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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
瓦解編
199/261

198話 漆黒の翼

バコンッ! ドゴンッ!! シュッ、シュシュ!


「サンド・ハリケーン!」

「スノウ・バースト!」


矢が弾かれる……雪のせいで足場が安定しない! それにヴィオレッタの攻撃も砂が周りにないせいで押し負けてる。


「魔力は!?」

「まだ残ってるけど……ここ雪の下は土じゃないの!?」

「全部雪なんじゃないのか?」


圧倒的不利にしか傾かないな……ったくどうすればいい。


「いやぁ……なかなかいい子たちに当たったみたいだ。本当に食べれないのが残念だよ!」


バコンッ!!


「デザート・バグ!」


シュシュシュッ!


「そんな矢が当たるとでも?」


わかってるよ……俺の矢はただの陽動だよ。


「サンド・クラッシュ!」

「スリート・ディゾルブ!」


軽く弾かれたか……でもまだ!


「ヴィオレッタ!」

「わかった!」


名前を叫びながら俺は箱を投げる。


「なんだ?」


ボンッ!!


箱の中身は魔力の糸を引き抜いて使う爆弾だ。威力は低いがびっくりさせるのには十分だろ!


「ッ!」

「デザート・クラッシュ!」

「スノウ・――」

「何度も同じ手を喰らうかよ!」


シュッ!


矢は魔法を放とうとしていたウォルトの手を正確に撃ち抜いた。


「よし!」

「ありがとうウィグ!」


ボンッ!


雪が舞って周りが見えない。ウォルトはどうなった……今の攻撃だけで終わるとは思えないぞ。


ガチャッ!!


「やっぱりな!」


ヴィオレッタを狙ったな、そして魔法と思わせてからの短刀か……先生に教わった通り小さい剣を携帯してて良かったぜ。


「反応速度はそこそこ……それにしてもお前は魔法を全く使わないな。エルフの癖に」

「ッ! うるさい!」


ガチャン!


「使えないのか?」

「サンド・アーム!」


バンッ!


「ヴィオレッタ!?」

「気にしない! 敵の声を聞く必要なんてないから!」

「す、すまない!」


短剣をしまって弓を取り出す。

落ち着いて戦うんだ。ヴィオレッタの援護に集中するんだ。


「少しは落ち着いたみたいね……こっちの攻撃は一応聞くみたい。魔力が無くなる前にでかい魔法入れて倒すしかない」

「わかった。でも俺が攻撃しないのは恐らくバレてるからな……それを全部わかった上でヴィオレッタの攻撃をどう当てるかが問題だな」

「その通りだね」


痺れを切らしたのかウォルトが短刀を持ったまま突っ込んできた。


「5連矢!」

「デザート・バレット!」


俺達の攻撃は軽く弾かれ降り続ける雪と共に消えてしまった。


「スリート・ランス」

「ヴィオレッタ!」

「サンド・ウォール!」


ギリギリの所で砂の壁が間に合った……だけどやっぱりここじゃ不利だ。


「……私の攻撃は多分見切られてる。不意を着くならウィグの攻撃の方がいい」

「待て、俺はただ矢を撃つだけだ。それじゃあ致命傷にも」


そこまで言うとヴィオレッタは俺の事を見てゆっくりと頷いた。……俺はそれ以上何も言えなかった。


「行くよ!」


ヴィオレッタの掛け声と共に砂の壁から二手に分かれて走り出す。ウォルトは予測通りヴィオレッタの方に注意が向いて攻撃を始めた。


「3連矢!」


バキッ!


ダメだ、やっぱりこんな攻撃じゃ弾かれちまう。


「サンド・フォール!」


足場が崩れた! 今ならトドメを!


「甘い」


目が合っ――


「アイシクル・ソーン!」

「ッ!!」

「避けきれな……ッ!? きゃ!」

「ヴィオレッタ!!」


足場から複数の氷柱を出しやがった!


「ぐふっ!」


腹に……。


「サンド・ボール!」

「ヴィオレッ――」


バコンッ!!



「ふぅ、まぁ死んではないでしょ」


ウォルトがヴィオレッタのそばに近寄り様子を確認する。

「息はあるな……とりあえず回復を」


パシュッ!


「ッ!?」


ヴィオレッタに触れようとしていた手の甲に矢が深く突き刺さる。


「離れろ」

「まだ生きてたのか」


……すまないヴィオレッタ。あの瞬間俺に魔法を掛けて助けてくれたんだろ? 自分を守ることだってできたのに。


「いいけど残り少ないその矢で僕のことを倒すつもりかい?」


ウォルトは戦う気がないのか俺の事をなんとも思っていない目で見つめる。


「すまなかった」

「? 何に対して謝ってるの?」

「ヴィオレッタに対してだよ……俺は自分の命惜しさに力を制限してたからな!」



さっきまで全く感じられなかった魔力が急に


バシュン!!


