り添ってあげないと!」


いつもみたいな明るい振る舞いだが声は震えているし身体中の怪我のせいで恐怖すら感じる。いつも一緒に暮らしている分よりいっそエリーナの異常さを感じ取れる。


「そのボロボロの体で?」

「……」

「もうエリーナは十分頑張ったよ……だから」

「頑張ってなんかない……私はノーチェの為にまだ何も出来てない」


まだ……何も。


「ノーチェの言われた通りに動いて来ただけ! まだなんにも返せてない! ありがとうもごめんなさいも全然言えてない!」

「何も返せてない……か。それは俺も一緒だ、だけど俺達が今できるノーチェへの恩返しは生きて帰ることだ」


ケルロスの言葉にエリーナは膝を折り座り込んだ。


「そんなの……納得できないよ」


……。


「私も納得できない」


シャルがつぶやく。


「納得は出来ないけど……私はノーチェが少しでも安心できるように戦う。そしてノーチェの見ることが出来ない世界をこれから見届ける」


ゆっくりとエリーナの前に立つシャル、どうするのかと思ったらシャルはそっと手を伸ばした。


「私はまだエリーナさんと一緒にいたい。フィーちゃんとエリーナさんの3人で色々やりたいことがあるよ」

「私も……色々教えてもらうことが残ってる。ご飯の作り方とか部屋の片付け方とか」


まだ死んでもらったら困る。ノーチェが居なくなろうとしてる今だからこそ私達はこれ以上誰も失わないようにしないといけない。


「……本当に貴女達は家事が出来ないもんね。わかった……わかったわ」


笑いながら返事をするエリーナ。しかし瞳からは涙がこぼれていた。



「さて……少し問題もあったが落ち着いたな」


エリーナの応急措置は取った。ケルロスの回復魔法に感謝としか言えないな。足に関しては時間が結構経っていたのと魔力が込められていた為治すことは出来なかった。大きな切り傷も応急措置だから包帯などで対応している。


「……大丈夫エリーナ? もう死ぬ気はない?」

「えぇ……まぁそうね、ノーチェには待っててもらいましょうか私達が遊びに行くのを」


うん……もういいな。


「よし。それじゃあ空飛ぶ大トカゲ退治と行こうか!」


俺がそう言うとみんなが「おぉ!」と声を上げてくれた。

安心してノーチェ……こっちは絶対になんとかするから。

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