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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
夜桜編
248/261

247話 友達と歩く

「魔力をよこせアゼル!」

「お前は自分勝手すぎるんだよ!」


ウィラーがアゼルの手を取り魔力を受け取る。量はほぼないがウィラーのことだ。何が策があるんだろう。


「よそ見しないの!」

「ッ!?」


ガチャン!!


「シュクラ!?」

「最後だよ……ほんとにもう……力残ってないんだから」


ギリギリで攻撃を受けたシュクラはそのまま倒れそうになる。私はそれを受け止めようとしたがそれより早く飴のロープが飛んできた。


「援護は任せて! チグリジアは攻撃を当てることだけに集中すればいい!!」

「任せて!」


人型は標的を私に絞り攻撃をする。恐らく魔力の反応で戦う相手を決めているんだと思う。


「ファイヤー・アロー!!」


ナツの攻撃が人型の目の前を通り過ぎる。


「どうした得意の稲妻魔法は使わないのか?」

「使えないのよ!!」

「あっはははは!」

「そういうあんた事いつもの高音攻撃しなさいよ!」

「いやぁ……喉潰れるって」

「知らないわ!」

「酷くね!?」


言い争いをするナツとカガリの間を通りレオが攻撃をする。さすがの刀さばきだけど疲れが見える。


「安心しろ……耐え抜くさ。この程度先生と比べれば!」


ガチャン!!


人型の動きを!


「遅せぇよ!!」


レオの攻撃が人型の腕に入る。かすり傷ではあるが全く攻撃が入らなかった時と比べて相当な成果だ。


「よし! やっと溜まった!」

「人から奪い取った魔力だ……上手くやれよ!」


そう言ってアゼルが倒れ込む。ウィラーは本を開き叫んだ。


「十二章八番三十列!」


ボコッ! ボコボコボコ!!


「地面が!」

「うわ!」

「安心しろ! これ自体に害はない!」


そういうとウィラーは別のページを開きもう一度叫んだ。


「十九章十五番六十一列!!」


ウィラーの叫びとともに土や木、水などが様々な動きをする。ムチのように動き回ったそれらは地面に刺さり浮き上がった土に刺さり、私たちの周りを覆い尽くした。


「これは」

「平地より戦いやすいだろ? まぁあとは……上手くやれ……よ」


バタッ!!


「ウィ……」


ううん、私は止まったらダメだ。みんながここまでしてくれているんだから今こそ私が戦わなきゃ! 迷惑をかけたぶん……しっかりしないと!!


「そうだ……前を見るんだ、行くぞチグリジア!!」


レオの声と共に私は木の上を走り抜ける。その間もみんなの援護は止まることなく続いていた。


「キャンディ・ガトリング!!」

「パイソン・アタック!」

「バウンド・ショック!!」


みんなの援護もあり順調に近づけてる。あとはあいつの近くに人形をぶち込むだけ!


「隙は俺が作るからどうにかそいつで倒してくれよな!」

「……わかった。あとレオ……私」

「それは後でいい。今は戦いに集中だ」

「うん!」


私が何を言おうとしたのか理解してくれたのかな……まぁ理解していなくても全部が終わったら言うけどさ。


「全く当たらないんだけど!!」

「その弾ベタベタする〜」

「いいから早く何とか動きを止めないと!!」


まだ動きを止めるのに時間が……


「今だ!」

「え?」


レオの声と同時に人型の先に大きな手が現れる。


「はぁ……はぁ……んん! 本当にもう! こんなに魔力使ったの久しぶりだよ!」


ヴィオレッタ!?


「サンド・アーム・ロック!!」


バコンッ!!


人型は砂の手の中に包み込まれて動きが取れなくなっている。そしてその手の中には飴が仕込まれていたようで体も動かしズラそうだ。


「よし! まぁこいつはとっておきだ! さっきから使えなかったからな!!


そう言うとレオの刀に魔力が集まる。いや正確にはもう既に集まっていた魔力が解放されている。


「この刀は今まで使った魔法を記録する。そして使用魔法が一定を超えると刀が貯めている魔力を使うことができるんだ!」


刀の周りを赤い魔力が包み込む。


「さぁ……喰らえ! 羅焔骨!」

「うっ……あっ!」


熱い……さっきの赤い魔力が燃えるように熱くなっているでもそのおかげで赤い魔力になぞって道ができた!


