206話 先生の卒業式
……。
「あれ……ここは」
「ノーチェが借りてた家だよ」
目の前にケルロスが居る……おかしいな俺は寝てるはずなのに。
「気分は?」
「悪くない」
まだウトウトする。怪我は治ってるみたいだ。
「膝枕か」
だんだん意識がはっきりしてきた……これは膝枕だ。でもまぁ気持ちいいからしばらくはこのままでいいか。
「二度寝するの?」
「それも悪くないかも……」
開いた目を閉じて眠る体制に入る。しかしケルロスは俺の髪を触りながら呟いた。
「さっきの戦いについて話をしないと……シャネルが家に来てるよ」
「……二度寝出来ないじゃん」
ムスッとした顔で反論するとケルロスはクスクスと笑っていた。
「おまたせシャネル」
「いえいえ、お疲れでしょうから」
衛兵は居ない、シャネル1人で来たのか。
「戦いについて……って言われても俺は襲ってきた魔王と戦っただけだよ。情報も何も持ってない」
「だと思いました。あの妖精もノーチェ殿が先生として居るのは知らない風でしたから……まぁ本当の所はわかりませんけど」
まぁその後俺は特段なんもしてない。死者数とか国としての方針とかをケルロスとシャネルが話してただけだ。もう王様変わった方がいいんじゃないかなとまで思うよ。
「最後になりますが……我々を救って頂きありがとうございました」
シャネルが頭を深く下げる。俺は優しくシャネルの肩に触れて
「大丈夫だよ」
と伝えた。
「それとこれは関係ないのですが――」
1週間後
「行くの?」
「……お別れはするべきだろ?」
俺は今学校の教師用室にいる。荷物を回収する為、そしてみんなにお別れをする為に。元々魔王ってバレたら帰るつもりだったし何よりこれ以上俺が隣に居たらみんなにも迷惑を掛けることになる。少し寂しいけどこれでいいんだ。
「授業はもう終わってるんでしょ?」
「ま、まぁ、そうだけど」
魔王って隠してたのをどう思われるか……いきなり居なくなると伝えてみんな悲しむだろうか。色んなことを考えると胃が痛くなる。このまま会わずにさよならする方が幸せなんじゃないかとも思う。
「……開けるよ」
「俺は邪魔だろうから先に家帰ってるよ」
「えっ! ちょっケルちゃ――」
俺が振り返るより前にケルロスが扉を開いた……そして転移を使って家に帰ってしまった。
あ、あの野郎!
「先生?」
「あっ……えっとみんな元気〜?」
手を振りながら頑張って笑顔を作る。恐らくめちゃくちゃ下手っかすな笑顔を。
「先生!!」
リリュクが机を蹴り飛ばしながら俺に抱きつく。どうにかしてバランスを崩さないよう堪えるがナツとキャネル、面白そうという理由で突っ込んできたシュクラにトドメを刺されそのまま倒れ込んでしまった。
「先生! 今までどこに居たの!!」
涙を零しながらリリュクが聞いてきた。俺はリリュクの涙を手で拭き取り頭を撫でる。
「ごめんね」
「みんな無事で良かった」
安心、喜び、そしてこの後俺が何を言うのかわかっているのか悲しそうな顔をしている生徒もいる。だけど1人だけ、1人だけは何か覚悟を決めたような目をしていた。
「先生!」
「……レオ」
俺が話そうとするよりも早くレオは頭を下げた。
「俺は先生に教えてもらわなきゃここまで強くなれなかった。そしてそれはこれからも同じだ……先生がなんだろうと関係ない。ここにいてくれなんてわがままも言わない。だから……だから俺を先生の所に!」
全てを言うより早く俺はレオのことを抱きしめた。
「それはダメだよ……君はここの生徒でしょ?」
「先生と一緒にいられるなら辞めたっていい」
レオの手が震えている……なんとなくわかってるんだ俺がそれを許さないってことを。
「頼むよ先生」
「ごめんねレオ、それはダメなんだ」
レオの服を握る手がギュッと強くなり俺は複雑な感情を押し込める。
「俺は先生のことを倒せるくらい強くなるから」
「うん」
「六王も六魔王も倒せるくらい強くなるから!!」
「うん」
震えるレオの声に俺も涙がこぼれそうになる。しかしここは意地があるからな……どうにか堪えないと。
「はいレオ〜独り占めしなーい」
ヴィオレッタが俺とレオの間に入りそう言った。
「ヴィオレッタ」
「ありがとう先生」
俺の耳元でボソリとつぶやきヴィオレッタはウィグの方へと向かって行った。
ヴィオレッタは俺とケルロスが慎重に聞き取りをしてもうこの国に悪意がないことを証明している……それと何よりウィグのあれが決定的だったな。
「ヴィオレッタはもう何も隠していません! もしこの先ヴィオレッタが何がするようでしたら俺がヴィオレッタを殺して自分も死にます!」
少しだけ男らしいと思ったよ。ケルロスもなんか気に入ってたし。
「みんなありがとうね……短い間だったけどすごく楽しかったよ」
「私達もとっても楽しかった……ありがとう先生」
リリュクが俺のもう一度抱きつく。しかし先程とは違いとても優しく抱きしめられた。
「……風邪引かないように、後仲良くするんだよ……先生に迷惑は……掛けたらダメだから」
涙がやばい……これ以上居たらガチ泣きしそうだ。
「じゃあね……みんな」
リリュクを離して後ろを向く、このまま転移で家に帰ろうと思った時だった。
「「「「「「「「「「「ありがとうございました! ノーチェ先生!!」」」」」」」」」」」
声に驚いて転移しながら振り返ると生徒たちは涙を隠しながら笑っていた。
「……おかえり」
「ただいま」
「タオルいる?」
ケルロスが優しく微笑みタオルを差し出す。まるでこうなるのがわかっていたように。
「ありがとう」
タオルを受け取るために近寄るとポケットから何かが落ちた。
「これは」
紙?
