237話 第二次天闇戦争・覚悟
ガチャ!!
「ッ!?」
「お前……誰だよ」
カシャン!!
杖を弾かれたテレジアは先程とは違い驚いた様子でこちらを見ていた。
「……」
「だから……テレジアの体で何してんだって聞いてんだよ!!」
バコンッ!
「……」
テレジア? は動揺することなくイヴィルの攻撃を避ける。しかしその顔は少し怒っているようにも見えた。
「いつまで黙ってるつもりだ……それともこのまま黙って死んでくか?」
それを聞いたテレジア? は杖を下ろして髪を整えたあと真っ直ぐとこっちを見た。
「……まさかな」
テレジア? は表情も変えずに呟いた。
「……」
「しかしどうやって出てきた。あれから出るにはただのお守りでは無理だっただろ」
「出てねぇよ」
私がそう言うと現実だと思っていた世界は真っ白な何も無い世界に変化した。
「なっ!?」
「お前……知らなかっただろ」
コツ……コツ……コツ……コツ
「何を」
「この技を扱えるのはテレジアだけなんだよ」
「何が言いたい」
刀を伸ばせば首を切り落とせる距離まで近付いて話を続ける。
「要するに、体を借りただけのお前にこの技を使えるはずないんだよ」
そこで気が付いたのかテレジア? は振り返った。
「……」
「あれは」
「あぁ……そうだあれがテレジアだ」
この技は相手のトラウマを呼び起こし最も悪いと思っている者に化けたテレジアがトドメを刺すと言うものだ。そう、この技はテレジアしか使えない。だから今ここにいるのは。
「そんなことが……そんなことがあるはずないだろ!」
杖を投げ捨てたテレジア? が剣を抜き雑な太刀筋で私に襲いかかる。
ガチャ!
「覚悟しろよ偽物……散々私をバカにして……親友の体を汚して、生きて帰れると思うなよ!」
バコンッ!!
剣を弾きノーガードになった腹に蹴りを入れる。テレジア? は血を吹き出しながら奥の壁にめり込んだ。
「がはっ!」
「まだ終わらねぇぞ!」
刀を一直線に差し込む。しかしテレジアはギリギリのところでそれを避ける。そのまま剣を足めがけてスライドさせた。
カシャンッ……
「お前!」
「……」
剣に乗った私は刀をテレジア? の頭部に刀を深く突き刺した。
ブシュッ!!
「貴様……」
バタンッ!
「……」
私は何も言わずにテレジアに歩み寄る。意識があるのかどうかは分からないけど……いやどっちでもいい。どっちでもいいんだ。
「テレジア」
「……」
「私はテレジアの言うことを直ぐに聞かずに……そんなことをしていたから……テレジアの命を」
こんなことを言っても救われるのは私だけだ。そうだ……これは私の自分勝手な謝罪なんだ。
「本当にすまなかった。私はずっと……テレジアに謝りたかったんだ」
私は深く頭を下げる。頭を下げるなんて行為で許してくれるなんて思ってない。それに許してくれとも頼まない。ただ私の謝罪を見て欲しいんだ。
ポンッ
「テレ――」
「……」
笑っ……
肩に乗せられた手はなんだかとても温かかった。
「戻って……来たのか?」
地面を軽く蹴り、空を見上げる。そして確信した。戻ってきたんだと。
「……」
私は死んだテレジア? の方を見て刀を向ける。
「わかってるんだよ、早く起きろ」
「……」
血を流して倒れているテレジア? はピクリとも動かない。
「気のせいだったか」
刀を下ろして鞘にしまう。そのまま背を向けて別の戦場へと――
シュッ!
「ッ!?」
「わかってるって言っただろ」
しまった刀を抜き胴体に線を描く。しかし私の刀はテレジア? の剣で受け止められてしまった。
「お前」
「さっきのは軽い運動さ……ここからが本番だ」
ガチャ! ガシャンガシャンガシャンガシャン!!
さっきより速い……手抜いてやがったな。今は何とか防げてるけどこのままだと押し負けるな。……よし!
バコンッ!!
「地面を!」
足で地面を破壊して足場を壊した、剣を振るっていたテレジア? もさすがに体勢を崩したしまった。
「ッ!……? あいつはどこに行った」
足場を壊し地面を破壊したことでテレジア? の周りには土煙が舞っていた。それは視界を潰すのには十分すぎる程だった。
「視界を遮ったつもりか」
テレジア? は落ち着いた様子で辺りを観察する。しばらくそれを続けていると左側に人影が現れた。
「そこだ!」
剣を天高く振り上げてテレジア? はその影に躊躇いなく一撃を放った。斬られた影は半分に別れた後そのまま地面に崩れ落ちていった。
「よし! これで!」
「どこ……見てんだよ」
「ッ!?」
ザリッ!!
