207話 ハクゼツ
「ご機嫌だなクイック」
「ノーチェが居るからね」
フィデース信栄帝国に帰ってきてから1週間……クイックがめちゃくちゃくっついてくる。それはもうケルロス以上に。ここまで来ると独り立ちとかできるのか不安になってくる。
「というかノーチェは何してるの?」
「国に居なかったからその間に何があったのかなって」
まぁ書類眺めてるだけだよ。特段変化はないかな……銀月帝国との繋がりが深くなったことくらい? あとはカーヴェ地下帝国が話をしたいと。
「これは解決したの?」
カーヴェ地下帝国のことが書かれた書類をクイックに見せる。俺の首に腕を回したクイックが耳元で
「いや、まだだよ」
と囁いた。
「それ本当にやめてくれない?」
「ケルロスはいいのに?」
「しっかりやめてって頼んでます」
2人とも声がいいからなぁ……はぁ男としての尊厳が崩れ落ちてる。
「まぁドワーフの方達には助けられてるからその国に挨拶位はするべきだね」
「……確かにそれはいいと思うけどこれ以上六王と関わったら六魔王も黙ってないんじゃない?」
……クイックの言うことは最もだ。ちょっと前にもやらかしたばかりだしここで露骨に六王と関係を持つのは危険かもしれない。それに俺は既にアル、ルル、シャネルと同盟関係にある……六魔王だって危険視しない訳ないよな。
タッタッタッタッタッタッ!
「ん?」
「テグかな」
バタン!!
「ノーチェ!」
全力疾走で俺の部屋に入ってきたのはエリーナだった。そして息を整える間もなく慌てた様子で話し出した。
「六魔王……の……はぁはぁ……1人が」
なんとまぁ六魔王の1人がここに……いやぁ笑える。
「あんたかい」
「失礼だな」
門の前行ってみるとまぁ堂々とした立ち姿で俺の事を待っている……ハクゼツがいた。
「それで? 俺の事怒りに来たの?」
ハクゼツのお腹辺りに軽くパンチしながら質問する。その様子はまるで親子のようだ。
「別に怒りに来た訳じゃない。それに今日は六魔王ではなくハクゼツとしてノーチェに話をしに来たんだ」
「……ふーん」
俺は拳をしまい家へと案内した。
「さて……それじゃあお話しようか」
「……護衛は付けなくていいのか?」
ハクゼツが辺りを見回して言った。
「いやだって戦うつもりないでしょ?」
「まぁそうだが」
ケルロスとクイックには申し訳ないけど相手は1人だからね、俺も1人で話す方がいいと思ったんだ。
「それで話っていうのは?」
「あぁすまん、単刀直入に聞くようだがノーチェは六魔王を裏切るつもりなのか?」
これまたストレートに来たな。いやけどこの真っ直ぐさはハクゼツらしいか。
「裏切るつもりは無いよ……けどゼロと俺の考え方が合わないのは事実だ、敵対することになっても俺は驚かないよ」
それを聞いてハクゼツはうぅむと腕を組んでしまった。
「でも今の話はハクゼツには関係ないと思うんだけど、ゼロと俺が仲違いしたら2人で勝手に喧嘩させとけばいい訳だし」
「そういう訳にもいかん……ゼロは六魔王が作られた時から居る存在だ。これでもしゼロが倒されれば世界がどうなるか」
「それこそハクゼツは悩む必要がないじゃないか」
ハクゼツが驚きと不思議そうな顔をしながら俺を見た。
「ゼロが倒されて問題があるなら俺と敵対すればいい……ゼロの味方になって俺を殺しに来ればいい」
「それは……」
少し意地悪をしてしまったか。
「ごめん……ちょっと言い過ぎたかも。でもゼロが倒されるのが問題だと思うならハクゼツは俺を止めればいいんだよ」
「止まるのかお前は」
ハクゼツの質問を受けて俺は少し考えて答えた。
「ゼロが俺の仲間に手を出すなら止まらない。何がなんでも……誰が敵対しようと俺は仲間を危険に晒す奴を全て殺す」
それがハクゼツ……君であろうとも。
「そうか、わかった」
意外とすんなり受け入れたな……その辺はハクゼツの方が大人ってことだろう。でも俺は味方を捨てるなんてこと考えたくない、例え考え方が子供だろうとそれを捨てる訳にはいかないから。
「……」
「……」
黙っちゃった……どうしよう何か考えてるのかな? それとも怒ってるとか? ここで暴れられるのは少し面倒だなぁ。
念の為魔力を込めようとした時ハクゼツが懐から何かを取り出した。
「ん? これは」
紐に縛られ何枚もの布に包まれているそれをハクゼツは丁寧に解きながら答えた。
「……こいつはある村で見つかったものだ」
焦げた鉄の破片? 剣とかの一部かな。
「これがどうしたの?」
「これはゼロが使っていた黒い剣の破片だ」
あの剣の……破片? 気になり手を伸ばすと俺はハクゼツに止められた。
「? 触ったらダメなの?」
「あぁ、これを調べた結果相当強い呪いを発していることがわかった」
なるほどなぁ……てかあいつそんなもんで戦ってたのか魔王らしいと言えばらしいけど。
「……ハクゼツはどうしたいんだ?」
椅子に深く座りハクゼツに問う、ハクゼツは真っ直ぐに俺の事を見ながら答えた。
