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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
瓦解編
204/261

203話 存在しない物質

「六王、シャネル・ロートン。その首差し出せば他の民は救ってやろう」

「……それは本心か?」


シャネルの質問に妖精は答えず笑みで返した。


「風炎呑!」

「ダーク・スラッシュ!」


……


「アイス・スピア」

「ッ!」

「先生!」


腹にキツいの貰ったなぁ……回復に手間取った。


「生きてた……いやまぁ普通に生きてるよね」

「チグリジアは返してもらう」


理由はどうあれチグリジアは俺の生徒……ここで魔王なんかに取られてたまるか。


「でも〜チグリジアちゃんはこっちに居たいってさぁ」


チグリジアの髪を触りながらハレンが俺を見る。シャネルに向けていた嘲笑い弱いものを見る目とは違くしっかりと敵として認識されている。これじゃあ不意打ちも厳しいか。刀は家だし……あるのは懐に携帯している拳銃のみ、それも弾丸は持ってきてないから6発だけだ。


「氷海刀」


これで代用するか。


「それが獲物? すぐ壊れちゃうよ」


ガチャン!


「これでも……そう思う?」


地面深くに突き刺した刀を抜いて微笑みながらハレンに聞いた。そしてその時ひとつの違和感が切っ先を刺激した。糸……魔法を練りこんだ無数の糸を張り巡らせてたのか。


「確かに、脆くは無さそうだね!」

「ッ!」


妖精のくせに蹴りが強い、魔王はそのへんも別格ってことか。


「フローズン・ナイト!」


とりあえず時間を稼いでチグリジアを――


「こんなのお人形遊びもできないよ!」


炎でぐちゃぐちゃに溶かしやがった! なんでもありがあいつ! ってそのまま突っ込んでくる気か!?


「溶けて死ね!」

「氷壁!」


どうする……このままじゃ。


「よそ見とは随分余裕だね!」

「なっ!」


攻撃はまだ!

氷の壁に炎をぶつけていたのはハレンの作り出した幻!? そして本人はいつの間にか俺のすぐ横に移動していたのか!


「割と弱かったね先輩」


防御を!


「完全に懐に入り込んだ! もう無駄! ダーク・ペネトレイト!」


ギリギリで氷の膜が――


「無駄って言ったでしょ?」

「ごほっ」


馬鹿な……防御は間に合ってた、どうして。


「闇魔法の本質は存在しない物質というところにある。存在しないってことは防ぐ手段も避ける手段も存在しない。要するに闇魔法の前では全ての魔法が無力ってことさ!」


予想外……だったなこれは。手と足を完全に貫かれた、左目もほとんど見えない。横腹にも刺さったか……。これは油断した、それと最近戦ってなかったから勘が鈍ったかな。あ〜どうしようこれ、多分この会場で1番強いのは俺だよなぁ……俺が負けたら皆殺しは決定かぁ。


「先生!! 先生!!」

「……レオ?」


耳鳴りがすると思ったらレオが俺の耳元で先生って言ってたのか……でもどうして


「君達は」

「先生の生徒だ」


ウィラー。


「これ以上先生に怪我はさせない」


ナツも。

みんなが俺の前に立って。


「先生……時間を稼ぐので逃げてください。多分転移があれば逃げられます」

「いや、結界があるから無理だ」


それを聞いたヴィオレッタは悲しそうな顔をしながら話を続けた。


「なら……先生をどうにか助けます」

「待っ――」


俺の静止を聞かないまま生徒たちはハレンの前に立った。


「1つ聞くけど本当に勝てるつもり?」


ハレンの圧が上がる。普通の子供なら気絶してもおかしくないのに俺の生徒は強い目をしてそこに……立っている。


「無駄話はしないよ」


シュクラがそう言うと生徒達がバラバラになり攻撃を開始した。


「カガリ!」

「ぎぃゃゃゃゃゃゃゃゃ!!」


超音波攻撃で相手を怯ませてからみんなで攻撃か……でもそれじゃあ。


「出し惜しみはなしだよ!」

「わかってる!」


ウィグもナツも全力で戦ってくれている。レオもウィラーも魔法を使いシュクラやガッシュが直接戦闘をキャネルやヴィオレッタがサポートに入ってリリュクとアゼルは敵の妨害。完璧な連携、同い年なら敵無しだろう……でも相手は。


