223話 天闇戦争・撤退
「だいぶ削ったな」
「えぇ……でもまだまだ居るね」
「お手伝い感謝します……えっとカーティオさんとペスラさんですよね」
……この子は確か雪人の。
「フローリアさんですね」
珍しいカーティオが人の名前を覚えてるなんて……いや女の子だからか。
「あっはい! そうっす!」
こっちが素のキャラっぽいな。
「ひとまずは大丈夫でしょう某達がここを守りきるので殿の護衛に」
「……そうだね、1度――」
バコンッ!
「カーティオ!」
「……あぁ」
「ふぅ……どうにか持ちこたえられたか」
「こう数が多いと困りますよね〜」
疲れはしないけど周りの状況的に突っ込んでいく訳にも行かないか。
「とりあえず戦力を分けるかぁ……ペスさんはあっち行くからカーティオは……? カーティオ?」
カーティオが居ない。
「カーティオ見てない?」
「あぁ……カーティオ殿なら殿に戦況報告をすると先程」
戦況……報告?
「……わかった」
私は心の奥でずっと思っていた違和感をしまい込み目の前の敵を朽ち果てさせた。
ガチャン!
「楽しい! 楽しいよノーチェ!」
「そりゃ良かったな!」
実力は拮抗してる……先に一撃与えた方が勝ちだ。
「氷狼!」
「あはははは!」
当たり前のように砕いて来るなよ。
パンッ!
「それはもう知ってたさぁ!」
嘘だろ! 指先で掴みやがった!
「こっちの番だ! 破滅流星!」
「ッ! 海皇帝!」
バシャン!!
「氷結!」
足を捕らえた!
俺は捕まえたセナの首に刀を振るう、しかし刀はただ空を斬っただけだった。
「まじかよ!」
「にひひ」
バコンッ!
ッ!! ギリ防いだけどそれでもこのダメージ……やばいな。
「見て見て! 血だよ血!」
セナはダラダラと足から流れる血を俺に見せつけて笑っている。
「無理やり引っこ抜くからだ」
流れた血を舐めとりセナは微笑む。そしてなんだろう……なんとも言えん色気がある。
「見惚れてないで次行くよ!」
「み、見惚れてないわ!」
ガシャン!
ッ!? 槍を回して!?
「くっ!」
さっきと動きが違う……まだ実力を隠してたか。
ガチャン! カチャカチャ!
「アイス――」
俺がそこまで言うとセナは俺の手を掴んできた。最初は何をする気かと思ったが何もしてこないので困惑しているとおかしなことに気がついた。
「魔法が……」
バコンッ!
「うぐっ!」
魔法を発動する一瞬の隙を使って魔力を流し込んできやがった……乱れた魔力のせいで魔法が発動できなかったのか。
「さぁ……どうするノーチェ」
口の中に溜まった血を吐いてニヤリと笑う。しかしセナはなんだか呆れた顔をして俺の少し後ろを見た。
「ん?」
「ごめん戦いの最中に……でも戦況をどうしても報告しないとって」
カーティオか、セナは……動いてないな。
「何かあった?」
「それが右翼側が壊滅的で」
「右翼? エリーナとエレナは?」
「……」
……。
「すぐ行く」
小さな声で呟いてセナの方を見る。律儀に待っていてくれてありがたいが時間を掛けてられなくなった。セナには悪いがここで――
グシャッ!
「……な……にが」
ブンッ!
「うぉ! 危ない危ない……ここから反撃が来るとは思わなかったよ」
「カーティ――」
「お前!!」
俺がカーティオの名前を呼ぼうとするより早くセナが地面に降りてきてカーティオの首に槍を向けた。
「何してくれてんだ!」
両手を挙げてニヤニヤしているカーティオ、セナは痺れを切らし槍を突き刺した時パシュッ! と何かが切れる音がしてセナの槍はバラバラに砕け散ってしまった。
「ッ!? ゼ――」
ブシュッ!
「セナ!」
「さっきまで戦ってたのにそいつの心配とは……お前は本当にわからんやつだ」
黒い剣、ムカつく声、そしてこのやり方!
「ゼロ……てめぇ」
フラフラになりながらも立ち上がろすると俺は体に3回分の衝撃を受けた。
パンッパンッパン!
カーティオ……。
「ミッちゃんはしぶといからさっさと殺した方がいいよ」
「わかっている」
銃で撃たれるってこんなに痛いのかよ。くそ! 魔法を使って逃げないと。
ゼロの剣が俺の脳天目掛けて振り下ろされた時カーティオの後ろから大きな爆発が起こった。
「ん?」
「カーティオ!!」
あれは……ペスラ。
「ペスラかどうした」
カーティオはなんの悪びれもなくペスラの方を向いた。
「ッ! デス・インフェクション!」
「……カース・ワン」
2人が戦い始めてしまった。今のうちに少しでも回復を。
ブシュッ!
