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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
暗然編
221/261

220話 天闇戦争

「ノーチェ様、ルリアの森戦闘部隊20万ただいま到着しました!」

「遅い! 新人なんだから早くしなさい!」

「まぁまぁ」


遅れたことを怒るルルに咎められるアル、その間で苦笑いをしているドル。微笑ましいような気もするけどこの後みんなで戦いに行くんだよな。


「ノーチェそろそろ行くよ」


クイックがそっと話しかける。そして俺は後ろにいる総勢63万の兵士達を見つめて叫んだ。


「今日! 我々は世界の秩序を根底から壊す戦いをする! 敵は強大で恐ろしい……だが! それらを突破してこの地に戻ると俺は信じている。さぁ武器を持て! 立ち上がれ! 俺たちは守る為に戦うのだ!」


兵士たちの声がビリビリとその場を駆け巡る。この感覚は前にも味わったことがある。この高揚感は本当にゾクゾクさせられるよ。


「行こう……みんな」


後ろにいるケルロスとクイックの間を通り輸送機に向かう。2人もしっかり俺の後ろを着いてきてくれている。なんか映画のワンシーンでこういうのありそうだな。そんなくだらないことを考えつつ大きな輸送機に乗り込んだ。



「すみませんこれはなんですか」

「これから戦うからねしっかり服は変えとかないと」


まさかこのタイミングで着せ替えとは。


「てか白いな」

「黒が良かった?」

「いや……汚しちゃうかなって」


それを聞いたエレナが優しく微笑んだ。


「大丈夫、そんなの気にしないから」


今回の服は少しダボッとした紺色のズボンに白いシャツと薄い青のコート、あえて着ないで羽織ることで色々かっこいいのだとか。そういうのはイケメン2人にやらせろってな。


「似合ってるよ」

「うん」

「ありがとさん」


これから戦いに行くとは思えない雰囲気だ。でも多分これがみんなでこれが俺なんだろう。今はなんてことない日常をしっかりと味わうべきだ。それはそうと異世界の空に輸送機って絵面が良くねぇなぁ〜。



「そろそろ着陸します」


テグの声だ、パイロットはテグだったのね。


「ん? 着陸ってどうすんの?」

「普通に下に降りるだけ」

「いや飛行機だからこう降りるじゃん」


手で降り方を見せつつみんなに疑問をぶつける。しかしなんだか様子がおかしい。


「これにはプロペラ? っていうのが着いてるみたいだからこのまま降りられるのよ」


プロペラ……何処についてた?

窓から外を見ると輸送機の下から複数のプロペラが現れた。


「……」


もうツッコまねぇよ。



「無事に着いたな」


ここはゼロがいると思われる場所から数km離れた森の中、輸送機は目立つから俺が全部バラした……いや小さくしただけだけどね。


「……さて行こうか」


俺たちが出会った場所に。



しばらく森を歩いていると開けた場所に出た。でもそれはおかしい……俺達がいた時はこんなに広くなかったはずだ。


パキンッ!


短剣か。


「随分と卑怯なことするじゃないかゼロ」


俺が声をかけるとゼロはポケットに手を入れたまま岩の裏から現れた。


「感謝して欲しいくらいだ……俺の目的はお前だけ、ここでお前さえ打ち取れればあとは生きて帰れるんだから」


俺の事をわかっていてそういうことを言っているのはわかってる。そしてお前が誰一人として逃がすつもりがないのもわかっている。


「それにしても随分とかっこいい服着てんだな……イメージと違くて驚いたぜ」

「人のこと言えるのかお前」

「ふ、ふふふ」

「は、はははは」


俺とゼロは不自然に笑い出す。ただ周りはそれをおかしく思うのでもなく怖がるのでもなくただ覚悟を決めたような目で見つめていた。


「殺せ!」

「勝つぞ!」


両者の兵士が怒号と共に混じり合う。しかしやはりゼロは前に出てこない……魔力を感じ取った時普段より量が少なかったのは何故かと思っていたけど戦える量じゃないのはわかってた。


「ノーチェも奥に」

「わかってる」


ゼロや他の魔王が出てこないなら好都合だ……できる限り相手の戦力を削られてもらおう。



右翼正面・コロリアン妖精圏担当


「距離を取って魔法を放ち続けるんだ! 魔力が少なくなってきたものは後ろの者と交代! 回復したらまた打ち続けろ!」


あの兵士は恐らくハッピー連盟……妖精以外にドワーフや獣人も死体にして操っていたとは。


「核を破壊するんだ! 私たちは直接戦闘能力が低い! 戦線を維持出来なければ死が待つと思え!」

「「「「「「はい!!」」」」」」



右翼後方・ルリアの森担当


「矢を放ち続けろ! 相手は死なない兵士だ! 足や腕、頭を吹き飛ばして動きを止めろ!」


こちらの倍は居る……ですが動きは鈍い、これなら行ける!



