239話 第二次天闇戦争・憧憬
バリバリッ!!
ガシャン!!
「雷迎!」
「……」
速度は上がってる。攻撃の威力も範囲だってさっきとは比べ物にならない、なのに……なのに!
「なんで当たんないのよ!!」
バリバリッ!!
「轟雷!」
いくら強いスキルを手に入れてもこのままじゃ意味が無い。それに融合で無理やり動かしている体が今壊れても不思議じゃないし。……あぁもう! こんな時ノーチェなら一体。
「……絶」
「しまっ――」
風魔法により威力の上げられた矢をギリギリで避ける。しかし完璧には避けきれていなかったのか右頬からなにか温かいものが流れていた。
「女の顔に傷を負わせるなんて……らしくないわね」
私は落ちる汗を拭きながら言った。
ここまで実力差があるなんて……まぁ漫画とか本みたいに主人公が進化すると真の力が〜みたいな展開あると信じたかったけど……
「上手くいかないね!!」
バキッ!
遠くからの攻撃で当たらないなら近付けばいい。相手からの攻撃も受けるけど今の私なら致命傷は回避出来る
バリバリッ! クシャ! ベチャ!
「あぁぁぁぁぁぁ!!」
短剣を片手にガードもせず相手を斬りつける。辺りには血が霧状になって漂い、地面は真っ赤な化粧をしている。
もう腕の感覚ない、目もくらんできた……あれ? 私どうやって立ってるんだろう。
「あぁ! あぁ!! ……はぁはぁ……っあぁぁぁ!!」
体が……はは感覚ないや。でもなんだろう勝手に動く、頭がイメージした動きに数秒のブレもなくついてくる。あはは、おかしいな……もう限界のはずなのに。歪んだ視界の中でガロリアの動きだけが鮮明に見えてるよ……さっきから刃ぶつかってるよね? 金属音も聞こえない。
「……」
ガチャン!!
今私……ありえない速度でガロリアの攻撃を。いやそんなこと考えてる余裕は私にない!! 体が動くなら十分! ガロリアについてけるなら十分!今ここで勝てるなら……理由も! 根拠も! 証明も! 全部必要ないんだよ!!
「私だって! 私だって!! 主人公が良いに決まってるんだからぁ!!」
ガチャ! ガシャン! バリバリバリバリ!!
上がれ心拍!弾けろ心臓! 廻れ魔力! エリーナ! お前の命は……ノーチェに預けて来ただろうかぁ!!
「加速しろ! もっと早くもっともっと上がれ……走れ稲妻ぁぁぁぁ!!」
バリバリ……ピシャッ!!
……来た。
「研究部屋!!」
融合していた稲妻魔法を極限まで削る。削って削って削って……余計な魔力を削り落として速度だけをあげる! 今の私は誰よりも
「速い!!」
あぁ! 頭痛くなってきた! 血が溢れてる感じだ……てか鼻血出てるなこれ。もう訳わかんないけどさ、意識だっていつ飛んでもおかしくないってのに。体がバラバラにちぎれてもおかしくないのに。今の私……
「とってもかっこいいじゃん! 主人公やってんじゃん!!」
ビリビリ! ピシュッ! パシャンッ!!
「……ッ!」
ガロリアの傷が増えてきた。このまま押す! 手は緩めない! 魔力だってまだ!
ズルッ!!
「はっ!」
足が……魔力で紡いでた右足が、まずい! 倒れ――
「る訳にいかないんだよ!!」
ザザッ!!
痛い!! でもここで負ける方がもっと痛い! ここで勝たなきゃ私は私を誇れない! ノーチェのことを語れない!!
「切らすな集中! 持て魔力! 崩れるな私の体ぁぁ!!」
ガシャン!! ピシッ! パシャン!!
ッ! ギリギリで避けられる、大きなダメージがないように致命傷だけは避けてる。さすがはガロリア簡単には倒させて貰えない。速度も手数もこっちが速いし先なのにそれでも足りない。ガロリアには届かない。
「……届かない」
届かない壁……越えられない大きな壁……ならどうする? 主人公なら、ノーチェなら! ぶっ壊して突破するでしょ!!
「融合! 火龍雷鳴! 地獄鳥!!」
バシャンッ!!!
「……」
……
「……!?」
ザリッ!!
「ここだぁぁぁぁぁ!!」
私の全身全霊の攻撃……絶対避けるってわかってた。だからあえてずらしたよ、だってそうすればあんたは周りを警戒するから!
サッ!!
「残念……そっちはハズレ」
ガロリアは私の上着を真っ二つに切り伏せる。そして地獄鳥によって出来た穴の中からボロボロの私が飛び出した。
「さよなら……ガロリアぁぁぁぁぁぁ!!」
ブシュッ! グシャッ!
……
長い、長い沈黙。ガロリアの死亡を確認するため少し体勢を変えた時私の頭に何かが乗った。
「え?」
「……」
ガロ……リア、笑って。
バタンッ!!