「邪魔」

「きゃ!」

「うっ!」


シュクラとガッシュが……くっそ! 体が動かない……骨を切られてる。それに筋肉も、これじゃあどうしようも。弱音をいうな! こんな程度の怪我どうにでもなるだろ! 回復だって……あれ、どうして回復が。


「気付いた〜? さっきの闇魔法は魔力循環の妨害が1番の目的だったんだよ。もしそれをなしにしてれば今頃死んでたかもしれないけど……それじゃあ楽しくないでしょ?」


何言ってるんだあいつ。


「ほら、自分の生徒達が死ぬところ……見たいよね?」


その言葉を聞いた瞬間全身に火がついたように怒りが回る。しかしいくら熱くなっても体は動かない。魔力の流れがめちゃくちゃって時点で体が重くて動かない。


「お……前」


俺が全身に力を入れている一瞬でクラスのみんなは会場のあちこちに吹き飛ばされていた。しかし1人……1人だけはその場で攻撃を受け耐えていた。


「レオ」

「先生は俺が……守る」


あの出血……早く止血しないと!


「君が1番か……」


ハレンはレオを見てニヤリと笑う。一瞬俺の方を見た……まずい!


「レオ……逃げ! ごっ!」


ビチャビチャ!!


内臓のダメージが。


「一撃だけ受けてあげるよ……あの人のお気に入りなんでしょ?」

「ッ! 舐めやがって!」


レオの武器が形を変える。それは俺の持っている刀とそっくりだった。


「吹雪!」


風魔法が得意なレオに教えた技、俺の得意が水と知って似た魔法を使いたいと懇願したので教えたが……あそこまで使いこなすなんて。


「……ふふ、闇搦」


レオの攻撃は全て闇の中に吸い込まれそのままレオに向かっていく。

ッ! 動け! 俺の足……今だけでいい! レオを助ける為だけでいいから! もう……後悔したくないんだよ!



ガチャン!!


「……先生」

「どうやって」

「支配者で周囲の魔力を取り込んだ。無理やり魔力を治したんで体の中はぐちゃぐちゃだが回復出来る分まだ戦える」


嘘でしょこいつ……言うのは簡単だけどやるとなると話は別だ、まず魔法やスキルが使えないようにする為に闇魔法を打ち込んだのにぐちゃぐちゃの魔力のまま支配者を使い上手く支配できるかどうかも分からないまま周辺の魔力を自分に入れたなんて1つでもミスすれば死ぬってのに。


「ダーク――」

「アイス・ハント」

早い! 無数に枝分かれてた氷が私のことを捕らえようと伸びてくる……周辺の魔力を凍らせて速度を上げてるのか。

「仕方ない!」


これを使うつもりはなかったけど持ってきてて良かった。


「魔力崩し」


この針は相手の魔力の穴を突き魔法を使えなくする武器、これを使いこなすのには相当時間がかかったけどこれでいくら実力差があろうと関係ない!


「千影氷竺刀」


氷の刀、それもあんなに。……ううん! でも大丈夫、私にはこれがあるから!


「死ね!!」


避けられた! だけどこれは糸を使って無限に攻撃出来るよう作られてる! まだまだ負けてない!


ガチャン!


「ッ!」


早い……けど何とか目で追える。


「そこ!」


当たっ――


バコンッ!


「な、何を!」


刀じゃない!? いきなり殴ってきた!?


「これしき!」


やった! 今度は3発も!


ガチャン! ザクッ! ドスドスドスドス!!


氷の刀が1列になって降り注いでる? おかしい……先輩はもう魔法を使えないはずなのに!


「不思議そうな顔をしてるな……俺の中の魔力を崩すんだろこれは。まぁそれはできてる、できてるけど今の俺の魔力は自分の体内だけじゃない」


……支配者!?


