18話 炎の獣
あの人間を見逃してから何日経ったろうか?俺達はひたすらに上を目指し進んでいた。
敵が出てくることもなく、静かで冷たい道をゆっくりと進んでいた。
「暇ですね」
「じゃあ何か?敵に出てきて欲しいのか?」
今の楽しみと言えばケルロスとクイックの言い争いだ。
2人は本当に良い友達になれたみたいだ。
……しかしこの洞窟、魔物がいる場所といない場所が本当に分かれている。
そもそもここはなんなんだ……あの蜘蛛はここの主か? それともあの龍が主だったのか?
ここに来てから少なくとも1週間は経ってるはずだ。
出会った魔物は数は多いけれど種類自体は7種類ほど……。
それにあの人間を腐らせた魔物を未だに見つけられていない。
何事も順調というのは恐ろしいものだ。
足元を掬われる、油断して命を落とす。そんな目に何度も会ってきた。
探索は最大限活用している。今は2人を守らないといけない立場にあるしな。
しかしその後も何事なく進み続けることが出来た。
「そろそろ地上ですかね〜」
「クイックは上に行ったことあるの?」
「いやないですね〜」
そうか……じゃあ上に行ったらみんなで日向ぼっこでもしようかな。
そう考えていた時だった。
足元の地面がバラバラと大きな音を立てて崩れていった。
「わっ」
「うわぁ!」
「なっ」
3匹の魔物は下に落ちていった。
……穴は深くない、10mくらいか?咄嗟にクッションを錬成してダメージは回避した。
周りは……
「ケルロス! クイック! 起きろ!!」
俺は最大限に叫んで2人を叩く。
「魔物だ! しかもありえない量! 今すぐ逃げるぞ」
俺はそういい切る前にケルロスとクイックをしっぽと口で掴み逃げ出した。
「すまない! 少し驚いて固まった、もう走れる!」
ケルロスがそう言って掴んでいる口から離れていった。
クイックもしっぽから離れて走っている。
あれは罠か? それとも偶然か?
……いや、そんなことよりもこの量はやばい。
「トカゲの比じゃないな!」
「そうですね……あの時より倍、いや3倍はいるかも!」
「どの道このままじゃ逃げきれないぞ!」
そう、戦うことはもう3人ともわかっていた。
今までの経験が逃げられないと告げている。
ならば生き残る最前の手段は全力で戦うこと。
「斬撃!」
「水斧!」
「岩玉!」
斬撃スキルによってトカゲや蜘蛛、カエルの魔物は一掃される、捉えきれなかった魔物たちは水斧と岩玉で切り刻まれるか押し潰されている。
魔法力を最大まで使い攻めてくる大群を1時間以上かけて殲滅した。
水斬魔法がLv5になりました。
スキルアップもそこそこに何とか倒した敵を見て安堵した時。
後ろから熱い何かが襲いかかってきた。
咄嗟にケルロスをしっぽで遠くに投げる、クイックは間に合わなかったので土石魔法で壁を作り攻撃を凌ぐ。
……これで魔力はすっからかんになっちまった。
鑑定……キャンセルされました。
キャンセル!? なんだそれ阻害系スキルか。
しかしそんなことを考えている暇はない、次の攻撃が飛んでくる。
魔力がほとんど残ってない……回避スキルも使えない。
恐らくケルロスとクイックも似たような状態だろう。
この炎に包まれた化け物をフィジカルで倒せと?
