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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
瓦解編
200/261

199話 助けられない奴

「……」

「……」

「あれってさっきの人だよね」


チグリジアが一生懸命背伸びしながら俺の耳元近くで囁く。


「多分な……」


俺達の目の前には砂漠のど真ん中で座り込み目を閉じている真っ黒な男が居た。


「寝てるのかな?」

「瞑想……ってやつじゃないのか?」

「……」

「……」


いやどうすればいいんだあれは。攻撃していいのか? しかしさっきは怪我した俺を治したしその恩は返さなければならないか。


「ガッシュくん?」

「戦うにしても起こす必要があるだろ?」


俺はチグリジアに留まるよう伝え1人で男の元へ近付いた。


「……無防備だな」


ボソリと答える男の肩に触れようとした時……魔力の流れが変わったことに気がついた。


「なんだこれは」

「下だよ! ガッシュくん!!」


ドォン!


地面が無くなって!?


「なんだこれは!!」

「捕まってガッシュくん!」


ロープ? そんなものを持っていたのか。でもチグリジア1人で俺の事を上げられるとは思えない。


「離せ! このままじゃ2人とも落ちるぞ!」

「ガッシュくんだけ見捨てられないよ!」


ゆっくりとだけどロープが……このままじゃ2人とも。


「すまん……俺の部下が勝手な行動をした」

「え?」


いきなりロープが!?

急に引き上げられた衝撃で驚いた俺は受け身を取り切れず砂にそのまま突撃した。


バコンッ!


「ったぁ……チグリジア今のは」


チグリジアが居た所に目をやるとそこにはチグリジアだけでなく真っ黒で大柄な男も一緒に立っていた。


「お、お前は!」


俺が立ち上がり戦闘体制に入ると男は頭を下げた。


「は?」

「いやすまない。俺は1体1の戦いがしたいと部下に伝えたのだが……言うことを聞かなくてな。あれは完全にこちらのミスなので気にしないでくれ」


何を言っているんだこいつは……いや、でも助けられたのは事実だしな。


「……こちらこそすまない。助けてくれたのは事実だからな」


まさか敵のボスに頭を下げる日が来るとは思わなかった。


「さて……筋を通したところでやろうか」


先程までなかった戦意が男から湧き上がる。


「そうか、ならやろう」


この時の俺は……笑っていただろうか?



「……」

「ふぅ」


想定よりも粘ったな。あの女の子はサポートしかしてないし直接戦闘能力は無いのかもな。となるとどうするべきか……ダンジョンのボスとしてバイバイ〜ってのはまずいしなぁ。適当に気絶させてダンジョンから放り出すことに――


ボンッ!!


「なんだ……これは」


腕が……切られたのか? いやそれにしては断面が汚い。一体何が。


「ッ!?」


ぬいぐ――


ボンッ!! ボンッ!


「これは爆発か!」


少女の姿が見えない……一体どこに。


「お兄さんは……爆発って好き?」

「なっ!」


その時の少女の笑みはトラウマになるほど恐ろしいものだった。



「トロリアット!」

「まだもう少しかかります!」


蜘蛛の魔物は俺達を見て奥に引っ込んでいる。裏切ったのは1人だけか。


「裏切った理由は分かるか?」

「それが全く! 真面目な男だったんですけどね」


なにか気に食わないことがあったのか、それとも洗脳とかなら別の方法も考えないとな。



「剣と杖」


これはただの剣じゃない。自分の魔力に合わせて形を変えられる剣だ。要するに!


ガチャン!


「剣が曲がった?」

「こんな戦い方も出来んだよ!」


剣を曲げて直接攻撃した! これならまだ勝機が見える!


「リリュク!」

「任せて……キャンディ・ドール」


ベタベタとした大きな人形に挟まれて動けない! 変幻自在な俺の剣ならここからでも射殺せる!


「伸びろ!」

「……あはは」


ビクッ……


なんだ今の寒気は。


「は?」


ブシュッ!


「レオ!!」


剣が折られた? 一体何が起き……て。



「キャンディ・バウント!」


ギリギリだけど間に合った……でもあの感じレオはもう。


「次はあなたの番ですね」

「くっ!」


バギャ!


「きゃ!」


杖で咄嗟に防いだのにこの威力……それにさっきから強さによる恐怖と言うよりも別の恐怖を感じる。


「ッ!」


速い!


「キャンディ・ロード!」


さっきから魔法を使ってない所を見るにこの人は接近戦が得意なタイプ。とにかく距離を稼いでレオの助けに――


メキメキ!


「ぐっ……ぶぐぁ!」


視界が回る……体が地面に叩きつけられて……受身が取れない。


バコンッ!!