何枚かに折りたたまれた紙を丁寧に開いていくとそこにはみんなが書いたと思われる感謝の言葉、意気込み、そして安心して国に帰って欲しいとの願いが書かれていた。
「……」
「良かったね」
ケルロスが横に立ち紙を見ながら言った。
「うん……うん」
俺はケルロスに泣いてるのがバレないようにケルロスのことを抱きしめた。……でも背中をさすられて頭を撫でられてるからバレてるだろうなぁ。
「落ち着いた?」
「最初から落ち着いてるもん」
ケルロスから離れて鼻をかむ。そして家具が無くなった部屋を見回して今までの事を少しだけ思い出す。
「ノーチェ?」
「……ううん、少し懐かしいなって」
なんでか分からないけど俺はこの時ケルロスの手を握っていた。
「よし、帰ろうか我が家に」
「クイックが待ちくたびれる頃だろうしね」
とんでもない量のご飯を作ってそうだな。
「バイバイ、みんな」
転移直前にそう呟いて俺はシャンデラ国を後にした。
「玄関だよここ、部屋に直接転移すればいいのに」
「いいかいケルロス、久しぶりに家に帰ってきたのにいきなり家の中に居たらつまんないだろ?」
「そういうものかなぁ」
首を傾げているケルロスを置いてドアを叩く。中からはよく聞いた声ではーいと返事する声が聞こえた。
「どちら様〜」
少し面倒くさそうな声で扉を開けたクイックは俺を見た瞬間盛大に抱きついた。
「わっ!」
「おかえりノーチェ!」
「それずるくない」
後ろでケルロスが不機嫌そうに両手を組んでいるがクイックにそんなことは関係ないみたいだ。
「ただいまクイック」
「本当に久しぶりだね……話したいこともいっぱいあるから早く入ってよ」
クイックが少し強引に俺の背中を押してくる。まぁ別に断ることもないしと思い笑いながら家の中に入っていった。
「あ、ケルロスは俺が居ない間に何をしてたのか詳しく聞かせてもらうから」
ん〜……温度差が凄い。
「はいはい」
でもケルロスは少し嬉しそうに返事をしていた。
ただいまみんな。
心の中でそう呟いて部屋の奥へと進んで行った。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ【星喰らい】
天月姫Lv7
所持アイテム星紅刀、楼墨扇子
《耐性》
痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv10、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv10
《スキル》
導く者、貪慾王、高慢王、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄、研究部屋 、不達領域、完全反転、極限漲溢 、魔法無効
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv7、火流魔法Lv5、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv10、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv9、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv4、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10
《七獄》
強欲、嫉妬、傲慢
《資格》
管理者-導く者
《称号》
神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者/病に愛された者
ケルロス・ミルキーウェイ
星帝白狼Lv8
《耐性》
痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv5、精神異常耐性Lv5、状態異常無効Lv4、魔法攻撃無効Lv9
《スキル》
知り尽くす者、信頼する者、混沌監獄、研究部屋、不達領域、完全反転
《魔法》
水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv6、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv10、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9
《七獄》
強欲、嫉妬
クイック・ミルキーウェイ
冥帝土竜Lv7
《耐性》
物理攻撃無効Lv7、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv6、魔法攻撃無効Lv5
《スキル》
貪る者、永久保存、欲望破綻
《魔法》
火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv6、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3
《七獄》
暴食




