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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
崩壊編
220/261

219話 守るもの

「なんの集まりだ〜」

「さぁ? でもノーチェの招集よ」

ガチャ

「来た」


視線が一気に集まる。この感じは本当になれないな。そんなことを思いつつ席に着く。隣にいたケルロスとクイックにも事情は話してないからちょっと不安そうだ。


「……急に集まってもらってすまない。墓の件からもさほど時間が経っていないからみんな不安だと思う。でも今回はそれを全部ひっくるめて話さないといけないことができた」


ちょっとだけ体に力が入る。俺のせいでみんなを戦いに巻き込んでしまった罪悪感が俺の言葉を遮ってくる。……だけどもう俺は止まらないし止まれない。その上でみんなにはしっかり話さないといけない。


「ゼロと戦うことになった。多分だけど近いうちにあっちから仕掛けてくる」


エレナやフィー、ケルロスも若干驚いた様子だ。

俺はザワザワとした会議室でただ何も言わずに座っていた。するとケルロスがちょっと大きな声で話し出した。


「兵士は?」

「え?」

「どのくらい配置するかな」


ケルロスだけでなくクイックまでも立ち上がり地図を確認しはじめた。


「ちょ」

「備蓄ってどのくらいだっけ」

「ダンジョンにも保存してるので1年位は持ちますよ」

「みんな?」


俺の声が聞こえているのかどうか知らんけど勝手に話めちゃくちゃ進むやん。


「……無駄だよ」


エリーナが俺の隣に来て話しかけた。


「どういうこと?」

「みんなノーチェが好きな国を守る為に一生懸命なの……まぁノーチェの事だしみんなは国のことを守って自分だけで戦おうとか考えてたんでしょ?」

「いや……そんなことは」


エリーナの見透かすような瞳を見てちょっと目を逸らす。


「ふふ、じゃあ作戦会議を始めようか」


そういうとエリーナは自分の席に戻って行った。



「いよいよ戦うんだ」

「仕方ないね」


従魔の2人がオセロをしながら話しかけてきた。


「話してないのによくわかってるね」

「舐めんなよ〜俺は呪神のカーティオさんだぞ〜」


カチッ


「あっ!」


めちゃくちゃ威厳ねぇなぁ。


「戦いになったら2人にも動いてもらうから。その時はよろしく」

「おー」

「任せて」


こちらは見ないがそれがこの2人……真面目か不真面目かは俺にも分からない。



「ふぅ」


いざゼロと戦うって考えると気が重いな。勝てるかどうかも分からないし。何より国のみんなを俺の判断で戦わせるのが1番辛い……。


「弱気になるなノーチェ……全部守るって決めたんならしっかりしろ」


沈んでいる自分を励ますが少し悲しい……あとはそこまで元気になれない。世の中で自分自身を褒めているって人もいるがそいつは随分とポジティブなんだろうな。

ベッドに体を投げる。優しく俺を包んでちょうどいい温度で癒してくれる。でもなんだろう少し寂しいかもしれない。


ガチャ

ビクッ!?