左翼正面・銀月帝国担当


「獣人はエルフの相手を!」

「龍はクレアシオンの部下を殺せ!」


左翼にいるのはルーグント帝国と魔王レリア率いるガゼット大森林の兵士たち、フィデース信栄帝国の助けもあって何とか持ってるけどこのままじゃ。



正面・フィデース信栄帝国担当


「状況は?」

「右翼は大丈夫だけど左翼はまずいかもね数も違うし龍も多い」


……。


「どうしたの?」

「報告より龍の数が多い」

「え?」


正面で戦ってるエレナの報告じゃあこっちに少なくとも15万の龍がいるって話だ……でも左翼の報告は20万程、どう考えても数が合わない。


「正面の龍はセナの部隊か」

「正解」


ガチャンッ!!


「ッ!!」

「でも不意打ちは失敗……残念〜」


ずっと姿がないから何処にいるかと思っていたがこれを狙ってたのか。


「ここまで侵入を許すなんて」


ケルロスとクイックが俺の前に立つが俺はその2人の肩に触れてから前に出た。


「ノーチェ?」

「敵は動き出した。左翼にケルロスとクイックが向かって右翼にはエリーナとエレナを正面のクレアシオンはフィーとエーゼル、トロリアットで対応するように」


少し不安そうなケルロス、クイックに関しては口を開いた。


「でも」

「俺はセナと2人きりで遊んで来るよ」


刀を抜いてセナにほほ笑みかける。するとセナは子供が見せるような可愛らしい笑みをした後に狂った様子で笑いだした。


「あっはははは!」


ガシャンッ!


「早く!」

「わかった!」


ケルロスがクイックのことを引っ張って作戦室から出ていく。俺はそれを確認してから刀を強く持ち直した。


「やっと戦える!」


鋭く長い槍を抱くように持ちながら恍惚とした表情を浮かべるセナ、俺はそれを見て少しだけだけど綺麗だと思ってしまった。



右翼正面


「敵はあらかた片付きました」

「よろしい……それでは前に進みます」


敵の数が途中で減った気がする。でもそれは単純に数が無くなってきたから? でもあれだけいた死体達がこんなすぐに倒し切れるものなの? もう少ししぶとくてもいいと思うのだけど。


「ルル!」


アルの声?


グチャ!


「あっ……え」

「コロリアン妖精圏の王様……みぃつけた」


こいつは……魔妖精、てことは。


「ライトニング・ドラゴン!」


パチッ!


「なっ!」

「あっちはルリアの森かぁ……安心して貴方も直ぐに殺してあげる」

「ぐっ! うぅ……あぁ!!」


パキャ!


「お前!」


アルがさらに矢を放とうとした時ハレンの頬に軽い切り傷が入れられた。


「……は?」

「同じ妖精でしょ? 何したかは分かるよね」


先程潰されたはずの私がいつの間にかアルの隣に移動してるからめちゃくちゃ動揺してるわけ。


「え? ……え!?」

「驚きすぎ……それよりも貴女、私の事舐めすぎ。魔王だなんだと言われて調子乗ってたんだろうけどこの程度で勝てると思われてるなら……六王のことを甘く見すぎだよ!」


グシャッ!


「ッ!! エアロ・ショック!」

「アル」

「ライトニング・アロー!」


よし! 直撃した! これでさすがに魔王でも。


「……馬鹿な」

「ッ!? アル!」

「あ〜痛かった」


無傷!? そんな……あれを喰らってまだ。


「あんたこそ魔王舐めすぎ……この程度効きもしないっての」


まずいこの距離じゃ!


「遅い!」


メキィッ!


「かっ!」


ドコンッ! バキッ! グシャッ!!


「はぁ……こんなもんかそれじゃあトドメを」


パシュッ!


「ッ!?」

「ありがとうございます。ルル・メリル様」


温かい……これは羽? 一体誰が。


「久しぶりだねぇ……ノーチェにボコボコにされた妖精さん」

「お前は」

「少しだけ任せていい?」


どこかで聞いたことのある声。


「任せて」


あぁ意識がもう。



「あの時のエルフか」

「そうだよ……まぁいつの日かの続きしようよ」


そういうとハレンは羽を黒くはためかせながら酷く冷酷な目で私のことを見つめてきた。


「魔王でも……六王でもないエルフごときが私のことを止める? 寝言は目を瞑って言うもんだ」

「今のうちに言い訳考えといた方がいいよ……あんたは六王でも魔王でもないただの小娘エルフに眠かったせいで負けたとかね」


沈黙が流れる。ルルの兵士もアルの兵士も近くで私たちのことを見つめている……そして分かるこの風が止んだ時が戦いの始まる合図だって。

……

……

……

……

……


「雷竺!」

「宵闇!」


光のように眩しい一筋の線が真っ黒な闇を切り裂いていく。しかし切り裂かれた闇はすぐに元に戻り強く光の矢とぶつかりあった。


「死ね! 小娘!」

「射抜かれろ! ババア!」


私とハレンの攻撃は大きな土煙に覆われて何も見えなくなってしまった。

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