「……リア」
言葉に出ない感情が行き場を失い身体中を駆け巡る。やがてそれは目に集中して涙になって溢れ出した。
「あれ? あれ? ……おかしいな、勝ったのは私なのに」
どうして……どうして私は泣いてるんだろう。あぁ! もう本当にガロリアは主人公みたいにかっこよくて優しくて。
「なんで……死んじゃったんだよぉ」
戦いの最中に泣いちゃダメなんてわかってる。でもこの数秒間だけは許して欲しい。
シャンデラ国外れ
「ッ! なんだよお前随分強いじゃん。そんなに強いなら俺たちが死にそうだった時助けてくれても良かっただろ」
レオがニヤつきながら言う。
「ごめんね……でもまだバレたらまずかったから」
チグリジアは人形をギュッと抱きしめて答えた。
「その人形、どうせ燃やすんでしょ? 大切に抱きしめとく必要なくない?」
矢を放ちながらナツが聞く。
「これからみんなを殺すお人形さんに愛情込めてるの。ナツちゃんはいらない? 私の愛情」
「欲しいけどそれは爆弾じゃなくてチョコとかそういう可愛いのにして欲しいね!」
バシュッ!
「それじゃあみんなを倒した後に可愛く飾り付けしてあげるよ!!」
ボンッ!!
どうする……このまま戦い続けて勝てるのか? 全員が攻撃してもチグリジアはその全てを避けるか受け止めるかで全くダメージにはなってない。それにさっきから爆弾も魔力もほとんど使ってないし。持久戦……疲れた子から削っていくつもりか。
「ッ! リリュク!!」
「はっ!」
まずい! 考えることに集中しすぎて周りを――
ボンッ!!
「……っう……ってあれ?」
「サンド・ウォール……何してんのよあんた、もう少し周り見なさい!」
「ご、ごめん!」
ヴィオレッタに軽く頭を下げて魔法を放つ。これが聞いているのかどうかは正直わかんないけど今できる全力を私は出すだけ!
「キャンディ・スロープ!」
「なになに? やる気出しちゃった?」
「ッ!?」
「リリュク!!」
目の前……やば!
「君の魔法は厄介だし量も多いからね、悪いとは思ってるけど落ちてもらうよ」
間に合わな――
「サンダー・キャット!」
パリッ!!
「わっ!」
「大丈夫?」
ナ、ナツ。
「2回も助けられてるんじゃないよ!」
「サンド・ショット!」
「舞風!」
「大丈夫! もう油断しない!」
面倒になってきたなぁ……みんなと遊べるのは楽しいけど肉の焦げる匂いとか音とかも楽しみたいし。あっそういえば妖精って焼いたこと……なかったなぁ。
「破手!」
「風鴉!」
「呪怨魂葬!」
ガッシュにレオ……キャネルもいる。でも私の狙いはあなた達じゃないの。
「……あはっ」
チグリジアの変化に最初に気付いたのはアゼルだった。
「ヴィオレッタ!!」
「え?」
避けられるタイミングじゃない。それにこれだけの人形……ヴィオレッタちゃんの魔法ごときじゃ逃げられない。
「ヴィオレッタぁぁ!!」
ドンッ!
「ヴィ――」
ボンッ!!
「今……何が」
「ヴィグ!!」
吹き飛ばされたヴィオレッタだけ、ウィグがギリギリでヴィオレッタのことを押し出したことを知っていた。
「あらら〜、邪魔が入っちゃった。でもまぁこれで1人……ッ!?」
「やっと驚いたな」
弓が……この量はさすがに!
「放て!!」
パシュパシュパシュパシュパシュパシュパシュパシュ!!
「こんなの隠してたの〜?」
「ヴィオレッタには見せたよ!」
魔力の実体化……矢も魔力で作られてる。しかも厄介なのはこの矢、相手の魔力に反応して追尾してくる。
ボンッ! ボンボンボン!!
「全部弾くしかないって訳ね!」
優先順位を変更……アゼルとウィグを最初に殺してからレオとかリリュクとか厄介な――
「油断……したな」
鳥!? 違う……カガリか! しかもその背に誰か。
「十六章三番六十四列!」
ウィラー!? それにあれは巨人!?
「潰れろ! チグリジア!!」
「これはまだ出すつもりなかったけど! クラッシャー!」
バコンッ!!
「仕留められなかったか」
「下いくぞ」
「おう!」
いい連携……クラッシャーも使っちゃったし。ロキスク理事長も動かないとは言いきれない。
「でもまぁ……こんなに楽しいことを早く切り上げるのも勿体ないか」
バサッ!!
「ッ! 避けろ!!」
「はははははは! 砕けろみんな! 爆滅!!」
ステータス
エリーナ・クルジェンタ【一閃】
電乱姫Lv1
《耐性》
物理攻撃耐性Lv3、状態異常耐性Lv4
《スキル》
知り尽くす者、混沌監獄、研究部屋
《魔法》
火炎魔法Lv5、火斬魔法Lv6、火流魔法Lv3、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv10、稲妻魔法Lv10、回復魔法Lv1
《七獄》
強欲