「はっ! あが」


口の中で血の味がする……一体何が起きて。

私はどうにか立ち上がろうとするが脇腹辺りにとてつもない痛みを感じてその場にうずくまる。


「ごっ! ごほっ! はっ! あぁ!」


口の中にあった血を地面に撒き散らし息をする。しかし吸っても吸っても息は整わず痛みだけが全身を襲う。


「もう……終わりですか?」


いつの間にここまで。

杖を持って抵抗しようとするが首を掴まれてそのまま壁に押し付けられてしまう。


「ひゃ! あっ! ひゅ! は……あ」


まずい……このままじゃ本当に死んじゃう。


「この程度、いやよく耐えたと褒めてあげるべきでしょうか? まぁお気に入りにしてはもう少し期待を上回って欲しかったと思いますけど」


声が聞こえない。耳鳴りがする……全身の血が冷たくなっていく感覚。昔もこんな思いを。



「やめて!」

「うるさい! お前が悪いんだろ!」

「この子は違うの! この子は助けてあげて!!」

「ガキなんて作りやがって! これがバレれば俺の地位はどうなるんだ!」


お母……さん。


「逃げなさい! お母さんが守ってあげるから! 早く!」

「邪魔すんじゃねぇ!」

「きゃあ!!」


顔が……温かい。


「次はお前だ……まだ小さいけど悪く思うなよ」

「やっ! あっ! きゃめ!」


苦しい……くる……しい。このまま……私、私。



「……て」

「ん?」

「……して」


何をブツブツと言っているんだ?


「何を」

「離して!!」


ブシャ!!


腕が切られた!? 一体何を隠し持って!


「はぁぁぁ……あぁ……がぁぁぁぁぁぁ!!」


魔力が漏れ出してる? 今までの魔力は一体なんだったんだ……この少女はこんなに魔力を持っていなかったはず。


「ッ!」


私は少女に向かい剣を振り下ろした。今までの手加減していた速度とは違い全力の一撃を。しかしその剣は少女に届く前に粉砕されてしまった。


「何が起きている」


制御は出来て居ないはずだ。何が引っかかっていた鍵が解けたのか? 暴走を抑え込むように何かがあったがそれを死の淵に立たされた衝撃で私が外してしまったのか。


「滅火獄!」

「……」


何も言わずに打ち消された……無詠唱とは違うのか? ……全ての認識をひっくり返すべきだ。こいつは私の……敵だ。


メリッ! メキメキ!


「ここまでするつもりはなかったけど……仕方ないですね」


槍のように長く先端は横に広い刃を付けた専用武器……首落としを使うまで追い込まれるとは思わなかったです。


「その首……いただきます」

「……」


首に向けて全力で突進したその瞬間……私の刃は首とは違う何かに止められた。



「そこまでだスクラ」


スクラの首元にはトロリアットの刀が、武器は俺の手で止めている。……あの刀俺のやつに似てるな。いや見なかったことにしよう。


「これはこれはトロリアット様にノーチェ様。私は何が問題を起こしてしまいましたか?」


ニコニコとした笑顔を浮かべて両手をあげるスクラ、武器も離しているようだ。


「スクラ! ノーチェ様の命令を――」


トロリアットに辞めるよう指示してゆっくりとスクラの元に向かう。何が期待した様子で俺の事を待つスクラを見て俺はある種の違和感を覚えた。


「……リリュクを殺す気だったな」

「はい」


すんなり答えやがったぞ。


「カメラも」

「私がやりました!」

「ん、んんっ! 転移」

「全て私です!」


……洗脳はされてないなこれ。


「なんでこんなことを」

「罰ならいくらでも! さぁ! 命令違反をした私に罰を!」

「黙れこら!! 話が出来ないでしょ! 何なのこの子! トロリアット!?」

「……いや本当にすみません」


ダメだトロリアットはガチ凹み中だ。


「はぁ……じゃあ認めるんだね?」

「はい! 私はノーチェ様の教え子を殺すつもりでした!」


話を聞く感じ恨みがあるとかそういうようには見えないんだけどこの子の目的は一体なんなんだろう。


「結果的に殺してないし間に合ったからな。次からはこういうことがないように頼むよ」


疲れた……てかなんでこの子こんなに元気なんだろう。もういいや早く授業終わらせて寝よ。

転移で地上に戻ろうとした時スクラの指がピクリと動いたのを確認して動きを止める。


「……ノーチェ様?」

「スクラ、その指を少しでも動かしたら殺すよ」

「それでは喜んで」


笑みを浮かべたスクラは指を動かしてレオの上にあった岩を落とす。トロリアットは慌てた様子でスクラに攻撃するが俺はそれを防ぎ岩を水斬魔法で破壊した。


「なんなんだよお前! なになに!? 一体何がしたいの!!」


ここまで来ると怒りとか呆れとかよりも恐怖が先に来るんだけど!!

