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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
夜桜編
234/261

233話 第二次天闇戦争

翌日


集まった兵士たち、負けを味わってもまた集まってくれた勇気ある者達。それも最初より多い。……こんなにいることがとても驚きだ。

そして少し高い所にたってみんなに話しかける。既にケルロスやクイックのおかげで話を聞く体制は整っているらしい。


「……もうここに立って偉そうに何かを言うつもりは無い」


ザワザワと周りがうるさくなるが俺は無視して話を続ける。


「ただここにいるみんなに伝えることは一つだけだ……生きて帰ってこい」


それを聞いた兵士たちは声を張り上げて叫んだ。その声はフィデース信栄帝国全体に響き大地を揺らした。



移動中のヘリは無言だった。しかし空気が重いわけじゃない。ただみんなが噛み締めるように敵地へと向かっているんだ。



戦場に付いた……既にゼロは奥で待ち構えている。敵兵も多くが整列している。待っていてくれたようだ。……随分と親切だな。


「ノーチェ」

「……わかってる」


戦いになれば仲間とは話せない。人によるだろうがこれが最後だ。みんなと話せる最後の機会。


「これ以上言葉はいらないよ。伝えたいことは伝えた。これ以上を伝えれば俺も……みんなも動きが鈍る。それにもう前を見るしかないんだ」


でもそうだな、一つだけ。


「エレナ」

「……なに?」

「この服好きだよ……いつもありがとう」


真っ白な服、戦いには向かないけどそんなことどうでもいい。ただ俺はこの服に散りばめられた黒が星のようで好きなんだ。背景が白とかそんな小さなことはどうでもいい。ただ俺はこの柄が好きなんだ。


「良かったわ……ノーチェ」


……


「すぅ……はぁ」


ここまで来たら作戦も何も無い。ただ全員、生きて帰ってきてくれ、それだけだ。


「……打ち砕け障害を突破するんだ。ゼロを倒して進み続ける。その世界の行く末は頼んだよ2人とも」


2人の肩に手を乗せる。……2人に会えるのも今回が最後かもしれないと考えると辛いな。


「安心しろ」

「任せて」


……いや大丈夫、もう不安になることはないな。


「よしやろうか」


刀を抜いてゼロに向ける。

それを見た周りの兵士達は声を上げながら突撃していった。


「……」



「氷結」


パキッ!!


出し惜しみはしない。


「殲滅しろ!」


前線の兵士は凍らせた、あとはどこが動いてくるか。


「ドラゴン・ファイヤー!!」


上空から大きな龍が炎をまといながら突撃してくる。俺がその龍に向けて魔法を放とうとした時、横から何かが高速で突撃して言った。


バコンッ!!


「邪魔!」

「借りを返しに来たよ!」

「フィー、シャルも」

「任せてノーチェ!」

「先に行って!」


俺は2人の声に従いゼロがいる方向へと再度走り出した。



「またお前達か」

「前の……私達じゃないから」

「ノーチェの覚悟を無駄にはしない」


周りの兵士が3人を避けて戦っている。味方も敵もわかっているのだ、自分が入る隙はないと。


「最初から本気で行く!」


シャルが叫ぶと辺りから赤い魔力が流れだした。


「崩れろ! 叫べ! 突き進め! 私は全てをなぎ倒し進む者! フィー・サレリアルだ!」


まとめた髪が逆立ち美しく散らばる、金色の目が鋭く光握られた短剣からは無駄の無い魔力が放出している。


「……行こうかフィーちゃん!」

「うん!」


2人の少女は桃色と赤色の魔力を出しながら巨大な龍に向かっていった。



「クレアシオンの奴どうしましょう」

「放っておけ……それよりもこっちだ。魔力の集まりが悪くまだ完全に復活させられていない」


ゼロたちが座っている岩の裏には青に光る結晶が置かれていた。しかし前まで見えていた内側は青く濁っているせいで全く見えなくなってしまっている。


「敵味方問わず死んだ者の魔力を集める。本来ならお前の集めた死体も使いたいが……もう既に支配下だろ?」


ハレンがニヤリと笑う。


「抵抗力が強ければ強いほどいい兵士になる。……何よりこの2人はアイツらにとっても殺しずらいはずだよ」


上機嫌に話しているハレンの後ろにはエルフと鬼が立っていた。



グシャ! ザシュ!


突っ込んでくる敵を倒していると少しだけ考えることがある。どうせこの先死ぬ命……なぜ俺はそのうえでさらに人を殺しているのだろうかと。死ぬとわかっている者に殺されている兵士達は一体なんなんだろうと。同情している訳じゃないけれど……なんだろうか、とても心が痛む。


「前から敵兵!」


飛んでいたエレナが叫んで報告した。増援か……氷結を使い足止めをしようとした時俺は気が付いてしまった。いや、多分俺より早く気付いた者が2人。


「ガロリア」

「テレジア」


昔仲間だった者達が俺たちに刃を向けている。前の俺ならここで心が折れていたかもしれない。でもさ、こんな所で悲しんでる暇ないんだよ!


「アイス・スピ――」

「待って!」


エリーナが弓を構えながら言った。


「エリーナ」

「……ガロリアは私がやる」


矢を抜いて慣れた手つきで弓に合わせる。そして丁寧に、優しく弓を引いて完璧な構えで矢を放った。


パキッ!


