222話 天闇戦争・無限
「うねり風!」
「天雷五式!」
「泥曇」
攻撃が全部呑み込まれる……あれの対処法を見つけないとまずいわね。
「雷も風も効かないよ! どうしようエレナ!」
「慌てないの……できることは全部やってくわよ」
ノーチェの氷結魔法なら凍らせられそう……あとは溶岩? とか。
「ダーク・ハンド!」
「ッ!」
バコンッ!!
「今のは!?」
「ドワーフさん達に作ってもらった爆弾! 試作品だけどすごい威力ね」
あと爆弾は5発……エリーナの矢も10本くらい、あんまり時間は掛けてられないわね。
「仕方ないわね……あれやりましょうか」
「? 何するつもり」
「エリーナ……1分だけ任せられる?」
エリーナはそれを聞いて一瞬不安そうな顔をしたけど直ぐに笑顔を見せて
「任せて!」
と弓を引いた。
「ありがとう」
「……」
「はぁ……はぁ」
「ちっ」
「こんなものか」
まずい……クレアシオンの強さを見誤った。このままだと3人とも殺される。
「どうしますかフィー殿」
「ここは1度引いた方がいいかと」
「……」
フィーさんはクレアシオンを見たまま動かない、でも体はボロボロだしさっき貰った斬撃で腕も取れかけてる。
「私が時間を稼ぎます……だからお2人はノーチェ様の所へ」
「いいえ……そのお役目は俺がやりましょう」
ザグッ!
「逃げない……負けない……諦めない!」
フィーさんが短剣を地面にさしてそう叫ぶ。
「進む者、力を貸せ」
フィーさんがそうつぶやくと周りにあった魔力がフィーさんに集まっていった。しかしそれだけじゃないその魔力はバラバラになって色々な方向に散らばった仲間に繋がったのだ……もちろん私にも。
「これは」
「力が」
さっきまで痛かった傷が痛まない……抜けた力が戻る。これは一体。
「進む者……五式スキルかだがそれは七獄スキルの下位互換、その程度で俺の事を倒せるとで――」
ザシュッ!!
「ッ!?」
クレアシオンの腕に切り傷が……あの硬い外皮に攻撃を当てるなんて一体。
「無限暴力」
「憤怒の……スキル」
「シャルに使い方教えてもらった」
いつの間に七獄スキルをでもこれなら勝てるかも。
「舐めるなよ……六王である俺がお前と同じ七獄スキルが使えないとでも?」
クレアシオンの圧が変わった! まずい!
「エーゼルさ――」
そう言い切るより早くエーゼルさんは私のことを抱きかかえて走り出していた。
「なっ」
「文句は後で聞きます……ですがあそこにいれば我々2人の命はなかったでしょう」
それ程と思われる圧……あれが生まれながらの最強種族、龍という訳か。
「欲望破綻」
あれも七獄スキル? ダイエットってことは暴食かな。
「無限――」
グシャ!
「あっ……え?」
お腹に穴が……なんで、何が起きて。
「欲望破綻は今まで永久保存で貯めていた魔法、スキル、攻撃、防御を解放する力だ。吸収と放出は1つずつしか出来ないがこのスキルは何個でも保存することができる。それも魔力消費なしにな」
クイックの上位互換ってこと? 全く……ついてないなぁ。
「無限暴力!!」
「永久保存」
「しまっ!」
「終わりだ……欲望破綻!!」
ドゴンッ!!
私の攻撃を吸収して……他のスキルと合わせて威力あげた状態で返してきた。まずい、体が痛くて意識が遠のく。
「総隊長と言ってもこの程度か。まぁこいつの首でも持っていけばノーチェに隙ができるだろ」
クレアシオンの足音が近い……あと数歩で辿り着く、足でもどこでもいいから力入ってくれ。
しかし現実はそう上手くいかない……私の足、いや指先ですら全く動いてはくれない。
ザッ
「じゃあな猫の獣人」
「ッ!」
ザシュッ!!