「ッ!?」


右腕が……。


「俺の魔力は特殊なんだ」


回復を早く。


パシュッ!


「動くな……変な動きをすればその首落とすからな」


動きが別人だ。これを殺すなって? そんな勿体ないこと……できないって。


「スノウ――」


……あれ? 足が動かない?


「動くなって」


足が撃ち抜かれて……嘘だ、矢が見えなかったどころの話じゃない。音すら、弓を構えるところすら僕は見てな……いぞ。


「それは」

「これが俺の魔力だ。俺は水や土といった四属性の魔法が使えない代わりにこうやって魔力自体を形にして使うことが出来る。要するに」


ボンッ! ボンボンボン!!


「矢がなくても、弓がなくてもそれを魔力で補って発射できる。しかも実物と違って矢と弓は俺の好きなように操れるからな軌道を変えることだって可能だ」

「アイシクル・ソーン!!」

「撃ち抜け、ショット」


パシュ……


「……あぁ食べたかった……なぁ」


グシャッ!


「終わったか」


俺は魔法を解除してヴィオレッタの元へ歩こうとする。しかし俺の足は言うことを聞かずにその場で倒れ込んでしまった。

これが俺の魔力が特殊だって理由だ。この技は未熟なものが使うと持っている魔力以外に体力や血液、挙句の果てには寿命をも消費して力を行使する。今回は短時間だから良かったけどあと数秒長く使っていれば何が起きてもおかしくなかった。


「ヴィオレッタ……」


重たい体を引きずり芋虫のようにヴィオレッタの元へ近ずいて行く。しかし冷たいという温度感覚が温かいに変化したあたりで俺の意識は途切れてしまった。



「……んっ、んん。ここ……は?」

「保健室」

「ヴィオレッタか」


指先に触れる温かい何かを感じて答える。


「よくわかったわね」


なぜだかヴィオレッタの声は震えている気がした。


「泣いてるのか?」

「……そうよ。泣いてるの」


意外だ……否定されると思ったんだけど。


「どうして?」

「……私が愚かだったから」


その言葉を聞いて俺はベッドから起き上がる。そして俺は驚いた。ヴィオレッタの美しい青と白の羽根ではなく黒と赤の醜い羽根に変化していたからだ。


「それは?」

「……私の出身は名前のないどこかって言ったわよね」

「……そうだったな」


俺の指から離れたヴィオレッタが目を合わせて答える。


「あれは嘘、私の出身はハッピー連盟。新しい魔王ハレン・バーバットが支配する国から来たの」


驚いた……でも不思議だ。驚いた以上何も出てこない。


「私よ本当の目的は理の王の調査と新しく作られたこの学園の調査。……私はみんなのことをずっと騙して」


……。


ギュッ


「そうよね……私が怖いわよね。でもうん、あなたに殺されるなら文句はないから」


俺の手の中でヴィオレッタは目をつぶり涙をこぼす。


「勘違いしてるみたいだけど殺したりなんてしないよ。今はただヴィオレッタが生きててその体温を感じたかっただけだから」

「……そう、そう。ありがとうウィグ」


ヴィオレッタは目を手で隠しながら声を殺すようにまた泣き出してしまった。


「今の話は他の人にしたの?」

「してない……でもいずれはしないと」

「情報はいつまでバラしてた?」


俺が聞くとヴィオレッタは涙をふいてゆっくりと口を開いた。


「最近はずっと連絡してない。元々私は使い捨てだったから……連絡が来なくなった所でなんとも思われないはずだし」

「そっか……じゃあ問題ないんじゃない?」

「え?」


ヴィオレッタが少し間抜けな声を出した。


「ヴィオレッタは無名の地から来た妖精だろ?」

「……うん。うん! 私はただなヴィオレッタだ」


羽根の色が元に戻る。感情によって変化しているのだろうか? ……いやそんなことはどうでもいいか。


「おかえりヴィオレッタ」

「……ただいまウィグ」



「リリュク……まだ生きてるか?」

「死んでるよ」

「結構余裕そうだな」


冗談言う位の力は残ってたか……さすが先生に教わってただけあるな。


「それで……もう終わりですか?」


とはいえあっちはあっちでほぼ無傷かよ。


「まだまだ戦う方法はいくらでもあるぜ」

「……えぇ、そうでしょう。そうでなくては……楽しくありませんもんねぇ!」


気味の悪い笑顔を向けながら細目の男は刀を取り出した。


「死ぬ気で行くぞ」

「わかった」


それに反応して俺達も先生に貰った武器を取り出すことにした。

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