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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
崩壊編
214/261

213話 似た影の中

結論から言えばあの隊長獣人ベリアルの会話通りだベリアルは親殺し、反逆者として獣王国に追われている。しかし裏では王を殺したダラスがその罪をベリアルに被せているというものだった。まぁ国内で信頼されているダラスと出来損ないと言われ続けたベリアルじゃあどっちを信じるかは想像にかたくないか。


「……もういいんだ」


話を終えたベリアルが俯きながら話し出した。


「父上もいない、国に居場所もない……。もう俺は立ち上がる力も勇気も失ったよ」


励ましてやろうと声を掛けようとするがベリアルは話を続けた。


「あいつも兄貴に奪われる……俺の仲間だってもう」


……仲間。


「諦めるのか?」


俺の言葉を聞いてベリアルは一瞬顔を上げたがすぐに目を逸らしてしまった。


「諦めるさ……どうにも出来ないんだ。だから……」


ガチャン!!


机に手のひらをつけてもう片方の手で座っているベリアルの胸ぐらを掴む。


「まだ仲間がいるんなら諦めんな!」


濁った目で俺の事を見るベリアルを説教するように続けた。


「残ってるだろ! お前には! 助ける人が居るのにお前が折れてんじゃねぇよ!」

「だけど」

「だけどもなんもねぇんだよ!! 悔しくねぇのかよ! 父親殺されて恋人奪われて! 挙句の果てに全部お前のせいにされて! それでもお前はここで黙って……死ぬのを待ち続けられるのかよ」


ベリアルは何かを言い返そうとしたが結局何も言わずにそのまま下を向いてしまった。


「ッ!」


ぶん殴ってやろうと拳を強く握り込むがベリアルの今にも死にそうな顔と今までの疲れなどを考えそれはやめておいた。……それとその顔は俺が1番よく知ってる顔だったから。


「……そうかよ、あぁそうかよ! じゃあそのまま腐ってろよ!」


勢いよく扉を閉めて自室に戻る。最後……ベリアルのあんな顔を見たら俺はとても悲しい気持ちになってしまった。

あんなやつよりベリアルの方がよっぽど。

俺はそんなことを考えながら部屋の扉を開いた。



時計の音がやけに大きく感じる……。さっきまで読んでいた本もなんだか集中できなくてほっぽってしまった。俺はなんだあんなに熱くなったんだろう。仲間を見捨てたから? いやだとしてもベリアルは赤の他人だ、一体どうして。


「あ〜!! クソ!」


俺は勢いよく立ち上がり応接室へと向かった。



ったく! 何だこのイライラは! こうなったらあいつがどうとか関係ねぇ! ダラスぶっ殺してこいつの仲間全員……ってそれは違うか。

ん? 泣き声?

