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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
累卵編
183/261

182話 ゴミ処理

俺がボス部屋に入った時思ったことは絶望だった。大量の枝に刺された生徒達。目に入る生徒は全員助けて隅で寝かせいた。しかし3人見当たらない。入口付近で寝ていたアゼルを除くとレオ、ヴィオレッタ、チグリジア。まだ戦っているのかと慌て探してみればヴィオレッタが男に殴られていた。そしていつも元気なヴィオレッタがあんな消える間際のロウソクのような声で「うっうぅ。先生……助けて」と呟いていた。俺はもっと早くここに辿りつけなかった不甲斐なさと生徒をこんな目に合わせたあの男への憎悪で……全身が埋め尽くされていた。



「お前! いきなり何を!!」

不快な声で喋る男の首を即座に手で跳ねる。手には血が残り地面には男の首が転がった。

「……」

男は倒れたまま立ち上がらない。もうネタはわかってるって言うのに。

「デス・フレイム」

黒炎が森を包み込む。さすがにこれはまずいと思ったのか死んだふりを続けていた男が起き上がった。

「お前!! 一体何をしている!!」

「ここにある木がお前の命なんだろ? なら全部燃やしてやるよ」

それを聞いた男は慌てた様子で俺に突っ込んでくる。

ドンッ!!

「ぐぼっ!!」

「っらぁぁぁ!!」

腹部に拳をめり込ませる。本気を出せば一瞬で肉塊にしてしまうのでそうはならないように優しく丁寧に……こいつを壊す。

「あっがうぅ!」

後ろに吹き飛ばされそうになった男の髪を掴み顔に膝をぶつける。鼻から血が噴水のように溢れているがそんなことは気にせずもう一度腹部に重い一撃を入れる。

「はっ! ごぼっ!」

血を巻き散らかす男の足を思いっきり蹴って脛部分の骨を折る。その瞬間聞くに絶えない悲鳴をあげるので口に手を突っ込みそのまま地面に投げつけた。

グシャッ!

人体から聞こえてはいけない音が響くがそんなことはお構い無しで顔面に足を押し付ける。足裏から男の顔面がグチャリとねじれるような折れるような感触がする。

「やべ!」

さすがにやばいと思ったのかぐちゃぐちゃになった顔で助けを求めている。しかしそんなもので俺が止まると思ってるのか?

もう一度髪を掴み無理やり体を起こす。足に力が入らないため全体重を髪で支えることとなりブチブチと髪の毛が抜けていく。

「ひゃめ! もうゆるじで」

「ダメ」

男の髪を思っきり引っ張り体を宙に浮かせるそのままみぞおちにパンチを入れて奥にある壁に吹き飛ばした。

「かっ……」

息絶えた男はまだ残っている木のおかげで全ての傷が治り全てが元に戻る。

「あっ……俺は、俺は死なない! あはははは」

喜んでいる男の目の前に俺は立つ。「ひぃ!」と情けない声を上げ一生懸命後ろに下がろうとしている。しかし壁に突き飛ばしたのだからそれ以上後ろはもうない。

「1つ……勘違いしてるようだから教えてやるよ。俺はお前が殺してくださいと言うまで殺すつもりはないぞ」

「……へ?」

言っていることが理解できなかったのか間抜けな声を出す男。

「だから、お前が死を望むまでは殺さないでやるって言ってるんだよ。証拠に木はまだまだ沢山残ってる」

さっきの火は生徒の周りにある木を燃やしただけだ。もし人質に取られたら大変だからな。いやまぁ結界は張ってるし平気だと思うけど。

「それってどういう」

……はぁこれだからバカと話すのは辛いんだ。

面倒くささを感じた俺は言葉での説明は諦め拳での説明に移行した。

「ぐっ!」

「こういうことだよ……わかったかな? サンドバッグ君」

それを聞いた男の顔が真っ青になる。自分がどうなるか、それは自分自身が1番よくわかっているのだろう。……まぁわかったところで容赦はしないけどね。



「ご、ごろじで。もう……じなぜでぐたざい」

20分か……ダンジョンのボスって言ってもこの程度か。

「いいよ殺してあげる」

俺は男の体に触れる。

混沌監獄(ユニオンプリズン)

そしてその手に残ったのは小さな四角の箱だった。

「……悪いな、俺は嘘つきなんだよ」

その箱を地面に投げ捨てて生徒たちを運びダンジョンの出口へと向かう。

「っとその前に」

ボス部屋の前に立ち俺は最後の仕事を行う。

貪慾王ガイツ

このボス部屋ブラックホールと融合した。融合には割合みたいなものがありその割合によってどちらの効果が多く現れるかが決まる。今回の場合はブラックホールの割合をあげたのでこの部屋は今ブラックホールの中と同じだ。なぜ外に影響が出ないのかは謎だが……こんなものが近くにあるのは少し気味が悪いよな。ということで。

高慢王ホッファート

こいつでここのサイズ感や質量を最小にする。仕上げにもう一度……。

貪慾王ガイツ

これでこのボス部屋を分解する。ブラックホールの質量を最小にするという訳の分からない状況で中は想像すらできない。だがブラックホールに繋げたこれはここでの存在がなくなってもブラックホールに存在し続ける。まぁ要するに宇宙へ行ってらっしゃいってことだな。

やることは終わった。あとは生徒たちを地上に運ぶだけだ。

気を失い眠いている生徒を氷狼で運ぶ。一応ヤバそうな子は俺の回復で傷は治したけど……大丈夫だろうか?