……生きてる。なんで? 外した? いや寝ている私を外すなんてありえない一体何が起こっ――
「私の友達……ううんは親友に手を出さないで」
綺麗な桃色の髪、特徴的な剣。
「シャル」
「ごめんね……ちょっと時間かかっちゃった」
そう言うとシャルの周りに桃色の魔力が集まりだした。
「これは」
「ノーチェに調べてもらったの……初代勇者の墓を」
初代……勇者。
「貴方達がその墓に手を出す前にたまたま私が来たみたいだけど本当にラッキーだった」
「なるほど初代勇者の剣と能力が無くなっていたのはそういう事か」
今気付いたけどクレアシオンの剣がひしゃげてる……これが覚醒した憤怒のスキル怨嗟王か。
「フィーどうする?」
シャルは不安そうに私に声をかけた。
「……大丈夫。もう動く」
シャルが来たからかさっきの魔力の影響かは分からないけど……手は動くし痛みも引いた。
「第2ラウンドだよ」
「仲間も追加してね!」
私は短剣を2本、シャルは剣を2本抜いてクレアシオンに突きつける。目の前にいた龍は人の姿になってニヤリと笑った。
「生きてるか?」
「無駄に頑丈だからな」
「諦めろ……お前たちでは勝てない」
さっきから全く目で追えない。しかも速度は上がるばっかりだ。
「どうするケルロス……このままだとまずいぞ」
「そんなことはわかってる」
ノーチェならどうする……ノーチェなら。
「いや、違うな」
「え?」
ノーチェならどうするかじゃない。俺達がどうするかだ。
「いつまでもノーチェ、ノーチェじゃカッコつかないよな」
「だから何言ってるの?」
「……俺はノーチェの後ろを歩き続けるじゃない。隣に居たいんだ」
スキル解放
七獄スキル嫉妬が解放されました。
悋気王を使用可能です。
俺は深く深呼吸をして小さく呟いた。
「悋気王」
「何かブツブツ言っていたがもういいだろう」
「ッ! 来るぞケルロ――」
ブシュッ!
「クイック!」
黒い方の首は落とした。もう終わりにしよう……この2人はノーチェの信頼厚い部活、よく会議にも連れていたからな。強さもそこそこだから早めに倒しておきたかったとゼロも言っていたしな。
「お前!」
白い方の大振りな攻撃を避け腹部に蹴りを入れる。よろけた体にそのまま弓を引いて矢を射し込んだ。
ザシュッ!
「終わりか……」
つまらないということもないがあっけないな。もう少し何かあると思っていたのだが。
2人の死体を跨いで進もうとすると前から声が聞こえた。
「ここは通さねぇよ」
「ん?」
先程倒したはずの2人が立ち上がり武器を構えていたのだ。
「なんだこれは」
困惑はしたもののやることは変わらない。さっきのは幻魔法の一種だと思えば納得できるしな。
俺はさっきと全く同じ方法で黒と白の獣人を殺した。しかし2人は何度も立ち上がるのだ……何度も何度も何度も。
「……そうか悋気王か」
俺が気が付いた時には既に来ての術中だった。
「これは?」
「新しいスキル悋気王だ」
選択した相手を1人無限ループに嵌められる力……魔王にも効くとは驚きだな。
「とにかくこれで魔王の1人は無力化した。俺たちは他の手伝いに向かうぞ」
「ノーチェのところには行かなくていいの?」
「……いやノーチェはいいだろう。従魔の2人も他の戦いに参加しているみたいだし」
何故従魔と戦わないのか……それはなんとなくだけどわかる。ノーチェは元々フェアな戦いが好きだ。多分だけどセナとの戦いは1体1でやりたいと思ってるんだろう。
「今行っても邪魔になる。それよりレリアが引き連れてきたエルフの殲滅が先だ」
大将がやられて引くと思ったがさすがは魔王の軍隊……突撃してきやがる。
「2人でしばらく耐え切るぞ」
「魔王よりマシだよ」
剣を強く握り横に経つクイック。なんだろうか……少し頼もしい。
「行くよケルロス!」
「……あぁ!」
俺達はエルフの大群に向かって全力で突撃していった。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【星喰らい】
天月姫Lv7
所持アイテム星紅刀、楼墨扇子
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv10、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv10
《スキル》
導く者、貪慾王、高慢王、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、不達領域、完全反転、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv7、火流魔法Lv5、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv10、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv9、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv4、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《七獄》
強欲、嫉妬、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者/病に愛された者
ケルロス・ミルキーウェイ
星帝白狼Lv9
《耐性》
痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv5、精神異常耐性Lv5、状態異常無効Lv4、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
悋気王、傍観者、知り尽くす者、信頼する者、混沌監獄、研究部屋、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv8、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv10、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9
《七獄》
強欲、嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥帝土竜Lv8
《耐性》
物理攻撃無効Lv7、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv6、魔法攻撃無効Lv6
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv9、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3
《七獄》
暴食