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転生先は蛇さんでした。  作者: 時雨並木
邁進編
174/261

173話 追加授業

戦いの後俺たちは倒れたみんなを教室に運び6時間目が終わるまで4人で話をしていた。

「先生は獣人なんだよね! えっと確か」

「蛇の獣人だな」

よく覚えてるねカガリ。

「へぇ〜! 蛇の獣人は見たことないなぁ……ねぇねぇ! 本当の姿見せてよ!」

「えっ!? いやまぁ……いいけど」

あれ? 最後に蛇になったのいつだっけ……いやぁダメだ思い出せない。ここ最近忙しかったしなぁ。てか天月姫になってから蛇になってなくない? とんでもない化け物蛇になってそう。

「ご、ごめんやっぱり今度にしよっか」

「えぇ〜!!」

露骨に残念がるシュクラ、でもここで蛇になったら教室ぶっ壊しちゃうかもだし。

「はぁ、今度絶対見せてね!」

「う、うん」

蛇になった状態確認しとかないと。

「あっ鐘の音」

「そうか……授業終わりか」

「少し残念そうだな」

「えっ!? そんなことないよ!!」

シュクラとカガリが慌てて否定する。そんな2人を見て俺は大きめの声で笑った。

「あはははは、はぁ。まぁ今日は頑張ったからね。これをあげよう」

まぁ予め作ってたけど。

「わぁ! なにこれ!?」

白い煙が出る箱の中にノータイムで手を突っ込むシュクラはすごいな。

「冷た!? なんだこれ〜」

それはアイスクリームだよ。カップだからこのスプーンを使ってね。

「うん! ありがとう」

カガリとチグリジアにも渡して。

「ありがとう」

「ありがとうございます」

作ったと言っても魔法で錬成しただけだけどね。……いや正確にはペスラが作ったのを材料とか諸々用意して真似たんだけど。いやけど! 魔法とはいえ作ったのは事実だし!?

「ん〜! 冷たくて美味しい!」

「不思議な食感だ」

「甘いです」

「ん? 3人とも初めてか?」

アイスを頬張りながら頷く3人。こういうところは年相応だな。

「残りはみんなの分だなら食べるなよ〜」

俺はそう言い残し教室を後にした。



「いやぁ〜今日はいい日だったなぁ」

部屋の中で書類を片付けながら呟いた。チグリジアとは結構話せたしシュクラ、カガリとは仲を深められた。それにあんな風に協力し合ってくれるなんて。正直想像以上だったよ。

気分よく鼻歌を歌いながらペンを走らせていると扉をノックする音が聞こえた。

? ロキスクかな? 朝も話したけどなんだろうかお思いつつ扉を開ける。しかしそこに立っていたのはロキスクではなくレオだった。

「……レオ? どうしたの?」

俺が聞いてもそれは俯いたまま反応しない。

「えっと……あっアイス美味しかった?」

……どうしよう全く反応してくれない。

俺が扉を掴んだまま困り果てているとレオが何も言わずに部屋の中に入ってきた。

「えっ!? ちょちょ! どうしたの!?」

「……」

椅子に座ったまま何も言ってくれない。

困ったなぁ……どうしよう。今の時刻は5時、まぁ下校時刻より前だからまだいいけど。こう部屋に居座られると作業しずらいというか椅子を占拠されてるからまずできない。

「……あんた強いんだな」

「え? あっまぁ普通の人よりはね」

することがないので本棚にある本の整理をする。

「どうやって強くなったんだ?」

「うーん……仲間のおかげかな」

おっ、この本面白そう。

「……仲間ってなんだ」

「仲間は」

仲間か……。

「命を懸けてでも守りたい存在かな」

手に取った本を机に置きレオのことを見つめる。レオは何も言わないし反応も返さながじっと俺の目を見つめ返していた。

「そっか」

椅子から立ち上がり扉の方へ移動するレオ。何か考えに変化が起きてるといいんだけどなぁとか思いつつ扉を開いてやる。

「なぁ……先生」

レオが俺の事を先生と!?

