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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
夜桜編
237/261

236話 第二次天闇戦争・懺悔

私の人生は何も拾うことが出来ないんだと最近理解した。両親も居ない、村のみんなも居ない……ノーチェですらもういなくなる。この手はとても小さくて隙間だらけで何も残らない。多分これから私が生きていても……生きていても。



「フィー」


……私を呼んでる?


「フィー」


懐かしい声だ……多分母様だな。


「お迎えでも来たのかな」

「貴女の名前の意味を教えてあげる」


抱きかかえられてる?


「貴女の名前の意味はね……」


これは……昔の記憶?



ボコンッ!!


「今度はなんだ」

「……」


フィーちゃんの周りに真っ白な光が……眩しい。


「ふん……進化か、しかしまぁ小娘の進化などたかが知れている」


クレアシオンが光を放つフィーに斬り掛かる。さっきの怪我が治ったかも分からないので私は何とか剣で防ごうとするが体からこぼれ落ちた命が私の足を滑らせた。


「ッ!」


ガシャッ!


「私にできることは少ない……家族も、民も、親友ですらこの手はすくい上げられなかった」

「何を」

「なら!!」


ガシャンッ!!


クレアシオンの剣を片手で弾いた!?


「私は私という存在で全てをすくい上げる。私の手のひらだけじゃなくて全部を使ってこぼれ落ちないようにみんなを守る!」

「……数十年生きた小娘が偉そうな口を聞くんじゃない!」


カシャン……


今の軽い音は……何が


バコンッ!!


「ぐっ!」

「飛べぇぇぇぇぇ!!」


バキッ!!


「うっそ」


クレアシオンの剣を折った……。


「そうか……なるほどな、お前の根本的な強さはそれか」


口元から溢れる血を拭きながらクレアシオンが起き上がる。


「お前の強さは順応性、強い相手と戦えば戦うほどそれに対応していく。進化の速度が早いのもそれが理由か」


クレアシオンが丁寧に説明しているがフィーはそれを聞かずにゆっくりと私の方へとやってきた。


「フィーちゃん」


するとフィーは何も言わずに私の前に手を差し出した。


「……わかった」


私もそれだけ言って手を取った。

そうだよね……私たちは



2人で



1人前だもんね



「「覚悟しろ! トカゲ!」」


シャル……ありがとう。そしてノーチェ、さようなら。



「幻想魔法……自死破演」


テレジアの幻想魔法は強力だ。正直私じゃ手も足も出ない。だけど……こいつを使えば。


パリンッ!!


「5!」


まさかこれを……テレジアから貰ったこれをテレジアと戦って使うことになるとはな。



「お守り?」

「はい……この御札には私の魔法が込もっています」

「なんの魔法だよ」

「幻魔法を打ち消す魔法です」


テレジアが両手をパカッと離しながらいった。


「なんだそりゃ」

「いらないですか?」


悲しそうな顔をして御札をしまおうとするテレジアを見て私は咄嗟にその札を掴んだ。


「いらないとは言ってない。まぁ何かで居るかもだし貰っとくよ」


さっきのしょんぼりとした顔はどこにいったのか……まぁいいや。せっかくテレジアが作ってくれたんだ。



「幻想――」

「何度も同じ手を食うかって!」


バコンッ!


外し――


「混挽落魔」


パリンッ!


4


「風斬魔法、咲斬連!」


居ない!?


「滅六獄――」


バキッ!!


「ッ……」


やっと当たった。

……しかし本当に死んでるんだな。

私はテレジアを殴った手を確認して触れた時の感触と温度で改めて無惨な現実を叩きつけられる。


「……なぁテレジア、お前の瞳にはなにが写ってるんだ?というか私のことを恨んでるよな。あの時テレジアを殺したのは私のようなものだし」



魔王襲来直後


「なんだ! 何が起きたんだ!」

「落ち着いてイヴィル……とりあえずここは危険だからテレシアを安全なところに連れて行ってあげて」

「わ、わかった。でもテレジアは?」


テレジアが自分の胸に手を当てて答える。


「私はここで少しでも国の人を誘導するわ」

「それは後でいいだろ! お前だって直接戦闘能力はなんだ!……わかった私がここに残る。テレジアとテレシアは2人で避難所に」


私がそこまで言うとテレジアはテレシアの手を離して私の方へと向きを変えた。


「テレシア、イヴィルお姉さんの言うことをしっかり聞くのよ」

「お姉ちゃん?」


何が起きているのかよくわかっていない様子のテレシアは首を傾げながらテレジアの顔を見る。


「おい! 勝手に話を進めんじゃねぇって! ここでどっちかが残ることないだろ!」


少し無理やりにテレジアの腕を掴むと私は右頬に強い衝撃を受けた。


「……なっ」

「冷静になりなさい。この状況で力がある私たちがまっさきに避難所に向かうわけに行かないでしょ……とにかくイヴィルは急いでテレシアを避難所に預けてきて、それからは貴女の判断よ」


私はそこでようやくテレジアの言葉を理解して急いでテレシアを避難所に預けることにした。……このくだらないやり取りがなければあんなことになることもなかったというのに。


ザッザッザッザッザッザッザッザッ


「テレジア?」


さっきまでの街並みは崩されて周りには生き物だった塊が散らばっている。


「テレ……ジア」


私は震える足をどうにか押さえ込んでテレジアのことを探し回った。

……そうだ、テレジアのことだからきっとケルロスの兄貴やクイックの兄貴と合流してるとか?