俺が困惑していると誰かが俺の服をつまんで話しかけてきた。


「ノーチェ様……そいつは極度の変態……相手にするだけ時間の無駄」

「君は」

「ブランケット? 珍しいね起きてるなんて」

「寝たかったけどノーチェ様とトロリアット様に説明しないとって思いまして」


説明中


「要するに……俺とトロリアットから罰が欲しくてこんなことをしたと? 最悪殺されても俺たちに殺されるならご褒美だと?」

「はい……そういうことですねぇ〜ふぁ〜」


まじか。


「どうしますこいつ……とりあえず殺します?」


トロリアットがガチだ。そしてスクラの方はめちゃくちゃ嬉しそうにこっちみてる。


「ま、まぁまぁ理由がわかって……良かった……よ」


ダメだ初めてのタイプでどんな目で見てやればいいのかわかんない。


「あぁ! その目! 人として見れずでも仲間だからどうにかして見てあげようと可哀想なものを見る目になってしまうノーチェ様! 最高です!」

「やっぱり殺しましょうこいつ!」

「でもほら……仲間だし」


切りかかろうとするトロリアットを止めて座らせる。そして俺はスクラに質問した。


「それで……どうしたらこういう命令違反をしないでくれる?」

「……どうしたら? 命令違反をすれば罰が来るので永遠とやり続けてしまうかと」


ダメだこの子。


「クールな風でこんな変態って……これがリーダーとか言い出した時トロリアット様の正気を疑いましたよ私」

「だって知らなかったし」


六大獣蟲のみんなは知ってたのか。


「うーん仲間は殺したくないしなぁ」


俺が悩んでいるとブランケットが近寄り俺の耳元に話しかけていた。


「こうすると……」

「えっ……でもそんな」

「あいつを見捨てたく……」

「えぇ……」


俺はブランケットの言うことを聞いて立ち上がった。


「ノーチェ様?」


本当にいいのかなぁこんなことで。

そのままスクラの前に立ち深呼吸をする。そして……。


「あっ……とぉ、ごめん!」


バコンッ!


スクラのことを思いっきり蹴り飛ばした。


「ノーチェ様!?」


少し力入れすぎたかな? 蹴る時につぶった目を開くとそこには頬を赤く染めながら嬉しそうに蹴られたところをさするスクラがいた。


「あぁ〜……最高です」

「ひっ!」


俺は今まで生きてきた中で全く感じたことの無い何かを感じて変な声を上げながら後ずさりしてしまった。


「その表情! 自分では理解できない何かを見る時の顔! 最高です! そしてトロリアット様の虫以下のものを見る目! 幸せすぎて逝ってしまいそうです」


もう嫌だこの子……おうち帰りたい。


「まぁ任務成功する度に蹴ったり殴ったりしてやれば言うこと聞くと思いますよ」

「そんなことで?」


さすがのトロリアットも疑っているようだ。


「ノーチェ様! もう一度! もう一度お願いします!」

「う、うぅケルロス〜、クイック〜助けてぇ」


俺はその後しばらくへんた……スクラの相手をしてから地上に戻った。



「……うぅ、怖いよあいつ」


怪我した2人を治しながら俺は教室に向かった。


現在のステータス

ノーチェ・ミルキーウェイ【反逆の刃】

天月姫Lv3

所持アイテム星紅刀、楼墨扇子

《耐性》

痛覚耐性Lv6、物理攻撃耐性Lv10、精神異常無効Lv10、状態異常無効Lv10、魔法攻撃耐性Lv8

《スキル》

導く者、貪慾王ガイツ高慢王ホッファート、支配者、知り尽くす者、信頼する者、諦める者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド)不達領域(リーチキャンセル)完全反転(フルフリップ)極限漲溢(ルプトゥラ)魔法無効(アンチエリア)

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv7、火流魔法Lv5、水泡魔法Lv10、水斬魔法Lv9、水流魔法Lv10、氷結魔法Lv10、風新魔法Lv7、風斬魔法Lv3、土石魔法Lv10、土斬魔法Lv9、土流魔法Lv9、回復魔法Lv10、破滅魔法Lv3、幻影魔法Lv10、闇魔法Lv10、深淵魔法Lv10

《七獄》

強欲、嫉妬、傲慢

《資格》

管理者-導く者

《称号》

神に出会った者/神を救った者/呪いに愛された者/病に愛された者


ケルロス・ミルキーウェイ

星帝白狼Lv8

《耐性》

痛覚無効Lv6、物理攻撃無効Lv3、精神異常耐性Lv5、状態異常無効Lv3、魔法攻撃無効Lv9

《スキル》

知り尽くす者、信頼する者、混沌監獄(ユニオンプリズン)研究部屋(マイワールド)不達領域(リーチキャンセル)完全反転(フルフリップ)

《魔法》

水泡魔法Lv5、水斬魔法Lv6、風新魔法Lv10、風斬魔法Lv10、風流魔法Lv8、稲妻魔法Lv9、創造魔法Lv7、光魔法Lv10、神聖魔法Lv9

《七獄》

強欲、嫉妬


クイック・ミルキーウェイ

冥帝土竜Lv7

《耐性》

物理攻撃無効Lv5、精神異常無効Lv4、状態異常耐性Lv5、魔法攻撃無効Lv5

《スキル》

貪る者、永久保存(アイスロック)欲望破綻(ダイエット)

《魔法》

火炎魔法Lv10、火斬魔法Lv8、火流魔法Lv3、風新魔法Lv6、風斬魔法Lv10、土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10、溶岩魔法Lv10、闇魔法Lv3

《七獄》

暴食

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