「このまま死ね」


氷の刀が集まって……これじゃあ避けられない、一体どうすれば。


「あれは」

私の目に止まったのは先輩が体を無理やりに起こして助けた生徒だった。


「あはぁ!」


貫け……魔力崩し!



「はっ! レオ!」

「間に合わない!」

「キャンディ・ロープ!」

「ダメ! 逃げてレオ!」


ザクッ!

ポタッポタポタ


「……あっあぁ、あぁ! 先生! 何してんだよ!」


俺が庇うのをわかっててさっきよりも魔力崩しの威力をあげてやがる。


「はは、あはははは! 本当にゼロの言ってた通りだね。仲間は見捨てないんだ」


ムカつく笑みを浮かべながらこちらに飛んでくるハレン。

俺は刺さった針を無理やり引き抜き投げつけた。


「おっと……で? それでどうするの、そんなボロボロの体でさぁ! 魔王の名前もそれじゃあ形無しだねぇ!」


会場がザワザワと騒ぎ出す。生徒たちも驚きを隠せていない。


「せっかくここまで上り詰めたのにくだらない仲間なんてものに足引っ張られてさぁ! 何が魔王唯一の穏健派だよ! ただのビビりじゃんか!」


ハレンの声が会場中に響き渡る。そして観客の視線は俺に向けられた。


「……はは、確かにお前からしたら仲間なんてくだらないものなのかもしれない。でも俺はその仲間のために魔王になった。その為だけにここまで強くなって来たんだよ!」


飛べ! 氷の刀達よ!

しかし魔力が上手く制御出来ない今の状況では刀も変な方向へ飛び回る。


「当たってないし……でもうん、仲間なら私にもいるよ」


ハレンが呟くと太陽に雲がかかったのか俺の周りが暗くなった。


「先生!」

「やっちゃって……勇者さん」


グチャ!


「これ……は」

「見覚えあるでしょこの剣に、これは貴女の仲間が倒した勇者だよ」


死体? 肌が黒い……でもなんで動いてるんだ。


ブシャッ!


「他にもほらいっぱいいるから楽しんでね……死んでも大丈夫だよ。先輩の仲間もすぐそっちに送るから」


俺はそれを聞いてニヤリと笑った。


「? 何笑ってるの」

「それはどういう意味で?」


ハレンは不思議そうな顔をしながら話した。


「ここを襲撃すると同時に先輩の国にも兵を送り込んだの……だからもう――」

「そうか……それはいいことを聞いたよ」


氷の刀を地面に刺して無理やり体を起こす。ボタボタと音を立てながら流れる血を目で追いながら目の前の妖精に刀を向ける。


「ハレン・バーバット……お前の負けだよ」


それを聞いたハレンは怒りを露わにする。


「ふざけんな……負けたのはお前だろ!」


ハレンの怒りと連動するように勇者が剣を振り下ろす。しかし俺は何もしない……だってもう勝敗は決したのだから。


現在のステータス

ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】

天月姫Lv5

所持アイテム星紅刀、楼墨扇子

《耐性》

痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv10、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8

《スキル》

導く者、貪慾王ガイツ高慢王ホッファート、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド)不達領域(リーチキャンセル)完全反転(フルフリップ)極限漲溢(ルプトゥラ)魔法無効(アンチエリア)

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv7、火流魔法Lv5、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv9、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv3、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10

《七獄》

強欲、嫉妬、傲慢

《資格》

管理者-導く者

《称号》

神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者/病に愛された者


ケルロス・ミルキーウェイ

星帝白狼Lv8

《耐性》

痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv3、精神異常耐性Lv5、状態異常無効Lv3、魔法攻撃無効Lv9

《スキル》

知り尽くす者、信頼する者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド)不達領域(リーチキャンセル)完全反転(フルフリップ)

《魔法》

水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv6、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9

《七獄》

強欲、嫉妬


クイック・ミルキーウェイ

冥帝土竜Lv7

《耐性》

物理攻撃無効Lv5、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv5、魔法攻撃無効Lv5

《スキル》

貪る者、永久保存(アイスロック)欲望破綻(ダイエット)

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv6、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3

《七獄》

暴食

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