「あぁ!」
「回復はさせない……俺達が必要としているのはお前の死体だ」
「待てよ……ゼロ、僕との約束はどうするんだ」
腹部を抑えたセナがよろけながらゼロに近寄っていく。
「ノーチェと戦わせてやるって言ってだろお前」
「何を言ってる……戦っただろ?」
ゼロはセナを見て微笑んだ。
「ふざけんな! ゴホッ……僕にとって戦いがどんなものか知ってるよな! なんでこんな真似をした!!」
セナが拳を握りゼロに振り下ろそうとした時遠くから何かが飛んできてそれはセナの腕を貫いた。
「……そうかよ、最初から僕のことも」
「あぁそうだ。お前はノーチェの死体を融合した時に消費する魔力の役割をしてもらう」
ズッ……ズズ
「撤退だ」
懐にあった無線機にそうつぶやく。ゼロはそれを聞いて嘲笑うように言った。
「最初に言っただろ? お前だけ死ねば良かったと。そうすれば大切な仲間は誰1人死ななかったというのに」
仲間……確かに俺のせいでみんなが死んだ。傷付いた。だからこそ……俺はここでまだ死んじゃいけないんだ。
「ゼロ……悪いけどまだ死体にはなれないんだ」
「……なんだと」
ゼロが反応すると同時に刀に命じた。
「代償はなんでもいい! 魔王2人を止めろ!」
刀から紫色の魔力が溢れだす。
「これは!」
「奴隷宣言!!」
動きが止まったゼロとレリアを見てからセナの手を握り走り出す。それを見たペスラはカーティオの腹部に思い一撃を入れてから援護に入ってくれた。
「状況は!」
「最悪! 包囲が完成しつつある! どこかそうの薄い所を見つけて突破するしかない!」
「わかった! それで行こう……フィー達に連絡を」
「もうしといた!」
さすがだよペスラ。
「なんで……僕も」
「あそこにいても殺される……裏切られたんだろ?」
俺がそう聞くとセナは俯いてしまった。
「撤退だってシャル!」
「わかった!」
「逃がすと思うか!」
クレアシオンが龍の姿に戻り突撃してくる。それを怨嗟王でシャルが弾いて一瞬だけできた隙を見て2人は走り出した。
「こんなもので」
「止まれ」
クレアシオンが2人を追おうとした時複数の龍がクレアシオンの前に立ち塞がった。
「なんの真似だ」
「我らはセナ様の部下……セナ様を裏切った罪は重いぞ!」
龍たちは翼を広げてクレアシオンに突撃する。しかしそれを見てもクレアシオンは余裕そうだった。
「エレナ」
「わかったわ〜」
「何……今度は何するの?」
撤退……勝ったなら撤退じゃなくて勝利って言うだろうしノーチェは……ううん! まだ分からないことで悲観しても無駄! 今はここを切り抜けなきゃ!
「エリーナ!」
「ほいさ!」
パシュッ!
ボンッ!
「なっ!」
「胡椒とかカラシとか色々入った特性爆弾さ!」
「おま! ゲホッ! がっ! 目が! って待ちなさいこら!!」
魔王の悲痛な叫びを無視して全体に合流するため私はエレナの背に乗った。
「とっておき出せなかったわ〜」
「何するつもりだったの?」
「……秘密」
「撤退だって」
「あぁ」
エルフが片付いたと思ったら撤退か……ノーチェに何かあったな。……いやとりあえずはみんなを連れて逃げよう。
「逃げる方向は?」
「それが」
「僕の兵士がいる所に突っ込め」
「え?」
先程まで俯いていたセナが話し出したと思ったらとんでもないことを言ってきたんだけど。
「でもそこにはクレアシオンが」
「僕の兵士が既にクレアシオンを足止めしてる」
「……死ぬぞ」
握られていた手がぴくりと動く。しかしセナは何も言わず俺の事を見続けた。
「わかった」
「ペスラ」
「……了解」
「最後の最後まで邪魔するのかリーベ」
「どうする」
「体は動かないが魔法なら使える」
逃げられたと思うなよノーチェ。
「スラッシュ」
バシュ!!
「なんの音?」
ペスラが後ろの方を気にしながら言った。俺とセナは何も聞こえなかったようで2人で目を合わせて首を傾げた。
「……ッ!? ノーチェ!!」
ペスラが俺の名を叫ぶそれに反応して少し体を左に動かした時だった。
ブシュッ!!
「ッ!!」
「ノーチェ!」
腕が持ってかれた! ゼロのやつまだこんな力を。
「気にするな! それより早くここを抜けるぞ!」
俺達はセナの兵士の援護もあり何とか戦場を脱出した。……しかし今回の戦いで失ったものは決して少なくはなかった。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【星喰らい】
天月姫Lv8
所持アイテム星紅刀、楼墨扇子
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv10、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv10
《スキル》
導く者、貪慾王、高慢王、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、不達領域、完全反転、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv7、火流魔法Lv5、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv10、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv9、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv4、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《七獄》
強欲、嫉妬、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者/病に愛された者
ケルロス・ミルキーウェイ
星帝白狼Lv9
《耐性》
痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv5、精神異常耐性Lv5、状態異常無効Lv4、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
悋気王、傍観者、知り尽くす者、信頼する者、混沌監獄、研究部屋、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv8、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv10、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9
《七獄》
強欲、嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥帝土竜Lv9
《耐性》
物理攻撃無効Lv7、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv6、魔法攻撃無効Lv6
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv9、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3
《七獄》
暴食