無理だろ。
あと可能性があるなら……この果実。
けどこれはあと一つしかない、温存しながら食べていたが窮地に追い込まれることも結構ありそこそこ食べている。
あとは誰が食べるかだ……魔法力が最もある俺が食べるのが1番だろうが鑑定をキャンセルされるってことは明らかに格上……なら絶対に一撃で仕留められる攻撃をしないとダメだ。
破壊魔法は消耗も激しいし部位破壊しか出来ない、水斬魔法は避けられる可能性がある、分解スキルは……最後の手段だ。
それにあいつをフィジカルで止められるのは俺しかいない。
そうすると必然的に俺以外のどっちかがこの果実を食べることになる。
……
「ケルロス!」
俺はそう叫び持っていた袋から果実を投げる。
それと同時に炎に包まれた化け物を締め上げる。
「あっ……つぃ!」
「ノーチェ!?」
クイックは驚きの声を出す。
しかしケルロスは俺が何をしたいのか理解してくれたようだ。
「3方向からの斬撃を食らうんだな」
「「「斬撃!」」」
炎に包まれた化け物は血を流して倒れ込んだ。
「見た目の割に呆気なかったな」
俺は死体を見てそう言った。
「ノーチェ!」
目の前には泣きそうな顔で走ってくるケルロスがいた。
「またあんな無茶して! 火傷が……早く回復を」
「大丈夫だってそれに今はMPなくて回復できないし」
見た目の割に火傷もそこまで酷くない。
魔法攻撃耐性を会得しました。
おっいいこともあったし結果オーライかな。
そう思った時体が大きく揺れた。
最初はクイックがぶつかって来たのかと思ったが違う。
ケルロスが今まで見た事ないような顔で驚いている。
俺はその先に視線をやった。
燃えてる腕……
腕が俺の胴体を貫通している。
「ゴボッ」
口から血が溢れる……。
死んだふりか……魔物の癖に……頭が……いい。
意識が遠のく……致命傷か。
ここで俺は……。
……嫌だ!まだ死なない、まだ死ねない!
何度も死の淵を味わってきた……こんな程度で俺を殺せると思うな……こんなもの……あの時と比べれば。
……渇望する者!餌をやる……ここにある死体全部やるから俺に魔力をよこせ!
渇望する者がLv6になりました。
渇望する者のLvが上がりました。
魔力が上昇します。
魔力が増えた……。
回復魔法……。
「化け……物、俺はこんなんじゃ殺せないぞ……!!」
------龍の影響により新スキル解放
不死を会得しました。
不死スキルにより魔力回復完了。
1度瀕死にされた相手に対して攻撃力増加。
レベル限界値です。進化しますか?
するさ。
進化先をお選びください。
-------スネーク
------龍の不死を会得……特殊………得……
未………………………………明
グレートポイズンスネーク
毒に対する攻撃が圧倒的にあがる。
主に魔力が高い。
……進化先は2つ。
毒蛇を極めるなら下だが、あの龍の影響で出来た新しい分岐点。
……いや今は戦闘中だ悩んでる暇は無い。
------スネークを選択。
新しい種族を追加中。
名前変更完了
始祖蟒蛇
情報不明。
進化完了。
……どうやら進化分岐にない全くの新しいなにかになってしまったらしい。
まぁけど今はそれでいい。
全体的なステータスが上がった分強くなったはずだ。
「水切り」
それを唱えた瞬間炎を纏った化け物は体を半分にされ絶命した。
現在のステータス
ノーチェ・ミルキーウェイ
始祖蟒蛇Lv1
耐性
物理攻撃耐性Lv4、精神異常耐性Lv2、魔法攻撃耐性Lv1、状態異常無効Lv10
スキル
総合把握Lv2、錬金術(毒特化)Lv8、心理把握Lv1、鑑定Lv9、拘束Lv8、中型輸送Lv6、思考Lv4、集中Lv5、隠密Lv5、探索Lv9、回避Lv4、中速移動Lv5、探索阻害Lv4、悪食Lv4、不死Lv1、分解Lv3、融合Lv1
魔法
回復魔法Lv8、幻影魔法Lv5、破壊魔法Lv8、火炎魔法Lv8、水流魔法Lv10、水斬魔法Lv5、土石魔法Lv6、土流魔法Lv4、闇魔法Lv4
???
計算Lv5、渇望する者Lv6、???
ケルロス・ミルキーウェイ
ホワイトドックLv9
耐性
痛覚耐性Lv3、毒耐性Lv3、物理攻撃耐性Lv2
魔法攻撃耐性Lv1
スキル
隠蔽Lv5、分身Lv7、探索Lv4、鑑定Lv6、強化Lv8、咆哮Lv4、斬撃Lv7、貫通Lv2
魔法
風新魔法Lv10、風斬魔法Lv3、光魔法Lv8
クイック・ミルキーウェイ
レッドモールLv9
耐性
物理攻撃耐性Lv4
スキル
探索Lv8、隠密Lv3、採掘Lv8、高速移動Lv9、体術Lv2、集中Lv2
魔法
土石魔法Lv10、土流魔法Lv10、土斬魔法Lv10