「ゼロは何か得体の知れないもの感じる。もしノーチェが戦うなら魔王として動こうと思っている」
味方……とは言ってくれないんだな。でもそういう所を含めてハクゼツは真面目なんだろう。
「わかった。ハクゼツがどう動こうと俺は何も言わないよ。だから君は君が正しいと思う道に進んでいけばいい」
「もちろん」
ハクゼツは立ち上がり俺に手を向けた。
「……今度会う時は助けてるか殺し合いか」
「どっちにせよ恨みっこなしだ」
固い握手を交わして話し合いは終了した。
「何話してたの?」
「……話と言うより筋を通しに来たのかな」
2人は不思議そうな顔をしていた。
「あとドワーフの国の件は2人に任せるよ」
「え?」
「少し考えたんだけど俺がゼロと敵対……はまだしてないけど仲が悪いのはわかってるだろうしこのタイミングで六王と仲良くすればそっちにも被害が出そうだから」
納得したのか2人は「わかった」とだけ言って部屋を出ていった。
「次会う時は……か近いうちに俺とゼロが衝突するみたいな言い方だったな」
……いやあんなの見たあとじゃそう思われても仕方ないよな。あとはゼロに付く魔王が何人いるか……めんどくさいなぁ。
俺は考えるのをやめて隠していたクッキーを口に入れた。
「うん……砂糖入れすぎた」
自分で作っておきながら物凄く甘い……病気になりそうだよ。こういう時はコーヒーが欲しい。
「遊びに来たよ〜」
俺は驚きながら後ろを振り返る……しかしそこには誰も居なくただ風でなびいたカーテンが悲しそうにこちらを見ていた。
「……誰だ?」
ボソリと呟く、だがその声の主を思い出すことは出来なかった。
幻聴か? 俺も疲れてるのかな。体を伸ばして首を曲げる、バキバキッ! とそこまでじゃないけど全身がポキポキと鳴った。
「はぁ〜温泉入りたい」
思い立ったら即行動、俺はやるべき事を全力で終わらせて温泉に行くことに決めたのであった。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【星喰らい】
天月姫Lv7
所持アイテム星紅刀、楼墨扇子
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv10、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv10
《スキル》
導く者、貪慾王、高慢王、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、不達領域、完全反転、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv7、火流魔法Lv5、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv10、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv9、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv4、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《七獄》
強欲、嫉妬、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者/病に愛された者
ケルロス・ミルキーウェイ
星帝白狼Lv8
《耐性》
痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv5、精神異常耐性Lv5、状態異常無効Lv4、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
知り尽くす者、信頼する者、混沌監獄、研究部屋、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv6、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv10、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9
《七獄》
強欲、嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥帝土竜Lv8
《耐性》
物理攻撃無効Lv7、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv6、魔法攻撃無効Lv6
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv6、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3
《七獄》
暴食