先程テレジア? が切り伏せた影とは真反対の方向から銀色の刀が現れる。テレジア? 慌てて剣を振るうが体勢を低くしていた為か私には当たらなかった。
「くっ!」
「鷹飛び」
シュッ! ……サシュ
「……くそ……が」
ビチャッ!!
「……」
テレジアの形をした何かは胴体を真っ二つに斬られた後命を引き取った。
「さよなら、私の親友」
斬られた影の方を見つめながらイヴィルは刀に付いた血を袖で拭いて丁寧に鞘の中へと納めた。
「エアロ・バード!」
「林界!」
「スター・ホール!」
「ブラック・アウト!」
3対1でギリギリ同じ……さすが魔王、こっちには六王が2人居るのにこの実力差。正直勘弁して欲しいわ。
「どうした……随分偉そうに参戦したにしては攻撃も何もかも微妙じゃねぇか」
ハレンがため息混じりに言った。
「うるさいわね……安心しなさいよ、これからあんたが度肝抜くようなとんでもないことしてあげるから」
「そうか……そりゃ楽しみだ」
ニヤリと笑ったハレンが真っ黒な闇を手に宿して突っ込んで来た。
「スター・コレクション!」
突っ込んできたハレンに向かってルルが魔法を放つ。どうやらルルの攻撃だけは危険らしく先程から受けることなく避け続けている。
「邪魔だなぁ……でもいいの? そんなにそれ、使っちゃって」
ニヤリと笑うハレンがルルの指辺りをさす。横目で確認するとルルの白くて綺麗な手は黒く変色していた。
「ルル……それは」
「こうなるのは覚悟の上……この杖は妖精にとっては毒のようなもの……しかたがないだろう」
そう言い終わると同時にルルが魔法を放つ、タイミングも完璧だったがハレンはそれを避けてアルに向かって黒い玉を投げつけた。
「ブラック・ボム!」
黒い玉はぐにゃぐにゃと形を変えながらアルに近付いていく。しかしアルはその玉を見たまま動こうとしない。
「アル!」
「大丈夫です」
優しい笑みを浮かべたアルだが黒い玉はそのまま真っ直ぐに突き進む。
アルは何してるの……。? ルルが魔力を貯めてる? 隙を作ってるの? まぁいいわ、どの道攻撃はしなくちゃならないからね。
「ウィンド・ショット!」
羽をちぎり人差し指と中指の間に挟み魔法で加速させる。私の羽根は鉄と同等、これは簡易的な銃と同じよ!
パシッ!
素手……で持ったわね。
ブシュ!!
「ッ!?」
「油断したわね……その羽にはエリーナから貰った毒針を仕込んでたの、避けられたらそれまでだったけど武器で受け止めるでも良かったけど素手で持ってくれてとても助かったわ」
「お前……」
まぁ少し狙ったんだけどね。アルとルルが何を狙ってるかは知らないけどこの緊張感の間ハレンが無駄な動きをしたがるとは思えなかったのよね。そこでわざわざ避けさせるのが目的みたいにあんなこと言えば……武器でもなんでも止めてくれると思ったのよ。
「その毒は即効性じゃないし死にしない。でもじわじわと相手の魔力を作り替える」
「作り替える?」
「そう……その毒は貴女の魔力を生命力に変換させる毒よ」
この毒の恐ろしさに気が付いたのかハレンは大粒の汗を地面に垂れ流した。
「うるさい! だが後悔するんだな……アルはここで」
「こっちだよ」
「ばっ!」
グサッ!!
ポタッ……ポタッ
「油断したな」
「お前……なんでだ、ふたりも」
「あぁ……あれは」
アルが指を動かすとあるだったものはゆっくりと倒れていった。
「槍……」
「正解だよ、まぁ要するに騙された訳だ」
「この程度……この程度の怪我でぇぇぇぇ!!」
バシュ!!
「かっ」
「ようやく当たった」
ルルの魔法がハレンを貫いた……にしてもあの魔法真っ白な光がそのまま体を刺してる。傷口はなんだか焼けるみたいな音してるし、結構えぐいわねあれ。
「もう終わりだ……ハレン」
「……あは、あはは……はぁはぁ。終わり? どこが終わりよ……もうこんな世界とっくに終わってるじゃない!」
ボンッ!!
「なにこれ!」
「ルル!」
「ッ!?」
黒い煙!? 前が見えない……。ルルとアルもどこに。
「ったく……自爆? なんなの……よ」
黒い闇の中から外の景色を覗いた時、私の瞳に映ったのは……見上げるほど大きな蝶々だった。
ステータス
エレナ・ハーレルト【空喰い】
空帝黒翼Lv9
《耐性》
痛覚耐性Lv10、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv10
《スキル》
#…4$fy者、こ/a(と(>…a((9=m(0&)、と(z##…€((7^_÷*(と)
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv10、火流魔法Lv4、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv10、稲妻魔法Lv10
《七獄》
???