「決めてこい……チグリジア」

「……任せて!」


ザッ!!


私はレオの一言を胸に人型へと走っていった。

小さな足場、微かに繋がった希望。何か一つでも間違えれば全員死んでいたかもしれない。そんな状況で裏切り者である私を連れ戻すためみんな無茶をしている。正直今でも分からないし。普通は自分の命を優先させるものじゃないの? なんで私なんかのために。


「チグリジア」


……そう、ね。きっと……先生のせいだね。みんながお人好しなのも私が泣いているのも。


「叶うなら……あの日常をもう一度」


私はそう呟き、抱きしめていた人形と服の中に隠していた人形を全て人型に放った。


カチッ!

ボンッ! ボンボンボンボン!!


爆発は連鎖を繰り返し人型のことをめちゃくちゃに破壊する。ひとつの人形が爆発すれば何個もの人形が連鎖で爆発する。その爆発は今まで見た中でも最も大きく綺麗だったが……なんとなく私はその爆発を美しいと思えなかった。


「……」

「どうだ?」


レオが私の隣に立って優しく聞いてくる。多分この質問は相手の安否じゃない。


「大丈夫、落ち着いてるよ」

「……そうか」


今までありがとう……私の妖精さん。


ガラッ


「ッ!? まだ!」

「ううん、もう終わったよレオ君」

「チグリジア?」


貴女は貴女の道を見つけたんだね……ハレンさん。


「行こうか……」


私が呟くとレオはふふっと微笑んで手を引っ張ってくれた。


「あぁ、俺達のクラスに戻ろう」


晴れた煙の先にはクラスのみんながいた。とはいえ魔力も体力もなくボロボロな状態だ。ウィラーとかは寝てるし、シュクラもナツとリリュクに支えられている。


「本当に……変なクラスに入っちゃったなぁ」

「そうだな」


ニコニコと笑っているみんなの元へ私達はゆっくりと向かっていった。



「……」

「……」


ハレンが逝ったか、あとアルも。


「ハレンが死んだ……あとはアル? とか言うのも死んだな」


……嫌な言い方だな。


「あぁ、俺が1人で来ればアルは死ななかった。いやそれ以前に」


俺は戦場に目を向ける。


「こんなに仲間が死ぬこともなかった」

「その通りだ。だがお前はこの選択をした。それは何故だ? お前はどの道死ぬんだろ? それなら取り込まれて死ぬでも良かったはずだ。それに俺はお前の仲間には興味が無い。お前が死んで……既にある依代に最後の1押しをすればハナさんが蘇れば」

「蘇らないよ」


俺の一言でゼロが固まる。


「何を言ってる」

「……ゼロ、お前も現実を見ろ」

「いや違う……今ハナさんは」

「もう空っぽなんだよ! この世界にハナの中身は存在しないんだ! 体だけ作っても何にもならないんだよ!」


俺の声がゼロの間で響く。そしてゼロは剣を地面にさして口を開いた。


「お前にはハナさんの一部があるはずだ。それを取り込み体に入れればハナさんを復活させられると」

「そんな上手い話があるか……俺は俺だ。それに俺の体に入ってるのはさくらと俺だけだ」


俺の1部を入れたとしてもハナは蘇ら……既にある依代? 体に入れれば? もう腕を入れてある……それじゃあ、あの腕はなんのために……腕はハナの体を作るためにある訳じゃない?


バサッ!!


「ッ!!」


ガチャン!!


「何……が」

「俺は飛んだ勘違いをしていたらしい。そうか……俺の腕を使い依代にして俺の死体でハナを復活させようとしていたと思っていたが……セナのハナ復活に俺はもう必要ないってのは依代って意味じゃなくて完全に復活するからいらないってことだったのか。しかもその復活は」


カチャッ!


「ハナじゃなくて世界を焼き尽くしたさくらの方になっちまったようだしな」


刀?

魔力で作り出した刀のようなものを手に取るさくらに俺は刃を向ける。ゼロはまだ状況が読み込めていないのかボーッとしていた。


「少し予定とは狂ったが俺のやることは変わらない。お前を殺して俺と死ぬ」


……


「かかってこいよ! 怪物!!」


俺は叫び声と共にさくらに突撃していった。

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