「俺の事……強くできるか?」

俺はその言葉を聞いた時に固まってしまった。

「……そうだよな、今まで散々迷惑かけといてこんな」

扉から居なくなろうとしているレオの手を掴み口を開く。

「できる。レオのことを強くできるよ」

喜びのあまり固まってしまった。あのレオが俺に強くして欲しいなんて……あぁ今日はとってもいい日だ。

「ほんとか!?」

「うん、本当だよ」

「じゃあ今すぐ!」

「いや、今日はもう遅い。それに」

レオの頬を人差し指で優しくつつく。

「いっ」

「な? まだ怪我してるんだから今は休みなさい」

回復魔法は重症の子しか掛けてないからな。

「……わかった。じゃあ明日からよろしく頼むぜ!!」

元気よく部屋から出ていくレオ。頼ってくれた喜びを噛み締めながらも教師らしく注意する。

「廊下は走るなよ〜」

「はーい!!」

そのままレオは走り去っていった。

「ったく、走ったままじゃねぇか」

多分この時の俺は少し笑っていたと思う。



今日も今日で殺し屋が襲ってきたけど軽くあしらい家に帰った。それにしても毎日毎日飽きないもんだ。

家に入ると珍しくカーティオがペスラの手伝いをしていた。驚いて玄関で固まっているとペスラが

「良い事でもあった?」

と聞いてくるもんだから女の勘ってすごいんだなぁと心の底から思ったよ。



翌日

カーティオとペスラにはしばらく帰るのが遅くなることを伝え学校に向かった。2人は特段何も言わずに……けれど少し嬉しそうに返事をしてくれた。そういえばカーティオが朝早く起きてたのは珍しいな。



今日の授業は4時間目。それまでは結構暇だ、俺は元々夏休みの宿題とかは溜め込まずに最初の方に全部片付けるタイプだったので学校でする仕事も昨日一昨日であらかた片付けている。とはいえ意味もなく学校を徘徊するのもなぁ。と思い俺は……。



「私の所に来た訳か」

「なんだかんだ俺の正体知ってますしね」

呆れた様子で溜息をつくロキスク、しかしそんな風な態度をとってもお菓子とお茶を用意してくれていることに優しさを感じる。

「仕事が無くなって暇だから理事長室に来る教員は初めてだぞ」

「いやぁ、すみません」

ポチャポチャと角砂糖を入れながらロキスクが言った。

「昨日、夜遅くまで戦っているシュクラとカガリを見た。2人はそこまで仲が良いわけじゃないと思うけど……何かしたのか?」

「……少しだけ」

ミルクだけ入れたコーヒーを口に含む。個人的には紅茶が好きなんだけど……わがままは言えないよな。

「他にもキャネルとガッシュが近接戦闘の訓練をしていたり、ウィグとナツが射撃訓練をしていたな」

みんな……昨日の戦いは無駄じゃなかったんだ。

「嬉しそうだな」

「あっ……いやははは」

顔に出てたか、でもうん……とっても嬉しいよ。

「そういえば1時間目に担当した教師が驚いていたぞ、今日はレオのイタズラがなかったと」

他の先生にもやってたんかい。

「……まぁ頑張ってくれているんだなノーチェ先生」

そういうとロキスクは俺の前にお菓子を出してくれた。

「ご褒美ですか?」

「ん? うーむ……何かあったら助けてもらおうと? 賄賂かな」

「ふっふふ、あはははは」

「あっはははははは」

俺が笑いだしたのを見てロキスクも笑い出す。生徒たちの成長、昨日のレオの頼み事。様々なことが起こり今の俺はものすごく上機嫌だった。

「はぁ、はぁ。しかしまぁノーチェ先生が諦めない人で助かった」

落ち着くためにコーヒーを飲みロキスクへの返事をする。

「諦めませんよ、何があってもね」

「それはなんでだ?」

少し意地悪な質問をしてくる。けどまぁ答えは決まってるんだ。

「あの子達が生徒で、俺が教師だからです。これ以上もこれ以下も答えは要らないと思います」

「そうか」

ロキスクはそう呟いて椅子に背中を預ける。体重の軽さから体が沈み込むことはないがソファに体を任せれば首が上に向いたりと色々変化はしてくる。そしてロキスクは上を見たまま俺に話しかけた。

「ノーチェ先生が来てくれて本当に良かった」

「……俺も来て良かったですよ」

その後俺は授業開始まで理事長室で時間を潰した。ちなみに理事長は仕事が溜まっていたらしく午後は地獄のような量の書類を片付けたそうだ。

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