「は、ははは。そうだそうに決まってる。とにかく1度情報を」


ゴンッ


急いで振り返った私は足元に転がっていた硬い何かを蹴ってしまった。


「一体何……が」


そこには空のように青い綺麗な髪をした鬼が変わり果てた姿で転がっていた。


「テレ……」


それからの記憶はもう……思い出したくない。



ガシャンッ! カチャ……カチャン!


私の刀を杖が斬られない角度で受けてる……こんな器用なことが出来たのか。


「生きていた頃の瞳とは全然違う」


濁りきった目だ……こう戦っていて私は思う、あの瞳を見て私は思う。勝ってしまっていいのだろうか? テレジアを倒さなくてはならない。それがテレジアに対する礼儀、そして謝罪だと思った。でもそれは私のエゴなんじゃないかとも思うんだ。


「……」


自分勝手な私を見てテレジアはどんなことを思っているのか。動く骸にそんなことを聞いてもなんとも答えないだろうが……どうしても私は。


「白昼夢拾式」


自分が間違っているような気がしてならないんだ。


3


ザザッ!!


砂を巻き上げながら刀を上に向けて振るう。砂はテレジアの視界を遮り刀の軌道を見えなくした。


今だ!


「昇り舞!」


グシャッ!!


ッ!? 致命傷を避けるために腕を犠牲に!!


「……」


ザッ!


まずい! テレジアの射程距離に入っちまった!


バコンッ!!


「ぐっ!」


本気の……くっそ、やっぱり重いな。テレジアと戦う上で私はある一定の距離を稼いでいたんだ……それはテレジアの恐ろしい程の怪力を警戒していたからだ。しかしこの力は死んでも衰えないのかよ。

殴られた腹を抑えながら前を見る。そう一瞬だ、一瞬だけ敵から目を離してしまったのだ。


「幻想魔法……滅」



ピチャ……ピチャ……ピチャ……ピチャ……ピチャ……


「……ん?」


地面? 私は寝転んで居るのか……なんでだ? あれ……というかなんで私は生きてるんだ?


カチカチカチカチカチカチカチカチ


一体なんの……

音のする方を見るために振り返るとそこには黒く気持ちの悪い虫が大量に溢れ返っていた。


「なっ!」


慌てて刀を抜こうとするが私の手は無を掴んだだけだった。


「刀が!」


ッ!!


目を閉じて衝撃に備えようとした時地面がぐにゃりとねじ曲がった。


「今度はなんだよ!」


バタンッ!!



「さっきのは……一体」


そんなことよりここはどこなんだ。……私はさっきまで何を。


ピチャ……ピチャ……ピチャ……ピチャ……


「水の音?」


バシャンッ!!


「……」

「なんなんだよこれぇ!」


グニャア


「またかよ……害はないみたいだけど、これは本当になんなんだ」



ピチャ……ピチャ……ピチャ……


暗い、なんにも見えない。でもひとつ思い出したことがある私は戦っていた。テレジアと戦っていた。そうだ……今は戦争中で、仲間が他にも戦ってるんだ。


グニャア


「……ここが幻想魔法の世界ならテレジアから貰ったこれを使えば」


パリンッ!



ピチャ……ピチャ……


「戻ってない? なんでだ」


あたりはさっきよりも少し明るくなっている。でも一体何が。どうして抜け出せないんだ?


ベチャッ


「今度は一体……ひっ!」


私の足元には虫だか動物だかよく分からない気色の悪い化け物が転がっていた。


「これは……これ……は」


合成魔獣?



ピチャ……


「ッ!?」


なんなんださっきから……ここは現実なのか? 意味のわからない事ばかりが起きている。一体何が、ここはどこなんだよ!!


「ここは貴女の世界」


ッ!?


「テレ……ジア」

「ここは貴女のトラウマが集まった絶望の世界」


テレジアがゆっくりとこちらに向かってくる。足音がコツリ、コツリと妙に大きく聞こえる。


「虫が苦手だったでしょ?」


虫……


「あぁ両親が死んだ日は雨が降っていたっけ?」


さっきのは


「3回目は弾かれちゃったけど……さっき貴女が見たのは」

「はぁ……はぁ……はぁ」


さっきの魔獣は。


「そう……私たちを利用したあの」

「うるさい! テレジアはこんなことしないんだよ! 死体の癖にペラペラとわかったような口聞くんじゃねぇ!」


……そうだ、こいつは死んでるんだ。この力だってきっと。


「……貴女のトラウマはまだひとつ」

「あっ」


そして……私は



「……」


なんの感情も無い様子でテレジアがイヴィルに近寄る。イヴィルは地面に座り込んだまま動かない。下を向いた顔は今までのことを謝るかのようにテレジアに捧げていた。


「……」


スッ


テレジアは懐から短刀を取り出してゆっくりとイヴィルの首へと振り下ろした。


ステータス

フィー・サレリアル【血染め姫】

天輪姫Lv2

《耐性》

痛覚無効Lv8、物理攻撃耐性Lv9、魔法攻撃無効Lv8

《スキル》

怨嗟王ツォーン、省みない者、無限暴力(エネルギッシュ)破滅願望(デス)

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv10、火流魔法Lv10、獄炎魔法Lv10、幻魔法Lv3、光魔法Lv10、神聖魔法Lv4

《五式》

進む者

《七獄》

憤怒


イヴィル・ティンゼルク【風切り】

雷帝天鬼Lv7

《耐性》

痛覚耐性Lv9、魔法攻撃無効Lv8

《スキル》

横溢Lv8、絶無Lv4

《魔法》

風斬魔法Lv10、風流魔法Lv9、稲妻魔法Lv8、土石魔法Lv6、土斬魔法Lv6、破壊魔法Lv7

《七獄》

傲慢

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