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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
累卵編
180/261

179話 仲間である限り

いやぁ年明けそうそうちょっと死にかけですけどまぁ些細な問題ですね。それにしても夏から始まった転生先は蛇さんでした。をここまで続けられるとは自分でも少し驚いています。まぁ長々と話してもあれなので普通に締めくくりましょう。

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

タッタッタッタッタッタッタッタッタッ!

「ぐぅぅぅぅ」

「がぁぁぁぁ」

「邪魔だ!」

バキッ! パキンッ!!

手や足に薄い氷の膜を張っている。それに触れれば化け物共は一瞬で凍りつきバラバラと崩れていく。使っている氷は最小限、触れた場所から周囲の魔力を使い敵を凍らせる。俺の消費魔力はほぼゼロに等しい。

「生き残っていてくれよみんな!」



「理事長」

「エルド……」

私は生徒の為にこの学園を作り出した。それがなぜこんなことに。

「はぁ……はぁはぁ。あの馬鹿はこの中に入ったんだな!」

応急処置を済ませた豚が私の前に立つ。

「もう我慢ならん! 土石魔法で壁を作った後に封印するんだ! そうすれば魔物が出ることは無い!」

……。

「それで先程の無礼も帳消しとしよう……分かったら早く動かんか!」

「……っさいな」

「ん? 今なんと言った?」

ピッドが私の近くに顔を寄せる。そのタイミングを見て私は全力の一撃を怒りと共に放った。

「うるせぇって言ってんだよ!!」

「ぼぎゆぁぁぁぁ!」

豚は壁にめり込み顔を血だらけにしながら気絶している。

「理事長!?」

「ラインザクセン学園の教師達よ! お前達は何を目指した教師となった!! いつから権力に縋る奴隷となった!!」

逃げている教師、ただ立ち尽くす教師、……勇気と愛を持って生徒を助けようとしている教師にも聞こえるように私は全力で叫ぶ。

「立ち上がれ! 生徒を導き助けるのが教師だ! 今ここで生徒を見捨てて我々は明日から胸を張って教壇に立てるのか!! 泣き言をこぼしたその口で! 生徒達にモノの正しさを説くことができるのか!!」

教師達の足が止まる。

「そんなことが許されるはずがない! なぜなら……生徒は教師の背中を見て学ぶのだから!! 恐怖に負けるな! 絶望に屈するな! 生徒たちは……我々の背中を見つめているぞ!!」

「生徒が……」

「私の、生徒達」

「みんなぁ」

決心は着いた。……すまなかったノーチェ、ようやく私は決断ができたよ。

「武器を持て! 今からダンジョンに侵入する!!」

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」



「……アゼル! おい!」

まずい……アゼルが思っていたよりギリギリだ。この中で回復魔法を持っているのは少数。それにレベルが低くて完全に傷を治すことはできない。ただの時間稼ぎだ。その中でアゼルを抱えながら地上まで何体もの強い魔物を倒して進むとか、無理にも程がある。だからって救助を待ってたら……。

「……」

「動いた方がいいと思うわ。ずっとここにいても何も変わらない。幸い出口の方向はわかってるしそっちに向かっていけば」

ヴィオレッタが明かりを作り出して言った。

「分かった。疲れてるところ悪いけどガッシュはアゼルを運んでやってくれ」

「わかった」

全員が移動準備をしているならただ1人、ウィラーだけは座り込んだまま俯いていた。

「そろそろ行くぞ」

「……」

「ウィラー?」

心配になったナツも声を掛ける。しかしウィラーはまだ何も喋らない。

「……早く行くぞ」

ガッシュやカガリも準備を終えて最後に残っているのウィラーだけだった。そして、先程のことから痺れを切らしていたのかウィグが声を荒らげてウィラーに怒り出した。

「さっきからお前はなんなんだよ! 先生に殺し屋差し向けてた時点で頭に来てるのに移動するって言っても動かねぇ! 話しかけても反応しねぇ! いつまでお坊ちゃんでいるつもりだ!」