エリーナの矢は空中で弾かれる。ガロリアが反応したのだ。


「ここは任せて……先に行って」


ケルロスやクイック、エレナが不安そうにエリーナを見つめるが俺はエリーナを見ないで進み続けた。だけどやっぱり一言だけ……これは部下としてでも仲間としてでもない、友達として君に一言だけ伝えるよ。


「またね」


エリーナからの返事は無い。でも俺は前を向いて


「ノーチェ!」


エリ――


「待ってる」


振り返ると満面の笑みを浮かべたエリーナが手を振っていた。



「……いいの? イヴィルは何も言わなくて」

「あぁ、私は……いやそうだな。俺は大将のあの背中を見れただけで満足だ」


……イヴィルもきっと。


「何それ……ノーチェの真似?」

「そうだな」


くすくすと笑う私達の目にはきっと涙が浮かんでいた。でも……ノーチェの後ろ姿を見ているとなんだかまた会える気がして。


「待ってるよノーチェ……いつまでも、いつまでもね」


ザッ


「来たな」

「うん」


ガロリア……ごめんね、ノーチェを守れなくて。ごめんね強くなれなくて、ごめんねこんなことになって……。何度も謝るよ、私の人生は後悔ばかりだから。謝り続けて頭を下げ続けて……後悔に足を引っ張られてさ。それが私の人生、それが私の道。


「私の道は、後悔で出来てる!」


後悔の分だけ私は強くなれるから!


「……俺の道は、悲観で出来ている!」

「イヴィル……」

「常に後ろしか見てこなかった俺は……これからも後ろを見て今までの事を思い返す。それこそが俺の強さであり私の優しさだから!」


叫び刀を抜くイヴィル、私も弓を引いてガロリアを見る。


「越えさせてもらうから! ガロリアぁぁぁぁぁぁ!!」


最初に私が放った攻撃は……ガロリアが教えてくれたファイヤー・ショットだった。



私は私たちを拾ってくれたノーチェに心から感謝してた。でもそれだからって命をかけてまで戦うつもりはなかった。……それがこんな最前線で狙われやすく見えやすい空でノーチェの援護をしてるなんて……笑っちゃうわよね。


バコンッ!!


「なんだよ先輩……せっかく昔の仲間と会えたんだからもう少しお話してあげなよ」


あれは魔王ハレン……狙いが外れたから自ら出てきたのね。


カチャ


「なんだよ先輩……怒ってるの?」


ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべるハレン……でもノーチェが怒っているようには見えない。


「……いや、そうだな。たまには頼ってみようか」


そう言うとノーチェは刀をしまった。そして私は何かを言われる前にハレンとノーチェの間に入っていた。


「お前」

「私達のリーダーの……そして覚悟を決めた友達の道を塞ぐ奴は魔王でも、神様でも絶対に許さないから」


私の道は涙で出来てるわね……泣いて、泣いて、ずっと泣き続けて……もうだめだって諦めて、それでも諦めきれなくて行き着いた先がノーチェの所。涙は心にある不純物を全て落としてくれるから……私はノーチェを信じられた。

だからね……多分私、今も少しだけ泣いてるの。


「エレナ」

「何してるの! 早く行きなさい!」


立ち止まってる時間なんてないでしょ……あなたは導く者、私たちは貴方の道に導かれて歩いてきたの。最後くらい私たちが道を作っていいじゃない!


「……あぁまたな、俺の美しい黒翼」



「はは、何言ってるんだか」

「……私を止められもしなかった鳥が1人で何をするつもりだ」

「1人? 誰が1人って?」


私が微笑むと奥から小さな妖精と森人が現れた。


「借りを返そうと思いまして」

「妾も」

「今回の一人称は妾ですか」


アルが面白そうに言った。


「うっさい! 変化が大事なんだ!」


ルルはアルの周りを飛びながら怒っている。


バシュ!


「……本当にこういう手がお好きですね」

「手で」


闇魔法の攻撃はアルが素手で止めてしまった。それを見たハレンはものすごく驚いている様子だった。


「貴女の属性は闇……国の奥に眠る魔法具を引っ張り出してきましたよ」


アルが3本の棒を取り出した。


「これは滅獄の槍、まぁそれの1部ですけど……これは闇を払う力があります。それ故にこの棒の近くでは貴女の人形も使えません」


確かに……ここの周辺だけ敵が来ない。


「面倒な」

「それだけじゃない!」


ルルがその背丈には見合わない大きな杖を取り出した。


「ッ!! それは!」


「見覚えがあるようね……そう、これはコロリアン妖精圏に伝わる伝説の杖、星凪の証! 妖精にしか使えないし妖精にしか攻撃出来ない杖だけどその威力は絶対……私や貴女の天敵よ」


そんなものまで。


「……だがその力を使えば妖精がどうなるか知っているはずだ」


ハレンが少し慌てた様子で言った。あれは使われるとまずいからどうにかして避けようとしているようにも見える。


「……えぇ星凪の証は本来力を得ようとした妖精を戒めるためにある武器。だけどそれとは別にもう一つだけ役割があるの」


杖を強く握りルルが続けた。


「道から外れた妖精を治す杖! 妖精とは本来夢と希望の象徴! それを乱す者は妖精の王として絶対に見過ごせない!」


ルルの叫びが戦場に響く、その覚悟はルルの兵士にも伝わったようで戦場が熱くなるのを感じた。


「覚悟しなさいハレン・バーバット! このルル・メリルが死んでも貴女を止めるから!」


……私も全力でノーチェを助けないとね。


「やるわよアル」

「はい……ノーチェ様に恩を、今度こそお返しします!」


そう言って私たちは魔王に向かっていった。

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