「ノーチェ?」

「ケルロスか……どうしたの?」

「ケルロスかって酷いな」


はははと笑いながら近くにあった椅子に座るケルロス、作戦会議の後に別で決まったことでもあるんだろうか。


「随分とテンパってるね」


驚きの発言に起こしかけていた体が止まってしまった。


「なんのこと」


声が少し裏返ってしまった。


「わかりやすいんだから」

「うっせ」


立ち上がりケルロスホットミルクを作ろうとする。牛乳を入れて温めようとした時後ろからケルロスが抱きついてきた。


「なんだ〜氷漬けがいいか〜?」

「それはちょっと嫌だね」


と言いつつ離れないのね。


「ほら作りにくいから早く離れて」


ケルロスの手を優しく触るがその手は離すどころか力をさらに入れている。


「気を使ってくれてるのは嬉しいけど俺は大丈夫だよ」

「嘘ばっかり……声が裏返ってるし手も少し震えてるよ」


普段なら耳元で話しかけられるとイケメン声が〜とか色々思うんだけど今は安心する。


「……またみんなを巻き込んじゃった」

「誰もそんなこと思ってないよ」

「でも俺はみんなに傷ついて欲しくない」


作り終えたホットミルクを置いてケルロスの手を払う。今回はなんの抵抗もなく離れてくれた。


「ゼロと戦うってことになればセナやレリア、ハレンも出てくるはずだ。そうなれば俺達の国だけじゃなくて他の国にも助けを呼ばないといけなくなる」

「そうだろうね」


ホットミルクを飲みながらケルロスが答える。


「そしたらみんな……怪我をしたり最悪死んじゃ――」


パシッ


「無理しない」


手が温かいケルロスの優しさが伝わるようだ。


「ノーチェ……俺達にノーチェを守らせてよ」


……もう沢山守ってもらってるよ。


「そうさせてもらうよ」


手を握り返し優しく微笑む。多分あれだろうな今こそ時間が止まればいいのにってやつなんだろうな。



「こっちの戦力はルリアの森、コロリアン妖精圏、銀月帝国の3つだね。シャンデラ国は戦う力はないから支援だけするってそれでも大量の食物に医療道具、鉄とか銅とかも送られてるから結構助かってるよ」

「ありがとうクイック」


戦いでは相手の3倍の戦力を用意するってどこかで聞いたことがある。俺たちは4つの国が同盟を組んでいるけど相手はどうなんだろう? ゼロは当たり前だけどルーグント帝国も来ると思うんだよね、あとはハッピー連盟……セナとレリアも数に入れれば数はこっちが不利になる。それにコロリアン妖精圏は元々戦闘向きじゃない国だ。


「相手の戦力は分かる?」

「ルーグント帝国の同盟が確定したからそこだけならでも他は全く……魔王領にスパイは送れなかったからね」


仕方ないなでも一つだけわかってるのは大きい。


「数は6万だね、こっちと比べれば半分だけど6万の龍って考えると油断はできない」


着々と準備が進んでいる。そう進んでいる……戦争への道ができてしまっている。もう後戻りはできない。そして後悔もできない。


「クイックもしさ」

「ん?」


もしも……


「いや、なんでもないや」


クイックは不思議そうな顔をしたがすぐに書類を整えて部屋を出ていった。

静かになった部屋の中で頭を抱えて力なくつぶやく。


「もしそんなことになったらなんて……言えるわけないよな」


乾いた笑い声を上げながら俺の心はゆっくりと濡れていった。



「準備は?」

「もう終わった」


暗い洞窟の奥からコートを身につけたゼロが現れる。


「これで全てが始まるな」

「……」


クレアシオンは満足そうにレリアはいつものようにつまらなそうに待機している。その奥ではニヤニヤとした笑みを浮かべるハレンと人形を大事そうに抱き抱えたチグリジアが座っていた。


「それじゃあわかりやすいところでノーチェを待つとしようか」


暗い暗い闇の中ゼロは今まで見せたことの無い楽しそうな笑みを浮かべていた。



3日後

「ゼロの場所を見つけたか」

「もう既に兵士達が集まってる。こっちも準備は万全だよ」


全員準備は整ってるらしい。でも俺はエレナに見せられた地図を確認して気になることがあった。


「ノーチェ」


そしてそれはケルロスも同じようだ。


「うん……この場所は」


俺とケルロスが初めてあった洞窟だ。最初から俺達のことを見ていたのか? なんの為に一体どうして。


「ノーチェ? 何かあったの?」

「いや! なんでもない。でも結構距離あるな……それはどうする?」


テグが前に出て1枚の紙を見せてきた。


「これは」

「ガンド様達が作ってくださいました大型輸送機です。これなら何百万でも運べます」


すげぇ……もうなんて言うかすげぇ。


「各国に要請は出してるからすぐにでも国に集まるわ」


エリーナが弓のチェックをしながら言った。


「……ありがとうみんな。そしてここまで着いてきてくれたことに俺は改めて感謝したい」


エレナ当たりが茶化してくるかと思ったがみんな俺の言葉を真剣な表情で聞いてくれている。


「戦いに死者は出てしまう……それは今まで何度も戦ってきた俺が、俺たちがよくわかってる。でもそうだとしても俺は何度でも言うよ。俺はこの国を、仲間を、友達を全力で守り通す!」


全員何も言わない、だけど目を見ればわかる。俺と同じ気持ちだってことを。


「さぁ全てを守る為に戦おう」

「「「「「「「「おぉ!!」」」」」」」」

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