確かに、ウィグの言うことも一理ある。さっきからクラス全体でウィラーに対しての目線が冷たい。あのシュクラですらウィラーとは話そうとしない。

「責任感じてるんだろ?」

俺の一言にウィラーが顔を上げる。

「ここに助けが来ないのは俺せいだ、みんなが死ぬのも俺のせいだって決めつけてんだろ? ウィラー」

頭のいいこいつの事だ、多分俺なんかが考えてるよりも持っと細かいことを思って動いているんだろう。でもだからって俺は仲間を見捨てたくないんだ。

「グルルル!」

「なっ!」

「くそ! もう来たか!」

「逃げるよ! ちょっとレオも早く!!」

みんなが階段を駆け上がり逃げていく。しかし俺は動かないウィラーを見つめている。

「レオ! 今ここであなたを失う訳にはいかないの! 早く来て!」

失う訳にはいかない……。

「……いいさ、俺はここで時間を稼ぐ。早く行けよ」

ウィラーが本を取りだし俺の前に立つ。

「……」

「レオ!」

「ほら、仲間が呼んでるぜ」

ッ!!

俺は何を言わずにウィラーの手を取り階段を駆け上がった。

「おい! 離せレオ!」

「うるせぇ! お前も仲間だろうが!」

見捨てねぇ! 絶対に仲間だけは見捨てない! それが先生との約束だから……!!



「ぐぁぁぁぁぁぁ!!」

「しゅぅぅぅ!」

グチャグチャ! バキンッ!!

「退け! 能無しの化け物共! 今はお前たちに割いてる時間がねぇんだよ!!」

パキンッ!!

バラバラ。

倒しても倒しても無限に湧いてきやがる……力的に倒すの簡単だ、でもこうも数が多いと前に進めない。

「仕方ねぇ!」

魔力の温存がどうとか考えてたら生徒達の命が危ない!

「フローズン・フィールド!!」

先程まで威勢よく襲いかかって来た化け物共は全て凍ってしまいバラバラと勢いよく崩れていった。

氷狼の連絡で300人ほどは発見して地上に運んだらしい。そして死者も多数……既に200はいってるだろう。だが特殊クラスの生徒は誰も見ていない。恐らく相当深くまで潜っているはずだ。

俺はそんな希望を胸に抱きながら暗い闇の中を駆けて行った。



「ナツ!」

「わかってる! ファイヤー・レイン!!」

「俺もやる!」

シュシュシュシュシュシュシュシュ!!

ナツとウィグが全力で魔獣を止めている。だが矢にも限りがある……それが全部無くなれば。仕方ない、魔法はあんまり使いたくなかったんだけど!

「俺がやる!」

「レオ!?」

「エアロ・スラッシュ!」

これでだいぶ数は減っただろ……とはいえ俺も魔力消費が。

「後ろだレオ!」

ウィグの声に気付いた俺だか少しだけ反応が遅れてしまった。

「レオ!!」

死を覚悟した瞬間……どこからか攻撃が放たれた。

「はぁ……はぁ」

「ウィラー」

「借りを返しただけだ……それに魔法なら俺の方が使える」

俺の前に立ち本を開くウィラー。ちらりと見えたページには禁忌魔法と書かれていた。

「もう魔力は溜まった」

周囲の魔力がウィラーに、いや正確には手元にある本に集まっている。

「十七章……十六番五十五列!」

ウィラーが叫ぶと大きな爆発音と共に奥にいた魔物たちが丸焦げになっていた。

「お、おぉ!!」

後ろにいたみんなが喜びの声をあげる。しかしウィラーは喜ぶのではなくその場で倒れてしまった。

「ウィラー!?」

「魔力を使いすぎた……直ぐに回復する」

俺の手を払おうとするウィラー……まだ頼らないのか。苛立ちを覚えた俺はウィラーをそのままおんぶした。

「何を」

「黙ってろ! 文句は後で聞く。今はここから出るぞ!」

「……ちっ、わかったよ」

ウィラーは暴れることなく俺の背中かに体を預けた。

「よし……シュクラとカガリを先頭にして道を開く! 後方はナツとウィグで確認していてくれ! 先頭の補助はヴィオレッタ! 後方はキャネルだ! 名前を呼ばれなかったやつは真ん中に塊何かあれば即座に対応すること!」

「わかった」

「よし」

「任せといて」

「……」

俺は死なない、俺たちは死なない。……いや仲間は絶対に死なせない。

そんなことを心に強く誓い俺たちは出口へと走っていくのだった。

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