俺は扉の奥から聞こえてきた音を確認するためにそっと隙間から部屋を覗いた。


「うっ……ぐっ! うぅ!」


ベリアル……お前。


ガチャ


「ッ!?」


俺を見て慌てて涙を拭くベリアル、さっきは気が付かなかったが右手にはペンダントのようなものが握られていた。


「……」


何も言わずに席に着く、ベリアルも何も言わないで俺の事を見ていた。


「それは?」

「……俺の婚約者だ」


可愛らしい子じゃないか……。

しばらくの沈黙が流れる。そして俺は一言だけ……たった一言だけベリアルに伝えることにした。


「お前が決めろ」


ベリアルは驚くでも喜ぶでもなくペンダントを握りしめながら俯いていた。

……折れては無いはずだ。まだ立ち上がる力が残っているはずだ。


「俺は」


だってこいつは俺と……似てるから。


「まだ戦えてない……まだ俺はあいつと戦ってない!」


ベリアルが立ち上がり叫んだ。俺はそれを見て口角を少しあげた。


「よし……それなら俺達がサポートしよう。まぁとりあえず今は」


扉の方に目をやると大量のご飯を持ってきたテグが待っていた。


「お話中でしたので」

「ありがとう……さてベリアル、今は腹ごしらえだ」


テグが机の前に料理を並べるとがっつくようにご飯を食べ始めた。


「……しばらく1人にしてあげよう」


小さな声でテグに伝えて俺達は応接室を後にした。



「やるの?」


部屋に帰ると2人が待ってましたと言わんばかりに椅子に腰をかけていた。


「あぁ」

「随分といい顔してるけど」

「え?」


ケルロスに指摘されて俺は自分の顔を触る。


「いい顔?」

「俺は好きだよノーチェのそういう悪いことしようとする時に見せる笑顔」


ケルロスも悪い笑顔してるぞ〜。


「それで作戦は?」

「任せる〜」

「やる気があるのかないのかわかんないなぁノーチェは」


クイックが呆れたように、そして少しだけ嬉しそうに答えた。


「とりあえずベリアルの特訓にフィーとソルを付ける」

「フィーはまだしもソルも?」


ケルロスが不思議そうに聞いてきた。


「うん……フィーには直接戦闘を、ソルには戦い方を教えさせる」

「戦い方?」


俺の見立てだとソルは勝つために何でもするタイプだ。今のベリアルに足りないのは強さと心意気だ。


「まぁノーチェが言うならわかった。頼んでおくよ」

「そして俺達の方は別で動くぞ」

「「了解」」


2人は少し嬉しそうに返事をしてくれた。



次の日


「それで俺達は何をするの?」

「とりあえずは証拠集めだねあとはダラスの脳みそをちょっといじりに行きたいから潜入しないとね」

「まぁたえげつないこと考えてる」


クイックがお茶を置きながら言った。


「ミッちゃんは何回やばいことするの?」

「やばいことって……その言い方はやめてよ」


俺が少し怒ると椅子で遊んでいたカーティオは後ろから来たペスラに引っぱたかれた。


「いっ!」

「あんた昨日また私のアイス食べたでしょ!」


こいつは何回同じ過ちを繰り返すんだろうか。


「バカは置いといて俺たちがすることはベリアルが国に戻れるため父親殺しの犯人を国民に伝えること、そしてそれが本当であると思わせる証拠を集めること……最後に獣王をダラス以外の誰かに絞ること」

「ん? そこはベリアルでいいんじゃないのか?」

「ベリアルを王にすることにこだわっているわけじゃない。俺はただあいつの仲間を助けるって思いに応えたいだけだ」

「嘘ね〜」


ペスラが満面の笑みで俺の頬をつついてきた。


「……あぁ一応目的はある。けどそれはあくまでおまけ……別に無理やり手に入れようとは思ってない。フィーもどっちでもいいって言ってたしな」

「ふーん」


若干納得していない様子だがそれ以降なにか聞かれることはなかった。


「まぁ……いやうん! そうだな目的はその手に入れたいものであって何もただの人助けとかじゃ……なんだその顔! マジで違うからな!!」


俺がそういうとみんなは顔を見ながらニコニコしていた。


「な、なんだよ!」

「ミルちゃんってそういうところあるよね〜」


頬を続きながらペスラが言う。


「子供扱いすんな〜! てかダラスって奴が個人的に気に食わないってのもあるんだよ。あいつが獣王になるくらいならベリアルの方が全然いいよ」

「まぁ俺達は上手くやるよ」

「……あぁこれ以上俺達が六王に関わってるってバレれば不味いことになるからな」


みんなは返事をしなかったが俺の事を見てたしかに頷いていた。



「獣王暗殺だって〜」

「あぁ」


薄暗い部屋の中真っ黒な男と女の子のような可愛い子供が話している。


「せっかくだから六王全部殺しちゃう?」


可愛いと思っていた子の口元からヨダレが溢れ鋭い爪が男の剣に反射する。


「いや……まだだ。まだ準備ができていない」

「……はぁこんなガラクタに時間かけてどうすんのさ。それにこれはもう朽ち果ててるよ」


呆れたように言うと男は剣を握りその子供を睨みつけた。


「わかった、わかった。悪かったよ。でも上手くいくの?」

「……上手くいくさ」


男の口角が少し上がる。それを見た子供は少し呆れたような様子で男のことを見つめていた。


「まぁいいけどさ……僕としては戦えれば言うことないし」


子供がそう言って扉に向かおうとした時男が声をかけた。


「セナ……今のノーチェに勝てるのはお前と俺しかいない。わかってるな」


声を聞いた子供はニヤリと笑いながら


「世界を燃やした化け物と戦えるなんて最高だよ」


と答えてそのまま光の中へと姿を消した。


「世界を燃やした化け物? ははは……今のあいつはその足元にも及ばないよ」


ゼロは謎の液体に漬けられた少女を見つめながら呟いた。


「もう一度会いたいです……ハナさん」

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