不安になりアゼルをちらっと確認する。呼吸は安定している。てかガッツリ寝てるし。これなら大丈夫かな。

俺は無事だった生徒たちを見て胸をなでおろした。

「……あばよクソダンジョン」

そう言って消えたボス部屋を後にした。



出口付近まで行くと数十人の教師が立ち止まっていた。中にはロキスクやエルドも居るようだ。

「どうしました?」

「それが」

出口から光が盛れてない……土石魔法で蓋をしたのか? 壊せないのは封印でもされたのか。全くどこまで腐ってるんだか。

「いいですよ、退いてください」

俺は集まる先生をかき分けて前に出る。

「レイバー先生?」

周りの反応は無視して土石魔法に触れる。

ふむ、魔力吸収に防御……反射も着いてるな。というか相当な封印だけどこんなこと出来るならもっと早く生徒を救えただろうに。

「少し……離れていてください」

それを聞いた先生達は少し後ろに下がる。

吸収と防御は問題ない、反射の方は……力技だけど反射が対応出来ない速度で殴ればいい。まぁ要するにゴリ押しだ。

極限漲溢(ルプトゥラ)2秒使用……神速!

バキッ! バラバラ……。

拳に魔力を込めて防御しつつ神速を使ってぶん殴る。単純だがこれを魔王がやるとなればこの程度の封印と土石魔法はクッキーと同じだ。

「よし! 行こうか」

俺は振り返り先生たちにそう言った。少し顔が引きつっている気もしたけど……まぁいいだろ。



「なっ! 一体どうやって」

外に出ると豚が大量の黒服に囲まれて居た。

ボディガードか……周りにいる生徒達はその辺で転がって回復を待ってるというのに。

「いや! そんなことはどうでもいい! いいかお前達! 私の命令に逆らったんだ! この国で生きていけると思っていたら大間違いだぞ!」

あれだけ殴ったのにまぁまぁ元気なこって……。

「もう1発行くか〜?」

後ろにいるロキスクにそう話しかける。

「いや2発だな」

指をパキパキと鳴らしながら豚に近寄っていく、黒服が前に出るが俺の圧に負けて直ぐに後ろに下がった。

「お、お前達!」

豚は怯えながら黒服を呼ぶ。しかし自分が大切な黒服は誰一人として前には出ない。

ザッ!

「さぁお前の罪を数えな!」

そう叫び豚の顔面に拳を真っ直ぐと放つ。……しかし拳に伝わる感触は豚の顔面ではなく誰かの手のひらだった。

「……はぁ」

俺は止めた相手の顔を見てため息をつく。

「何すんだよケルロス」

「久しぶりに会ってため息はないだろ」

周りに聞こえない位の声でボソボソと会話する。

「……じゃあ演技するから」

「はいはい」

「ケ、ケルロス様!?」

……ふふ、やば笑いこらえるのきっつ。

「これ以上無駄な暴力はやめろ」

うっはぁ、かっこいいわぁ。

「お、お前は誰だ!」

後ろの豚がケルロスを見て指をさしながら騒ぎ立てる。ケルロスの声が聞こえないから黙ってくれないかなぁ。

「俺はフィデース信栄帝国のケルロス・ミルキーウェイ、少し事情があってここまで来たんだ」

そこまで言うとケルロスの後ろにクイックとバールが現れた。

「おっひさ……クイック様!」

「ぶっ! ……んん! 久しぶりだなレイバー」

今吹き出したなこいつ……。てか俺も少し。

「くっ……ふふ」

俺は一生懸命に笑いをこらえる。多分後ろに行くロキスクには気付かれてると思うけど。

「フィデース信栄帝国の者が何の用だ!」

いやはやケルロスとクイック相手にそんな声が出せるとは凄いもんだ。

「その方々を呼んだのは私だ」

奥の広場入口から王国では知らない者はいないであろうシャネルが出てきた。

「シャ、シャネル王!?」

「ピッド、お前が今までしてきた悪事は全て調べさせてもらった」

そういうとシャネルは何枚も重なった書類を豚の前に投げ捨てた。

「こ、これは!?」

ふむふむ、横領……殺人、奴隷売買、それ以外にも沢山。

「今までお前は悪事を隠し通していたが、今日フィデース信栄帝国のケルロス殿とクイック殿の助けがあり全てを公にすることが出来た!」

ほぇ〜、そんなことしてたのかぁ。

「それと……ここのダンジョンを管理していたのは財政部門だったよな、後でゆっくり話を聞かせてもらおうか」

シャネルがそういうと後ろから大量の兵士が現れた。

「ま、待て!私はピッド・トラッシュだぞ! 離せ! 離さんかお前達ぃぃぃぃ!!」

……汚い断末魔だな。

「ご協力ありがとうございました」

「いえ、こういうことならいくらでも」

2人共外交してる時はこんな感じなのか……。

俺は仕事モードの2人をじっくりと観察する。

「レイバー先生、今は」

「あっ! はい」

特殊クラスが居た方に向かう。全員息は安定している。ここまで来ればもう平気だろ。

「良かった」

レオの顔に着いた土を優しく払いながら呟く。なんだか少しだけ……レオの顔が緩んだ気がした。

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